医療保険は,療養の給付(治療にかかる費用)が中心ですが,法定給付にはそれ以外のものもあります。
その中心なのは,傷病手当金です。
傷病手当金は,傷病によって労務ができなくなって3日を経過して4日目から給付されます。
給付期間は,最大1年6か月です。
今日のテーマは,「出産育児一時金と出産手当金」です。
出産育児一時金は,出産にかかる費用を給付するものです。
扶養する家族が出産する場合は,家族出産育児一時金が給付されます。
家族出産育児一時金は,国民健康保険にはありません。
なぜなら,健康保険と異なり,国民健康保険は扶養家族という制度はないからです。
国民健康保険に加入していれば,出産育児一時金が給付されます。
出産手当金は,被保険者本人が出産する際,産前42日,産後56日の間,労務に服さず,給与が支払われない場合の所得保障です。
被保険者本人が出産する場合,出産育児一時金と出産手当金は併給できます。給付の目的が異なる給付だからです。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題54 事例を読んで,出産・育児支援に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Cさん(28歳,女性)は,U社に正社員として5年間勤務し,V社に正社員として5年間勤務するDさん(28歳,男性)と婚姻関係にあり同居している。Cさんは,4週間後に出産予定日を控え,「育児・介護休業法」に基づく育児休業を取得する予定である。CさんとDさんは,共に健康保険,厚生年金保険及び雇用保険の被保険者である。
1 Cさんが出産したときは,出産育児一時金が支給される。
2 Cさんが育児休業を取得した場合,休業開始時賃金日額の40%の育児休業給付金が支給される。
3 育児休業中,Cさんの厚生年金保険の保険料は,事業主負担分のみ免除される。
4 CさんとDさんが共に育児休業を取得する場合,育児休業給付金は,最長で合計3年間支給される。
5 CさんとDさんの所得を合算した額が一定額に満たない場合,CさんとDさんのどちらかに,出産後,児童扶養手当が支給される。
(注)「育児・介護休業法」とは,「育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」のことである。
特に注意したいポイントは,Cさんは健康保険の被保険者であることです。
それでは解説です。
1 Cさんが出産したときは,出産育児一時金が支給される。
これが正解です。
Cさんは,健康保険の被保険者なので,出産育児一時金が給付されます。
もし,CさんがDさんの被扶養家族だった場合は,家族出産育児一時金が給付されます。
2 Cさんが育児休業を取得した場合,休業開始時賃金日額の40%の育児休業給付金が支給される。
育児休業給付金は,休業開始時賃金日額の50%が給付されます。
ただし,現時点(2021年5月)では,180日までは67%に引き上げられています。181日以降は50%が給付されます。
3 育児休業中,Cさんの厚生年金保険の保険料は,事業主負担分のみ免除される。
育児休業中は,本人と事業主負担分の保険料が免除されます。
4 CさんとDさんが共に育児休業を取得する場合,育児休業給付金は,最長で合計3年間支給される。
夫婦ともに育児休業を取得する場合は,最長1年2か月の間に育児休業給付金が給付されます。
これはどちらか一方ではなく,夫婦ともに給付されます。
5 CさんとDさんの所得を合算した額が一定額に満たない場合,CさんとDさんのどちらかに,出産後,児童扶養手当が支給される。
児童扶養手当は,両親がそろっていない場合などに給付されるものです。
Cさん夫婦には給付されません。