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2025年5月29日木曜日

男女雇用機会均等法における間接差別

 

男女雇用機会均等法では,性別を理由とする差別を禁止しています。

 

一 労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練

二 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの

三 労働者の職種及び雇用形態の変更

四 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新

 

それ以外に間接差別も禁止しています。

 

間接差別とは

性別以外の事由を要件とする措置であって,他の性の構成員と比較して,一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるものを合理的な理由がないときに講ずること。

 

〈間接差別の例〉

・労働者の募集又は採用に当たって,労働者の身長,体重又は体力を要件とするもの

・総合職の労働者の募集又は採用に当たって,転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること

・労働者の昇進に当たり,転勤の経験があることを要件とすること

 

上記の場合であっても,合理的な理由がある場合は,間接差別とはなりません。

 

それでは,今日の問題です。

 

35回・問題31

男女雇用機会均等政策に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 常時雇用する労働者数が101人以上の事業主は,女性の活躍に関する一般事業主行動計画を策定することが望ましいとされている。

2 セクシュアルハラスメントを防止するために,事業主には雇用管理上の措置義務が課されている。

3 総合職の労働者を募集・採用する場合は,理由のいかんを問わず,全国転勤を要件とすることは差支えないとされている。

4 育児休業を取得できるのは,期間の定めのない労働契約を結んだフルタイム勤務の労働者に限られている。

5 女性労働者が出産した場合,その配偶者である男性労働者は育児休業を取得することが義務づけられている。

 

今日のテーマは,選択肢3に出題されています。

 

それでは,解説です。

 

1 常時雇用する労働者数が101人以上の事業主は,女性の活躍に関する一般事業主行動計画を策定することが望ましいとされている。

 

女性の活躍に関する一般事業主行動計画は,女性活躍推進法で規定されているものです。

 

常時雇用する労働者数が101人以上の事業主には,策定が義務づけられています。

 

努力義務ではありません。

 

2 セクシュアルハラスメントを防止するために,事業主には雇用管理上の措置義務が課されている。

 

これが正解です。

 

男女雇用機会均等法に規定されています。

 

3 総合職の労働者を募集・採用する場合は,理由のいかんを問わず,全国転勤を要件とすることは差支えないとされている。

 

前説のように,・総合職の労働者の募集又は採用に当たって,転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすることは,間接差別になり,禁止されます。

 

ただし合理的な理由があれば認められます。

 

〈合理的な理由の例〉

・広域にわたり展開する支店,支社等があり,広域にわたり展開する計画がある場合。

 

4 育児休業を取得できるのは,期間の定めのない労働契約を結んだフルタイム勤務の労働者に限られている。

 

育児休業は,有期契約の労働者でも取得できます。

 

2022年に,申出時点で入社1年以上という要件も原則として廃止されています。

 

  

5 女性労働者が出産した場合,その配偶者である男性労働者は育児休業を取得することが義務づけられている。

 

このような規定はありません。

2025年4月19日土曜日

傍観者効果

 

今回は,傍観者効果を学びます。

 

〈傍観者効果〉

 緊急的な援助を必要とする場面であっても,周囲に多くの人がいることによって,援助行動が抑制されること。

 

それでは,今日の問題です。

 

35回・問題10

集団における行動に関する次の記述のうち,傍観者効果の事例として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 作業をするときに見学者がいることで,一人で行うよりも作業がはかどった。

2 革新的な提案をチームで議論したが,現状を維持して様子を見ようという結論になってしまった。

3 路上でケガをしたために援助を必要とする人の周囲に大勢の人が集まったが,誰も手助けしようとしなかった。

4 チームで倉庫の片付けに取り組んだが,一人ひとりが少しずつ手抜きをした結果,時間までに作業が完了せず,残業になってしまった。

5 リーダーがチームの目標達成を重視しすぎることで,チームの友好的な雰囲気が損なわれ,チームワークに関心がないメンバーが増えてしまった。

 

 

この問題スタイルは,タクソノミーⅡ型です。

 

傍観者効果とはどのようなものかを知っていることを前提として,各選択肢に当てはめてみて考えることで答えを出します。

 

このような問題スタイルには,丸暗記勉強は点数に結びつきにくいので,このような過去問を解きながら,例を考えられるようになりたいです。

 

正解は,選択肢3です。

3 路上でケガをしたために援助を必要とする人の周囲に大勢の人が集まったが,誰も手助けしようとしなかった。

 

それでは,今日の問題を整理します。

 

1 作業をするときに見学者がいることで,一人で行うよりも作業がはかどった。

社会的促進

2 革新的な提案をチームで議論したが,現状を維持して様子を見ようという結論になってしまった。

コーシャスシフト

3 路上でケガをしたために援助を必要とする人の周囲に大勢の人が集まったが,誰も手助けしようとしなかった。

傍観者効果

4 チームで倉庫の片付けに取り組んだが,一人ひとりが少しずつ手抜きをした結果,時間までに作業が完了せず,残業になってしまった。

社会的手抜き

5 リーダーがチームの目標達成を重視しすぎることで,チームの友好的な雰囲気が損なわれ,チームワークに関心がないメンバーが増えてしまった。

PM理論のPm

 

 

最後のPM理論を説明します。

 

この理論の提唱者は,大阪大学教授などを務められた三隅二不二先生(故人)です。

 

リーダーシップ行動の2つの側面に着目したものです。

 

P行動(目標達成に向けた行動)=P機能

M行動(集団維持に向けた行動)=M機能

 

PM理論では,それぞれの行動の強弱によって,pm型,Pm型,pM型,PM型に分類し,そのうちP行動もM行動も強いPM型のリーダーシップが最も優れているとされています。



2025年1月8日水曜日

個人情報保護法の規定

 

今回は,個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)です。

この法律に示されている各種定義を確認したいと思います。

 

