2018年3月31日土曜日

第31回国試に合格する勉強法~心理療法に関する出題は100%~その2

中央法規の受験ワークブックをはじめ,各社の受験用参考書を見ると外国人の名前がたくさん出ているので,それらを覚えなければならないと思うことでしょう。

しかし「心理学理論と心理的支援」について限って言えば,現行カリキュラムになってからは,人名の知識が必要だった問題は,

成人用知能検査であるWAISは,フランスのビネー(Binet,A)によって開発された。(第30回国試)

たったこれだけです。

人名も覚えておいた方が良いのかもしれませんが,覚えるポイントは人名ではなく,その内容であることは忘れてはなりません。

この選択肢は,ビネーではなく,ウエクスラーが正しいです。こう書くと難しそうに思えるかもしれませんが,WAISのWはウエクスラーのWを意味しているので,実はそれほど難しくはありません。

さて,出題率100%の心理療法です。

前回は,出題基準で示されているものを紹介しました。

精神分析(24)
遊戯療法(6)
行動療法(20)
家族療法(9)
ブリーフ・サイコセラピー(4)
心理劇(8)
動作療法(3)
SST(社会生活技能訓練)(10)

今回は,それ以外の出題頻度を紹介します。

来談者中心療法(9)
認知行動療法(6)
箱庭療法(9)
内観療法(2)
森田療法(6)
エンカウンターグループ(1)
芸術療法(1)
自律訓練法(2)
系統的脱感作法(5)
動機づけ面接(1)

さすがは,出題率100%の心理療法です。数多くの種類が出題されています。

それでもたったの19種類です。

出題率100%なのですから,これをしっかり覚えていかない手はありません。

出るか出ないか分からない最新の法制度を追っかけるよりも,このような確実なものをしっかり覚えていくことが合格する最も近道です。

社会福祉士の国試は,1問1点です。入学試験のように問題によって配点が違うということはありません。

多くの人が解けないような問題が解けても1点。
多くの人が解ける問題が解けても1点。

合格する人は,「多くの人が解ける問題」は確実に得点していきます。

合格しない人は,「多くの人が解ける問題」をちょっとずつ落としていきます。

合格する人でも,「多くの人が解けない問題」は解けません。

心理療法は,出題率100%です。

しかも,出題頻度では一見さんが少ないことから,

少しずつ同じで,少しずつ違う

ではなく,

ほとんどの出題は,とっかえひっかえ入れ替えて出題されていることが分かります。

さらに言えば,心理療法の具体的方法論(手順)について出題されるのは森田療法くらいなもので,それ以外はどのような療法なのか,という部分だけが問われます。

だからと言って答えを選ぶのが簡単かと言えば,そうではないのが,この試験の難しいところです。

例えば,第30回の問題です。

問題14 カウンセリングや心理療法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 認知行動療法では,クライエントの発言を修正せず全面的に受容することが,クライエントの行動変容を引き起こすと考える。
2 社会生活技能訓練(SST)では,ロールプレイなどの技法を用い,対人関係で必要なスキル習得を図る。
3 ブリーフセラピーでは,即興劇において,クライエントが役割を演じることによって,課題の解決を図る。
4 来談者中心カウンセリングでは,クライエントが事実と違うことを発言した場合,その都度修正しながら話を聞いていく。
5 動機づけ面接では,クライエントの変わりたくないという理由を深く掘り下げていくことが行動変容につながると考える。

素直に出題されていないことが分かることでしょう。

答えは2のSSTです。

この問題で間違った人は,言い回しにやられていると考えられます。

たとえば,認知行動療法の認知とは,「人の考え方の癖」を意味します。これを修正するのが認知行動療法なので,クライエントの発言は修正されていきます。

受容が重視されるのは「来談者中心療法」です。


〈今日の一言〉

心理療法は,一つひとつが単体で実施されるわけではなく,さまざまなものが組み合わせて実施されます。

例えば,
認知行動療法であっても,インテーク面接場面なら,来談者中心療法の「共感的理解」「無条件的肯定的関心」で接し,クライエントを「受容」することでラポール形成を図るでしょう。

しかし,認知行動療法の「キモ」は「受容すること」ではなく,クライエントの考え方を修正することで行動変容を目指すことです。

例えば,「私はだめな人間です」というクライエントの考え方を「私はだめな人間ではありません」と考えられるようにアプローチし,行動変容を目指していくのが,認知行動療法です。

この科目で,合格するために必要なのは,丸暗記ではありません。必要なのは,一つひとつをかみ砕いて覚えることです

。面倒だとも思うかもしれませんが,出題率100%なのですから,このくらいの手間をかけても良いと思います。誰が創始したものかは必要な知識ではありません。

こういった問題を確実に得点していきましょう。


<再受験を目指す方へ>

第30回・問題14が正解できたかどうかは,覚え方にミスマッチがなかったどうかを測るバロメータとなります。

もし間違っていた場合は,今までと同じ勉強法を続けると次回も必ず間違えます。

試験が終わると「知識が足りなかった」という感想がよく聞かれます。知識を増やしてもあいまいな知識では,国試では得点することは困難です。

中には,本当に知識が足りない人もいるでしょう。しかし2回,3回と受験している人は,絶対に知識不足ではないと思います。

必要なのは,覚え方の工夫です。

ひと手間かかるかもしれませんが,具体的にイメージしながら覚えることで,さまざまな出題に対してアジャスト(適応)できやすくなります。

得点できないのは「頭が悪いから」「だめな人間だから」ではありません。

こう思うと「自己肯定感」が下がってしまい,国試では最高のパフォーマンスを発揮するのは,難しくなります。

得点できないのは,「覚え方が適切ではないから」です。「自己満足の勉強法だから」です。

必要なのは,どれだけ勉強するかといった定量的なものではありません。
本当に必要なのは,どんな勉強をするのかといった定性的なものです。


打つべき手はあります。覚え方を丸暗記型から理解型に変えることです。

他にもあいまいな知識にしないための打つべき手もあります。

これらは,ずっと追っかけていきますので,ご期待ください。

ひと手間かけた料理は,おいしくなります。

ひと手間かけた勉強は,合格をつかみます。


2018年3月30日金曜日

第31回国試に合格する勉強法~心理療法に関する出題は100%~その1

心理学理論と心理的支援は,攻略しやすい科目です。

(再掲)<得点しやすい理由>
①出題基準に沿って出題されている。
②間違い選択肢には言い回しの不自然がある。

特に
①出題基準に沿って出題されている。
はありがたいです。

たった7問しか出題されないにもかかわらず,毎年出題される領域があります。

それは,今日のテーマ

心理療法に関する出題は100%

社会福祉士の国試の中で,出題率が100%なのは,保健医療サービスに出題される「国民医療費」,相談援助の理論と方法に出題される「様々なアプローチ」「スーパービジョン」と「心理療法」の4つしかありません。

出題基準で示されている心理療法 ※( )内は過去の出題回数

精神分析(24)
遊戯療法(6)
行動療法(20)
家族療法(9)
ブリーフ・サイコセラピー(4)
心理劇(8)
動作療法(3)
SST(社会生活技能訓練)(10)

かなり出題率が高いことが分かるでしょう。

出るか出ないか分からない白書や最新の制度改正などを追っかけるよりも,出題される確率が高いものを押さえたほうが得点力を上げる近道です。

学校の先生は,「○○(白書など)を見ておきましょう」と言います。先生はその白書から出題されれば,満足します。

しかし,そこの「○○を押さおておきましょう」といった具体的でなければ,ほとんど意味がないアドバイスである考えます。その理由は,また別の機会に説明できれば,と思います。

さて,心理療法に戻ります。

出題基準に示されておらず出題されているものもあります。

重要なので,この辺りはしっかり押さえていきたいと思います。

ご期待ください。


〈今日の一言〉

100%出題されるのは,心理療法,国民医療費,様々なアプローチ,スーパービジョンの4つのみ!!

国民医療費

http://fukufuku21.blogspot.jp/2017/07/100.html

http://fukufuku21.blogspot.jp/2017/10/20171002100.html

様々なアプローチ

http://fukufuku21.blogspot.jp/2017/10/100.html

http://fukufuku21.blogspot.jp/2018/01/100.html

スーパービジョン

http://fukufuku21.blogspot.jp/2017/10/100_26.html



2018年3月29日木曜日

第31回国試に合格する勉強法~人格検査は,質問紙法・投影法の整理から

心理学理論と心理的支援は,攻略しやすい科目です。

苦手だと思っている人が多いだけに,得点を稼ぐチャンスの科目と言えます。

(再掲)<得点しやすい理由>

①出題基準に沿って出題されている。
②間違い選択肢には言い回しの不自然がある。


特に

①出題基準に沿って出題されている。

はありがたいです。

それでは,今日のテーマの「人格検査は,質問紙法・投影法の整理から」です。

現行カリキュラムになって,出題されているのは,第22回と第27回の2回です。
たった2回と思うかもしれません。

しかし,複数回出題されているということの意味はとても重要な意味を持ちます。
1回なら一見さんで終わります。

2回目があれば,常連さんへの道が開けます。

それでは,今日の問題です。

第27回・問題12 人格検査に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 P-Fスタディは,愛着に対する特徴的な反応様式や攻撃に対する傾向を知るのに役立つ。
2 TAT(主題統覚検査,絵画統覚検査)は,提示された絵を見て作った物語の内容から,隠された欲求やコンプレックスの存在を明らかにする。
3 ロールシャッテストは,被検査者の視覚・運動ゲシュタルト機能を通して人格特徴の把握及び理解を目的とする。
4 東大式エゴグラム(TEG)は,抑圧・不安・達成の三つの自我状態で構成され,各自我状態のバランスから性格分析を行う。
5 内田クレペリン精神検査は,積木構成課題結果の心的活動の調和・均衡の様態から,種々の場面で適切な行動を示すことができるかどうかについて見立てる。

人格検査には,質問紙法,投影法,作業検査法の3種類があります。

質問紙法は,質問に対して「はい」「いいえ」「どちらでもない」で答えるものです。

投影法は,あいまいなものを見せるなどして,その反応を見ます。

作業検査法は,日本では「内田クレペリン作業検査法」が知られます。ひたすら作業するものです。内田クレペリンは,ひたすら足し算します。

勉強する時は,まずそれぞれの人格検査がどこの種類のものかをつかんでから,内容を覚えるのが確実です。

それでは,詳しくみていきましょう。


1 P-Fスタディは,愛着に対する特徴的な反応様式や攻撃に対する傾向を知るのに役立つ。

P-Fスタディは,被験者の欲求不満の状態や社会適応性などを知るのに役立ちます。

よって間違いです。

P-Fスタディと書かれると勉強不足の人は意味の想像ができないと思いますが,ピクチャー・フラストレーションの略です。

こう書くと「愛着」というのは変だろうと思うでしょう。しかし,英語を併記しないのは,答えが分からないようにする仕掛けです。こんなところに国試のいやらしさがあると思います。

P-Fスタディは投影法です。


2 TAT(主題統覚検査,絵画統覚検査)は,提示された絵を見て作った物語の内容から,隠された欲求やコンプレックスの存在を明らかにする。

これが正しいです。作った物語は,自分の隠されたものが表現されると考えます。TATは投影法です。


3 ロールシャッテストは,被検査者の視覚・運動ゲシュタルト機能を通して人格特徴の把握及び理解を目的とする。

ロールシャッハテストは,インクのしみ(インク・プロット)が何に見えるかを答えます。よって間違いです。ロールシャッハテストも投影法です。

視覚・運動ゲシュタルト機能といったよく分からないものを挟み込んでこの選択肢をけむに巻いています。こんなところに国試の難しさがあります。


4 東大式エゴグラム(TEG)は,抑圧・不安・達成の三つの自我状態で構成され,各自我状態のバランスから性格分析を行う。

新版TEG-Ⅱは,批判的な親(CP)・養育的な親(NP)・大人(A)・自由な子ども(FC)・従順な子ども(AC)の5つの自我状態で構成され,各自我状態のバランスから性格分析を行うものです。新版TEG-Ⅱは,質問紙法です。

