地域福祉に携わる専門職等はたくさんあるので覚えるのが大変かもしれませんが,国家試験で問われて,しかも正解となるのは,多くの人に知られていないようなものではなく,勉強した人なら知っているものです。
それでは今日の問題です。
第30回・問題36 認知症の人や家族の支援に関わる専門職とボランティアに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 認知症サポーターは,地域包括支援センターから委嘱されて活動する。
2 日常生活自立支援事業における専門員は,原則として社会福祉士,精神保健福祉士等であって,一定の研修を受けた者である。
3 認知症地域支援推進員は,都道府県に配置され市町村の医療・介護等の支援ネットワーク構築の支援等を行う。
4 認知症ケア専門士は,認知症ケアに対する学識と技能及び倫理観を備えた専門の国家資格である。
5 介護相談員は,登録を行った後,介護相談員であることを証する文書が都道府県から交付される。
なかなか手ごわい問題です。その理由は,後で述べます。
それでは,解説です。
1 認知症サポーターは,地域包括支援センターから委嘱されて活動する。
日本国民の10人に1人はすでに認知症サポーターとなっています。オレンジリングを持っている人も多いのではないでしょうか。
しかし,どのような仕組みになっているのか詳しく知らない人も多いようです。
認知症サポーターは,講師役であるキャラバン・メイトが開催する認知症サポーター養成講座を受講すると,認知症サポーターとなります。
この一連を認知症サポーターキャラバンと呼んでいます。
もともとは,認知症サポーターを全国で100万人養成することを目指していたために,砂漠を横断するキャラバン隊になぞらえて,全国で認知症サポーターを養成するキャラバン隊という意味合いで「認知症サポーターキャラバン」と名付けられました。
認知症サポーターは,民生委員や保護司のように委嘱されて活動するようなものではありません。養成講座を受講することで誰もがサポーターとなります。
2 日常生活自立支援事業における専門員は,原則として社会福祉士,精神保健福祉士等であって,一定の研修を受けた者である。
これが正解です。
精神保健福祉士も含めて出題されているので,正解にしにくいのがこの問題のやっかいなところです。
しかし,これとそっくりな問題があります。
日常生活自立支援事業の徹底理解~その1
https://fukufuku21.blogspot.com/2018/12/1.html
ここで紹介しているものの中で,
5 日常生活自立支援事業において具体的な支援を行う生活支援員は,社会福祉士や精神保健福祉士の資格があって一定の研修を受けた者とされている。
生活支援員が専門職と変わっているだけで内容は同じです。
この問題は第23回に出題されたものです。多くの人はこんなに古い過去問を解く人はいないでしょう。だから,参考書などで基礎力を付けなければならないと思います。
3年間の過去問の知識で合格できるような国試ではありません。
3 認知症地域支援推進員は,都道府県に配置され市町村の医療・介護等の支援ネットワーク構築の支援等を行う。
認知症地域支援推進員は,介護保険法の地域支援事業の「認知症総合支援事業」によって配置されています。
介護保険法の地域支援事業は,障害者総合支援法の地域生活支援事業と異なり,都道府県の事業はありません。
つまり配置は,都道府県はあり得ないということです。
配置されるのは,市町村です。
4 認知症ケア専門士は,認知症ケアに対する学識と技能及び倫理観を備えた専門の国家資格である。
認知症ケア専門士は,認知症ケア学会が認定しているものです。つまり国家資格ではありません。
5 介護相談員は,登録を行った後,介護相談員であることを証する文書が都道府県から交付される。
もう一つやっかいなのは,介護相談員です。
介護保険法と同時にスタートした市町村が実施主体の制度ですが,実施している市町村がそれほど多くないため,あまり知られていません。
都道府県が実施する研修を受けて,市町村に登録して活動します。
介護相談員は市民による活動なので,登録が都道府県だと遠すぎるのでしょう。
介護相談員の詳細
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/11/blog-post_14.html
介護相談員は,とにかくよく知られていないので要注意です。