個人情報

生存する個人に関する情報

個人識別符号

特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字,番号,記号その他の符号。

個人に提供される役務の利用若しくは個人に販売される商品の購入に関し割り当てられ,又は個人に発行されるカードその他の書類に記載され,若しくは電磁的方式により記録された文字,番号,記号その他の符号。

要配慮個人情報

本人の人種,信条,社会的身分,病歴,犯罪の経歴,犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別,偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するもの。

仮名加工情報

他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報。

匿名加工情報

特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報。

個人情報取扱事業者

個人情報データベース等を事業の用に供している者。

〈対象外〉

・国の機関

・地方公共団体

・独立行政法人等

・地方独立行政法人

なお,法ができた時は,個人情報取扱事業者には,規模の小さい事業者が除かれていましたが,今は規模の大小にはかかわりはなく,個人情報取扱事業者となり,この法律の対象となります。

 

個人情報取扱事業者の義務

個人情報を取り扱うに当たっては,利用目的をできる限り特定しなければならない。

利用目的を変更する場合には,変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題116

次の記述のうち,個人情報の保護に関する法律の内容として,正しいものを1つ選びなさい。

1 個人情報取扱事業者には,国・地方公共団体が含まれる。

2 個人情報の取扱いが5,000人以下の事業者は,法律の適用対象外である。

3 個人情報には,個人の身体的な特徴に関する情報が含まれる。

4 認定個人情報保護団体とは,市町村の認定を受けた民間団体である。

5 要配慮個人情報とは,本人が配慮を申し立てた個人情報のことである。

 

 

選択肢2は,中途半端な知識だと間違えます。

 

それでは,解説です。

 

1 個人情報取扱事業者には,国・地方公共団体が含まれる。

 

個人情報取扱事業者には,国・地方公共団体が含まれません

 

これは,今までに何度も出題されているのでしっかり覚えておきたいです。

 

2 個人情報の取扱いが5,000人以下の事業者は,法律の適用対象外である。

 

前説に書いたように,現在はこの規定はありません。

 

3 個人情報には,個人の身体的な特徴に関する情報が含まれる。

 

これが正解です。

 

4 認定個人情報保護団体とは,市町村の認定を受けた民間団体である。

 

認定個人情報保護団体が認定を受けるのは,内閣府にある個人情報保護委員会です。

 

なお,認定個人情報保護団体は,本人その他の関係者から対象事業者の個人情報等の取扱いに関する苦情について解決の申出があったとき,相談,助言,調査などを通して,解決を求める団体です。

 

 

5 要配慮個人情報とは,本人が配慮を申し立てた個人情報のことである。

 

要配慮個人情報とは,本人の人種,信条,社会的身分,病歴,犯罪の経歴,犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別,偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものです。


2025年1月7日火曜日

サービスマネジメント論による施設運営~無形性と同時性

 今回は,サービスマネジメント論,つまりサービスの質管理を取り上げていきたいと思います。


それでは今日の問題です。

第24回・問題11 

福祉サービスの管理運営を考える上で基礎となるサービスマネジメント論に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 サービスにとって重要な要素は,人と人とが接する部分であり,施設・設備などの物的要素はサービス水準には影響を与えない。

2 サービスが集合的に提供されていても,同じ場にいる他の利用者が,そのサービスの水準に影響を与える要素にはなりにくい。

3 サービスは,無形性や同時性といった特徴があり,有形の製品と比較して,利用者が質の評価を行うのは難しい。

4 サービスの提供者が適切なスキルを有していれば,状況が変わっても,提供されるサービスの水準が変動することはない。

5 サービスの質を評価する次元のなかに,利用者やその家族の満足を含めることは妥当ではない。

まずサービスマネジメント論という言葉で,ペースが狂わされてはいけません。

サービスマネジメント論は勉強したことがないと思うと焦ります。
しかし,内容は落ち着いて考えることで答えは見えてきます。

国試で焦ることは絶対に避けなければなりません。

この問題の答えは,

3 サービスは,無形性や同時性といった特徴があり,有形の製品と比較して,利用者が質の評価を行うのは難しい。

無形性と同時性というところに引っ掛けポイントはありません。
それもかかわらず,ここが違っているのではないのか,というと間違えます。
国試問題は多くの場合,それほど複雑には作られません。

無形性とは,サービスに形がないということです。
同時性とは,サービスは提供と消費は同時に行われるという意味です。

言われてみれば,「あぁ,そういうことか」と思うでしょう。
しかし,国試会場では教えてくれる人はいません。
すべて自分で考えないといけません。

他の選択肢も見てみましょう。

1 サービスにとって重要な要素は,人と人とが接する部分であり,施設・設備などの物的要素はサービス水準には影響を与えない。

こういったものは,ほかのものと置き換えて考えてみるとよいです。

例えばホテル。
汚いホテルよりも清潔なホテルの方が気持ちが良いです。

例えばレストラン。
汚いレストランよりも清潔なレストラン。

サービスの受け手には,「事前期待」と呼ばれるものがあります。事前期待とは,サービスに対する期待度のことです。

事前期待が高いと満足する水準は高まり,事前期待が低いと満足する水準が低くなります。


2 サービスが集合的に提供されていても,同じ場にいる他の利用者が,そのサービスの水準に影響を与える要素にはなりにくい。

国家試験の会場は,しーんと静まりかえっていたり,ほかの人が発する音が大きく聞こえたり,普段にはない環境の中で受験しなければなりません。

ほかの人の影響は大きいです。サービスも同じです。


4 サービスの提供者が適切なスキルを有していれば,状況が変わっても,提供されるサービスの水準が変動することはない。

人的サービスは,サービスの受け手による協力も大きな影響を与えます。


5 サービスの質を評価する次元のなかに,利用者やその家族の満足を含めることは妥当ではない。

サービスの質の評価には,サービスの受け手の満足は重要です。


<今日の一言>

国試会場では,調べ物ができません。
ヒントを教えてくれる人もいません。
すべて自分で考えなければなりません。

国試には,知恵が必要です。
知識は必要十分条件ではありません。

勉強する時も知恵をつけるための訓練が必要です。
知らないものは,自分で考えてみてから,調べると良いです。

大体の意味さえ合っていれば,OKです。

2025年1月6日月曜日

過去問を有効活用する方法~問題を作っているのは人です!!

