2023年6月30日金曜日

事例には書かれていないが「きっとこうだろう」とは思わない

  

ソーシャルワーク系の事例問題を確実に得点する秘訣

秘訣① 事例の中に必ず答えにつながるヒントがある。

秘訣② 事例には書かれていないが「きっとこうだろう」とは思わない。

秘訣③ 設問を忘れない。

 

32回・問題76 事例を読んで,医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)が行う退院支援に関する次の記述のうち,この段階における対応で,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 先天性代謝異常の疾患に罹患しているMちゃん(生後8か月)は呼吸器を装着し頻回の吸引が必要でありバルーンカテーテル,経管栄養を使用している。出生以来,NICU(新生児集中治療室)に2か月,小児病棟に6か月入院してきたが,主治医からの退院許可を受け,自宅での生活の準備を始めることになった。出生以来,Mちゃんの見舞いを欠かさずしてきた両親は,初めて自宅でMちゃんと一緒に生活することに喜びを感じていた。一方で病院から離れることに不安を感じ,これまで相談に乗っていた医療ソーシャルワーカーに不安を打ち明けた。

1 医療的ケア児等コーディネーターとの連携を検討する。

2 両親に特別障害者手当を申請するよう勧める。

3 訪問看護ステーションと両親を交えたカンファレンスを実施する。

4 両親に医療型障害児入所施設の空き状況を伝える。

5 これまでも同様の患者がいたことを伝え,心配する必要はないと両親を励ます。

 

医療的ケア児に関しては,2021年(令和3年)に「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が制定されています。

 

同法では,医療的ケア児支援センター(都道府県が任意で設置する)が規定されました。

 

この問題はまだ同法ができる前のものなので,今,出題すると医療的ケア児支援センターを絡めた出題になることでしょう。

 

医療的ケア児支援センターの業務

・医療的ケア児及びその家族その他の関係者に対し,専門的に,その相談に応じ,又は情報の提供若しくは助言その他の支援を行うこと。

・医療,保健,福祉,教育,労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体並びにこれに従事する者に対し医療的ケアについての情報の提供及び研修を行うこと。

・医療的ケア児及びその家族に対する支援に関して,医療,保健,福祉,教育,労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体との連絡調整を行うこと。

 

それでは解説です。

 

1 医療的ケア児等コーディネーターとの連携を検討する。

 

これが1つめの正解です。

 

医療的ケア児等コーディネーターは,都道府県が養成を行うもので,医療的ケア児等の総合的な支援を行います。

 

2 両親に特別障害者手当を申請するよう勧める。

 

特別障害者手当は,在宅生活をしている20歳以上の重度障害者に対して支給するものです。

 

Mちゃんに支給されません。

 

これが特別児童扶養手当ならMちゃんが対象となります。

 

しかし,これがたとえ,特別児童扶養手当と出題されていたとしても正解になることはありません。

 

なぜなら,事例の中にMちゃんの両親が経済的な不安があることが書かれていないからです。

 

3 訪問看護ステーションと両親を交えたカンファレンスを実施する。

 

これがもう1つの正解です。

 

両親の不安に対応したものとなっています。

 

4 両親に医療型障害児入所施設の空き状況を伝える。

 

両親はMちゃんと一緒に生活することに喜びを感じています。

施設入所は望んでいません。

 

5 これまでも同様の患者がいたことを伝え,心配する必要はないと両親を励ます。

 

個別化していない対応です。

2023年6月29日木曜日

ソーシャルワーク系の事例問題を確実に得点する秘訣

ソーシャルワーク系の事例問題は正解しやすいので,あまり対策をしない人は多いのではないかと思います。

 

知識がなくても正解できる可能性が高いのは確かですが,確実に得点するのはそれほど簡単なことではありません。

 

ソーシャルワーク系の事例問題を確実に得点する秘訣

 

秘訣① 事例の中に必ず答えにつながるヒントがある。

 

秘訣② 事例には書かれていないが「きっとこうだろう」とは思わない。

 

秘訣③ 設問を忘れない。

 

秘訣①はわかりやすいと思いますが,秘訣②と秘訣③は,意外とやりがちです。

 

今日も問題もそういったタイプの問題です。

 

31回・問題76 事例を読んで,A医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)によるBさんへの対応として,この段階において最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 日雇の仕事をしながら路上生活をしていたBさん(55歳)は,胃痛と吐血があったが,医療保険に加入しておらず医療機関を受診していなかった。吐血して路上で倒れているところを発見され,救急搬送されてきた。受診と検査の結果,担当医師から胃がんであることが本人に告げられた。Bさんは医療費の支払ができないので,このまま放っておいてくれと言い続けるだけであった。看護師が説得を試みたが本人の意向は変わらず,担当医師からA医療ソーシャルワーカーに電話が入った。

1 公共職業安定所(ハローワーク)を紹介し,日雇就労の継続を相談するように促す。

2 治療をしなかった場合の身体的リスクを医師に代わって説明する。

3 Bさんの治療拒否の意向が尊重されるように,医師や看護師を説得する。

4 ACP(アドバンス・ケア・プランニング)を検討する。

5 生活保護の医療扶助の説明を行い,申請手続を促す。

 

秘訣① 事例の中に必ず答えにつながるヒントがある

 Bさんは医療費の支払ができないので,このまま放っておいてくれ。


秘訣② 事例には書かれていないが「きっとこうだろう」とは思わない。

 「Bさんは医療費の支払ができないので,このまま放っておいてくれ」と言っているが,本心は別のものがあるのではないか,と考えるのはミスの元。

 

