社会福祉法で規定される地域福祉計画は,2018年(平成30年)4月に変更されています。
ポイントは,
●策定が努力義務化されたこと。
●他計画の上位計画に位置づけられたこと。
●調査・分析・評価が努力義務化されたこと。
歴史を紐解くと,地域福祉計画は2000年(平成12年)に社会福祉事業法が社会福祉法になった際に規定されたものです。
その時に策定は任意とされました。それが努力義務になったのが2018年です。
2000年(平成12年) ↓ ↓ ↓ |
任意 ↓ ↓ ↓ |
2018年(平成30年) ↓ ↓ ↓ |
努力義務 ↓ ↓ ↓ |
現在に至る(努力義務) |
単純な流れですが,勉強不足の人はこういったことも整理できないので得点が難しいものとなります。
それでは,現時点(2021年)の規定を整理します。
〈地域福祉計画〉
(市町村地域福祉計画) 第百七条 市町村は、地域福祉の推進に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「市町村地域福祉計画」という。)を策定するよう努めるものとする。 一 地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項 二 地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項 三 地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項 四 地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項 五 地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に関する事項 2 市町村は、市町村地域福祉計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、地域住民等の意見を反映させるよう努めるとともに、その内容を公表するよう努めるものとする。 3 市町村は、定期的に、その策定した市町村地域福祉計画について、調査、分析及び評価を行うよう努めるとともに、必要があると認めるときは、当該市町村地域福祉計画を変更するものとする。 |
(都道府県地域福祉支援計画) 第百八条 都道府県は、市町村地域福祉計画の達成に資するために、各市町村を通ずる広域的な見地から、市町村の地域福祉の支援に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「都道府県地域福祉支援計画」という。)を策定するよう努めるものとする。 一 地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項 二 市町村の地域福祉の推進を支援するための基本的方針に関する事項 三 社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項 四 福祉サービスの適切な利用の推進及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項 五 市町村による地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備の実施の支援に関する事項 2 都道府県は、都道府県地域福祉支援計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、公聴会の開催等住民その他の者の意見を反映させるよう努めるとともに、その内容を公表するよう努めるものとする。 3 都道府県は、定期的に、その策定した都道府県地域福祉支援計画について、調査、分析及び評価を行うよう努めるとともに、必要があると認めるときは、当該都道府県地域福祉支援計画を変更するものとする。 |
市町村地域福祉計画と都道府県地域福祉支援計画で定める内容は,市町村と都道府県のや役割の違いを明確に示しています。
重要
市町村の役割
・住民に対する直接的なサービスの提供 など
都道府県の役割
・専門職の確保,および質の向上
・基盤整備 など
この違いは,ほかの領域でも同様です。
確実に押さえておきたいです。
それでは今日の問題です。
第30回・問題48 近年の福祉計画等に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 地域福祉計画は,社会福祉法の制定(2000年(平成12年))により,市町村にその策定が義務づけられた。
2 障害者基本計画策定の目的が,障害者基本法改正(2011年(平成23年))により,障害者の福祉及び障害の予防に関する施策の推進を図ることとされた。
3 都道府県健康増進計画では,健康増進法改正(2014年(平成26年))により,特定健康診査等の具体的な実施方法を定めている。
4 市町村子ども・子育て支援事業計画では,地域子ども・子育て支援事業の従事者の確保などの措置を定めるものとされている。
5 第6期介護保険事業計画の基本指針では,2025年度(平成37年度)の介護需要等の見込みを示した上で,地域包括ケアシステムの特色を明確にすることが求められている。
近年の動向が出題されていても動揺してはいけません。
落ち着けば,こういった問題でも確実に正解できます。
それでは解説です。
1 地域福祉計画は,社会福祉法の制定(2000年(平成12年))により,市町村にその策定が義務づけられた。
現在の地域福祉計画の策定は努力義務です。
現在において努力義務規定のものが,かつては義務規定だったということはめったにないことでしょう。
歴史がわからなくても消去できそうです。
2 障害者基本計画策定の目的が,障害者基本法改正(2011年(平成23年))により,障害者の福祉及び障害の予防に関する施策の推進を図ることとされた。
この選択肢がくせ者のです。
障害者の福祉及び障害の予防に関する施策の推進を図ることとされていたのは,改正前の規定です。
この選択肢を消去するために必要な知識は,障害者基本法の2011年(平成23年)の改正は何のために行われたのかを知っていることです。
こう書けばわかりますね?
この改正は,障害者権利条約を批准するためのものでした。
ここを思い出せば,「障害者の福祉及び障害の予防に関する施策の推進を図ること」はあまりに当たり前のことだと思えるはずです。障害者権利条約批准のタイミングでの改正には似つかわしくない印象です。
現在の目的は「障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図ること」です。
障害者権利条約の重要ポイントである合理的配慮は,障害者の自立及び社会参加の支援等のためのものだということがよくわかるでしょう。
3 都道府県健康増進計画では,健康増進法改正(2014年(平成26年))により,特定健康診査等の具体的な実施方法を定めている。
特定健康診査と特定健康指導の根拠法は,「高齢者の医療の確保に関する法律」です。
特定健康診査等の具体的な実施方法を定めるのは,同法に規定される「特定健康診査等実施計画」です。
4 市町村子ども・子育て支援事業計画では,地域子ども・子育て支援事業の従事者の確保などの措置を定めるものとされている。
前説に書いたように従事者の確保は,都道府県の役割です。
つまり「地域子ども・子育て支援事業の従事者の確保などの措置を定める」のは,都道府県子ども・子育て支援事業支援計画だということになります。
都道府県の役割
・専門職の確保,および質の向上
・基盤整備
確実に押さえておきたいです。
5 第6期介護保険事業計画の基本指針では,2025年度(平成37年度)の介護需要等の見込みを示した上で,地域包括ケアシステムの特色を明確にすることが求められている。
これが正解です。
第6期介護保険事業計画の基本指針の内容を知らなくても,ほかの選択肢を消去できればこの選択肢が残るようにこの問題が設計されているのです。
もう二度と出題されないとは思いますが,第6期以降を紹介すると以下のようになります。
第6・7期
2025年を見据えた地域包括ケアシステムの構築
第8期(2021~2023年度)
2025年を見据えた地域包括ケアシステムの構築に加えて,現役世代が減少する2040年を見据えたもの