2021年5月1日土曜日

社会福祉協議会の歴史

社会福祉協議会は,社会福祉法が規定する組織です。

 

よく知らない人は,市町村の組織だと思っている人もいるようです。

 

しかし,社会福祉協議会の多くは,社会福祉法人という法人格をもつ民間組織です。

 

社会福祉協議会の活動の説明は,また別の機会に譲るとして,今回は歴史についてまとめていきたいと思います。

 

 

全国社協

都道府県社協

市町村社協

1908

(明治41年)

中央慈善協会設立

初代会長は,渋沢栄一

 

 

1921

(大正10年)

社会事業協会

 

 

1924

(大正13年)

中央社会事業協会

 

 

1947

(昭和22年)

日本社会事業協会

全日本私設社会事業連盟との合併による

 

 

1951

(昭和26年)

中央社会福祉協議会

日本社会事業協会,全日本民生委員連盟,同胞援護会の合併による

都道府県社会福祉協議会設立

 

同年

社会福祉事業法によって,法制化

社会福祉事業法によって,法制化

 

1952

(昭和27年)

全国社会福祉協議会連合会

 

厚生省通知によって,設立が始まる

1955

(昭和30年)

全国社会福祉協議会

 

 

1962

(昭和37年)

『社会福祉協議会基本要項』で「住民主体の原則」が示される

 

 

1983

(昭和58年)

 

 

社会福祉事業法の改正で,法制化

1992

(平成4年)

『新・社会福祉協議会基本要項』で,「公私協働の原則」が示される

 

 

 

救護法の創設,実施に尽力した渋沢栄一は,現在の全国社会福祉協議会(全社協)の源流である中央慈善協会の初代会長を務めています。

 

その他には,全国民生委員児童委員連合会の源流である全日本方面委員連盟の初代会長も務めました。

 

救護法と方面委員と渋沢栄一

https://fukufuku21.blogspot.com/2021/04/blog-post_30.html

 

社協の法制化は何度も出題されています。

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題32 社会福祉協議会の歴史に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 1951年(昭和26年)に,現在の全国社会福祉協議会の前身となる中央慈善協会が設立された。

2 1962年(昭和37年)に,全国社会福祉協議会は「社会福祉協議会基本要項」の中で,社会福祉協議会の基本的機能はコミュニティ・オーガニゼーションの方法を地域社会に適用することであるとした。

3 1979年(昭和54年)に,全国社会福祉協議会は「在宅福祉サービスの戦略」の中で,ボランティアが行政サービスを代替すべきであると提言した。

4 1983年(昭和58年)に,都道府県社会福祉協議会による事業が拡大する中で,都道府県社会福祉協議会が法的に位置づけられた。

5 1992年(平成4年)に,全国社会福祉協議会は「新・社会福祉協議会基本要項」の中で,「住民主体の原則」を初めて明文化した。

 

 

この問題はなかなかの難敵です。その理由は,後で述べます。

 

それでは解説です。

 

1 1951年(昭和26年)に,現在の全国社会福祉協議会の前身となる中央慈善協会が設立された。

 

1951年(昭和26年)に設立されたのは,日本社会事業協会,全日本民生委員連盟,同胞援護会の三団体合併による「中央社会福祉協議会」です。

 

全社協は名称がころころ変わっているので,覚えるのが大変に感じると思います。

 

合併で名称が変わったという理由もありますが,それ以外に大きな理由があります。

 

それは現在では社会福祉事業と呼ばれるものが,時代とともに変わったことです。

 

大きく分けると

 

明治期 → 慈善事業

 

大正期~昭和初期 → 社会事業

 

昭和26年以降 → 社会福祉事業

 

途中,国では,感化救済事業(明治後期~大正期),軍事厚生事業(日中戦争期)と呼び変えた時代もあります。

 

感化救済事業に携わる職員のための講習会である「感化救済事業講習会」の第1回の終了日に設立されたのが,渋沢栄一が初代会長となった「中央慈善協会」です。

 

こういったことを覚えておけば,昭和期に「慈善」の名称がつく組織が創設されることはないと思えることでしょう。

 

つまらないミスを防ぐコツはこういうところにもあります。

 

2 1962年(昭和37年)に,全国社会福祉協議会は「社会福祉協議会基本要項」の中で,社会福祉協議会の基本的機能はコミュニティ・オーガニゼーションの方法を地域社会に適用することであるとした。

 

これが正解です。

 

この問題が難しい理由は,この選択肢が正解になったためです。

 

社会福祉協議会基本要項は,住民主体の原則を打ち出したことで知られており,それまではそのポイントでしか出題されたことがありませんでした。

 

ロスのコミュニティ・オーガニゼーション(地域組織化活動)の理論が,日本の社協の活動に影響を与えたという出題はありましたが,要綱で触れられていることに言及した出題はこの時が初めてだったのです。

 

だからといって,とんでもなく難しい問題だったか言えば,実はそうではありません。

 

つまらないミスをしなければ,ほかの選択肢はすべて消し込むことができるからです。ただし,それができるのは確実な知識がある人だけです。

 

3 1979年(昭和54年)に,全国社会福祉協議会は「在宅福祉サービスの戦略」の中で,ボランティアが行政サービスを代替すべきであると提言した。

 

 

落ち着いて考えると,ボランティアが行政サービスにとって代わるなんてことを提言するわけがないと思えるでしょう。

 

しかし,「在宅福祉サービスの戦略」なんてものは知らない,と思うと試験委員が仕掛けたわなにはまります。

 

こういった問題でミスする人の多くは,気持ちに余裕がなくてあわててしまうという傾向があるようなので,注意が必要でしょう。

 

4 1983年(昭和58年)に,都道府県社会福祉協議会による事業が拡大する中で,都道府県社会福祉協議会が法的に位置づけられた。

 

1983年(昭和58年)に法制化されたのは,市町村社会福祉協議会です。

 

5 1992年(平成4年)に,全国社会福祉協議会は「新・社会福祉協議会基本要項」の中で,「住民主体の原則」を初めて明文化した。

 

「新・社会福祉協議会基本要項」で示したのは「公私協働の原則」です。

 

「住民主体の原則」を初めて明文化したのは,「社会福祉協議会基本要項」です。

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