2021年5月6日木曜日

生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)

生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)は,介護保険法の地域支援事業の「生活支援体制整備事業」で配置されています。

 

生活支援コーディネーターの役割

・サービスの開発

・関係者のネットワーク化

・ニーズとサービスのマッチング

 

配置は,市町村ですが,市町村のどこに配置するかは,市町村が独自に決めます。

 

それでは,今日の問題です。

 

 

30回・問題37 事例を読んで,市の社会福祉協議会に配置された生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 生活支援コーディネーターは,担当地域に高齢者が交流できるサロンのような場がほとんどないと考えていて,何とかしたいと思っていた。そこで,自治会などの地域団体にサロンの実施を呼び掛けたが,高齢化している地域団体は担い手不足を理由に断った。

1 より広域の中学校区域でサロンを実施するよう,地域団体に助言した。

2 地域の民生委員の協力を得て,高齢者の生活実態調査を行い,行政がサロンを直接運営するように訴えた。

3 高齢者が日頃集まっている場所を調べ,そこでのサロンの実施を含めて,地域の福祉課題などを地域住民と話し合った。

4 地域団体の負担を減らすため,サロンの参加者を一人暮らし高齢者に限定した。

5 地域団体に,他の地域で活発に行われているサロンと同じ方法を勧めた。

 

生活支援コーディネーターの役割についての問題だと思っていたら,事例問題だったのでずっこけた人もいるのではないでしょうか。

 

確かにこの問題は,生活支援コーディネーターの役割を知らなくても解けます。しかし,こんな問題ばかりではありません。

やっぱり知識が必要なのです。

 

それでは解説です。

 

この問題のポイントは,

 

①担当地域に高齢者が交流できるサロンのような場がほとんどないと考えている。

②高齢化している地域団体は担い手不足を理由に断った。

 

これを頭に入れて

問題を解いていきます。

 

1 より広域の中学校区域でサロンを実施するよう,地域団体に助言した。

 

中学校区は,おおよそ徒歩30分圏,介護保険法の日常生活圏域,そして地域包括ケアシステムの単位となる区域です。

 

この選択肢が不適切な理由はいくつかあります。

 

〈不適切な理由〉

1.助言すること

高齢者が交流できるサロンのような場がほとんどないと考えているのは,生活支援コーディネーターであり,地域団体ではありません。

地域団体から高齢者が交流できるサロンを作ることを手伝ってほしいという要望があったのなら,助言することもあり得るでしょう。しかし,これは生活支援コーディネーターがそう思っているだけです。助言したところで活動することはないように思います。そう思いませんか?

この状況では,地域を中学校区に広げたところで,担い手を確保するのは困難だと言えます。

 

2.中学校区は広すぎる

小学校区に比べて中学校区は広域になっています。

文部科学省が標準としているのは,小学校区は4km,中学校区は6kmです。

km30分で歩くというのは,かなりの健脚でなければ難しいです。一般的には時速4km程度だといわれているので,その3倍のスピードです。だから地方の学校の一部では自転車通学が認められているのでしょう。

 

この問題の対象は,高齢者です。気軽に集うには6km圏は広すぎます。

地域包括ケアシステムを知っていると,中学校区は適切な範囲だと思うかもしれません。

国はそのように仮定しているからです。

 

この選択肢を中学校区につられて正解だと思うのは,かなり危険です。「中学校区」に引っ掛けられるように作った問題だからです。

 

地域包括ケアシステムは,住み慣れた地域で最後まで自分らしい生活を送るための仕組みです。徒歩でサービス提供場所に行くことは想定されているわけではないからです。

 

 

2 地域の民生委員の協力を得て,高齢者の生活実態調査を行い,行政がサロンを直接運営するように訴えた。

 

民生委員が高齢者の生活実態調査を行うことは不適切ではないかもしれません。

 

しかし,行政がサロンを直接運営するように働きかけるのは適切ではありません。

 

なぜなら,生活支援コーディネーターの機能の一つに「サービスの開発」があるからです。

 

もし行政に働きかけるとしたら,サロンを開催する実施場所の提供でしょう。

 

3 高齢者が日頃集まっている場所を調べ,そこでのサロンの実施を含めて,地域の福祉課題などを地域住民と話し合った。

 

これが最も適切です。

 

地域住民と話し合うことで,サロンの実施がなぜ必要なのかを知ってもらうことができます。

 

4 地域団体の負担を減らすため,サロンの参加者を一人暮らし高齢者に限定した。

 

選択肢1の解説でも述べたように,地域団体はサロンの必要性を感じていない可能性があります。

 

参加人数を減らしたところで,打開策とはなり得ません。

 

5 地域団体に,他の地域で活発に行われているサロンと同じ方法を勧めた。

 

これも選択肢1と4と同じ理由で不適切です。

 

今の状況では,サロンの実施が必要だと考えているのは,生活支援コーディネーターただ一人かもしれないからです。

 

<今日の一言>

 

地域福祉の事例問題は,話し合うことが正解になることが多い

 

この事例の場合は,サロンの実施が必要だと思っているのは,生活支援コーディネーター一人であるかもしれません。

 

この事例は極端ですが,多くの場合は話し合い,たとえば住民座談会などを開くことで住民のニーズをつかむことといったものが正解になることが多い傾向にあるようです。

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