5 内田クレペリン精神検査は,積木構成課題結果の心的活動の調和・均衡の様態から,種々の場面で適切な行動を示すことができるかどうかについて見立てる。

内田クレペリン精神検査は,ひたすら足し算する作業検査法です。よって間違いです。


〈今日の一言〉

今日の問題は,今見ると簡単そうに見えるかもしれません。しかし,実際の試験会場で見たとき,「視覚・運動ゲシュタルト機能」「積木構成課題結果」といった言葉が邪魔して,全体をとても難しくしています。

第30回国試にはほとんど見られなかった作問法です。

正解選択肢の作り方は一緒だとしても,周りに配置される間違い選択肢を複雑にすると,途端に問題の難易度が上がります。

また,勉強不足の人はほとんど答えられない作問法となります。

国試はいつも・・・

少しずつ同じで,少しずつ違う


この少しずつ違うの部分の作り方次第で,問題の難易度は大きく変わります。

少しずつ違うにアジャスト(適応)するには,さまざまな知識を総動員しなければならないからです。











2018年3月28日水曜日

国家試験で再受験を目指す方へ

第30回国試は,過去にはない99点というボーダーライン(合格基準点)になりました。

受験された方にはとても厳しい試験になったと思います。

しかし,だからと言って合格基準が100点に上がったわけではありません。

合格基準はあくまでも,90点(60%)程度です。

いわゆるボーダーラインは,試験センターが持っているデータから難易度は計算されて設定されています。

第30回国試のボーダーラインが99点になったからと言って,第31回国試が70%程度になるわけではありません。

ここで注意していただきたいのは,第30回国試を受験されて,来年再受験される方です。

少し乱暴な計算になりますが,第29回と第30回の国試では,ボーダーラインが115%アップしています。

第29回をベンチマーク(目標とする数値)にして補正すると,得点は1.15で割る必要があります。
つまり第30回の99点は,第29回と同じ難易度だった場合は,86点程度という補正方法です。

さて,第31回で合格を目指す勉強法です。

第30回の点数を1.15で割って,90点までの差が実力をつけたい点数をいうことになります。

例えば,第30回で90点だった場合,78点となるので,合格するのに必要な点数は,12点ということになります。

この計算式を参考にして,来年の国試での合格を目指していきましょう。

勉強法は,何も変わるものではありません。

大切なのは,一つひとつを確実に覚えて,今一歩ずつ先に進んでいくことです。


〈何度か受験されている方へ〉

国家試験は,年度によって難易度が違います。前年から比べて何点上がった,何点下がったということをベンチマークにすると,正しい実力を測ることができません。

前年度のボーダーラインから補正した数値をベンチマークにすると単純な点数ではない,相対的な点数が見えてくることでしょう。

模擬試験も同じです。

模擬試験は会社によってまったく難易度が違います。例えば「90点を取ろう」という90点をベンチマークにすると,難易度が高い模試の場合は,クリアできなくなってしまいます。

模試の場合は,「上位○%に入る」といった数値をベンチマークにするのが適切だと思います。

それだと難易度が上下していても自分の実力を正しく測ることができるでしょう。


さて,それでは今日の問題です。

第27回・問題11 ストレスとストレス対処法(コーピング)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ある友人との人間関係が悪化して悩んでいたが,機会をとらえ,仲直りし,悩みが解消した。これは問題焦点型コーピングである。

2 音楽の発表会であがりそうになったが,課題曲を思い浮かべ演奏のリハーサルをしていたら気分が楽になった。これは情動焦点型コーピングである。

3 試験前に緊張したが,深呼吸をして,試験が終わった後の楽しい旅行のことを思い浮かべたら,落ち着いてきた。これは問題焦点型コーピングである。

4 仕事量が多く心身の調子が悪くなったので,上司に相談し仕事量を軽減したら回復した。これは情動焦点型コーピングである。

5 仕事で小さいミスをして気分が落ち込んでいたので,ある友人とカラオケに行ったら元気が出てきた。これは問題焦点型コーピングである。


前回は防衛機制を取り上げました。

防衛機制は,無意識に行われます。それに対し,コーピングは,多くの場合は意識的に行われます。

コーピングには2種類あります。

問題焦点型コーピング → ストレスを感じているそのものを解消するもの。

情動焦点型コーピング → ストレスを感じないようにするもの。

それでは詳しく解説していきます。


1 ある友人との人間関係が悪化して悩んでいたが,機会をとらえ,仲直りし,悩みが解消した。これは問題焦点型コーピングである。

ストレスの原因は,友人との人間関係悪化です。仲直りすることで問題を解消しています。ストレスを感じているそのものを解消する問題焦点型コーピングです。よって正解です。


2 音楽の発表会であがりそうになったが,課題曲を思い浮かべ演奏のリハーサルをしていたら気分が楽になった。これは情動焦点型コーピングである。

あがるのは「うまくいかないかもしれない」と気持ちです。失敗しないようなリハーサルするのは,ストレスを感じているそのものを解消するものです。つまり問題焦点型コーピングです。よって間違いです。


3 試験前に緊張したが,深呼吸をして,試験が終わった後の楽しい旅行のことを思い浮かべたら,落ち着いてきた。これは問題焦点型コーピングである。

楽しい旅行のことを思い浮かべるのは,ストレスを感じないようにするものです。つまり情動焦点型コーピングです。よって間違いです。問題焦点型コーピングにするためには,今まで勉強してきたことを確認していくことでしょう。


4 仕事量が多く心身の調子が悪くなったので,上司に相談し仕事量を軽減したら回復した。これは情動焦点型コーピングである。

問題は仕事量が多いことです。仕事量を減らすのは,ストレスを感じているそのものを解消する問題焦点型コーピングです。よって間違いです。


5 仕事で小さいミスをして気分が落ち込んでいたので,ある友人とカラオケに行ったら元気が出てきた。これは問題焦点型コーピングである。

カラオケでストレスを発散するのは,ストレスを感じないようにする情動焦点型コーピングです。よって間違いです。

心理学理論と心理的支援は,旧カリキュラムでは「心理学」という科目でした。
その当時は,心理学の難しい問題が出題されていましたが,現在は「心理的支援」の側面が意識されているので,そんなに難しい問題は出題されません。

そのおかげで攻略できる科目になっているのです。

2018年3月27日火曜日

国試に合格する勉強法~防衛機制の押さえ方


「心理学と心理的支援」は実は得点しやすい科目です。


<得点しやすい理由>

①出題基準に沿って出題されている。
 (出題基準からはみ出た出題はほとんどない)
②間違い選択肢には言い回しに不自然さがある場合が多い。

これらは対策可能です。


さて,今日は防衛機制を取り上げます。

防衛機制は,ジークムント・フロイトの娘であるアンナ・フロイトが体系づけました。
よく親子で同じ領域を研究したと思います。
つまり無意識の領域が学問領域です。

防衛機制は,多くの場合は「無意識」によって行われるものです。

さて,それでは今日の問題です。

第27回・問題10 防衛機制に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 あるつらい体験をした。その後,その体験に関する記憶があいまいになった。これを退行という。
2 飛行機事故をいつも心配していた。しかし,事故の確率は極めて低いと考え,不安な気持ちを静めた。これを取り入れという。
3 自分の欲しかったものが手に入らず悔しかった。それで,あんなものは大した価値がないと思い気持ちを落ち着けた。これを抑圧という。
4 競争心が高まりライバルを攻撃したくなった。しかし,それは不適切だと感じ,ボクシングの練習で気持ちを解消した。これを昇華という。
5 ある友人に批判的な気持ちになった。しかし,そんな気持ちは不適切だと思い,逆に優しい言葉をかけた。これを合理化という。

防衛機制は,種類が多いですが,その分出題頻度も高いので,しっかり覚えておきたいです。

実はほかの科目でも出題されています。

それでは,詳しくみていきましょう。


1 あるつらい体験をした。その後,その体験に関する記憶があいまいになった。これを退行という。

思い出したくないことを無意識の領域に追いやることは,抑圧です。よって間違いです。
退行は,生活年齢よりも前の段階の行動をとることです。いわゆる「赤ちゃん返り」です。


2 飛行機事故をいつも心配していた。しかし,事故の確率は極めて低いと考え,不安な気持ちを静めた。これを取り入れという。

取り入れは,他人の良い部分を取り入れることです。よって間違いです。


3 自分の欲しかったものが手に入らず悔しかった。それで,あんなものは大した価値がないと思い気持ちを落ち着けた。これを抑圧という。

これ抑圧ではなく,合理化です。よって間違いです。防衛機制のうちで最も出題回数の多いものは合理化です。


4 競争心が高まりライバルを攻撃したくなった。しかし,それは不適切だと感じ,ボクシングの練習で気持ちを解消した。これを昇華という。

これが正解です。社会が受け入れがたいものを受け入れやすいものにすることです。人を殴れば暴行ですが,ボクシングで殴って勝てば,英雄です。


5 ある友人に批判的な気持ちになった。しかし,そんな気持ちは不適切だと思い,逆に優しい言葉をかけた。これを合理化という。

自分の本来の気持ちと逆の行動をとることは「反動形成」です。よって間違いです。



〈防衛機制のまとめ〉


防衛機制の出題実績
第3・5・11・15・21・26・27回

しかもほとんどが1問まるごとの出題です。

防衛機制に関する出題
 
 ↓    ↓

第26回・問題13


防衛機制では,「取り入れ」のような見たことがないような内容も出題されますが,それらが正解になったことはありません。

「少しずつ同じで,少しずつ違う」の「少しずつ違う」の部分に正解が来ないのは,取り組みやすいです。

正解になるのは,合理化,抑圧,昇華などよく知られたものです。しっかり押さえましょう。

2018年3月26日月曜日

国試に合格する勉強法~パーソナリティの中心は,ビッグ・ファイブ!!