秘訣③ 設問を忘れない。

 この段階において

 

これらを整理しておかないとミスします。

 

この問題は,国家試験のあとに各社から出される解答速報で,答えが割れました。

 

秘訣を意識しないとミスするということでしょう。

 

この問題の正解は,選択肢5です。

 

5 生活保護の医療扶助の説明を行い,申請手続を促す。

 

Bさんが述べていることは明確です。医療費の支払いができないので,このまま放っておいてくれ,です。

 

これに対応するのは,選択肢5しかありません。

 

解答速報で答えが割れたのは,選択肢4です。

 

これが正解にならない理由は,選択肢1~3も含めて,「医療ソーシャルワーカー業務指針」で示される業務の範囲ではないからです。

 

将来的にはACPを検討することもあるかもしれませんが,それは,設問にある「この段階において」ではなく,先の話です。

 

それに比べると選択肢5は,医療ソーシャルワーカー業務指針で業務の範囲として示されているものです。

 

経済的問題の解決,調整援助

 入院,入院外を問わず,患者が医療費,生活費に困っている場合に,社会福祉,社会保険等の機関と連携を図りながら,福祉,保険等関係諸制度を活用できるように援助する。

 

国家試験問題として,ソーシャルワーカーの個々の価値基準によって,優先度合いが変わるようなものは,不適切です。

 

確実に正解だと言えなくなってしまうからです。

 

事例問題でもし悩むようなことがあるとすれば,何かのポイントを見落としたり,気づかないうちに情報を付け加えて事例を読んでいたりしている可能性が高いです。


ソーシャルワーク実践として秘訣①の裏返しは,実はとても重要なことです。

クライエントの背景を考えることが必要だからです。

ソーシャルワーカーの視点として,できるだけ多くの可能性を想定しておき,かかわりの中で,核心に近づいていきます。


〈今日の一言〉

ケース検討は,さまざまな可能性を考えること。

事例問題は,事例の中の情報だけで考えること。


ケース検討と事例問題は,似ていて異なるものであることは覚えておきたいです。

2023年6月28日水曜日

医療ソーシャルワーカー業務指針の徹底理解

1989年・平成元年には「医療ソーシャルワーカー業務指針」が当時の厚生省から通知されています。

 

業務指針の内容を必ずしも知らなくても国試問題は解けますが,この機会に確認します。

 

医療ソーシャルワーカー業務指針

業務の範囲


医療ソーシャルワーカーは,病院等において管理者の監督の下に次のような業務を行う。


() 療養中の心理的・社会的問題の解決,調整援助

 入院,入院外を問わず,生活と傷病の状況から生ずる心理的・社会的問題の予防や早期の対応を行うため,社会福祉の専門的知識及び技術に基づき,これらの諸問題を予測し,患者やその家族からの相談に応じ,次のような解決,調整に必要な援助を行う。

① 受診や入院,在宅医療に伴う不安等の問題の解決を援助し,心理的に支援すること。

② 患者が安心して療養できるよう,多様な社会資源の活用を念頭に置いて,療養中の家事,育児,教育就労等の問題の解決を援助すること。

③ 高齢者等の在宅療養環境を整備するため,在宅ケア諸サービス,介護保険給付等についての情報を整備し,関係機関,関係職種等との連携の下に患者の生活と傷病の状況に応じたサービスの活用を援助すること。

④ 傷病や療養に伴って生じる家族関係の葛藤や家族内の暴力に対応し,その緩和を図るなど家族関係の調整を援助すること。

⑤ 患者同士や職員との人間関係の調整を援助すること。

⑥ 学校,職場,近隣等地域での人間関係の調整を援助すること。

⑦ がん,エイズ,難病等傷病の受容が困難な場合に,その問題の解決を援助すること。

⑧ 患者の死による家族の精神的苦痛の軽減・克服,生活の再設計を援助すること。

⑨ 療養中の患者や家族の心理的・社会的問題の解決援助のために患者会,家族会等を育成,支援すること。


() 退院援助

 生活と傷病や障害の状況から退院・退所に伴い生ずる心理的・社会的問題の予防や早期の対応を行うため,社会福祉の専門的知識及び技術に基づき,これらの諸問題を予測し,退院・退所後の選択肢を説明し,相談に応じ,次のような解決,調整に必要な援助を行う。

① 地域における在宅ケア諸サービス等についての情報を整備し,関係機関,関係職種等との連携の下に,退院・退所する患者の生活及び療養の場の確保について話し合いを行うとともに,傷病や障害の状況に応じたサービスの利用の方向性を検討し,これに基づいた援助を行うこと。

② 介護保険制度の利用が予想される場合,制度の説明を行い,その利用の支援を行うこと。また,この場合,介護支援専門員等と連携を図り,患者,家族の了解を得た上で入院中に訪問調査を依頼するなど,退院準備について関係者に相談・協議すること。

③ 退院・退所後においても引き続き必要な医療を受け,地域の中で生活をすることができるよう,患者の多様なニーズを把握し,転院のための医療機関,退院・退所後の介護保険施設,社会福祉施設等利用可能な地域の社会資源の選定を援助すること。なお,その際には,患者の傷病・障害の状況に十分留意すること。