試験問題を作っているのは,ロボットではなく人です。

AI(人工知能)ではありません。

慎重に読めば,答えが見えてくる問題もあります。

今までの傾向では,「福祉サービスの組織と経営」は,その傾向が強い科目です。

それでは,今日の問題です。


第27回・問題124 

福祉サービスの苦情対応,事故対応及び事故防止に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会福祉事業の経営者は,利用者からの苦情の解決を行政機関にゆだねなくてはならない。

2 運営適正化委員会は,福祉サービスに関する苦情について,事業者に改善を命じることができる。

3 介護保険制度上の居宅介護事業者は,利用者に対するサービス提供により事故が発生した場合に,市町村の指示があるまでは,必要な措置を講じてはならない。

4 介護保険施設は,事故が発生した場合又はそれに至る危険性がある事態が生じた場合に,その分析を通じた改善策を従業者に周知徹底する体制を整備しなければならない。

5 介護保険施設における事故防止のための従業者に対する研修は,必ずしも定期的に実施することは求められていない。



受験当日は,この内容に関連した勉強をしてこの問題に臨んだ人は皆無だったと思います。

受験に失敗する人には,2つのタイプがあります。

①じっくり勉強した人。
②勉強不足の人。

再受験を目指すとき,ちょっと苦労するのは「①じっくり勉強した人」です。

なぜなら,実力を発揮できなかったことには理由があるからです。
それに比べて,「②勉強不足の人」は勉強すれば,突破口が開けるでしょう。

国試は,一定程度,勉強したことがない問題が出題されます。
その比率は,毎年ほとんど一定しています。


今日の問題の答えは,選択肢4です。

4 介護保険施設は,事故が発生した場合又はそれに至る危険性がある事態が生じた場合に,その分析を通じた改善策を従業者に周知徹底する体制を整備しなければならない。


解説本は見ていませんが,こういったものに,〇〇法の〇〇条に規定されている,といった解説をつけているのではないかと思います。

解説するのには,根拠が必要ですが,そういった知識がなくても,この選択肢は当然のものだと思いませんか?


過去問を使って勉強する意味はそこにあります。

3年間の過去問では,絶対に絶対に合格できる知識は身につきません。
断言します。

合格するために,過去問を活用して勉強することの意味は,問題に慣れることだと考えています


それでは,ほかの選択肢も確認していきましょう。

1 社会福祉事業の経営者は,利用者からの苦情の解決を行政機関にゆだねなくてはならない。

そんな義務はないです。


2 運営適正化委員会は,福祉サービスに関する苦情について,事業者に改善を命じることができる。

そんな権限はないです。


3 介護保険制度上の居宅介護事業者は,利用者に対するサービス提供により事故が発生した場合に,市町村の指示があるまでは,必要な措置を講じてはならない。

そんな義務はないです。というか,指示を待っていては対応が遅くなります。
夜間はどうするのでしょう?


5 介護保険施設における事故防止のための従業者に対する研修は,必ずしも定期的に実施することは求められていない。

求められていないものを出題する意味はありません。


この中で迷うのは,運営適正化委員会の業務かもしれません。

運営適正化委員会は,2000年の社会福祉法によって規定されたもので,都道府県社会福祉協議会に設置され,苦情の解決に向けたあっせんなどを行います。

改善命令を行うような権限はありません。


<今日の一言>

国試問題を作っているのは,人です。

作問センスが大きく関連します。

センスが良い問題は難敵になりますが,実際にはそんなに簡単に良い問題は作れません。


そのために,丁寧に読めば,文章的に問題の解答につながる糸口を見つけですことができる可能性があるのです。

過去問を使って勉強する時には,こういったことに気をつけるとよいと思います。

「①じっくり勉強した人」で,受験に失敗した経験のある人は,特に意識してほしいと思います。

2025年1月5日日曜日

労働法規の徹底理解~求職者支援法

 「求職者支援法」(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律)を学びましょう。


同法は,2011(平成23)年に成立した比較的新しい法です。

法の概要
雇用保険の失業等給付の受給資格のない「特定求職者」に対して,職業訓練の実施,当該職業訓練を受けることを容易にするための給付金の支給,その他の就職に関する支援措置を講ずる。


つまり,同法は雇用保険を補完するためのものです。
そのため,雇用保険を受給できる者は,職業訓練受講給付金を受給することができません。

一応,雇用保険も整理しておきましょう。


労働者
適用事業に雇用される労働者。
離職
被保険者が事業主との雇用関係が終了すること。
失業
被保険者が離職し,労働の意思及び能力を有するにもかかわらず,職業に就くことができない状態にあること。
雇用保険の適用条件
一週間の所定労働時間が20時間以上ある者。
同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれる者。


それでは,今日の問題です。

第29回・問題144 
「求職者支援法」に基づく求職者支援制度の利用対象となり得る場合として,正しいものを2つ選びなさい。

1 個人事業を廃業した者が企業に就職したい場合

2 現在雇用保険の被保険者である者が転職したい場合

3 雇用保険に加入できずに企業で働いていたが,現在失業している者が職業訓練を受講したい場合

4 就労経験のない大学生が職業訓練を受講したい場合

5 現在失業している者が雇用保険の失業等給付を受給しながら職業訓練を受講したい場合


「求職者支援制度の利用対象となり得る場合」とは,雇用保険の失業等給付を受給できないものを指します。

正解は,

1 個人事業を廃業した者が企業に就職したい場合
3 雇用保険に加入できずに企業で働いていたが,現在失業している者が職業訓練を受講したい場合

雇用保険は,適用事業所に雇用される労働者のための社会保険なので,個人事業主は加入することはできません。
選択肢3は,「雇用保険に加入できなかった」と明記されています。