「心理学理論と心理的支援」は,外国人の名前を覚えなければならないので難しい,というイメージがあるかもしれません。

前回は以下のように述べました。

心理学理論について言えば人名を覚えておかなければならない問題はほとんどありません。
そこに力点を入れた勉強法は間違いです。もしそうしていたら,今すぐやめましょう。
必要なのは,人名ではなく,その内容です。

今回取り上げるのは,「パーソナリティ(人格)」です。

参考書を見るとたくさんの名前が出てくるので,いやだなぁ,と思うかもしれません。

しかし,ここでも人名が答えの決め手になる問題はありません。

パーソナリティが出題されたのは以下の回です。

第23回(シュプランガーの類型論)
第27回(特性論)
第28回(タイプA行動パターン)

パーソナリティの整理ポイントは・・・

類型論と特性論に分類されます。

類型論は,パーソナリティをタイプ分けするものです。
例えば,体型から人格を分類したクレッチマーなどがあります。分かりやすいのが特徴です。

特性論は,人のパーソナリティは,いくつかの特性が組み合わさって作り上げられるものであるとされるものです。こちらの方が緻密な感じがします。

現在の特性論は,「外向性」「神経症傾向」「誠実性」「調和性」「経験への開放性」の5つ特性で構成される「ビッグファイブ」が中心理論です。

類型論と特性論の違いはしっかり押さえておきましょう。そして特性論の中でもビッグファイブを理解しておきましょう。

それでは,今日の問題です。

第27回・問題9 パーソナリティに関する次の記述のうち,特性論の説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 エス・自我・超自我の区別と相互作用説は,特性論の一つの証拠となっている。
2 体格や価値に基づく生活様式などの違いでカテゴリー化し,特性をとらえる。
3 外向性・神経症傾向・誠実性・調和性・経験への開放性から成るビッグファイブ(5因子説)は,特性論の一例である。
4 典型例が明示され,パーソナリティを直感的・全体的に把握するのに役立つ。
5 パーソナリティ全体をいくつかの層の積み重なった構造としてとらえる。

第27回は特性論が出題されています。

類型論は「あなたはこのタイプです」といったようにタイプ分けするので分かりやすいですが,先述のようにやっぱり特性論が緻密なように思います。

さて,それでは詳しく見ていきましょう。

1 エス・自我・超自我の区別と相互作用説は,特性論の一つの証拠となっている。

エス(イド)・自我(エゴ)・超自我(スーパーエゴ)を使って説明されるのは,フロイトの精神分析です。
エス(イド)は,~したいという本能的な欲求です。生まれたばかりの子どもはエスの世界で生きています。
自我(エゴ)は知性で,事実を事実としてとらえます。
超自我(スーパーエゴ)は,~すべき(してはならない)という道徳心です。
このようにパーソナリティには関連していません。よって間違いです。


2 体格や価値に基づく生活様式などの違いでカテゴリー化し,特性をとらえる。

カテゴリー化するのは,類型論です。よって間違いです。
体格によって類型化したのはクレッチマーです。
価値に基づく生活様式などの違いで類型化したのは,シュプランガーです。


3 外向性・神経症傾向・誠実性・調和性・経験への開放性から成るビッグファイブ(5因子説)は,特性論の一例である。

これが正解です。多くの研究者がどのような特性でパーソナリティが構成されているかを研究した結果,「外向性」「神経症傾向」「誠実性」「調和性」「経験への開放性」(知的好奇心)の5つが特性因子である,とされています。

これが,現在のパーソナリティ研究の中心です。


4 典型例が明示され,パーソナリティを直感的・全体的に把握するのに役立つ。

典型例が明示されるのは,類型論です。よって間違いです。


5 パーソナリティ全体をいくつかの層の積み重なった構造としてとらえる。

特性論は,いくつかの特性が組み合わさった構造ととらえます。よって間違いです。

いくつかの特性が組み合わさった構造とは,例えば「外向性がかなり強く」「神経症傾向がやや強く」「誠実性がかなり強く」「調和性がかなり弱く」「経験への開放性がやや弱く」といったような構造を指しています。

これが理解できれば,「いくつかの層の積み重なった構造」というのはでたらめな文章であることが分かるでしょう。


〈解き方の整理〉

ビッグファイブは,この時が初めての出題です。
そのため,参考書によって掲載されていたり,されていなかったりしています。

ビッグファイブが分からなかったとしても,類型論,特性論を理解しておくことで,他の選択肢が消去できます。

逆に言えば,あいまいだと消去法が使えないので,正解にたどり着くのは限りなく困難です。

今,解説を読むとそんなに難しく感じないかもしれません。しかし,ビッグファイブという初物が入っている問題はとても難しいです。

ここが国試の難しいところです。


〈今日の一言〉

心理学理論は難しそうだというイメージが強いと思います。

しかし,今日の問題の「類型論」「特性論」を理解できれば答えられたように,難しめの中でも攻略ポイントがあります。

多くの人が苦手としているからこそ,得点しておきたい科目だとも言えるでしょう。

2018年3月25日日曜日

国試に合格する勉強法~心理学と心理的支援の攻略ポイント

今回から科目は「心理学理論と心理的支援」に移ります。

「心理学理論と心理的支援」と「社会理論と社会システム」を苦手としている人が多いようです。人名がたくさん登場することもその理由の一つでしょう。

しかしそのうち心理学理論について言えば人名を覚えておかなければならない問題はほとんどありません。

そこに力点を入れた勉強法は間違いです。もしそうしていたら,今すぐやめましょう。
必要なのは,人名ではなく,その内容です。

今日の問題は,感覚・知覚に関するものです。

過去を振り返ると

第22回
第24回
第27回
第29回

に出題されています。出題頻度は多い方でしょう。
しかも内容は繰り返し率が高いです。

これを読むと・・・

しっかり押さえれば得点できる確率が高い領域です。

と言うと思うでしょう。
実際にこういうことを書いてある解説が多いと思います。

しかし私たちチームfukufuku21は,国試はそう単純ではないことを良く知っています。

国試は単純ではない!!

国試は単純ではない!!

国試は単純ではない!!

それを今日の問題を使って分析します。

そのうえで,どうしたら,得点力が上がるのかを一緒に考えていきましょう。

それでは今日の問題です。

第27回・問題8 感覚・知覚に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 目や耳などの感覚器には,光や音以外にも「眼球をおすと光が見える」などの感覚を生じさせる刺激があり,こうした刺激を適刺激という。
2 網膜像から対象物の形を知覚するには,認識対象の形を背景から浮き立たせる「図と地の分離」が必要である。
3 錯視は感覚器の生理学的な構造の影響で生じており,脳の中枢での推論過程などの影響や,刺激の物理的要素による影響はない。
4 網膜に映る大きさが同じであれば同じ大きさに見えることを,大きさの恒常性という。
5 パターン認知における特徴分析とは,認知対象を部分に分けることなく全体としての特徴をとらえて認識する過程のことである。


社会福祉士の国試の基本は・・・

少しずつ同じ(重なって)で,少しずつ違う

このことは常に頭に入れておいてください。

これを意識していると,少しひねられた問題でも混乱することなく,国試会場の独特の雰囲気の中でも,普段通りの得点できる可能性が高くなります。

今日の問題も,少しずつ同じ(重なって)で,少しずつ違っています。

1.適刺激
2.図と地の分離
3.錯視
4.大きさの恒常性
5.パターン認知による特徴分析

の組み合わせです。

この時点で初めて出題されたものは,

2.図と地の心理
5.パターン認知による特徴分析

の2つです。

「3.錯視」は,出題回数は多いですが,第27回の国試の内容が出題されたのはこれが初めてです。

つまり,この時に受験した人が勉強していたのは,「1.適刺激」,「4.大きさの恒常性」のたった2つしかありません。

この2つを武器にこの問題を解くことになります。

足りないものは,想像力を最大限に働かせて解くことが必要

ここが,点数が取れるか,取れないかの分かれ道です。

これを意識した勉強を行うことが得点力につながります。

どれだけ勉強しても知らないものが出題されます。
基本的な知識プラス推理力が合格に必要なのです。

再受験を目指す方は特に意識してみてください。

私たちが国試は単純ではない,と思う理由はここにあります。
まさしく「あと数点の壁」です。

それでは詳しく見ていきましょう。


1 目や耳などの感覚器には,光や音以外にも「眼球をおすと光が見える」などの感覚を生じさせる刺激があり,こうした刺激を適刺激という。

「眼球をおすと光が見える」(眼球圧迫)というのは,どのような機序で起きるのかは分かりません。
しかし,適刺激は,目は光,耳は音,を感じることを言うので,この選択肢は間違いです。

これとそっくりな問題は実は過去に出題されています。

第22回・問題8・選択肢1 口を閉じた状態で,眼球を軽く圧迫すると明るさの変化を感じるのは,眼球圧迫が視覚に対する適刺激だからである。

視覚にとっての適刺激は光です。この時も適刺激は間違い選択肢として出題されています。


2 網膜像から対象物の形を知覚するには,認識対象の形を背景から浮き立たせる「図と地の分離」が必要である。

これは分かりません。こんな時は冷静に▲をつけましょう。

あとから解説します。


3 錯視は感覚器の生理学的な構造の影響で生じており,脳の中枢での推論過程などの影響や,刺激の物理的要素による影響はない。

錯視は,地平線に近い月は,空中に近い月よりも大きく見えるといった,同じものでも違って見えるものです。

刺激の物理的要素によるものが錯視に大きく関連します。

よって間違いです。しかしかなり難しい問題です。


「○○は○○だが,○○は○○ではない」といった出題は,ほとんどが間違い選択肢となります。

内容が分からない時には,なるべく正解にしないように気を付けてください。

この後の第29回では,以下のように出題されています。

中空にある月より地平線に近い月の方が大きく見える。これは錯視による。

これは正解です。

第27回の国試問題をしっかり理解しているとこれが正解にできます。

しかし,物理的要素とはどういうものか,を理解しないと解けないでしょう。

「脳の中枢での推論過程などの影響」による錯視には,例えば,隠れているものは見えている部分を推論するといったものがあります。これを使えば,体をスリムに見せることもできます。女性ならコーデで活用しているのではないでしょうか。


4 網膜に映る大きさが同じであれば同じ大きさに見えることを,大きさの恒常性という。

大きさの恒常性は,網膜に映る大きさが違っても,同じものだと知覚することです。よつて間違いです。

ある車が自分に近づいてくるときのことを考えてみます。
遠い時は,網膜には小さく映っています。それが自分に近づくと大きく映ります。
網膜に映る大きさが違っても,同じ車だと知覚します。これが大きさの恒常性です。

知覚の恒常性には,大きさの恒常性のほかに「形の恒常性」も出題されています。

形の恒常性は,網膜に映る形が違っても,同じものだと知覚することです。


5 パターン認知における特徴分析とは,認知対象を部分に分けることなく全体としての特徴をとらえて認識する過程のことである。

パターン認知における特徴分析は,まったくわかりません。こういったものを見ると混乱します。そして早まってこれを選んでしまうこともあるかもしれません。そうなると試験委員の思うツボです。

こういう選択肢を入れることで,問題の正解率を下げているのです。

焦らず,▲を付けましょう。


さて,残ったのは,

2 網膜像から対象物の形を知覚するには,認識対象の形を背景から浮き立たせる「図と地の分離」が必要である。
5 パターン認知における特徴分析とは,認知対象を部分に分けることなく全体としての特徴をとらえて認識する過程のことである。

の2つです。しかし知識がないので,答えを判別することはできません。

こんな時は

日本語的に読む

というテクニックを使います。

着目すべきなのは,

5 パターン認知における特徴分析とは,認知対象を部分に分けることなく全体としての特徴をとらえて認識する過程のことである。

のうちの,

認知対象を部分に分けることなく全体としての特徴をとらえて

という部分です。

この文章が正しいものだとすれば,

認知対象の全体の特徴をとらえて

という文章で済むはずです。

そうしないで,わざわざ

認知対象を部分に分けることなく

という表現をつけているのは,本来は

認知対象を部分に分けて

というのが正しいと考えられます。

これは

人は嘘をつくとき,饒舌になる

という解答テクニックです。

そこで,これを間違いにして,2を正解にします。

答えは2です。

「図と地の分離」のうちの「図」とは,ある形を見たとき,形だと認識されるもの,「地」はその背景だと知覚されることを言い,「図と地の分離」は,それを統合した知覚です。

「図と地の分離」を表す「ルビンの杯」は,「図」と「地」を逆転して知覚すると別なものに見えるものです。
一枚の絵なのに,老女に見えたり若い娘に見えたりする絵も有名ですね。