④ 転院,在宅医療等に伴う患者,家族の不安等の問題の解決を援助すること。

⑤ 住居の確保,傷病や障害に適した改修等住居問題の解決を援助すること。


() 社会復帰援助

 退院・退所後において,社会復帰が円滑に進むように,社会福祉の専門的知識及び技術に基づき,次のような援助を行う。

 ① 患者の職場や学校と調整を行い,復職,復学を援助すること。

 ② 関係機関,関係職種との連携や訪問活動等により,社会復帰が円滑に進むように転院,退院・退所後の心理的・社会的問題の解決を援助すること。


() 受診・受療援助

 入院,入院外を問わず,患者やその家族等に対する次のような受診,受療の援助を行う。

 ① 生活と傷病の状況に適切に対応した医療の受け方,病院・診療所の機能等の情報提供等を行うこと。

 ② 診断,治療を拒否するなど医師等の医療上の指導を受け入れない場合に,その理由となっている心理的・社会的問題について情報を収集し,問題の解決を援助すること。

 ③ 診断,治療内容に関する不安がある場合に,患者,家族の心理的・社会的状況を踏まえて,その理解を援助すること。

 ④ 心理的・社会的原因で症状の出る患者について情報を収集し,医師等へ提供するとともに,人間関係の調整,社会資源の活用等による問題の解決を援助すること。

 ⑤ 入退院・入退所の判定に関する委員会が設けられている場合には,これに参加し,経済的,心理的・社会的観点から必要な情報の提供を行うこと。

 ⑥ その他診療に参考となる情報を収集し,医師,看護師等へ提供すること。

 ⑦ 通所リハビリテーション等の支援,集団療法のためのアルコール依存症者の会等の育成,支援を行うこと。


() 経済的問題の解決,調整援助

 入院,入院外を問わず,患者が医療費,生活費に困っている場合に,社会福祉,社会保険等の機関と連携を図りながら,福祉,保険等関係諸制度を活用できるように援助する。

() 地域活動

 患者のニーズに合致したサービスが地域において提供されるよう,関係機関,関係職種等と連携し,地域の保健医療福祉システムづくりに次のような参画を行う。

 ① 他の保健医療機関,保健所,市町村等と連携して地域の患者会,家族会等を育成,支援すること。

 ② 他の保健医療機関,福祉関係機関等と連携し,保健・医療・福祉に係る地域のボランティアを育成,支援すること。

 ③ 地域ケア会議等を通じて保健医療の場から患者の在宅ケアを支援し,地域ケアシステムづくりへ参画するなど,地域におけるネットワークづくりに貢献すること。

 ④ 関係機関,関係職種等と連携し,高齢者,精神障害者等の在宅ケアや社会復帰について地域の理解を求め,普及を進めること。

 

それでは,今日の問題です。

 

29回・問題75 Kさん(20歳,男子大学生)は,2週間前にスノーボードの事故で脊椎損傷になり,特定機能病院に搬送され,入院となった。現在,両下肢不全麻痺があり,リハビリテーションが必要だが拒否しており,怒りや落ち込みなど精神的に不安定な状態にある。

 Kさんの担当になった医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)が医療ソーシャルワーカー業務指針に沿って援助計画を立案するに当たって行うこととして,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 急性期治療から回復期リハビリテーション,さらに復学支援まで自分が担当すると説明する。

2 精神的に不安定なKさんの支援のために,精神科医に診療を依頼する。

3 Kさんの家族に対して,治療方針と予後に関して説明する。

4 将来の在宅療養を予想し,Kさんの居住する地域の「障害者総合支援法」に基づく協議会に参加して,患者に関する情報を提供する。

5 Kさんに対して面接を行い,その中でリハビリテーションを受け入れない理由などの情報を収集する。

(注)1 医療ソーシャルワーカー業務指針は,平成141129日に改定されたものである。(厚生労働省健康局長通知)

2 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

 

この問題は,丁寧に「医療ソーシャルワーカー業務指針に沿って」と示してくれていますが,医療ソーシャルワーカーの事例問題の場合は,このように書かれていなくても,医療ソーシャルワーカー業務指針に沿って考えることが必要です。

 

そうしないと間違えます。

 

医療ソーシャルワーカー業務指針に沿っているのは,選択肢5しかありません。

 

5 Kさんに対して面接を行い,その中でリハビリテーションを受け入れない理由などの情報を収集する。

 

これが「医療ソーシャルワーカー業務指針」での示されている「受診・受療援助」です。

 

② 診断,治療を拒否するなど医師等の医療上の指導を受け入れない場合に,その理由となっている心理的・社会的問題について情報を収集し,問題の解決を援助すること。

 

受診・受療援助は,ともすると,選択肢3のように,医療職に変わってインフォームドコンセントを行う,といったようにとらえられがちです。

 

しかし,医療ソーシャルワーカーは,医療現場にいますが,医療の専門職ではありません。

 

医療に関するものは,医療の専門職の役割です。

 

受診・受療援助は,医療ソーシャルワーカー業務指針で示されている5つの業務のうち,最も勘違いしやすいもののように思います。

2023年6月27日火曜日

特定健康診査と特定保健指導

特定健康診査と特定保健指導は,高齢者医療確保法によって実施されています。


特定健康診査で生活習慣病予備軍(メタボリックシンドローム)を洗い出し,特定保健指導を行って生活習慣予防を行うものです。


それでは今日の問題です。


第32回・問題72 特定健康診査及び特定保健指導に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 特定健康診査及び特定保健指導の対象年齢は,40歳以上60歳以下である。

