日本の社会保障制度を整理してみます。
制度の種類 |
制度の内容 |
制度の対象 |
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社会保険制度 |
5つの社会保険 |
一般所得者層 |
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社会扶助制度 |
社会福祉制度 |
児童・高齢者・障害者福祉,各種社会手当など |
低所得者層を対象 |
公的扶助制度 |
生活保護 |
貧困者層を対象 |
制度の対象については,社会保障制度審議会の1962年勧告によるものです。
日本の社会保障は,国民の多くを占める一般所得者層を対象とする社会保険制度が中心です。
日本の社会保険制度の財源には税も使われていますが,社会保障制度全体の財源では,社会保険料のほうが大きくなります。
この図式を絶対に忘れてはなりません。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題50 日本の社会保障の費用などに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 2014年度(平成26年度)の国民所得に対する租税及び社会保障負担の割合は,約25%であった。
2 「平成26年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)によると,社会保障財源の構成比は,公費負担より社会保険料の方が大きい。
3 「平成26 年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)によると,社会保障財源に占める公費負担の内訳は,国より地方自治体の方が多い。
4 2014年度(平成26年度)以降,基礎年金の国庫負担割合を恒久的に2分の1とする財源は,所得税と消費税で賄われている。
5 2014年度(平成26年度)における,後期高齢者医療制度の財源に占める後期高齢者支援金の割合は,約10%である。
かなり前の統計です。
しかし,社会保障は天文学的な数字なので,年度によってほとんど変わりません。
細かい数字が問われることはありません。
数字を変える時は,大きく変えます。
10.2%を12.2%に変えるというようなことはなく,1割を5割,3割を7割など大きく変えて出題します。
年度によって順位が変わるものは出題されません。
勉強方法を間違えないようにしてください。
それでは解説です。
1 2014年度(平成26年度)の国民所得に対する租税及び社会保障負担の割合は,約25%であった。
国民所得に対する租税及び社会保障負担のことは,国民負担率といいます。
日本の国民負担率は,約40%です。
これを覚えていなくとも,消費税だけでも10%もあるわけですから,そこから推測して,25%で済むわけがないと考えることができます。
2 「平成26年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)によると,社会保障財源の構成比は,公費負担より社会保険料の方が大きい。
これが正解です。
今までに何度出題されてきたのかわからないほど出題頻度の高いものです。
社会保険料≧公費
社会保険料≧公費
社会保険料≧公費
社会保険制度が社会保障制度の中心をなすわけですから,財源も当然このようになります。
3 「平成26 年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)によると,社会保障財源に占める公費負担の内訳は,国より地方自治体の方が多い。
国と地方自治体の割合は,7:3です。
制度によっては,5:5というものもありますが,ほとんどの制度は,国の負担のほうが大きくなっています。
現在は財源を移譲して地方税も多くなってきていますが,国税が圧倒的に多いのです。
4 2014年度(平成26年度)以降,基礎年金の国庫負担割合を恒久的に2分の1とする財源は,所得税と消費税で賄われている。
基礎年金の国庫負担割合は,かつて3分の1でしたが,現在は2分の1に引き上げられています。
この時に,消費税を5%から8%に引き上げたのです。
この増税した部分は,社会保障財源となりましたが,国庫負担割合を引き上げるための財源は,国の一般会計から支出されている関係上,特定の財源が使われているということはありません。
選択肢2を選べなければ,この選択肢で引っ掛けられてしまいそうです。
5 2014年度(平成26年度)における,後期高齢者医療制度の財源に占める後期高齢者支援金の割合は,約10%である。
後期高齢者支援金とは,後期高齢者医療制度を安定化させるために,現役世代の医療保険制度から支出してもらっているものです。
この負担が大きいため,健康保険組合の運営が辛いことになっています。
割合は,40%も占めているのです。