感覚,知覚がこの国試でよく出題される理由は,人によって,ものの見方・考え方は違う,ということを心理学的に分かってほしいという意味だと捉えています。

同じものを見ても,人によって見え方が違うということが,今日の問題を通して強く感じられたことでしょう。


〈今日の確認ポイント〉

選択肢5をもう少し整理してみます。

正しい文章は以下のようになります。

パターン認知における特徴分析とは,認知対象を部分に分けたそれぞれの特徴をとらえて認識する過程のことである。

これを間違った選択肢にすると

パターン認知における特徴分析とは,認知対象を部分に分けることなく全体としての特徴をとらえて認識する過程のことである。

という文章が出来上がります。

この文章は,正しい文章に比べて,何となく違和感があるのが分かるのではないでしょうか。

その理由は,先述のように,これが正解なら「認知対象を部分に分けることなく」の部分が余分だからです。

「心理学理論と心理的支援」や「社会理論と社会システム」などは理論を学ぶ科目です。
そのため現場ではなじみがないので感じるかもしれません。しかし,今日の問題のように間違い選択肢を作るときにほころびが出やすいものです。

多くの方は,理論系よりも法制度の方が覚えやすいと感じているでしょう。

しかし,実際に国試で出題されたときに間違いやすいのは,圧倒的に法制度です。

なぜなら,市町村を都道府県に変えるなどすれば,簡単に間違い選択肢を作れます。

そのため間違い選択肢のほころびが出ないので,日本語的に読むことができません。

難しそうに見えて,実は解きやすい。
簡単そうに見えて,実は解きにくい。

こんなところが,国試の難しさです。

ソーシャルワークには答えはありません。自分で考えていかなくてはなりません。

国試は,社会福祉士に期待されるされる力を求めて出題されます。

参考書に書かれているものだけを出題するのであれば,知っているものから答えを選べば正解できます。

しかし,そうはなっていません。

新しいもの,出題されたことがあるものでも切り口を変えて出題するのは,社会福祉士に求める力を養うためだと考えられます。

そのため,国試は単純なものではない,のです。

足りないものは,想像力を最大限に働かせて解くことが必要

これから第31回国試まで,これに対応する方法を提案していきますので,一緒に考えていきましょう。

2018年3月24日土曜日

第31回国試に合格する勉強法~リハビリテーションの押さえ方

第30回国試では,パラリンピックはどのようにして始まったのか,といった出題がありました。初めての出題だっただけにけっこう難しかったのではないかと思います。

試験後に開催された平昌パラリンピックの開会式の放送ではパラリンピックの歴史が語られていました。

第30回国試を受験された方はその放送を見た時,その情報は耳に入り,しっかり記憶に残ったことでしょう。

情報を得るチャンスはどれでも平等にあります。

しかし多くの場合は,その情報は目の前を通り過ぎていき,キャッチされることがありません。

パラリンピックの話は,興味があることの大切さを学んだように思いました。

さて,今日のテーマは,リハビリテーションです。

リハビリテーションの歴史をひもとくと,第一次世界大戦後の軍人の社会復帰の目的を契機として始まっています。

これで,第一次世界大戦ではリハビリテーション,第二次世界大戦ではパラリンピック,といったように一つの線で結ばれます。

さて,それでは今日の問題です。

第27回・問題7 リハビリテーション全般に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 健全な身体部位は,リハビリテーションの対象ではない。
2 医学的リハビリテーションには,作業療法士は関与しない。
3 包括的リハビリテーションには,薬物療法が含まれる。
4 精神科デイケアには,理学療法士の配置が必要である。
5 内部障害は,リハビリテーションの対象ではない。


一般的なイメージと実際にずれがあるところは要注意です。

これから勉強していくうえで「あれっ?」と疑問に思ったことはぜひメモしておきましょう。

それらが国試でねらわれやすいポイントとなります。

勉強した人と勉強不足の人では,そのようなポイントが得点差になりやすいからです。

さて,リハビリテーションは,一般的に身体機能の回復,というイメージが強いと思います。

リハビリテーションには,「医学」「職業」「教育」「社会」という4つの側面があります。身体機能に限られているわけではありません。各リハビリテーションについては,各自で押さえておいてください。

近年では,さらに「包括的リハビリテーション」という概念が生まれています。包括的という意味は,さまざまな職種によってさまざまな視点からリハビリテーションを行う,といったものです。

つまりリハビリテーション専門職が行うものだけではないということです。

それらを頭に入れて,解説していきましょう。


1 健全な身体部位は,リハビリテーションの対象ではない。

リハビリテーションは,機能低下させないという面もあります。現時点では健全な部位にもかかわっていきます。よって間違いです。


2 医学的リハビリテーションには,作業療法士は関与しない。

医学的リハビリテーションは,治療の一環として実施されるものです。作業療法士は,作業療法を用いてかかわっていきます。よって間違いです。


3 包括的リハビリテーションには,薬物療法が含まれる。

包括的リハビリテーションは,かなり広範囲にわたる概念です。薬物療法は,医学的リハビリテーションでも実施されますし,自閉症などの発達障害などにも用いられることがあります。よって正解です。


4 精神科デイケアには,理学療法士の配置が必要である。

理学療法士と作業療法士の違いは,理学療法士は身体に障害のある者を対象,作業療法士は身体及び精神に障害のある者を対象とします。精神障害領域にかかわるのは,作業療法士であって,理学療法士ではありません。よって間違いです。


5 内部障害は,リハビリテーションの対象ではない。

また,今回も内部障害が出題されています。
内部障害は,心臓機能,腎臓機能,HIVによる免疫機能,そして肝臓機能などの障害です。
医学的リハビリテーション,職業的リハビリテーションが行われます。よって間違いです。


〈今日の一言〉

内容がわからなくても,今日の問題は
あいまい表現に正解多し。
言い切り表現に正解少なし。

の典型例となっているので,そこに気が付くと瞬時に答えを出すことができることでしょう。

2018年3月23日金曜日

国試に合格する勉強法~精神疾患の押さえ方

社会福祉士の国家試験は,共通科目と専門科目に分類されます。

共通科目は精神保健福祉士も受験する科目です。

専門科目は,社会福祉士のみが受験する科目です。

社会福祉士と精神保健福祉士の2つの資格を一緒に受験する場合のスケジュール

土曜日の午後 精神保健福祉士の専門科目
日曜日の午前 共通科目
日曜日の午後 社会福祉士の専門科目

このようになっています。

人体の構造と機能及び疾病は精神保健福祉士も受験するため,精神疾患に関する出題の出題頻度はかなり高くなっています。発達障害を含めると毎年必ず出題されています。絶対に押さえておかなければなりません。

第22回 DSM-Ⅳ(現在の精神疾患の診断・統計マニュアル第5版=DSM-5の一つ前のバージョン)
第23回 発達障害
第24回 精神障害 単極性うつ病の2問
第25回 大うつ病エピソード(大うつ病=うつ病の中でも典型的な症状のあるうつ病の診断名)
第26回 発達障害
第27回 統合失調症
第28回 躁病エピソード  ※エピソードは症状のこと。
第29回 DSM-5
第30回 統合失調症

統合失調症,うつ病,躁病,発達障害,DSMが2回ずつ出題されています。

それでは,今日の問題です。

第27回・問題6 精神疾患の診断・統計マニュアルDSM-IVに基づく統合失調症の診断に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 妄想や幻覚は,陰性症状である。
2 まとまりのない会話あるいは発語は,症状の一つである。
3 症状は,発症から2週間で消失する。
4 仕事,対人関係,自己管理などの面での機能が低下することはない。
5 原因として,乱用薬物の摂取がある。

バージョンは,DSM-5に変わっていますが,統合失調症の診断は変わっていません。

診断基準は,(1)妄想,(2)幻覚,(3)まとまりのない発語,(4)ひどくまとまりのない,または緊張病性の行動,(5)陰性症状(感情の平板化,意欲欠如など)です。

それでは詳しく見ていきましょう。

1 妄想や幻覚は,陰性症状である。

統合失調症には,妄想,幻視などの陽性症状,意欲低下などの陰性症状があります。妄想・幻覚は陽性症状です。よって間違いです。

2 まとまりのない会話あるいは発語は,症状の一つである。

これが正解です。

第30回に出題されましたね。

第30回・問題6 精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)において,「統合失調症」と診断するための5つの症状に含まれているものはどれか。正しいものを1つ選びなさい。
1 まとまりのない発語
2 観念奔逸
3 強迫行為
4 抑うつ気分
5 不眠または過眠

1が正解です。

3 症状は,発症から2週間で消失する。

6か月間症状が持続することで診断されます。よって間違いです。

4 仕事,対人関係,自己管理などの面での機能が低下することはない。

意欲低下は,陰性症状です。よって間違いです。

5 原因として,乱用薬物の摂取がある。

統合失調症は,環境因子などさまざま要因が引き金となって発症する脆弱性モデルが提唱されています。薬物の乱用は,統合失調症の原因ではありません。

よって間違いです。

第27回で出題された統合失調症は第30回でも出題されています。

今まで2年連続で出題されていないことから,統合失調症だけではなく,うつ病,躁病,発達障害,DSMはしっかり押さえておくことが,重要です。

100%出題されているので,覚えないのはもったいないです。

2018年3月22日木曜日

国試に合格できる勉強法~「医学概論」は実は難しい!!

今日のテーマは,

「医学概論」は実は難しい!!

です。

先述のように,この科目は試験では最初の科目です。

そのため,一般的な参考書では,この科目が一番初めにあると思います。

過去問は,最初は解けなくても何度か解いているうちに,難しさを感じなくなります。

そこがこの国試のとても怖いところです。

この科目は,


常に新しい問題が出題されている

後から勉強する人は,参考書にも書かれているし,過去問題集にも詳しく解説されているので,初めて出題されたものであっても,勉強することができます。

しかし,国試を受験すると,「あれっ? 見たことがない」と焦ることになります。

理由は,しつこいですが,常に新しい問題が出題されているからです。

ここで,「あれだけ勉強したのにわからない」と思う受験生は多いと思います。そう思うと,気持ちで負けます。

見たことがない問題にぶつかったら「いつもと同じパターンだ!」と思うようにしましょう。これで周りの受験生と大きな差がつきます。

この科目は,出題範囲が広いため覚えることが多いですが,参考書に書かれていることをしっかり覚えたとしても,それ以外のものが出題されることがやっかいです。

深入りしすぎないことがこの科目攻略には重要です。

さて,今日の問題です。

第27回・問題5 障害の概要に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 外傷性脳損傷は,高次脳機能障害の原因の一つである。
2 失行は,リハビリテーションの対象にならない。
3 周産期障害では,知的障害を起こすことはない。
4 咀嚼(そしゃく)や嚥下機能の障害は,身体障害者福祉法による内部障害に含まれる。
5 平衡機能障害における起立や歩行の障害は,下肢の筋力低下が原因である。

前回の問題のように,1テーマで1問になっているものも解くのは大変ですが,知っていれば何とかなります。

それに比べると,1問にさまざまなテーマが入っている問題は,押さえなければならないポイントが多いだけに,間違える率が高くなります。

知らない選択肢が挟みこまれることがあるので,難易度はおのずと高くなります。

慎重に解いていきましょう。

それでは詳しく見ていきましょう。

1 外傷性脳損傷は,高次脳機能障害の原因の一つである。

高次脳機能障害は頭部外傷などによって,記憶障害等が発生するものです。よって正解です。
高次脳機能障害を知っている人は,とても簡単だと思うと思うかもしれません。

しかし,知らない人はとても難しい問題となります。

因みに過去に高次脳機能障害について出題された問題は以下です。

第18回・問題77 次の組み合わせのうち,正しいものに〇,誤っているものに×をつけなさい。
A 在宅酸素療法---------肺気腫
B 外傷性脳損傷---------高次脳機能障害
C トリアージュ---------災害時の医療の優先度
D EBM---------------個人的根拠に基づく医療