2 特定保健指導の目的は,糖尿病等の生活習慣病の予防である。

3 特定健康診査の目的は,がんの早期発見である。

4 特定健康診査の結果は,結果に問題がなければ保険者から受診者への通知を省略することができる。

5 特定健康診査は,被用者が同じ内容の事業者健診を受けていても,改めて受けることが義務づけられている。


特定健康診査と特定保健指導を少しでも知っていれば,答えは見つけられる問題かもしれません。


それでは,解説です。


1 特定健康診査及び特定保健指導の対象年齢は,40歳以上60歳以下である。


特定健康診査及び特定保健指導の対象年齢は,40歳以上74歳以下です。


2 特定保健指導の目的は,糖尿病等の生活習慣病の予防である。


これが正解です。


特定保健指導の目的を知らなくても,特定健康診査がメタボリックシンドロームに関連していることさえわかっていれば,特定保健指導の目的もわかりそうです。


3 特定健康診査の目的は,がんの早期発見である。


がんの早期発見を目的に行っているのは,がん検診です。


特定健康診査の目的は,生活習慣病予備軍(メタボリックシンドローム)の発見です。


4 特定健康診査の結果は,結果に問題がなければ保険者から受診者への通知を省略することができる。


特定健康診査の結果は,結果にかかわらず通知されます。


5 特定健康診査は,被用者が同じ内容の事業者健診を受けていても,改めて受けることが義務づけられている。


特定健康診査は,被用者が同じ内容の事業者健診を受けていた場合は,特定健康診査を行ったものとみなされます。

2023年6月26日月曜日

介護医療院とは

現在の介護保険法が定める介護保険施設は,介護老人福祉施設,介護老人保健施設,介護医療院の3種類があります。

 

そのうち,介護医療院は,介護保険が適用された療養型病床が廃止されたのに伴い,創設されたものです。

 

介護医療院

主として長期にわたり療養が必要である者に対して,療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設

 

 

介護老人保健施設は,要介護者であって,主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者を対象として,と規定されます。

 

提供するサービスは,大きな違いはありませんが,対象が異なります。

 

それでは,今日の問題です。

 

35回・問題73 日本の医療提供体制に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 医療計画は,市町村が策定義務を負っている。

2 地域医療支援病院は,第1次医療法の改正(1985年(昭和60年))に基づき設置された。

3 診療所は,最大30人の患者を入院させる施設であることとされている。

4 介護医療院は,主として長期の療養を必要とする要介護者に対し,療養上の管理,看護,医学的管理の下での介護,必要な医療及び日常生活上の世話を行う。

5 地域包括支援センターは,地域における高齢者医療の体制を整えるため,地域医療構想を策定する義務を負う。

 

介護医療院を知ってさえいればこの問題は正解できますが,正解できてもほかの選択肢を覚えなければ,過去問を解く意義は半減します。

 

それでは解説です。

 

1 医療計画は,市町村が策定義務を負っている。

 

医療計画の策定義務があるのは,都道府県です。

 

2 地域医療支援病院は,第1次医療法の改正(1985年(昭和60年))に基づき設置された。

 

地域医療支援病院は,1997(平成9)年の医療法改正(第三次)に基づいて設置されています。

 

3 診療所は,最大30人の患者を入院させる施設であることとされている。

 

診療所は,最大19人の患者を入院させる施設です。

 

20人以上は,病院です。

 

4 介護医療院は,主として長期の療養を必要とする要介護者に対し,療養上の管理,看護,医学的管理の下での介護,必要な医療及び日常生活上の世話を行う。

 

これが正解です。

 

5 地域包括支援センターは,地域における高齢者医療の体制を整えるため,地域医療構想を策定する義務を負う。

 

地域医療構想を策定しなければならないのは,都道府県です。

2023年6月25日日曜日

診療報酬の支払い方式

 診療報酬の支払い方式は,出来高払い方式と包括払い方式に分類することができます。


出来高払い方式は,診療を受けた分を積み上げてその合算額を支払うものです。外来診療及び急性期医療(DPC方式ではないもの)に対して,出来高払い方式が採用されています。


包括払い方式は,病気ごとに決められた金額のみを支払うものです。診療の回数などが多くても少なくても支払われる金額は変わりません。急性期医療のDPC制度の入院に対して,包括払い方式が採用されています。


