今回は,民生費を取り上げたいと思います。
民生費とは,地方公共団体の財政のうち,福祉に使う費用のことをいいます。
地方公共団体の財政の内訳
地方公共団体の財政の内訳で,最も大きいのが民生費です。
ただし,ちょっと面倒なのは,都道府県と市町村を合わせると民生費が1番大きいですが,都道府県だけでは教育費が1番,市町村だけでは民生費が1番となることです。
こういったことをきっちり覚えることが国試に合格することにつながります。
民生費の内訳
次は,民生費の内訳です。
最も大きいのが児童福祉費です。
2番目に大きいのが老人福祉費です。
老人福祉費の方が大きいように思うかもしれません。
しかし,民生費は福祉に用いる費用なので,社会保険制度は含みません。
つまり現在の高齢者施策の中心は社会保険制度である介護保険制度なので,社会福祉制度に用いる費用はそれほど大きくないのです。
それに比べると児童分野は,社会保険制度はなく,すべてが社会福祉制度です。そのため,民生費に占める率が大きくなります。
介護保険については後で述べます。
民生費の内訳も面倒です。
都道府県と市町村を合わせると児童福祉費が1番大きいのですが,都道府県では老人福祉費が1番大きく,市町村では児童福祉費が1番大きくなります。
民生費に関する記事
https://fukufuku21.blogspot.com/2020/12/blog-post_9.html
特別会計
特別会計は,一般会計とは別に組む会計のことです。
社会福祉士の国試に出題される特別会計は,介護保険特別会計と国民健康保険特別会計の2つだけです。
地方公共団体の財政は一般会計を計上しているので,特別会計は含んでいません。
この2つを別会計にしているのは,社会保険制度だからです。
日本の社会保険制度の財源には税金(公費)も用いていますが,基本的には社会保険料を財源として運営されます。
そのため,税金だけが用いられる社会福祉制度よりも金額の規模が大きくなります。
民生費の内訳で最も大きいのは,児童福祉費ですが,介護保険特別会計と国民健康保険特別会計の方が大きくなることに注意が必要です。
それでは今日の問題です。
第30回・問題43 「平成29年地方財政の状況」(総務省)が示す2015年度(平成27年度)の地方財政において,次に示す民生費及び特別会計事業の費目のうち,歳出金額が最も多いものを1つ選びなさい。
1 生活保護費
2 児童福祉費
3 老人福祉費
4 介護保険事業費
5 国民健康保険事業費
民生費の内訳で最も大きいのは,児童福祉費であることはしっかり勉強してきた人なら覚えていたはずです。
しかし,この問題ではそこに特別会計を含めて出題されました。
そのために簡単には解けない問題となっています。
早とちりする人は,「2 児童福祉費」を選んだことでしょう。
以前の記事で応用力はいらないと書きました。
https://fukufuku21.blogspot.com/2021/04/blog-post_10.html
丸暗記するとこういった問題に対応するのは難しいことでしょう。
民生費と特別会計ではどちらが大きいのかは財源から推測することができます。
それでは特別会計の2つのうち,どちらが大きいのでしょうか?
これは,社会保障給付費から推測する方法もあります。
年金:5,医療:3,福祉その他:2
介護保険は福祉その他に含まれます。
医療のほうが大きそうだと言えそうです。
もう一つは,利用者を考えてみます。
介護保険は,40歳以上の人しか利用することはできません。
しかし医療は,すべての国民が利用することがあります。
ここからも医療の方が大きいのではないかと言えそうです。
こういった推測を積み重ねて結論は「5 国民健康保険事業費」と出します。
そして,これが正解です。
<今日の一言>
限られた時間の中でそんなことまで考えが及ばない
と思う人もいるでしょう。
しかし,日常生活の中では,このような推測あるいは推論はいつも行っています。
多くの場合,結論は今までの経験から判断しているはずです。
私たちチームfukufuku21がたくさんの問題を通して,勉強法を紹介しているのは,多くの経験をしてほしいからです。