今は出題されない「○×式の組み合わせ問題」です。面倒なので組み合わせは紹介しませんが,答えはABCが○,Dが×。

EBMは,根拠に基づく医療です。この場合の根拠とは個人的根拠ではなく,データに裏付けされたといった意味合いです。

2 失行は,リハビリテーションの対象にならない。

失行とは,認知症などにより,頭では分かっていてもうまく行動できなくなることです。認知症の場合,失行は記憶障害など同じ中核症状です。

薬剤では改善せず,リハビリテーションなどで症状の進行予防を図ります。よって間違いです。

3 周産期障害では,知的障害を起こすことはない。

周産期とは,胎児期と新生児期に発生する障害です。そのうち,分娩時の低酸素症は,脳性麻痺を起こすことがあります。よって間違いです。

かつて脳性麻痺は,分娩時の低酸素症が原因だと思われていたこともありますが,今では,分娩時の低酸素症は脳性麻痺の原因の一つであることが分かってきています。

4 咀嚼(そしゃく)や嚥下機能の障害は,身体障害者福祉法による内部障害に含まれる。

要注意なのは,障害の種類のうちで最も多い肢体不自由ではなく,近年増加している内部障害です。

内部障害は,心臓機能,腎臓機能,HIVによる免疫機能,そして肝臓機能などの障害です。

咀嚼(そしゃく)や嚥下機能の障害は,何の障害かは分からなくて少なくとも内部障害ではないという見当をつけることが大切です。

咀嚼(そしゃく)や嚥下機能の障害は,「音声・言語・そしゃく機能の障害」です。よって間違いです。

5 平衡機能障害における起立や歩行の障害は,下肢の筋力低下が原因である。

平衡機能障害は,身体機能には異常が認められないものの起立や歩行に障害が起きるものです。

下肢の筋力低下が原因ではありません。よって間違いです。

この科目が福祉職である社会福祉士の試験科目に含まれているのは,疾患,障害の知識は,相談援助に必要だからです。


<今日のポイント>

高次脳機能障害が分かる人は正解できます。
しかし分からない人は,これを選べません。
そんな時でも正解に導く方法はあります。

1 外傷性脳損傷は,高次脳機能障害の原因の一つである。
2 失行は,リハビリテーションの対象にならない。
3 周産期障害では,知的障害を起こすことはない。
4 咀嚼(そしゃく)や嚥下機能の障害は,身体障害者福祉法による内部障害に含まれる。
5 平衡機能障害における起立や歩行の障害は,下肢の筋力低下が原因である。

1は▲をつける。
2と3は,言い切り表現なので×になりそう。
4は,内部障害を知っていること。
5は,筋力低下で障害認定はされないだろう。別な要因があるのではないか。という疑問。

その結果として,▲だった選択肢1を○に格上げする。

このように限られた時間の中でも推理していくことが得点力を上げます。

「分からない,困った,どうしよう」では,得点には結びつきません。

「私はできる」

という自信が正解に導きます。「あれだけやったのに,分からない」と思うと試験に負けます。

推理力は自信を持って試験に臨むことで最大限に発揮されます。

2018年3月21日水曜日

国試に合格する勉強法~どんなに勉強しても知らないものは出題される!!

社会福祉士の国家試験が難しいのは,どんなに勉強しても,教科書に書かれていないものが出題されることです。

国試で得点するには?

①基礎的知識をつける。
②確実な知識にする。
③知らないものでも対処できる。

の3点があります。

しかし,多くの人は①基礎的知識をつけるが中心となり,②確実な知識にする。③知らないものでも対処できる。がおろそかになりがちのようです。

まず②についてです。

社会福祉士は,科目数が19科目もあって,とても多そうに見えます。

しかし科目数は多いですが,基本は社会福祉学に収れんされます。もっと広く言えば社会学です。

それを対象別(低所得者,障害者,高齢者など)に分けたり,アプローチ法(心理的理解,医学的理解,調査分析など)で分けたり,しています。つまり19科目に細分化されていますが,根底に流れるものは共通であり,希求するものは,ニーズ充足です。そこを意識していけば,科目が違ってもつなかりが感じられます。特に重要なのは,国,都道府県,市町村の役割です。整理していけば,共通点が見えてきます。

③についてです。

点数に差をつけやすいのは,この手のタイプの出題をすることです。
何度も受験している方は,いつも数点差で不合格になっているのではないでしょう。

国試に突破するためには,③知らないものでも対処できる。を特に強化する必要があると考えています。

さて,それを踏まえて,今日の問題です。

第27回・問題4 多発性脳梗塞に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 アルツハイマー型認知症に特異な病態である。
2 嚥下障害はない。
3 情動失禁はない。
4 パーキンソン症候群の原因になる。
5 振戦せん妄が認められる。

多発性脳梗塞は,この時初めて出題されました。一問まるごとの出題なので,「分からない,困った,どうしよう」ではどうにもなりません。
このような時は,日本語的に考えることが必要です。
脳梗塞がたくさん起きるものだろう,と想像します。
それでは,詳しく見ていきましょう。

1 アルツハイマー型認知症に特異な病態である。

脳梗塞に関連するのは,血管性認知症だと想像です。アルツハイマー型認知症ではありません。よって間違いです。

2 嚥下障害はない。

脳梗塞なのですから,どこかに障害が起きそうだ,と想像できそうです。もちろん間違いです。

3 情動失禁はない。

情動失禁が特徴的な認知症と言えば,血管性認知症です。これは過去に何度も出題されています。これが分かれば情動失禁がありそうだ,と想像できそうです。もちろん情動失禁はなります。よって間違いです。

4 パーキンソン症候群の原因になる。

パーキンソンと言えば,レビー小体型認知症の特徴です。そのため,×をつけがちだと思います。しかし,これを×にしてしまうと,正解がなくなります。

5 振戦せん妄が認められる。

振戦せん妄は,アルコール依存症に見られます。

さて,最後まで解いたところで,すべてが×になりました。

実は,このような事態は国試ではよくあります。

このような時には,知識ではどうにもならないので,消去できる可能性の高さを比べてみます。

確実に消去できそうなのは,1と2と3と5です。

絞り出すように4が残ります。

脳血管障害性パーキンソニズムは、脳梗塞や脳卒中などの脳の血管障害が原因で、パーキンソン病の症状が現れる病気です。

ということで4が正解です。

〈今日の一言〉

今なら参考書にも載っているので,簡単そうに見える問題かもしれませんが,この時受験した人にとって,ものすごく難しい問題だったと思います。

こういう問題に対処するのは,とても大変なことだと思います。

だからこそ,模擬試験などで体験することが必要です。

脳のトレーニングが必要だからです。

学習計画には,模擬試験受験を組み込みましょう。

参考書を読んでいるだけでは,絶対に

③知らないものでも対処できる。

はつかないことを断言しておきます。

国試突破には,

①基礎的知識をつける。

は,必要条件です。しかし必要十分条件ではありません。

②確実な知識にする。
③知らないものでも対処できる。

この2つがプラスされてこそ,国試を突破することができます。

再受験を目指す方は,ぜひ自分の勉強法を見直して,国試突破力をつけていきましょう。

チームfukufuku21は,その手掛かりになるものをお伝えしていきます。

2018年3月20日火曜日

答えはこれだ! と思える問題は少ない!!

今日のテーマ

答えはこれだ! と思える問題は少ない!!


それでは今日の問題です。

第27回・問題3 糖尿病に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 診断には,尿糖の所見が必要である。
2 自覚症状がなければ,糖尿病と診断されない。
3 現在,糖尿病性腎症は透析導入に至る原因の第1位である。
4 1型糖尿病では,インスリン療法と食事療法を併用しない。
5 2型糖尿病では,インスリン療法を行わない。

今なら,参考書に書かれているので,そんなに難しく思えないかもしれません。

しかし,最初にこの問題を見た人は,とても難しく感じたことでしょう。

なぜなら,それまで参考書に書かれていなかっものが正解選択肢になっているからです。

それでは詳しく見ていきましょう。

1 診断には,尿糖の所見が必要である。

まずこの問題が分かりません。こういうときは,冷静に▲をつけておきます。
結果的にこれは間違いです。

なぜなら糖尿病では尿糖が見られますが,それをもって糖尿病だと診断されるわけではないからです。つまり尿糖が見られなくても糖尿病と診断されることがあるということです。

2 自覚症状がなければ,糖尿病と診断されない。

糖尿病の初期に,自覚症状がある人は少ないです。よって間違いです。

3 現在,糖尿病性腎症は透析導入に至る原因の第1位である。

これが最も分からないものです。これをすぐ正解にできる人は少ないでしょう。
糖尿病性腎症は,糖尿病の三大合併症ではありますが,これが一位かどうかが分からないからです。

こういうときは,冷静に▲をつけておきます。

4 1型糖尿病では,インスリン療法と食事療法を併用しない。

1型糖尿病は,自己免疫によって膵β細胞が破壊されて発症します。基本はインスリン療法ですが,食事療法を併用します。

5 2型糖尿病では,インスリン療法を行わない。

日本人の95%は2型糖尿病です。基本は食事療法ですが,インスリン療法も用いられます。

さて,選択肢1と選択肢3が残ります。

1 診断には,尿糖の所見が必要である。
3 現在,糖尿病性腎症は透析導入に至る原因の第1位である。

分からないときは,解答テクニックを使います。

言い切り表現に正解少なし。

必要である。

が言い切りになっています。選択肢1は消去して3が残ることになります。

本来の国試は,このような出題スタイルが多いです。

これが,答えがこれだ! と思える問題は少ない,という意味です。

2018年3月19日月曜日

国試に合格する勉強法~ICF(国際生活機能分類)の押さえ方

社会福祉士の国家試験問題は,

少しずつ同じ(重なって)で,少しずつ違う

が特徴です。

そのため,しっかり覚えておかないと解けそうで解けない,という事態に陥ります。

さて,今日の問題です。

第27回・問題2

国際生活機能分類(ICF)の基本的考え方と概要に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 機能障害とは,個人が何らかの生活・人生場面にかかわるときに経験する離しさのことである。
2 参加とは,生活・人生場面へのかかわりのことである。
3 生活機能と障害の構成要素は,環境因子と個人因子である。
4 背景因子の構成要素は,心身機能と身体構造,活動と参加である。
5 ICFは,病気やその他の健康状態を病因論的な枠組みに立って分類したものである。

今日の問題はICFです。
ICFは
第22・25・27・28回に出題されています。

ICFで押さえておきたい用語

活動 ➡ 個人による課題や行為の遂行。

参加 ➡ 生活・人生場面へのかかわり。

活動制限 ➡ 活動(個人による課題や行為の遂行)が難しいこと。

参加制約 ➡ 参加(生活・人生場面へのかかわり)が難しいこと。

活動と参加の整理の仕方

活動 ➡ 単に身体を動かしていること。例:散歩など。

参加 ➡ 活動して何かに「かかわる」こと。例:歩いて知人に会いに行く。

2つある場合は,どちらか1つだけを覚えるのがコツです。

それでは詳しく見ていきましょう。

1 機能障害とは,個人が何らかの生活・人生場面にかかわるときに経験する離しさのことである。

個人が何らかの生活・人生場面にかかわるときに経験する離しさは,参加制約です。よって間違いです。

機能障害は,言葉どおり心身機能の障害のことです。

2 参加とは,生活・人生場面へのかかわりのことである。

これが正解です。

3 生活機能と障害の構成要素は,環境因子と個人因子である。

前説では触れませんでしたが,ICFでは生活機能と障害に影響を与える「背景因子」という概念を提示しています。

背景因子には,「個人因子」(その人個人によるもの)と「環境因子」(その人が生活している環境によるもの)があります。つまり環境因子と個人因子は背景因子です。よって間違いです。