基本的には,急性期医療には出来高払い方式,慢性期医療には包括払い方式が採用されていると押さえると良いと思います。


それでは,今日の問題です。


第35回・問題72 診療報酬制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 

1 診療報酬の点数は,通常3年に1度改定される。

2 診療報酬点数表は,医科,歯科,在宅医療の3種類が設けられている。

3 療養病棟入院基本料の算定は,出来高払い方式がとられている。

4 地域包括ケア病棟入院料の算定は,1日当たりの包括払い方式がとられている。

5 診療報酬には,選定療養の対象となる特別室の料金が設けられている。


前説によって答えはすぐわかると思いますが,解説します。


1 診療報酬の点数は,通常3年に1度改定される。


診療報酬は,通常は2年に1回,中央社会保険医療協議会(中医協)の答申を受けて,厚生労働大臣が決定します。


2 診療報酬点数表は,医科,歯科,在宅医療の3種類が設けられている。


診療報酬の点数表の種類は,医科,歯科,調剤の3つです。


これまでの出題を見ていると,3つめを変えることが多いようです。


3 療養病棟入院基本料の算定は,出来高払い方式がとられている。

4 地域包括ケア病棟入院料の算定は,1日当たりの包括払い方式がとられている。


療養病棟入院基本料と療養病棟入院基本料がわからずとも,どちらも急性期医療ではなさそうです。


そうすると,どちらも包括払い方式だと考えることができそうです。


ということで,選択肢4が正解です。

4 地域包括ケア病棟入院料の算定は,1日当たりの包括払い方式がとられている。



5 診療報酬には,選定療養の対象となる特別室の料金が設けられている。


選定療養は,保険外併用療養費の1つです。


保険外併用療養費は,保険外の部分は自己負担となり,保険診療は保険給付するものです。

次回,詳しく取り上げます。


特別室の料金は選定療養の対象となりますが,保険外の部分の費用(この問題の場合は特別質の料金)は,医療機関が自由に設定します。

2023年6月24日土曜日

診療報酬の改定について

診療報酬は,通常は2年に1回,中央社会保険医療協議会(中医協)の答申を受けて,厚生労働大臣が決定します。


国家試験では誰が決定するのかを問われることが多いので,


厚生労働大臣は,2年に1回,診療報酬を決定する


と厚生労働大臣を主語にした文章で覚えたいです。


もう一度復唱です。


厚生労働大臣は,2年に1回,診療報酬を決定する


それでは,今日の問題です。

第31回・問題73 診療報酬に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 診療報酬の点数は,通常2年に一度改定される。

2 診療報酬の改定率は,中央社会保険医療協議会が決定する。

3 DPC/PDPSは,分類ごとに月ごとの入院費用を定めている。

4 診療報酬点数には,医科,歯科,看護報酬が設けられている。

5 外来診療報酬については,1日当たり包括払い制度がとられている。


答えはすぐわかると思いますが,解説します。


1 診療報酬の点数は,通常2年に一度改定される。


これが正解です。


2 診療報酬の改定率は,中央社会保険医療協議会が決定する。


厚生労働大臣は,2年に1回,診療報酬を決定する


中央社会保険医療協議会(中医協)は,厚生労働大臣の諮問に答える立場です。


3 DPC/PDPSは,分類ごとに月ごとの入院費用を定めている。


DPC/PDPSは,急性期病床に採用される包括払い方式の一種です。


疾患ごとに入院1日あたりの費用が定められています。


急性期では,1か月も入院するのは稀です。そこから,月単位はあり得ないと考えることはできます。


4 診療報酬点数には,医科,歯科,看護報酬が設けられている。


診療報酬点数が3種類あるのは正しいですが,看護報酬ではなく,調剤報酬です。


5 外来診療報酬については,1日当たり包括払い制度がとられている。


診療報酬の支払い方式には,医療行為を積み重ねて算定する出来高払い方式,1日当たりの診療報酬の金額が決まっている包括払い方式があります。


包括払い方式は,かつては主に慢性期病床で採用されていましたが,近年は急性期病床にも取り入れられるようになってきました。


外来は,すべて出来高払い方式となっています。

2023年6月23日金曜日

日本の診療報酬制度

日本の医療保険制度は,全国どこの医療機関でも自由に医療を受けられ,金額も同じです。

サービス業は,サービスの質によって金額が変わることを考えると,当たり前だと思われる制度も決して当たり前ではないことが理解できるのではないでしょうか。

それは,医療サービスが診療報酬という法定価格になっているからです。


それでは,今日の問題です。


第26回・問題72 我が国の診療報酬制度に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。

1 診療報酬の改定は,中央社会保険医療協議会の答申を経て行われる。

2 診療報酬の審査・支払権限は,健康保険組合等の保険者にある。

3 外来診療報酬については,1日当たり包括払い制度がとられている。

4 診療報酬は,健康保険と国民健康保険では異なった内容となっている。

5 診療報酬点数表において,1点単価は1円とされている。


とんでもなく古い問題ですが,今も制度は変わりません。


それでは,解説です。


1 診療報酬の改定は,中央社会保険医療協議会の答申を経て行われる。


これが1つめの正解です。


診療報酬は2年ごとに改定されていますが,中央社会保険医療協議会の答申を経て,厚生労働大臣が決定します。


2 診療報酬の審査・支払権限は,健康保険組合等の保険者にある。


これが2つめの問題です。


診療報酬の審査・支払権限は,保険者にあります。しかし,実際に保険者がその事務を行うのは大変なので,健康保険の場合は,社会保険診療報酬支払基金,国民健康保険の場合は,国民健康保険団体連合会に,それぞれ委託して実施しています。


3 外来診療報酬については,1日当たり包括払い制度がとられている。


診療報酬の支払い方式には,医療行為を積み重ねて算定する出来高払い方式,1日当たりの診療報酬の金額が決まっている包括払い方式があります。


包括払い方式は,かつては主に慢性期病床で採用されていましたが,近年は急性期病床にも取り入れられるようになってきました。


外来は,すべて出来高払い方式となっています。


4 診療報酬は,健康保険と国民健康保険では異なった内容となっている。


診療報酬は,すべて共通です。


5 診療報酬点数表において,1点単価は1円とされている。


診療報酬は,点数表に記載されていますが,1点は10円です。地域差はありません。

2023年6月22日木曜日

高額療養費制度及び高額介護合算療養費制度とは?