それでは,ほかの選択肢も見ていきましょう。


2 現在雇用保険の被保険者である者が転職したい場合

離職した場合は,失業等給付を受給できる可能性があります。


4 就労経験のない大学生が職業訓練を受講したい場合

大学生は,対象となりません。
ただし,大学を卒業しても就職が決まらなかった者は対象となります。


5 現在失業している者が雇用保険の失業等給付を受給しながら職業訓練を受講したい場合

雇用保険の失業等給付と求職者支援法の職業訓練受講給付金の併給はできません。
なぜなら,先に述べたように,求職者支援法は,雇用保険を補完するための法制度だからです。

2025年1月4日土曜日

日本国憲法が保障する労働三権

 日本国憲法は,


第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

② 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

③ 児童は、これを酷使してはならない。


と規定しています。


この規定に基づき,日本の労働法制が形づくられています。


その中でも,労働基準法と労働安全衛生法は,中心的な位置にある法制度です。


それでは,早速,今日の問題です。


第32回・問題143 

日本の労働法制に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 日本国憲法第28条が保障する労働三権は,団結権,団体交渉権,勤労権である。

2 労働者災害補償保険の保険料は,事業主と労働者が折半して負担する。

3 雇用保険法において失業とは,被保険者が離職し,労働の意思及び能力を有するにもかかわらず,職業に就くことができない状態にあることをいう。

4 最低賃金法に基づく地域別最低賃金は,都道府県知事が決定する。

5 労働契約法は,使用者は,労働者に1週間について40時間を超えて労働させてはならないと規定している。


それほど難しくない問題ですが,このように羅列されると混乱しそうです。


気持ちを落ち着けて問題に取り組むことが必要です。


それでは,解説です。


1 日本国憲法第28条が保障する労働三権は,団結権,団体交渉権,勤労権である。


日本国憲法が保障する労働三権は,


・団結権

・団体交渉権

・団体行動権


の3つです。


2 労働者災害補償保険の保険料は,事業主と労働者が折半して負担する。


労働者災害補償保険(労災保険)は,すべての労働者に適用される社会保険です。

被保険者という概念が存在しません。


そのために,保険料はすべて事業主負担です。


労災保険は,すべての労働者に適用されます。国籍,雇用形態,年齢,不法滞在,事業主の保険料滞納などに関係なく,労働災害,通勤災害の発生によって,適用されるのが特徴です。


3 雇用保険法において失業とは,被保険者が離職し,労働の意思及び能力を有するにもかかわらず,職業に就くことができない状態にあることをいう。


これが正解です。


労災保険と雇用保険は,日本国憲法が保障する勤労の権利を保障するための社会保険です。

いずれも戦後まもなく制度化されました。


雇用保険は,労災保険と異なり,加入要件があります。


①一週間の所定労働時間が20時間時間以上あること。

②同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれる者。


保険料は,基本的に労使折半ですが,雇用保険二事業は事業主のみ負担します。


4 最低賃金法に基づく地域別最低賃金は,都道府県知事が決定する。


地域別最低賃金は,厚生労働大臣又は都道府県労働局長が決定します。


5 労働契約法は,使用者は,労働者に1週間について40時間を超えて労働させてはならないと規定している。


使用者は,労働者に1週間について40時間を超えて労働させてはならないと規定しているのは,労働基準法です。

2025年1月3日金曜日

人事考課の留意点~評価のエラー

 人事考課とは,職員の能力評価をいいます。

目標管理と合わせて実施されます。

一般企業では,ボーナス支給の際の査定に用いられることもよくあります。

人事考課を行う役割を担う人のことは,考課者といいます。

人を適切に評価することは,かなり難しいものです。

人事考課を実施するうえで,考課者が留意しなければならないものとして,以下のようなものが挙げられます。


<人事考課の留意点>


ハロー効果
 ある部分の評価が全体に影響すること。後光効果,光背効果ともいいます。「後光がさす」という表現もありますが,人が後ろから照らされると,その人は輝いて見えます。環のようなものを背負っている仏像があります。それが後光(光背)です。後光があると,仏像がより神秘的に見えて,より輝きを増します。昔の仏師が後光の効果を知っていたというのは驚きです。


対比誤差
 考課者と反対の傾向を持つ人を評価する際,その人により高い評価をつけたり,逆により低い評価をつけることをいいます。例えば,期限厳守を信条としている人が評価すると,期限厳守の人をより高い評価をつけて,時間にルーズな人をより低い評価をつけることが対比誤差です。

寛大化
 より高い評価をつけること。考課者が人を評価することに自信がない時に,寛大化が起きやすくなります。


厳罰化
 より厳しい評価をつけること。管理者として「スタッフは●●でなければならない」という強い思いがあると,厳しい評価になりがちです。


中心化
 評価スケールが1~5まであった場合,3を中心として,2や4に評価が集まることをいいます。本来は,グーンと高い評価や低い評価になるべきものが,平均的な傾向となることです。


先入観
 考課者の色眼鏡で評価してしまうこと。この人はいつも●●だから今回も●●だろうと思ってしまうことがあります。


以上は,人事考課の際の留意点の一部です。これらに気を付けないと正しい評価にならない,いわゆる評価のエラーが発生します。

上記の中で,特にしっかり覚えておきたいのは,ハロー効果です。



それでは今日の問題です。

第27回・問題123 
人材の確保・育成に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 採用計画の立案に当たっては,社員の数という量だけでなく,資格や経験などの職業能力の質についても考慮する。

