2021年5月3日月曜日

民生委員制度・児童委員制度

民生委員制度

 

民生委員は,岡山県の済世顧問制度,大阪府の方面委員制度を源流とする制度です。

 

1948年(昭和23年)の民生委員法に規定されます。

 

民生委員法は,わずか30条しかない法律です。しかも一部は削除されています。

 

1936年(昭和11年)の方面委員令では,方面委員は名誉職である,と規定されました。

 

この規定は民生委員法にも受け継がれ,削除されたのは,2000年(平成12)年の改正です。現在は,「民生委員には、給与を支給しないものとし」と規定されます。

 

そのほか大きく変化してきたのは,その職務です。

  

法成立当時の職務

現在の職務


第十四条 民生委員の職務は、左の通りとする。

 

一 常に調査を行い、生活状態を審かにして置くこと。

 

二 保護を要する者を適切に保護指導すること。

 

三 社会施設と密接に連絡し、その機能を助けること。

 

2 民生委員は、前項の職務を行う外、必要に応じて、生活の指導を行う。


十四条 民生委員の職務は、次のとおりとする。

一 住民の生活状態を必要に応じ適切に把握しておくこと。

二 援助を必要とする者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと。

三 援助を必要とする者が福祉サービスを適切に利用するために必要な情報の提供その他の援助を行うこと。

四 社会福祉を目的とする事業を経営する者又は社会福祉に関する活動を行う者と密接に連携し、その事業又は活動を支援すること。

五 社会福祉法に定める福祉に関する事務所その他の関係行政機関の業務に協力すること。

2 民生委員は、前項の職務を行うほか、必要に応じて、住民の福祉の増進を図るための活動を行う。

 

以前は,「指導」であったものが,現在は「援助」に置き換わっていることに着目です。

現在は,指導は行いません。行うのは援助です。

 

〈民生委員の定員〉

 

厚生労働大臣の定める基準を参酌して、前条の区域ごとに、都道府県の条例で定める。

 

参酌とは,参考にするという意味です。

 

以前は,定員に関しては,児童相談所の児童福祉司も「参酌して」でしたが,現在は,昨今の児童虐待の増加によって「基準を標準として」に変更されています。

 

この変更によって,定員に関して社会福祉士の国試に出題されるもので,「参酌して」は民生委員のみとなっています。

 

児童委員制度

 

児童委員は,児童福祉法で規定されている制度です。

 

児童福祉法では,「民生委員法による民生委員は、児童委員に充てられたものとする」とされ,民生委員は自動的に児童委員となります。

 

現在は,主任児童委員という制度もあります。

 

〈主任児童委員の職務〉

 

児童の福祉に関する機関と児童委員との連絡調整を行うとともに、児童委員の活動に対する援助及び協力を行う。

前項の規定は、主任児童委員が第一項各号に掲げる児童委員の職務を行うことを妨げるものではない。

 

民生委員・児童委員を指揮監督する者は誰?

 

どこかに配置される職員なら,その所属長が指揮監督します。

 

しかし,民生委員・児童委員はどこかの機関に所属して活動しているわけではありません。

 

さて,それでは誰が指揮監督するでしょう?

 

答えは,今日の最後にあります。

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題34 民生委員・児童委員に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 民生委員の任期は5年である。

2 民生委員の職務に関する規定では,その職務に関して必要と認める意見を直接関係各庁に具申することができる。

3 民生委員の推薦は,各市町村に設置された民生委員推薦会が厚生労働大臣に対して行う。

4 主任児童委員は,児童委員の職務とともに,児童福祉の機関と児童委員との連絡調整を行う。

5 児童委員は,児童福祉法に基づく推薦委員会により選任され,それに基づき厚生労働大臣が委嘱する。

 

制度をつかむのに良い問題だと思います。

 

こういった問題を作るのは,高い問題作成能力を必要とします。

 

それでは,解説です。

 

1 民生委員の任期は5年である。

 

民生委員の任期は,3年です。

 

前任者がやめたことで,途中から民生委員になった場合は,前任者の残りの任期が後任者の任期となります。

 

このことによって,3年に1回,全国一斉に民生委員が改選されます。

 

再任は妨げられませんが,一つ注意が必要です。

 

国の通知で,民生委員の年齢要件は「75歳未満」とされています。しかし,これは通知であり,法に規定されているものではありません。

 

現場を知る人は勘違いしがちなので注意が必要です。

 

2 民生委員の職務に関する規定では,その職務に関して必要と認める意見を直接関係各庁に具申することができる。

 

 民生委員の職務に関して必要と認める意見を関係各庁に具申することができるのは,民生委員が組織する「民生委員協議会」です。

 

民生委員が直接関係各庁に意見具申することはあり得ません。

 

3 民生委員の推薦は,各市町村に設置された民生委員推薦会が厚生労働大臣に対して行う。

 

これはものすごく重要です。

 

民生委員は,都道府県知事が推薦し,厚生労働大臣が委嘱します。

 

都道府県知事は,社会福祉の増進に熱意のある者を知りません

 

このために,都道府県知事は,市町村に設置された民生委員推薦会が推薦した者を推薦します。

 

重要なのは,市町村レベルが都道府県レベルを飛び越えて,中央官庁レベルとつながらないことです。

 

この基本ラインは確実に押さえておきたいです。

 

 

4 主任児童委員は,児童委員の職務とともに,児童福祉の機関と児童委員との連絡調整を行う。

 

これが正解です。

 

法規定そのものの出題です。

 

5 児童委員は,児童福祉法に基づく推薦委員会により選任され,それに基づき厚生労働大臣が委嘱する。

 

児童委員は,民生委員が充てられます。そのため,児童福祉法では,こういった規定をする必要はありません。

 

法は実に合理的にできています。

 

 

民生委員・児童委員を指揮監督する者は誰? の問いの答え

 

 

民生委員・児童委員を指揮監督するのは,都道府県知事です。指導訓練も行います。

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