2021年5月8日土曜日

地域における福祉ニーズの把握方法

地域における福祉ニーズの把握方法は,社会福祉調査の知識が求められることがあります。


そういった意味もあるのか,新しいカリキュラムの「社会福祉調査の基礎」は,精神保健福祉士との共通科目に位置づけられています。


これまでは,この部分においては,精神保健福祉士はちょっぴり不利だったのです。もちろん精神保健福祉士でも社会福祉調査は学びますし,これまでも出題されていましたが,科目として独立していたわけではありません。


とはいうものの今日の問題は,社会福祉調査の知識が必ずしもなくても正解できます。


試験委員は決して非情ではないのです。


ということで,今日の問題です。


第30回・問題39 地域における福祉ニーズの把握方法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 特定のテーマを掘り下げるフォーカスグループインタビューは,単一の地域ニーズに焦点化するのに適した方法である。

2 困難な課題を抱えた住民や利用者の声を直接聞く個別インタビューは,地域ニーズの全体像を把握するのに適した方法である。

3 地域住民等が地域課題などを話し合いながら意見を集約していく方法である住民座談会は,地域ニーズを量的に把握するのに適した方法である。

4 実践課題の解決を重視するアクションリサーチは,研究者や専門家を関与させずに,当事者自身が地域ニーズを把握するのに適した方法である。

5 災害時における要援護者のマップ作りは,見守りが必要な人を視覚的に把握するのに適した方法である。


この問題の難易度は,高そうに見えて実はそれほど高くありません。


それはこの選択肢が正解だからです。


5 災害時における要援護者のマップ作りは,見守りが必要な人を視覚的に把握するのに適した方法である。


言われてみたら「そうね」と思うでしょう。


しかし,余計なことを考えるとわけがわからなくなります。


この出題はまだ素直に出題されています。


第32回・問題40 社会福祉協議会が地域において行う福祉調査や分析活動に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

1 災害時要援護者のニーズを視覚的に把握するために,デジタル地図の上に様々な情報を表示するGIS(地理情報システム)を用いた。


これも正解です。第30回はかなりアナログな感じがしますが,これは何十年も時代が進んだように感じます。


それでは,ほかの選択肢も解説します。


1 特定のテーマを掘り下げるフォーカスグループインタビューは,単一の地域ニーズに焦点化するのに適した方法である。


フォーカスグループインタビューは,インタビューのテーマに合う人に集まってもらって,グループインタビューするものです。


フォーカスグループインタビューの良い点は,参加者がほかの参加者の意見を聞いて,考えを深められることです。これを集団力学(グループダイナミクス)といいます。


集団力学を活用しないのであれば,個別インタビューで十分ということになります。


例えば,一人で生活する高齢者に集まってもらって「一人暮らしの生活で困っていることは何か」を聞きます。


Aさんは「毎度の食事の準備」と言います。

Bさんはそれを聞いて「食事の準備よりも食材の買い物」と言います。

Cさんはそれを聞いて「私も食材の買い物」と言います。

Dさんはそれを聞いて「ごみの分別」と言います。


このようにさまざまなものが出てくることでしょう。

ここでわかることは,単一の福祉ニーズに焦点化するよりも,広く意見が聞けるということです。


2 困難な課題を抱えた住民や利用者の声を直接聞く個別インタビューは,地域ニーズの全体像を把握するのに適した方法である。


これが選択肢の答えとなるものです。


地域ニーズの全体像を把握するのに適した方法は,フォーカスグループインタビュー。

単一の地域ニーズに焦点化するのに適した方法は,個別インタビュー。


と整理することができそうです。


3 地域住民等が地域課題などを話し合いながら意見を集約していく方法である住民座談会は,地域ニーズを量的に把握するのに適した方法である。


これが社会福祉調査の知識が若干必要とされるものかもしれません。


地域住民等が地域課題などを話し合いながら意見を集約していく方法は,質的調査の方法です。


専門的には,KJ法やグラウンテッド・セオリー・アプローチなどが用いられます。


量的というのは,数値化できるものをいいます。アンケートなどを使って調査し,分析していきます。これは量的調査の手法です。


4 実践課題の解決を重視するアクションリサーチは,研究者や専門家を関与させずに,当事者自身が地域ニーズを把握するのに適した方法である。


アクションリサーチとは,リサーチ(調査)という言葉が使われていますが,専門家などが地域住民とともに行う地域の福祉的課題の解決のための活動をいいます。


専門家などが関与せずに当事者自身が地域ニーズを把握するのは,アクションリサーチとは言いません。

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