2 ハロー効果とは,評価者自身と反対の特性を持つ者を過大又は過小に評価するエラーのことである。

3 人事考課などの評価の結果については,苦情が出やすいため,フィードバックの面接は行ってはならない。

4 目標管理制度では,個人の嗜好に合わせて自由に目標を設定させなければならない。

5 計画的な人事異動であるジョブ・ローテーションは,人材育成を目的としたものではない。



正解は,1

1 採用計画の立案に当たっては,社員の数という量だけでなく,資格や経験などの職業能力の質についても考慮する。

言われてみると,その通りだと思うでしょう。
しかし,国試では5つの選択肢がそれぞれ影響しあい,正解することは思うほど簡単ではありません。


それでは,ほかの選択肢もみていきましょう。


2 ハロー効果とは,評価者自身と反対の特性を持つ者を過大又は過小に評価するエラーのことである。

ハロー効果は,一つの部分がほかの部分にも影響を与えるものです。

ある部分が好ましく思えば,ほかの部分は大したことがなくても,良い評価となります。
逆に,ある部分の評価が良ければ,ほかに優れている部分があっても,良い評価になりません。

評価者自身と反対の特性を持つ者を過大又は過小に評価するエラーのことは,対比誤差といいます。


3 人事考課などの評価の結果については,苦情が出やすいため,フィードバックの面接は行ってはならない。

人事考課の評価は,フィードバックの面接を行います。

評価の内容について,苦情が出るのであれば,その評価は適切ではないということになります。

人事考課は,能力開発の方法の一つです。

「あなたをこのように評価しました。こういったところに気を付けたらよりよいでしょう」ということを伝える必要があります。

評価するだけして,どのような評価がされたのかが分からなければ,能力開発につながりませんし,不満にもつながることでしょう。


4 目標管理制度では,個人の嗜好に合わせて自由に目標を設定させなければならない。

個人目標は,職場の目標に合わせて設定されます。


すべては,組織の使命(ミッション)から始まります。
それぞれは独立しているものではなく,上位にあるものを具現化していくのが,下位のものとなります。

たとえば,今年度の部門目標として,「接遇の強化」が掲げられていたとしたら,接遇の強化に関連した個人目標を立てなければなりません。

それが,個人目標は職場の目標に合わせて設定するという意味です。


5 計画的な人事異動であるジョブ・ローテーションは,人材育成を目的としたものではない。

ジョブ・ローテーションは,人材育成を目的としたものです。


<今日の一言>

今日の問題の難易度は,中の下くらいだと思います。

落ち着いて問題を解くことができれば,かなりの確率で正解できることでしょう。

国試問題の多くは,このくらいの難易度で作られます。
一つひとつを丁寧に分解すると,とてもシンプルな問題であることがわかることでしょう。

しかし,それぞれの選択肢は,独立しているものではなく,5つの選択肢が影響し合っています。

勉強したことがない選択肢が含まれると,そこで混乱し,落ち着いて問題を読むことができなくなります。

一問一答式の参考書があります。一つひとつを確実に覚えるには良いものだと思います。

しかし,国試は一問一答式ではありません。5つの選択肢の中から答えを選び出すことが必要です。

一問一答式で勉強していても,最終的には,国試問題に合わせて問題を解く練習が必要となります。

2025年1月2日木曜日

形式知とは?

 