4 背景因子の構成要素は,心身機能と身体構造,活動と参加である。

背景因子の構成要素は,先述のように「個人因子」と「環境因子」です。

よって間違いです。

5 ICFは,病気やその他の健康状態を病因論的な枠組みに立って分類したものである。

ICFの特徴は,医学モデル(病因論)ではなく,生活モデルの視点で作られたものです。

よって間違いです。

第28回には,以下のように続けて出題されています。

第28回・問題3 国際生活機能分類(ICF)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 対象は,障害のある人に限られる。
2 障害を,社会環境から切り離して捉えている。
3 健康状況とは,課題や行為の個人による遂行のことである。
4 障害を機能障害,能力障害,社会的不利に分類したものである。
5 世界保健機関(WHO)により採択され,国際的に用いられている。

正解は5。

第27回と第28回で重なっているのは,
課題や行為の個人による遂行(活動)だけです。

第27回の直近に出題された問題は,以下です。

第25回・問題4 国際生活機能分類(ICF)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 健常者も障害者も区別なく,個別性はあっても「健康状態」という一つの概念のもとにとらえられるという考え方をしている。
2 機能障害,能力障害,社会的不利のように,「障害」を分類したものである。
3 「健康状態」に含まれる心身機能・身体構造,活動・参加に関与する因子として,「遺伝因子」を含めている。
4 「障害」は,「環境因子」とは無関係なものととらえている。
5 症状が進行中あるいはまだ治癒していない場合を「疾患」と呼び,それが固定あるいは永続した場合を「障害」と呼んでいる。

答えは1。
第27回につながるのは,「背景因子」と「障害」です。
選択肢5は,第30回国試には見られなかった「でたらめな問題」です。そのような選択肢がジャブのように正解を選ぶときに影響を与えてきます。

第27回の問題を過去問の知識で解くためには,第22回の以下の問題の知識が必要です。

第22回・問題4 
国際生活機能分類(ICF)の基本的考え方と概要に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 活動とは,生活・人生場面へのかかわりである。
2 参加とは,個人による課題や行為の遂行のことである。
3 活動制限とは,個人が何らかの生活・人生場面にかかわるときに経験する難しさのことである。
4 参加制約とは,個人が活動を行うときに生じる難しさのことである。
5 活動と参加は,単一のリストに属している。

答えは5。
活動,参加,活動制限,参加制約の4つの用語が勢ぞろいしています。
それぞれを消去して,選択肢5が消去法で残ります。
第22回の問題がベースになり,その後の問題が展開されているのが分かるでしょう。

これが,

国試は少しずつ同じ(重なって)で,少しずつ違う

という意味です。

過去3回の過去問の知識ではどうにもにならないことを実感してほしいのです。

国試には,決して近道はありません。

現行カリキュラムでICFに関する出題は,今日の問題に加えて以下の問題があります。

第28回・問題57 事例を読んで,国際生活機能分類(ICF)の「参加制約」に該当するものとして,最も適切なものを1 つ選びなさい。
〔事例〕
 E さん(49 歳,男性)は,脳性麻痺で足が不自由なため,車いすを利用している。25 年暮らした障害者支援施設を退所し1 年がたつ。本日,どうしても必要な買物があるが,支援の調整が間に合わない。その場での支援が得られることを期待して,一人で出掛けた。店まで来たが,階段の前で動けずにいる。
1 脳性麻痺で足が不自由なこと
2 階段があること
3 支援なしで外出できること
4 店で買物ができないこと
5 障害者支援施設を退所したこと

事例で出題されて来ました。参加制約は,選択肢4の「店で買い物ができないこと」です。
買い物が買い物をするだけの意味なら活動になりますが,買い物という活動を通して,たとえば定員と会話する,などさまざまな意味合いがあります。

参加制約と活動制限の違いはしっかり押さえておきましょう。


〈今日のまとめ〉

国試は,少しずつ違う

といった出題を続けています。

ここに対応するためには,地道な勉強は欠かせないのです。

ICFの出題は,実に5問もあります。

それでも次に出題してくる時には,どこかを変えながら出題されるでしょう。でたらめ選択肢も含めて出題することもあります。

地道な勉強とは,丸暗記を意味するものではなく,意味を理解していくことに他なりません。

2018年3月18日日曜日

国試合格に向けての本格スタート(まずはここを見て!!)

再受験を目指す方のレディネス形成はまだかもしれません。

しかし,確実に合格をつかむためには,今からのスタートが必要だと思っています。

国試はいつも

少しずつ同じで,少しずつ違う

私たちがずっと主張しているように過去3年間の過去問を完璧に解けても,それで合格できるような試験ではありません。

ある会社のずっと昔の過去問題集を見ると,今の過去問解説とまったく違い,内容の解説というよりも解き方解説が中心になっています。巻末に重要語句のまとめがついています。

過去問は,正解を導き出すための手がかりをつかむためのものととらえていたと思われます。

今もその意味は変わっているわけではありません。

過去に出題されたものと同じように出題していては,たくさんの人が合格してしまうし,だからといって,違うものを出題してしまうと,誰もが解けなくなってしまう。

このバランスをうまくとった出題方法が

少しずつ同じで,少しずつ違う

というものです。


それでは今日の問題です。

第27回・問題1
人体の構造と機能に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 アルブミンは酸素の運搬にかかわる。
2 ヘモグロビンは感染の防御にかかわる。
3 平滑筋は随意的に収縮できる。
4 気管は食道の後方に位置する。
5 横隔膜は呼吸にかかわる。

国試は群0点になってしまうと不合格になります。
新卒だと内定取り消しという事態もあり得ます。

そのため,試験委員も大学の先生が多いので,その重大さはよく分かっています。
初期のころは,この規定がなかったので,とても難しい問題を出題する科目もありました。

難しい科目は勉強せずに得意科目を数科目作るという戦略が取れました。

しかしその後今と同じスタイルになったことで,その戦略は取れなくなりました。

しかし今と違うのは1科目10問だったということです。必ず1~5,いずれかがその科目の答えに含まれていたので,苦手科目はやっぱり勉強せず,すべての問題を3あるいは4をマークすれば確実に1点以上,場合によっては3~4点も取ることができました。

今は,基本は7問。その戦略が取れません。これだけでもハードルが上がっていることが分かるでしょう。

0点にさせないために,試験委員は勉強をしっかりしてきた人だけが分かる仕掛けをつくっています。

それでは詳しく見ていきましょう。

1 アルブミンは酸素の運搬にかかわる。

アルブミンは,何の働きをしているのか分からなくても,酸素の運搬をしているのは,ヘモグロビンであることは分かります。よって間違いです。

アルブミンは,栄養素であるアミノ酸の運搬にかかわっています。

高齢者領域にいる方は,アルブミン値の重要性はよくご存じのことと思います。

2 ヘモグロビンは感染の防御にかかわる。

ヘモグロビンは,先述のように酸素の運搬にかかわっています。よって間違いです。

感染の防御にかかわるのは,免疫系です。

免疫に関しては,第22・24・27回と続けて出題されてきましたが,この問題を最後に出題されていません。つまり直近3回には出題されていないことになります。ダークホースです。

免疫には

液性免疫 ➡ B細胞が抗体をつくって病原体を攻撃する。
細胞性免疫 ➡ T細胞が病原体を直接攻撃する。

2つの免疫系で防御しています。

2つあるものは覚えにくいので,しっかり押さえることが必要です。

2つあるものは,1つだけを覚えるのがコツです。両方覚えようとすると国試の時「あれっ,どっちだったっけ?」とあいまいになる可能性が高くなります。

片方だけを覚えておけば,この混乱を防ぐことができます。

3 平滑筋は随意的に収縮できる。

平滑筋は,腸などに分布する自分ではコントロールできない不随意筋です。よって間違いです。

自分でコントールできるのは,骨格筋などに分布する横紋筋です。ただし,心臓は横紋筋です。

免疫と同じように2つあります。混乱しないように片方だけ覚えましょう。

平滑筋は,第25・27回に続けて出題されていますが,直近3回では出題されていません。ダークホースです。


4 気管は食道の後方に位置する。

器官は,食道の前方に位置しています。よって間違いです。

国試では,前,後ろ,右,左,上,下,など対になるものがあるものには注意しましょう。

これらを入れ替えるのは,間違い選択肢を作るときの常とう手段です。

器官は,前にあるために,身体構造的に誤嚥しやすくなっています。そのために飲み込むときに喉頭蓋が閉じるようになっています。


5 横隔膜は呼吸にかかわる。

肺は,自ら動いているわけではありません。横隔膜と肋間筋の動きがかかわっています。
よって正解です。

勉強した人だけが分かる仕掛けとは・・・

第24回に
吸気時には,横隔膜と肋間筋が収縮する。

が出題されていて,これが正解となっています。


〈今日の一言〉

医学概論は覚える範囲が広いので,覚えるのが大変です。

しかし基礎をしっかり覚えておけば,得点できる科目になります。

別な言い方をすると,覚える範囲が広いので,深追いしても得点はそれほど上がりません。

ほどほどに押さえていくことが重要です。

特にこの科目は,最初の科目なので多くの方は張り切って取り組むはずです。

時間をかけすぎることは絶対に避けなければなりません。

勉強のペース配分を考えましょう。

2018年3月17日土曜日

満点を目指した勉強は失敗する!

第30回の国家試験の合格基準点は99点でした。

とても厳しい国試になりました。

「とても厳しい」は,あいまいな知識は許されなかったという意味です。

しかし,それはいつも同じことです。

合格基準点が99点だったら,何点を目指したらよいのか。

満点を目指さなければならないのか。

といった不安が高まることと思います。

その気持ちはよく分かります。

しかし,満点を目指そうとする人は失敗します。

試験センターが目指しているのは,合格率30%,合格基準は6割程度です。

今年は,それに合わせて問題を作ったら,振れ幅が大きすぎたのです。

なぜ今年は振れ幅が大きくなったのかと言えば,文字数も関係関係しますが,5つの選択肢の中にでたらめなものが含まれない問題が多かったことが関連しているように思います。

問題で確認しましょう。

第24回・問題15 法と社会・そこに成立する秩序との関係に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。
1 形式的に正しい手続きによって定められた規則による支配が合法的支配であり,この支配においては命令者の合理的利害に沿って規則が再編されていく。
2 法律家は,弱きを助け強さをくじくリーガルマインドという共通の正義感を身につけており,それを共有する連帯意識によって明確な社会層をなしている。
3 法治国家においても,個人の権利が不当に侵害された場合,まずは市民自身が強制力を行使して自力救済の努力をすることが望ましいと考えられている。
4 人々の私的利益の追求は利害対立を生み,万人の万人に対する闘争状態が予想されるなかで,社会秩序がなぜ可能となるのかを問うことをホッブズ問題という。
5 非ゼロサムゲームでは,ある行為者が利益を得ても他の行為者が損失を被るとは限らないので,損失を負わせるべく行為者間には対抗関係が生じていく。

答えは4。

今なら,参考書に書いてあるので,ホッブズ問題とは何か,何か分かる人もいるでしょう。
しかし,この時点では難易度が極めて高い問題でした。

第30回・問題20 次の記述のうち,「共有地の悲劇」に関する説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 公共財の供給に貢献せずに,それを利用するだけの成員が生まれる状況を指す。
2 協力してお互いに利益を得るか,相手を裏切って自分だけの利益を収めるか,選択しなければならない状況を指す。
3 他の成員の満足度を引き下げない限り,ある個人の満足度を引き上げることができない状況を指す。
4 それぞれの個人が合理的な判断の下で自己利益を追求した結果,全体としては不利益な状況を招いてしまうことを指す。
5 社会全体の幸福が,諸個人の快楽から苦痛を引いた後に残る快楽の総計と一致する状況を指す。

答えは,4。

第24回の問題との問題の作り方の違いは,第24回の問題は,正解選択肢以外の選択肢は,でたらめの文章で構成されているのに対し,第30回の問題は,共有地の悲劇ではないものの,文章は,他のものを指しています。

第30回の問題は,消去法ではなく,「答えはこれだ」と分かる人は多かったと思います。

さて,今日のテーマの「満点を目指した勉強は失敗する」です。

おそらく多くの受験生は,今年の国試結果を見て,不安が高まっていることだと思います。

たくさんの知識を詰め込もうとするでしょう。

しかし,覚えることに必死になり,思考を使わなければ,おそらく国試では得点できないと思います。

なぜなら,国試は

少しずつ同じ(重なって)で,少しずつ違う

からです。

第31回の国試では,今日の問題の第30回のような問題は多用せず,必要最低限に絞り込まれます。

その代わりに,でたらめ問題が復活してくることでしょう。

しっかり勉強した人は得点できる。

あいまいな知識だった人は得点できない。

第30回の国試で残念な結果になった方は,ぜひ問題を見直してみてください。

おそらく,多くの方は,今だったら合格基準点を超える点数が取れる可能性が高いです。

知識不足で点数が取れていないのではなく,あいまいだったために,答えを変えてしまった,といったことも生じたのではないでしょうか。

そういった方は,知識を増やすのではなく,一つひとつの知識を確実にすることが求められるのではないでしょうか。

国試は,7割を落とす試験ではなく,3割を合格させるもの!!

