2023年6月13日火曜日

補助機関と協力機関

 現在の生活保護法では,補助機関と協力機関について,以下のように規定されています。

 

(補助機関)

第二十一条 社会福祉法に定める社会福祉主事は、この法律の施行について、都道府県知事又は市町村長の事務の執行を補助するものとする。

 

(民生委員の協力)

第二十二条 民生委員法に定める民生委員は、この法律の施行について、市町村長、福祉事務所長又は社会福祉主事の事務の執行に協力するものとする。

 

保護の実施機関である都道府県知事,福祉事務所を設置する市町村長の事務の執行を補助するのが社会福祉主事,それに協力するのが民生委員です。

 

救護法と旧生活保護法では,方面委員(救護法),民生委員(旧生活保護法)が補助機関でした。

 

しかし,方面委員(民生委員)は,今と同じ民間人です。

 

GHQからの指摘もあり,社会福祉主事を創設し,現生活保護法では,社会福祉主事が補助機関,民生委員が協力機関となりました。

 

それでは,今日の問題です。

 

34回・問題68 生活保護の実施機関に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 都道府県知事は,生活保護法に定めるその職権を,知事の管理に属する行政庁に委任することはできないとされている。

2 社会福祉主事は,生活保護法の施行について,都道府県知事又は市町村長の事務の執行を代理する。

3 民生委員は,生活保護法の施行について,市町村の補助機関として位置づけられている。

4 保護の実施機関は,要保護者が急迫した状況にあるときでも,職権を用いて保護を開始することはできないとされている。

5 保護の実施機関は,被保護者が保護を必要としなくなったときは,速やかに,保護の停止又は廃止を決定しなければならない。

 

この科目を苦手としている人が多いのがよくわかるような問題です。

きっちり覚えないと正解できません。

 

それでは,解説です。

 

1 都道府県知事は,生活保護法に定めるその職権を,知事の管理に属する行政庁に委任することはできないとされている。

 

都道府県知事は,生活保護法に定めるその職権を,知事の管理に属する行政庁に委任することができます。

 

それが福祉事務所です。

 

保護の実施機関は,都道府県知事及び福祉事務所を設置する市町村長ですが,迅速に対応するために福祉事務所に委任して,保護を決定・実施しています。

 

旧生活保護法の保護の実施機関は,市町村長でした。現生活保護法では,福祉事務所を設置しない町村は,保護を行いません。

 

2 社会福祉主事は,生活保護法の施行について,都道府県知事又は市町村長の事務の執行を代理する。

 

社会福祉主事は,補助機関です。

 

3 民生委員は,生活保護法の施行について,市町村の補助機関として位置づけられている。

 

民生委員は,協力機関です。

 

4 保護の実施機関は,要保護者が急迫した状況にあるときでも,職権を用いて保護を開始することはできないとされている。

 

生活保護法では,申請保護の原則を規定していますが,要保護者が急迫した状況にあるときは,職権で保護することができます。

 

5 保護の実施機関は,被保護者が保護を必要としなくなったときは,速やかに,保護の停止又は廃止を決定しなければならない。

 

これが正解です。


〈今日の一言〉

 

生活保護法では「速やかに(すみやかに)」と規定されているものが複数あります。

 

たとえば

 

(届出の義務)

第六十一条 被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。

 

速やかに」が「ただちに」と出題されることがあるので,注意が必要です。

 スピード感がまったく異なります。


生活保護法では,「ただちに」と規定されているものは存在しません。

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