福祉サービスの特徴は,サービスの提供とサービスの消費が同時に行われることです。

そのため,他からはサービスは見えにくいこともあり,標準化や評価がしにくいものです。


個々の能力によって差が生じがちです。


一般社会では,質の良いサービスは高い付加価値を持ち,高い価格で提供されます。

そして,低品質のものは,低い価格で提供されます。


ところが,法に規定された福祉サービスは,公定価格で提供されます。

どんなサービスであってもサービス価格は変わりません。


そのため,福祉サービスの提供者には,常に高い倫理性をもち,質の向上を求めた取り組みが求められます。


さて,今回のテーマは,形式知です。


福祉サービスは標準化しにくいものですが,標準化に向けた取り組みの一つが形式知です。


例えば,職人の世界では,先輩の背中を見て学ぶ,といったことが言われます。

また,仕事をしながら,仕事を教えていくOJTが実施されます。


それらを言語化したマニュアルにしたり,映像化したりすることで,いわゆる「見える化」を行うことが「形式知」です。


つまり,形式知とは,経験で培ったものを目に見えるものに変えていく取り組みを指します。

職場は,不思議なもので,低い方に標準化される傾向があります。


10人の職員がいたとき,1人が10の力をもち,他の9人が1の力しか持たない場合,19の力にならず,限りなく10に近くなります。

一人が力を持っていてもだめなのです。


その人が経験で得た見える化されていない「暗黙知」を「形式知」に変えていくことで,チーム力は高まっていきます。


さて,それでは今日の問題です。


第30回・問題125 

人材育成や研修に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 

1 経験学習モデルは,能動的実験・具体的経験と内省的観察・抽象的概念化との間の循環を否定している。

2 暗黙知と形式知の,共同化,表出化,連結化,内面化からなる循環的な変換過程は,組織の知識を創発するのに有効である。

3 OJTでは,職員の職務遂行能力は対象外である。

4 OFF- JTは,作業遂行の過程で行う訓練方法のことである。

5 エルダー制度は,新入社員のセルフラーニングを通じた自己啓発の仕組みである。



第30回は,合格基準点が99点という過去最高点になった回ですが,こんなに難しい問題が出題されています。


国試では必ずこのタイプの問題は出題されます。

しかし,落ち着いて問題を読めば,正解できます。



さて,問題に戻ると,答えは,


2 暗黙知と形式知の,共同化,表出化,連結化,内面化からなる循環的な変換過程は,組織の知識を創発するのに有効である。


何を言っているのかがわからないくらいに難しい文章です。


しかし,内容が分からなくても,この文章のように,「可能性」を示唆するものは,正解になる傾向があります。


しかし,この時点ではよくわからないので,冷静に△をつけておきます。


それでは,他の選択肢も見てみましょう。


1 経験学習モデルは,能動的実験・具体的経験と内省的観察・抽象的概念化との間の循環を否定している。


本当に否定するようなものを出題することは,出題する価値がありません。


国試は,社会福祉士の質向上を担保するための機能があります。

つまり覚えることが,価値のあることを出題します。


ここに気がつくことができれば,得点力は飛躍的に上がることでしょう。


3 OJTでは,職員の職務遂行能力は対象外である。


OJTは,職務の中で教育訓練を行う職場内教育です。

職務遂行能力を高めるために実施されます。


4 OFF- JTは,作業遂行の過程で行う訓練方法のことである。


OFF-JTは,仕事を離れて行う職場外教育です。

作業遂行の過程で行う訓練方法は,OJTです。



5 エルダー制度は,新入社員のセルフラーニングを通じた自己啓発の仕組みである。


エルダー制度のエルダーとは年長者のことです。

エルダー制度は,先輩が新人の指導担当者となり,教育していく制度です。



<今日の一言>


今日の問題で,正解する決め手は,OJTとOFF-JTを正しく覚えていることです。


エルダー制度も消去しにくいものなので,この問題の難易度を高めることとなっています。


しかし,先に書いたように「可能性」を示唆するものは正解になりやすいので,エルダー制度と形式知を比較すると,形式知の方が正解になる可能性が高いという判断ができることでしょう。

2025年1月1日水曜日

福祉人材のキャリア形成

 人口減少が続く中,福祉人材に限らず,人を採用して育成することは,組織存続のために極めて重要です。


それでは今日の問題です。


第27回・問題121 

組織におけるキャリアに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 年数が経つにつれてキャリアの高原状態に入ることをキャリアアンカーと呼ぶ。

2 仕事への不適応とは,働くために働くような過剰な仕事への関与の状態のことである。

3 キャリアプラトーとは,本当の自己を象徴する能力・動機・価値観が組み合わさったものである。

4 個人が,組織から離れた独自の価値観や信念を確立するプロセスを社会化と呼ぶ。

5 キャリアパスの成熟期に着目すると,その発達の度合いは人によって異なる。



この問題の正解は


5 キャリアパスの成熟期に着目すると,その発達の度合いは人によって異なる。


キャリアパスは,キャリアの形成過程のことです。


この言葉の意味が分からなくても,成熟というところから発達の度合いは異なるというのは想像がつけられると思います。


こういった想像ができれば,この問題のように難しい問題で正解できます。


そうでなければ,他の選択肢に引っ掛けられます。


それでは,他の選択肢も見てみましょう。


1 年数が経つにつれてキャリアの高原状態に入ることをキャリアアンカーと呼ぶ。


年数が経つにつれてキャリアの高原状態に入ることは,キャリアプラトーです。



2 仕事への不適応とは,働くために働くような過剰な仕事への関与の状態のことである。


仕事への不適応は,仕事が自分に合わないために不具合を引き起こすことです。



3 キャリアプラトーとは,本当の自己を象徴する能力・動機・価値観が組み合わさったものである。


本当の自己を象徴する能力・動機・価値観が組み合わさったものは,キャリアアンカーです。



4 個人が,組織から離れた独自の価値観や信念を確立するプロセスを社会化と呼ぶ。


社会化は,社会への適応を取り入れていくことです。



<今日の一言>


今日の問題は,難易度は高いです。


答えを見ると,「なぁーんだ」と思うかもしれませんが,キャリアアンカーやキャリアプラトーといった難しい言葉で固められているからです。


しかし,落ち着いて読めば,正解は意外に単純であることに気が付くことでしょう。


変に勘繰ると間違えます。


国試は,それほど意地悪くつくられていないことを覚えておきましょう。

2024年12月31日火曜日

減価償却~その2

 

今回も減価償却です。


減価償却とは,固定資産の取得原価をその耐用年数にわたり費用化する会計上の手続きのことです。


土地も固定資産ですが,減価償却の対象ではありません。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題124

社会福祉法人の会計財務等に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 財務会計は組織内部における管理を目的としているため,通常,組織独自の会計ルールを用いる。