合格基準点が99点になったことにいきどおりを感じる方もいらっしゃるかもしれません。

合格基準点を下げずに,合格率を3割に保ったことは,社会福祉士という資格のブランド性を維持することになったのではないかと思います。


私たちは多くのデータとそこから得られたノウハウを持っています。

私たちと一緒に,3割に入ることを目指して頑張っていきましょう!!

2018年3月16日金曜日

第30回国試の合格発表を終えて~第31回国試への影響について

第31回国試の合格発表がありました。

合格基準点(いわゆるボーダーライン)は,99点という過去にはないものとなりました。

これまでの最高点は,第15回の91点です。

しかし,この時は4問も不適切問題があり,実質は87点だったと考えられます。

不適切問題がなくて最高点なのは,第27回の88点です。

今回の結果は2つのことが考えられます。

①記念受験組の減少
第29回の受験者は45,828名。第30回は43,937名です。受験料が大幅に上がったことで,あまり勉強しないで受験するいわゆる記念受験組,そしてリベンジ組が受験を控えたことで受験者数が減ったと考えられます。そのために,受験者の多くは,実力者ぞろいになったと考えられます。たら,ればで言うと,受験者が昨年並みだったとすれば,合格基準点は95点前後になっていたのではないでしょうか。

②合格率の安定化
旧カリキュラム時代の国試の合格率は,30%程度を保っていました。現行カリキュラムになってからは,問題が解きにくくなり,30%に届くことはなくなり,合格率が最も高かったのは,第26回の27.5%にとどまっています。第29回は25.8%にまで低下しています。

これらから考えられるのは,社会福祉士の国試は,合格基準点は90点程度,合格率は30%程度を基本にしているのではないか,ということです。

近年は国試問題の文字数を少なくすることで,解きやすい問題づくりを図ってきていました。しかしそれでも思うような成果は得られず,選択肢の内容を工夫してきました。今までは間違い選択肢の中には,まったくのでたらめの文章を挟み込んでいましたが,今年はそれがほとんど見られません。

それによって,しっかり勉強してきた人は高得点が取れたことと思います。

そこに記念受験組の減少という要因が重なって,意図以上に高得点に偏ったものと考えられます。

第31回国試を考えます。

国試が30%程度,90点程度を目指すのは,今まで通りだと思います。

それを前提に考えると,今年とは違ったものとなることでしょう。

確実に難易度は上がります。

とても厳しいものとなることは確実です。

大きな動きがあった次の年は,必ず揺り戻しがあります。

第31回国試を初めて受験する予定の方で,第30回国試問題を解いた方もいらっしゃることでしょう。

勉強があまり進んでいなくても80点台が取れたという方もいるでしょう。

第31回は確実に難しくなります。

今年取れたということで安心しないで,しっかり勉強をすることが大切です。

勉強したことは得点できる。
勉強が足りない人は得点できない。

こんな試験になるのは間違いないです。

国試はいつも難しい

ここを間違えると大変なことになります。

2018年3月15日木曜日

第30回国試の合格発表

第30回国試の合格発表は,いよいよ今日です。

合格発表を待つ状況に対して

判決が出るのを待つ気持ちだ!

と表現した人がいました。

ナーバスな気持ちを素直に表した言葉だと思います。

多くの方が合格をつかみ取られることをお祈りいたしております。

もし,合格できなかったら,また来年に向けて頑張っていきましょう!!

2018年3月14日水曜日

合格発表を前にして~過去問の間違った使い方

第30回の国試の合格発表は,3/15(木)です。

それを前に第30回国試問題と過去問の類型問題の関連を見てみたいと思います。

第30回・問題1 標準的な身体の成長と発達に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 生後2か月までに,首がすわる。
2 生後3か月までに,座位保持ができる。
3 生後6か月までに,乳歯が生えそろう。
4 生後6か月までに,大泉門は閉鎖する。
5 生後18か月までに,一人で歩くことができる。

正解は5。

第22回・問題1 身体の正常な成長・発達に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 大泉門は,生後6か月までに自然に閉鎖する。
2 すべての原始反射は,生下から認められ幼児期には消失する。
3 受精後8週目を過ぎると,人としての基本的生理機能を担う器官の形成期に入る。
4 学童期から青年期における顕著な身長の伸びには,成長ホルモンが関与している。
5 脳や感覚器官は,生後から成人まで穏やかなS字カーブを描いて成長する。

正解は4。

第30回・問題2 人体の各器官に関する次の記述のうち,解剖学的に正常なものを1つ選びなさい。
1 頸椎は12個の骨で構成される。
2 頸動脈は体表から触知できる。
3 大腸は空腸と回腸に分けられる。
4 右肺は2つの肺葉からなる。
5 胃は横隔膜の上にある。

正解は2。頸動脈に関する出題は過去になし。

第22回・問題3 心身機能と身体構造の概要に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 心臓の左の心房と心室の間にある弁を三尖弁,右の心房と心室の間にある弁を僧帽弁という。
2 健康な成人において,血液細胞を作り出しているのは骨髄である。
3 脳幹は,上部から橋・中脳・延髄の順に並んでいる。
4 肺は左右2つからなり,左は3つ,右は2つの肺葉に分かれている。
5 細胞性免疫は,主にBリンパ球が関与する免疫である。

正解は2。

第30回・問題3 世界保健機関(WHO)の活動に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 アルマ・アタ宣言では,プライマリヘルスケアの重要性が示された。
2 リハビリテーションという言葉を初めて用いた。
3 憲章前文の中で,健康とは,身体的,精神的,社会的,政治的に良好な状態であると定義した。
4 国際疾病分類であるICIDHを策定した。
5 健康寿命とは,健康上の問題で制限されることなく仕事ができる期間と定義した。

正解は5。

第26回・問題3 健康に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 健康寿命とは,介護を受けたり病気で寝たきりになったりせずに自立して生活できる期間をいう。
2 WHO憲章では,「健康とは,身体的,精神的,社会的,そしてスピリチュアル的に完全に良好な状態をいう」と定義された。
3 集団の健康を図る指標に罹患率は用いられない。
4 プライマリ・ヘルスケアの理念は,一次医療(フライマリケア)による治療で健康を改善すべきという考えである。
5 「健康日本21」(第二次)の基本的な方針は,活力ある社会の実現のために高齢者の死亡率を減少させることである。

正解は1。

第30回・問題4 高齢者に多くみられる病態に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 脱水になると,脈拍が少なくなる。
2 老人性難聴では,低音領域から聴力が低下する。
3 甲状腺機能低下症は,浮腫の原因となる。
4 栄養過多は,褥瘡の発生要因になる。
5 葉酸が不足すると,味覚障害が生じる。

正解は2。甲状腺機能低下症に関する出題は過去になし。

第29回・問題2 加齢に伴う生理機能の変化に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 体重に占める水分の割合は増加する。
2 収縮期血圧と拡張期血圧の差は縮小する。
3 聴力は高周波音域から低下する。
4 肺活量は維持される。
5 流動性知能は維持される。

正解は3。


第30回・問題5 肢体不自由となる疾患に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは,呼吸困難が初発症状である。
2 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は,運動失調を主体とする変性疾患である。
3 脊髄損傷では,排尿障害が起こりやすい。
4 分娩時の高酸素血症は,脳性麻痺の原因となる。
5 遺伝性の脊髄小脳変性症では,歩行障害は起こらない。

正解は3。

第22回・問題5 神経・筋疾患に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 筋萎縮性側索硬化症では,多くの場合,知的能力は障害されない。
2 パーキンソン病では,脳内のドーパミンという神経伝達物質が増加している。
3 大多数のてんかん発作は,服薬によっても抑制できない。
4 小脳疾患では,自らの意志によって身体を動かすことができない麻痺症状を生じる。
5 デュシェンヌ型進行性筋ジストロフィーは,女性に発症する遺伝性疾患である。

正解は1。

第30回・問題6 精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)において,「統合失調症」と診断するための5つの症状に含まれているものはどれか。正しいものを1つ選びなさい。
1 まとまりのない発語
2 観念奔逸
3 強迫行為
4 抑うつ気分
5 不眠または過眠

正解は1。

第27回・問題6 精神疾患の診断・統計マニュアルDSM-5に基づく統合失調症の診断に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 妄想や幻覚は,陰性症状である。
2 まとまりのない会話あるいは発語は,症状の一つである。
3 症状は,発症から2週間で消失する。
4 仕事,対人関係,自己管理などの面での機能が低下することはない。
5 原因として,乱用薬物の摂取がある。

正解は2。

第30回・問題7 廃用症候群に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 関節拘縮は起こりにくい。
2 筋の萎縮は起こりにくい。
3 高齢者では起こりにくい。
4 起立性低血圧が起こりやすい。
5 急性期リハビリテーションで離床を早期から行うことで起こりやすい。

第16回・問題74 高齢者の生活不活発病の症状について,誤っているものを一つ選びなさい。
1 起立性低血圧 
2 聴覚障害
3 尿失禁
4 筋肉の委縮 
5 関節の拘縮

正解2。


直近3回(第27~29回)に出題されたもので,第30回で出題されたものは,老人性難聴と統合失調症です。

そのほかは,すべて別の回に類型問題があります。


これでもまだ3年間の過去問だけで合格できると思いますか?

この傾向は,現在も同じです!