高額療養費制度は,月内の医療費の自己負担分が所得や年齢などによって定められた金額(自己負担限度額)を超えた場合,超えた分を給付するものです。


同一世帯であり,同じ医療保険の加入者であれば,世帯合算することができます。


高額介護合算療養費制度は,1年間の医療費と介護保険の自己負担分が自己負担限度額を超えた場合,超えた分を給付するものです。


高額療養費制度と同じように世帯合算することができます。


〈注意ポイント〉


高額療養費制度 ➡ 月内(月額)


高額介護合算療養費制度 ➡ 1年間(年額)


それでは,今日の問題です。


第32回・問題70 日本の医療費の自己負担限度額に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 食費,居住費,差額ベッド代は高額療養費制度の支給の対象とはならない。

2 医療保険加入者が70歳未満である場合,二人以上の同一世帯で合算した年額の医療費の自己負担限度額が定められている。

3 医療保険加入者が医療保険と介護保険を共に利用した場合,それらの費用を世帯で合算した月額の自己負担限度額が定められている。

4 医療保険加入者が70歳以上である場合,入院の費用に限り世帯単位での医療費の自己負担限度額が定められている。

5 医療保険加入者が高額長期疾病(特定疾病)の患者である場合,医療費の自己負担を免除することが定められている。


問題自体は,決して簡単ではありませんが,答え自体はそれほど難しくありません。


つまり,正解がわからなければ答えられないタイプの問題だと言えます。


それでは解説です。


1 食費,居住費,差額ベッド代は高額療養費制度の支給の対象とはならない。


これが正解です。


窓口で支払うすべての料金が高額療養費制度の対象となるわけではありません。

入院中の食費,居住費,差額ベッド代などを引いた分が高額療養費制度の対象となります。


2 医療保険加入者が70歳未満である場合,二人以上の同一世帯で合算した年額の医療費の自己負担限度額が定められている。


高額療養費制度の自己負担限度額は,月内(月額)で定められています。


3 医療保険加入者が医療保険と介護保険を共に利用した場合,それらの費用を世帯で合算した月額の自己負担限度額が定められている。


高額介護合算療養費制度の自己負担限度額は,1年間(年額)で定められています。


4 医療保険加入者が70歳以上である場合,入院の費用に限り世帯単位での医療費の自己負担限度額が定められている。


高額療養費制度は,入院医療費も通院医療費も対象です。いずれも世帯合算できます。


5 医療保険加入者が高額長期疾病(特定疾病)の患者である場合,医療費の自己負担を免除することが定められている。


高額長期疾病(特定疾病)に該当する場合は,特定疾病療養受療証を提示することで,自己負担限度額が1万円(一般所得者の場合)になります。


免除はされません。


2023年6月21日水曜日

出産育児一時金とは

出産育児一時金は,1994年(平成6年)に,分娩費と育児手当金を統合して創設されたものです。


現時点(2023年6月)では,改正が検討されているので,今後,変更になるかもしれません。


ずっとあとにこの記事を読む方は,注意が必要です。


出産育児一時金は,旧制度名が示しているとおり,分娩費と育児費用を支給するものです。


支給される金額は定額で50万円となっています。


正常分娩にかかる費用は保険適用されないため,医療機関が分娩費を自由に設定できます。

そのため,医療機関によって大きな差が生じます。


金額が低い医療機関で出産すれば,支給額内で収まり,育児費用(ベビー服,哺乳瓶など)の費用も賄えます。

しかし,金額が高い医療機関で出産すれば,支給額では全然足りなくなります。


そこで現在検討しているのが,定額支給ではなく,定率支給です。しかし,そうなると被保険者の負担はなくなるので,分娩費用を高く設定する医療機関が出てくることも懸念されるところです。


それでは今日の問題です。


第31回・問題70 日本の公的医療保険の給付内容に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 療養の給付に係る一部負担金割合は,被保険者が75歳以上で,かつ,現役並み所得の場合には2割となる。

2 高額療養費の自己負担限度額は,患者の年齢や所得にかかわらず,一律に同額である。

3 食事療養に要した費用については,入院時食事療養費が給付される。

4 出産育児一時金は,被保険者の出産費用の7割が給付される。

5 傷病手当金は,被保険者が業務上のケガで労務不能となった場合に給付される。


かなり難易度が高い問題です。


それでは,解説です。


1 療養の給付に係る一部負担金割合は,被保険者が75歳以上で,かつ,現役並み所得の場合には2割となる。


現役並み所得者の一部負担金割合は,3割です。


これは,介護保険も同様です。


2 高額療養費の自己負担限度額は,患者の年齢や所得にかかわらず,一律に同額である。


高額療養費制度は,月内に支払った医療費の自己負担額を合算して,自己負担限度額を超えた分を給付するものです。


年齢,所得によって自己負担限度額は異なります。


3 食事療養に要した費用については,入院時食事療養費が給付される。


これが正解です。


入院時食事療養費とは,医療療養病床以外に入院した場合に,入院中の食事にかかった費用について,標準負担額(所得によって異なる)を引いた分を保険給付するものです。


医療療養病床に入院した場合には,入院時生活療養費が支給されます。


入院時食事療養費と異なるのは,標準負担額に食事代に加えて居住費が含まれるために,標準負担額が若干高くなるところです。


4 出産育児一時金は,被保険者の出産費用の7割が給付される。


出産育児一時金は,現時点(2023年6月)では定額支給です。


5 傷病手当金は,被保険者が業務上のケガで労務不能となった場合に給付される。


傷病手当金は,業務上以外のケガで労務不能となった場合に給付されます。


業務上のケガで労務不能となった場合には,労災保険の休業補償給付が給付されます。

2023年6月20日火曜日

生活困窮者自立支援法における福祉事務所未設置町村の役割

生活困窮者自立相談支援事業は,都道府県,市,福祉事務所を設置する町村の必須事業です。


就労の支援その他の自立に関する問題についての相談に応じての情報の提供,助言,関係機関との連絡調整を行います。


この費用の4分の3は,国が負担します。


福祉事務所を設置しない町村(福祉事務所未設置町村)は,生活困窮者及び生活困窮者の家族その他の関係者からの相談に応じ必要な情報の提供及び助言,都道府県との連絡調整,生活困窮者自立相談支援事業の利用の勧奨その他必要な援助を行う事業を行うことができます。