2 貸借対照表の純資産とは,外部から調達した負債である。

3 減価償却とは,固定資産(土地と建設仮勘定を除く)の取得原価をその耐用年数にわたり費用化する手続であり,過去に投下した資金を回収するものである。

4 流動資産とは,通常2年以内に費用化,現金化できるものである。

5 社会福祉充実残額とは,社会福祉法人における事業継続に必要な財産額をいう。


今日のテーマの減価償却は,選択肢3に登場しています。


それでは,解説です。


1 財務会計は組織内部における管理を目的としているため,通常,組織独自の会計ルールを用いる。


社会福祉法人の会計は,社会福祉法人会計基準が用いられています。


2 貸借対照表の純資産とは,外部から調達した負債である。


純資産は,資産から負債を引いたものです。



3 減価償却とは,固定資産(土地と建設仮勘定を除く)の取得原価をその耐用年数にわたり費用化する手続であり,過去に投下した資金を回収するものである。


これが正解です。


前説で書いたように,土地は固定資産ですが,減価償却の対象ではないことに注意が必要です。



4 流動資産とは,通常2年以内に費用化,現金化できるものである。


流動資産は,通常1年以内に費用化,現金化できる資産のことです。



5 社会福祉充実残額とは,社会福祉法人における事業継続に必要な財産額をいう。


社会福祉充実残額は,財産から事業継続に必要な財産額を引いたものです。


2024年12月30日月曜日

社会福祉法人の財務会計~減価償却

 社会福祉士の国家試験で出題される財務諸表は


貸借対照表

事業収支計算書

資金収支計算書


の3種類です。


貸借対照表

会計年度の期末の資産,負債,純資産を表わします。


貸借対照表の左側は借方と呼び,資産が示されます。

右側は貸方と呼び,負債と純資産が示されます。

借方の合計と貸方の合計は,一致します。

一致しないとすればどこかの計算が間違っています。


事業収支計算書

会計年度中の純資産の増減を表わします。


資金収支計算書

会計年度中の資金の増減を表わします。


今日のテーマは,減価償却です。


減価償却は,何度も繰り返して出題されていますが,固定資産を取得した経費を使用年によって,計上するものです。

土地も固定資産ですが,使用によって価値は下がらないので,減価償却の対象外です。


それでは,今日の問題です。


第29回・問題124 社会福祉法人の経営・会計に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 法人全体の財務諸表を作成しなければならない。

2 貸借対照表の貸方(右側)には,固定資産が計上される。

3 減価償却費はコストであるため,法人外部に資金流出する。

4 アカウンタビリティとは,間接金融を指す。

5 借入金返済の財源として,外部寄附者による寄附金を用いてはならない。


この問題は,考え込むと深みに入り込んでしまうものです。


というのは,正解は,選択肢1

1 法人全体の財務諸表を作成しなければならない。


どんな財務諸表を作成しなければならないのか,という問題ではなく,財務諸表を作成しなければならない,という内容です。


深く掘り下げれば,いくらでも掘り下げることができますが,そうすると正解できる人がいなくなってしまうので,絶対に掘り下げて出題することはないでしょう。


一応,ほんの選択肢も確認してみます。


2 貸借対照表の貸方(右側)には,固定資産が計上される。


貸方に計上されるのは,負債と純資産です。


借方に計上されるのは,固定資産と流動資産を合わせた資産が計上されます。


3 減価償却費はコストであるため,法人外部に資金流出する。


10年使用できる固定資産を100万円で購入した場合,この100万円を使用期間中,計上していきます。

これが減価償却費です。会計処理上の問題なので,実際には外部に流出しません。


外部に資金が流出するのは,固定資産を取得した時のみです。


4 アカウンタビリティとは,間接金融を指す。


アカウンタビリティは,説明責任のことです。


間接金融は,金融機関から資金を調達することです。

直接金融という用語もあり,金融機関を通さず,資金を調達することをいいます。


5 借入金返済の財源として,外部寄附者による寄附金を用いてはならない。


このような制約はありません。

2024年12月29日日曜日

社会福祉法人の財務管理~貸借対照表

 

国家試験に出題される財務諸表は

①貸借対照表
②事業活動計算書
③資金収支計算書

の3種類です。

そのうち,今回は,貸借対照表を紹介します。

 

(自)日(至)

借方

貸方

資産の部

負債の部

資産

負債

 流動資産

 流動負債

 固定資産

 固定負債

 

負債の部合計

 

純資産の部

純資産

 基本金

 国庫補助金等特別積立金

 その他の積立金

純資産の合計

資産の部合計

負債の部及び純資産の部合計

 

※実際には,借方,貸方とは書かれていない。


貸借対照表は,上記のようにまとめて,ある時点(当該会計年度末)の「資産」「負債」「純資産」の状況を示す計算書類です。

この図の上部に示したように,左半分を「借方」(かりかた)と呼びます。

右半分は「貸方」(かしかた)と呼びます。

これらは簿記用語です。

「借方」という言葉のイメージから「負債」のことをいうと思いがちですが,借方は,負債ではなく,「資産」を示します。

こういったところが国試ではねらわれるポイントとなります。

簿記をわが国に紹介したのは,福沢諭吉だと言われています。

Bookkeeping
を簿記と訳し,その際にDebitを借方,Creditを貸方と訳しました。
もうちょっとわかりやすく訳してくれていたら,良かったのにと思います。

しかし,明治の人たちは,今と違って英語をそのまま使わず苦労して日本語を作っていったことはすごいと思います。

借方,貸方は今一歩ですが,Bookkeepingを簿記と訳したのは秀逸だと思いませんか。


さて,財務諸表に戻ります。

貸借対照表は,ある時点(当該会計年度末)の状態を示すものです。

事業活動計算書と資金収支計算書は,ある一定期間(当該会計年度)の状態を示すものです。

そこを核にして覚えていきましょう。

それでは今日の問題です。


27回・問題119 

社会福祉法人の会計や財務諸表に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1
 社会福祉法人は,その会計や財務諸表をインターネットや広報などにおいて公表する必要はない。

2
 貸借対照表とは,事業の収支の状態や継続性をみるために,当該会計年度における支払資金の増加及び減少の状況を表示するものである。

3
 資金収支計算書とは,資金の調達や資産への投入状況をみるために,当該会計年度末現在における資産,負債及び純資産の状態を表示するものである。

4
 財務諸表では,「土地」のように価値が上下する資産については,毎期一定の方法により償却計算を行わなくてはならない。

5
 社会福祉法人には,配当(利益処分)が認められておらず,「過去の利益の蓄積額」は,赤字経営をしない限り増加する特性がある。








今日の問題の正解は,

5 社会福祉法人には,配当(利益処分)が認められておらず,「過去の利益の蓄積額」は,赤字経営をしない限り増加する特性がある。

この出題は,その後に実施される「社会福祉法人改革」につながっていく内部留保(過去の利益の蓄積)の問題に関連するものです。

この選択肢を正解にすることの意味がそれほどあったとは思いませんが,あえて意味を見出そうとすると,今後は,社会福祉法人改革について,しっかり学んでくださいね,といった呼び水だったということくらいでしょう。