つまり任意事業として相談等を行うことができます。


しかし,費用は国の負担はないので,福祉事務所未設置町村がすべて負担することになります。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題69 低所得者の支援を行う組織や制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 福祉事務所未設置町村は,生活困窮者及びその家族等からの相談に応じ,生活困窮者自立相談支援事業の利用勧奨等を行う事業を行うことができる。

2 生活困窮者自立相談支援事業の相談支援員は,社会福祉主事でなければならないと社会福祉法に定められている。

3 民生委員は,地域の低所得者を発見し,福祉事務所につなぐために市長から委嘱され,社会奉仕の精神で住民の相談に応じる者である。

4 住宅を喪失した人への支援策として,無料低額宿泊所は全ての市町村が設置しなければならない。

5 生活困窮者一時生活支援事業は,生活保護の被保護者が利用する事業である。


正解も含めて解説します。


1 福祉事務所未設置町村は,生活困窮者及びその家族等からの相談に応じ,生活困窮者自立相談支援事業の利用勧奨等を行う事業を行うことができる。


これが正解です。


これはこの時初めて出題されたものですが,ほかの選択肢は明らかに誤りなので,結果的にこれが残ります。


2 生活困窮者自立相談支援事業の相談支援員は,社会福祉主事でなければならないと社会福祉法に定められている。


社会福祉主事でなければならないのは,福祉事務所に配置される現業員と査察指導員のみです。


3 民生委員は,地域の低所得者を発見し,福祉事務所につなぐために市長から委嘱され,社会奉仕の精神で住民の相談に応じる者である。


民生委員を委嘱するのは厚生労働大臣です。


4 住宅を喪失した人への支援策として,無料低額宿泊所は全ての市町村が設置しなければならない。


住宅を喪失した人への支援策として実施するのは,住宅確保給付金の支給ですが,実施しなければならないのは,都道府県,市,福祉事務所を設置する町村です。


5 生活困窮者一時生活支援事業は,生活保護の被保護者が利用する事業である。


生活困窮者一時生活支援事業は,生活保護受給者は対象としません。

生活保護の被保護者には生活保護制度で対応できるからです。

2023年6月19日月曜日

生活困窮者自立支援法が規定する必須事業

 生活困窮者自立支援法では,都道府県,市及び福祉事務所を設置する町村が生活困窮者に対して実施するいくつかの事業を規定としています。


生活困窮者自立支援法が規定する事業

https://fukufuku21.blogspot.com/2023/06/blog-post_18.html


生活困窮者自立相談支援事業と生活困窮者住宅確保給付金の支給は,必須事業です。



それでは,今日の問題です。


第35回・問題67 生活困窮者自立支援法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 生活困窮者自立相談支援事業は,委託することができないとされている。

2 生活困窮者自立相談支援事業と生活困窮者家計改善支援事業は,必須事業である。

3 子どもの学習・生活支援事業は,全ての都道府県,市町村に実施の責務がある。

4 生活困窮者一時生活支援事業は,生活困窮者に対し,生活に必要な資金の貸付けのあっせんを行うものである。

5 生活困窮者就労準備支援事業は,雇用による就業が著しく困難な生活困窮者に対し,就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うものである。


かなりの難問です。


しかし,正解はそれほど難しくありません。国家試験はこういうものです。


それでは,解説です。


1 生活困窮者自立相談支援事業は,委託することができないとされている。


もちろん委託できます。


2 生活困窮者自立相談支援事業と生活困窮者家計改善支援事業は,必須事業である。


生活困窮者自立相談支援事業は必須事業ですが,生活困窮者家計改善支援事業は,努力義務事業(責務)です。


3 子どもの学習・生活支援事業は,全ての都道府県,市町村に実施の責務がある。


子どもの学習・生活支援事業は,都道府県,市及び福祉事務所を設置する町村が生活困窮者に対して実施する任意事業です。


すべてではありませんし,責務でもありません。


4 生活困窮者一時生活支援事業は,生活困窮者に対し,生活に必要な資金の貸付けのあっせんを行うものである。


生活に必要な資金の貸付けのあっせんを行うのは,生活困窮者家計改善支援事業です。


ただし,貸付けのあっせんであって,貸付けを行うものではないところに注意が必要です。


5 生活困窮者就労準備支援事業は,雇用による就業が著しく困難な生活困窮者に対し,就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うものである。


これが正解です。

2023年6月18日日曜日

生活困窮者自立支援法が規定する事業

 生活困窮者自立支援法では,都道府県,市及び福祉事務所を設置する町村が生活困窮者に対して実施するいくつかの事業を規定としています。

 

実施しなければならない事業(必須事業)

生活困窮者自立相談支援事業

就労の支援その他の自立に関する問題についての相談に応じての情報の提供,助言,関係機関との連絡調整。

生活困窮者住居確保給付金の支給

離職又はこれに準ずる事由によって,居住する家の権利を失った者,家賃を支払うことが困難になった者に対して支給する。

 

実施するよう努めなければならない事業(努力義務事業)

生活困窮者就労準備支援事業

雇用による就業が著しく困難な生活困窮者に対して,厚生労働省令で定める期間にわたり(1年を超えない期間),就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行う就労の支援その他の自立に関する問題についての相談に応じての情報の提供,助言,関係機関との連絡調整。