それでは,ほかの選択肢はどこが間違っているのかを確認していきましょう。


1 社会福祉法人は,その会計や財務諸表をインターネットや広報などにおいて公表する必要はない。

必要がないものをわざわざ出題する意味がありません。
もともとは,

社会福祉法人は,その会計や財務諸表をインターネットや広報などにおいて公表しなければならない。

という文章を否定形にすることで,間違い選択肢を生成するために,意味がない文章になってしまっています。

はっきりいうと,あまり高度な問題のつくり方ではないと言えます。

その分,受験生にとってはラッキーとなります。


2 貸借対照表とは,事業の収支の状態や継続性をみるために,当該会計年度における支払資金の増加及び減少の状況を表示するものである。

当該会計年度における支払資金の増加及び減少の状況を表示する計算書類は,資金収支計算書です。

当該会計年度というところから,事業活動計算書あるいは資金収支計算書であるとわかり,支払資金というところから資金収支計算書だと絞り込むことができます。


3 資金収支計算書とは,資金の調達や資産への投入状況をみるために,当該会計年度末現在における資産,負債及び純資産の状態を表示するものである。

当該会計年度末現在における資産,負債及び純資産の状態を表示する計算書類は,貸借対照表です。

資産は,表の左側である「借方」に記載し,負債及び純資産は,表の右側である「貸方」に記載します。


4 財務諸表では,「土地」のように価値が上下する資産については,毎期一定の方法により償却計算を行わなくてはならない。

減価償却において,土地は要注意です。減価償却の対象となるのは,建物や物品などの固定資産です。経年によって,価値が下がっていくからです。

価値が下がった分を費用化するのが減価償却です。土地は経年によって価値は下がらないために減価償却の対象とはなりません。


<今日の一言>

今日の問題の正解は,以下でした。

5 社会福祉法人には,配当(利益処分)が認められておらず,「過去の利益の蓄積額」は,赤字経営をしない限り増加する特性がある。

落ち着いてこの選択肢を読むことができれば,ごくごく普通のことを述べたことに気が付くことでしょう。

積立預金をしている人が,その積立を取り崩さなければ積立金は増えるということと同じです。

国試は,深読みしたら深みにはまります。

ごくごく普通すぎて,何か裏があるのでは,と勘繰ってはなりません。

国試問題をたくさん解いていくとわかっていきますが,今日の問題のように,意外にシンプルな内容の選択肢が正解になっていることがよくあります。

その逆に先読みすることもいけません。

事例問題でよくありますが,事例に書かれていないことを補足してしまうことです。

現場経験のある人は,そうなりがちなので,特に注意することが必要です。

2024年12月28日土曜日

個人情報保護法

 

個人情報保護法は知っていても実際に同法に目を通したことがある人はそれほど多くないかもしれません。

 

個人情報保護法で規定されているさまざまな定義を整理します。


個人情報

 生存する個人に関する情報であって,次の各号のいずれかに該当するものをいう。

一 当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等(文書,図画若しくは電磁的記録)に記載され,若しくは記録され,又は音声,動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ,それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)

二 個人識別符号が含まれるもの

 

個人識別符号

一 特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字,番号,記号その他の符号であって,当該特定の個人を識別することができるもの

二 個人に提供される役務の利用若しくは個人に販売される商品の購入に関し割り当てられ,又は個人に発行されるカードその他の書類に記載され,若しくは電磁的方式により記録された文字,番号,記号その他の符号であって,その利用者若しくは購入者又は発行を受ける者ごとに異なるものとなるように割り当てられ,又は記載され,若しくは記録されることにより,特定の利用者若しくは購入者又は発行を受ける者を識別することができるもの

 

要配慮個人情報

本人の人種,信条,社会的身分,病歴,犯罪の経歴,犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別,偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。

 

個人情報取扱事業者

個人情報データベース等を事業の用に供している者をいう。ただし,次に掲げる者を除く。

一 国の機関

二 地方公共団体

三 独立行政法人等

四 地方独立行政法人

   

個人情報取扱事業者は,以前は,個人データの取扱量が一定数以上に限定されていましたが,現在はその規定はありません。

 

また,国や地方公共団体等は含まれません。

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題117 個人情報の保護に関する法律に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。

1 個人情報取扱事業者には,地方公共団体が含まれる。

2 個人情報取扱事業者の義務は,規定されていない。

3 健康診断やその他の検査の結果の情報の取得に当たっては,原則として本人の同意を得ることが必要とされている。

4 個人情報の有用性に配慮しつつ,個人情報取扱事業者の権利利益を保護することを目的としている。

5 個人情報保護に関する官民を通じた基本となる事項を定めた法律である。

 

 

法を知らないと正解するのはかなり難しい問題です。

 

それでは解説です。

 

1 個人情報取扱事業者には,地方公共団体が含まれる。

 

かなりびっくりですが,個人情報取扱事業者には,国や地方公共団体等は含みません。

 

2 個人情報取扱事業者の義務は,規定されていない。

 

もちろん規定されています。

 

3 健康診断やその他の検査の結果の情報の取得に当たっては,原則として本人の同意を得ることが必要とされている。

 

これが1つめの正解です。

 

4 個人情報の有用性に配慮しつつ,個人情報取扱事業者の権利利益を保護することを目的としている。

 

目的としているのは,個人の権利利益です。

 

5 個人情報保護に関する官民を通じた基本となる事項を定めた法律である。

 

これが2つめの正解です。

 

この問題の難易度が高いのは,

受験生は個人情報保護法について詳しくないため,選択肢1で引っ掛けられてしまうからです。

 

本当にびっくりしますが,個人情報取扱事業者には,国や地方公共団体等が含まれないのです。

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