生活困窮者家計改善支援事業

生活困窮者に対し、収入、支出その他家計の状況を適切に把握すること及び家計の改善の意欲を高めることを支援するとともに、生活に必要な資金の貸付けのあっせんを行う事業。

 

実施することができる事業(任意事業)

生活困窮者一時生活支援事業

・一定の住居がない生活困窮者に対して,厚生労働省令で定める期間(3か月を超えない期間,都道府県等が必要と認める場合は6か月を超えない期間)にわたり,宿泊場所の供与,食事の提供その他当該宿泊場所において労働省令で定める便宜を供与する。

・一定の住所を持つ生活困窮者,現在の住居を失うおそれのある社会から孤立する生活困窮者に対して,厚生労働省令で定める期間にわたり(1年を超えない期間),訪問による必要な情報の提供及び助言その他の現在の住居において日常生活を営むのに必要な厚生労働省令で定める便宜を供与する。

子どもの学習・生活支援事業

・生活困窮者である子どもに対する学習の援助。

・生活困窮者である子ども及び当該子どもの保護者に対して,子どもの生活習慣及び育成環境の改善に関する助言を行う。

・生活困窮者である子どもの進路選択その他の教育及び就労に関する問題に関して相談に応じて,必要な情報の提供及び助言,関係機関との連絡調整を行う。

その他の生活困窮者の自立の促進を図るために必要な事業

 

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題63 生活困窮者自立支援法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 住居の確保を目的とした給付金を支給する制度が設けられている。

2 一時生活支援事業とは,住居を有する生活困窮者に対して食事の提供を行う事業である。

3 自立相談支援事業は,相談支援を通して生活困窮者に就職のあっせんを行う事業である。

4 就労準備支援事業は,3年を限度として訓練を提供する事業である。

5 家計相談支援事業は,生活困窮者の家計に関する問題につき生活困窮者からの相談に応じ,必要な資金の貸付けをする事業である。

 

答えはすぐわかると思いますが,解説です。

 

1 住居の確保を目的とした給付金を支給する制度が設けられている。

 

これが正解です。

 

生活困窮者住居確保給付金の支給は,必須事業です。

 

2 一時生活支援事業とは,住居を有する生活困窮者に対して食事の提供を行う事業である。

 

一時生活支援事業では,住居を有する生活困窮者に対しては,訪問による必要な情報の提供及び助言などを行います。

 

食事の提供を行うのは,住居を有しない生活困窮者に対してです。

 

3 自立相談支援事業は,相談支援を通して生活困窮者に就職のあっせんを行う事業である。

 

自立相談支援事業は,就労に関する相談支援は行いますが,就職のあっせんは行いません。

 

4 就労準備支援事業は,3年を限度として訓練を提供する事業である。

 

就労準備支援事業は,1年を超えない期間にわたって,訓練を実施します。

 

5 家計相談支援事業は,生活困窮者の家計に関する問題につき生活困窮者からの相談に応じ,必要な資金の貸付けをする事業である。

 

家計相談支援事業では,必要な資金の貸付けのあっせんは行いますが,貸付けは行いません。

2023年6月17日土曜日

生活困窮者自立支援法の目的

近年の国家試験では,法の目的が出題されるようになってきています。

 

出題されても決して難しいものではありませんが,法制度を学ぶ際,念のために確認しておくと良いかもしれません。

 

今回のテーマは,生活困窮者自立支援法の目的です。


(目的)

第一条 この法律は、生活困窮者自立相談支援事業の実施、生活困窮者住居確保給付金の支給その他の生活困窮者に対する自立の支援に関する措置を講ずることにより、生活困窮者の自立の促進を図ることを目的とする。


 

それでは,今日の問題です。

 

35回・問題28 生活困窮者自立支援法の目的規定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 生活困窮者に対する自立の支援に関する措置を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ること。

2 すべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,最低限度の生活を営めるよう必要な保護を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ること。

3 尊厳を保持し,能力に応じ自立した日常生活を営めるよう,必要な保健医療及び福祉サービスに係る給付を行い,生活困窮者の自立の促進を図ること。

4 能力に応じた教育を受ける機会を保障する措置を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ること。

5 社会,経済,文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されるよう施策を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ること。

 

とても巧妙につくられた問題です。

 

生活困窮者の自立の促進を図ること

 

をすべての選択肢に添えることによって,受験者の思考をかく乱させています。

 

それでは,解説です。

 

1 生活困窮者に対する自立の支援に関する措置を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ること。

 

これが正解です。

 

 

2 すべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,最低限度の生活を営めるよう必要な保護を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ること。

 

すべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,最低限度の生活を営めるよう必要な保護を講ずること

 

これは,生活保護法です。

 

3 尊厳を保持し,能力に応じ自立した日常生活を営めるよう,必要な保健医療及び福祉サービスに係る給付を行い,生活困窮者の自立の促進を図ること。

 

尊厳を保持し,能力に応じ自立した日常生活を営めるよう,必要な保健医療及び福祉サービスに係る給付を行い

 

これは介護保険法です。

 

4 能力に応じた教育を受ける機会を保障する措置を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ること。

 

能力に応じた教育を受ける機会を保障する措置を講ずること

 

これは教育基本法です。

 

5 社会,経済,文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されるよう施策を講ずることにより,生活困窮者の自立の促進を図ること。

 

社会,経済,文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されるよう施策を講ずること

 

これは障害者基本法です。

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