2018年3月13日火曜日

過去問アーカイブシリーズ~正しいものを選ぶ問題は,すべてが間違って見える

第30回国試の合格発表は,3/15(木)です。

多くの方が合格されることを願っています。

さて,前回は,「誤っているものを選ぶ問題」をご紹介しました。

自分で,問題を作ってみれば分かりますが,「正しいものを選ぶ問題」と「誤っているものを選ぶ問題」では,「正しい問題を選ぶ問題」の方が作問が難しいです。

誤っているものを1つ選ぶ問題は,誤っているものは1つ

正しいものを1つ選ぶ問題は,誤っているものは4つ

間違い選択肢をそれっぽく作ることが難しいのです。

さて,今までの国試で最も難しかったと言われる第25回国試問題を見てみましょう。

第25回・問題21

環境問題のとらえ方に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 自然環境主義とは,生活上の知識や経験の集成である生活文化,地域に固有の環境への働きかけの伝統をもとに,当該地域の居住者の生活の立場から環境問題の所在や解決方法を考えようとする立場である。 

2 自然資源の共同管理制度及び共同管理の対象である資源そのものを意味するコモンズは,環境資源の慣習的な共同管理制度を持つ伝統社会では環境保全に役立っていたが,私有財産制の社会には存在しない。
 
3 環境問題では,被害・苦痛を被る範囲である受苦圏と利益・便益を受ける範囲である受益圏とが一致しないことが多いなか,ニンビー(NIMBY)と呼ばれる社会運動が提起されると,その多くは社会的理解を得て,問題解決の促進に役立っている。 

4 環境問題では,低所得層や人種的マイノリティなど社会的弱者に対して被害が集中することがある。このような不平等を是正し,あわせて環境からの便益の分配における不平等も是正しようという考え方を環境正義という。

5 経済成長と環境保全は二律背反的なものであり,技術革新によって環境保全を図ることはできるが,同時に経済成長も持続していくことはできないという考え方をエコロジー的近代化という。

毎年,解けなくも良い問題は出題されますが,この問題はその筆頭だと思います。

今なら,参考書にも掲載されていると思うので,分かる人もいるかもしれません。

しかし,この国試が実施された当時,この問題を解けた人はほとんどいなかったものと思います。

前回は,正しいものを選ぶ問題は,すべて正しく見える
と言いました。
その逆に,
すべて間違っているようにも見える

何を書いているのかさっぱり分からないので,正しいのか間違っているのかの判断ができないからです。

正解は4だそうです。
答えを聞いても,「ふ~ん,そうなんだ」という感じてはないでしょうか。

しかし,文章が長い問題文だと,下手に作問すると,文章に不自然さが生まれる率が高くなります。
そのため,丁寧に読めば,何となくでも間違いは見えてくることもあります。

口の悪い人は,国語の試験である,と言ったものです。

それに比べると,今は問題文が短いので,文章の不自然さはほとんど発生しないでしょう。

第30回問題と比べてみましょう。

第30回・問題17

次の記述のうち,ウェルマン(Wellman,B.)の「コミュニティ解放論」の説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 特定の関心に基づくアソシエーションが,コミュニティを基盤として多様に展開している。
2 都市化の進展によってコミュニティは喪失若しくは解体されている。
3 都市化が進展しても,近隣を単位としたコミュニティは存続している。
4 交通通信手段の発達によって,コミュニティは地域という空間に限定されない形で新しく展開している。
5 コミュニティが,地域での自立生活を可能にする対人サービスを提供するようになっている。

答えは,4。

ものすごくシンプルな言い回しになっています。

知識がある人は,答えをすぐ選べる
知識がない人は,すべてが正しく見えて,すべてが間違って見える

知識の有無が,明確に現れます。

受験生にはとても厳しいことですが,勉強不足では,合格することはできない試験に生まれ変わったと言えます。

3か月の集中学習で合格するには,今の国試はハードルが高いです。

昔の国試では通用した勉強法でも今には合わない勉強法になっているかもしれません。
そこに注意する必要があります。

2018年3月12日月曜日

過去問アーカイブシリーズ~正しいものを選ぶ問題は,すべてが正しく見える!!

国家試験の自己採点をすると・・・

「2つまでは絞れた。しかし,ことごとく間違った方を選んでしまった」

という感想を持つ人は多いようです。

前回は,10回前の第21回国試問題を紹介しました。

今日は,第11回国試から検証します。

第11回・問題1

社会福祉の人権保障理念を方向づける憲法や権利宣言・条約等に関する次の記述のうち,誤っているものを一つ選びなさい。

1 「世界人権宣言」(1948年12月国連総会採択)には,すべて人は「社会保障を受ける権利」と「自己の尊厳と自己の人格の自由な発展とに欠くことのできない経済的,社会的,文化的権利の実現に対する権利」を有することがうたわれている。

2 世界の憲法史上で最初に生存権を規定したのは,日本国憲法(1946年(昭和21年)である)。

3 社会福祉関係法の基本は日本国憲法第25条の「生存権」であるが,関連して同第13条「幸福追求権」及び第14条「平等権」なども重要である。

4 「児童の権利に関する条約」(1989年11月国連総会採択)には,児童に関するすべての措置をとるに当たって「児童の最善の利益」を考慮すべきことが規定されている。

5 障害者関係の権利宣言としては,「知的障害者の権利宣言」(1971年12月国連総会採択)及び「障害者の権利宣言」(1975年12月国連総会採択)がある。

さて,ここであることに気づいた人がいることでしょう。

今はない「誤っているもの」を選ぶ問題です。

旧カリキュラム時代は,「正しいもの」「誤っているもの」を選ぶ問題が混在していました。

今の「1つ選ぶ」「2つ選ぶ」問題が混在しているのと同じようなものでしょう。

答えは,2。

世界で初めて生存権を規定したのは・・・

ドイツのワイマール憲法(1919)です。


今なら,選択肢5は,おそらく障害者権利条約になることでしょう。
そして,選択肢4の児童権利条約に関しては,能動的権利の保障の内容になるのではないでしょうか。

しかし,基本的には今でも十分に使える問題だと思います。

この年の合格率は,29.5%

ボーダーラインはまだ発表していない時代です。
現在よりも,合格率は高めです。

その理由は,「正しいものを選ぶ」問題よりも,「誤っている問題」を選ぶ問題の方が解きやすいからです。

この問題でも,世界で初めて生存権が規定されたのはワイマール憲法だと分かれば,すぐに答えが分かります。

その当時もそれなりに難しかったのですが,問題の作られ方から考えると,現在の方が難易度は高いです。

今日の問題なら,消去法を使わずして,知識があればすぐ正解を選べます。

極端なことを言うと,ほかの選択肢の内容が分からなくても何とかなりそうです。

出題が変われば,覚え方・解き方も変わります。


「正しいものを選ぶ」という問題は,すべてが正しく見える!!


これが,「2つまでは絞れた。しかし,ことごとく間違った方を選んでしまった」ということの裏にある真実です。

現在の国試問題は,問題文の文字数が少なくなっています。

そのため,言い回しの不自然さで,「これは間違っていそうだ」と消去できる問題はほとんどなくなっています。

より確実に消去できる知識が必要になっています。

国試は,一見解けそうでも,実は間違う問題が多いです。

「正しいものを選ぶ」という問題は,すべてが正しく見えるからです。

2018年3月11日日曜日

第31回国試に合格するための勉強法~米騒動を押さえよう!!

第30回国試を受験された方は,いよいよ今週が合格発表です。

合格基準については,「ボーダーライン予測」といった名目で,さまざまな情報が飛び交っていると思います。

しかし,実際には,問題の難易度,合格者数,合格率,などの要素を加味して決定されるので,そんな単純なものではありません。

ボーダーラインは,神のみぞ知る 

といった感じでしょうか。

さて,第31回国試に向けた勉強法です。

まずは,現行カリキュラムになる前の第21回の問題を見てみましょう。

第21回・問題1

我が国の社会福祉の歴史に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 明治維新の直後に制定された恤救規則は,イギリスの救貧法をモデルに制定され,救恤場を設置し,院内救済を原則とした。
2 日清戦争の前後には,労働者の貧困や都市下層社会の問題が発生し,政府は,救貧行政の強化を図るために,窮民救助法を制定した。
3 日露戦争後には,政府は,地方行政による救貧行政の進展を図るために,感化救済事業講習会を開催し,防貧だけでなく救貧の必要性を強調した。
4 第一次世界大戦末期には,物価高騰による生活苦を背景に勃発した米騒動が,社会連帯責任を強調した社会事業行政を発展させる一因となった。
5 日中戦争が全面化した時期には,政府は,軍人の保護を目的として,戦時厚生事業を行い,傷病軍人対策として廃兵院法を制定した。

とても難しい問題だと思います。
10年前の問題ですが,問題の作り方は,今とほとんど変わっていないことが分かるでしょう。

この問題は,第31回国試には,とても重要な問題になると予測しています。

なぜなら,2018年は,日本の福祉の発展過程にとっては,重要な節目になる年だからです。

100年前の1918年は,富山から全国に広がった米騒動が発生した年です。

不作によって1993年「平成の米騒動」が起きたのを覚えた人もいるでしょう。

「平成の」とつけられているのは,1918年に米騒動が起きているからです。

米騒動が起きる前までは,生活難は自己責任だと思われていましたが,この騒動によって政府による取り組みがなされることになっていきます。

米騒動が日本の福祉行政の大きな転換点になっています。

正解は,4です。

しかし,歴史を苦手としている人も多いと思いますので,簡単に解説します。

1 明治維新の直後に制定された恤救規則は,イギリスの救貧法をモデルに制定され,救恤場を設置し,院内救済を原則とした。

イギリスは,ワークハウス(労役場)で救済しましたが,恤救規則は居宅で救済しました。

施設ができるのは,救護法(1929)まで待たなければなりません。しかし原則は居宅救護です。


2 日清戦争の前後には,労働者の貧困や都市下層社会の問題が発生し,政府は,救貧行政の強化を図るために,窮民救助法を制定した。

明治初期に成立した恤救規則は,驚くなかれ,1929(昭和4)年の救護法成立まで存続しました。

それまで救貧法案はありましたが,すべて廃案になっています。

先述のように,貧困は個人責任だとされていたからです。そのために,明治~大正期は,民間の慈善事業が支えることになります。


3 日露戦争後には,政府は,地方行政による救貧行政の進展を図るために,感化救済事業講習会を開催し,防貧だけでなく救貧の必要性を強調した。

日清戦争では,清(中国)から多額の賠償金を受け取ることができました。しかし日露戦争では賠償金を受けることができず,政府は財政難に陥ります。そこで,救貧よりも防貧を目指し,感化救済事業講習会を開催しました。感化とは「良い影響を与える」といった意味合いで,臣民の労働意欲を高めて,良民にしていこうと考えたものです。

財政が厳しくなってくると,給付するだけではなく,就労政策に力を入れていくのはいつの時代も同じです。

感化救済事業は,明治版「福祉から就労へ」政策と言えるでしょう。


4 第一次世界大戦末期には,物価高騰による生活苦を背景に勃発した米騒動が,社会連帯責任を強調した社会事業行政を発展させる一因となった。

富山の主婦たちから始まった米騒動は,全国に飛び火して大規模化していきます。軍隊を動員してようやく鎮圧することになります。

過激なことや外部からの圧力がないと大きく変わっていかないのが我が国のようです。


5 日中戦争が全面化した時期には,政府は,軍人の保護を目的として,戦時厚生事業を行い,傷病軍人対策として廃兵院法を制定した。

廃兵院法が制定されたのは,日露戦争後です。

廃兵院法は,この時しか出題されたことがありません。

日露戦争は,「大国に勝利して,日本が世界に認められるきっかけとなった」という側面がクローズアップされますが,日本で防貧という考え方が生まれたということは押さえておきたいです。

救貧 ➡ 古くからある施策
 
防貧 ➡ 新しい施策

防貧とは,貧困に陥らないようにするための施策です。1922年には,わが国初の社会保険となる健康保険法が成立します。

現在の日本の社会保険制度は

救貧 ➡ 生活保護制度

防貧 ➡ 社会保険制度

その中間となるのが,社会福祉制度です。


〈今日のまとめ〉

米騒動は,複数の科目で出題される可能性があります。

節目の年でなくても,米騒動は重要ですが,この機会にしっかり押さえておきたいです。

実質的には,日本の本格的な福祉政策の始まりとなります。

2018年3月10日土曜日

国家試験はいつも難しい!!

社会福祉士の国試は,平成元年に始まりました。

そのため,平成と国試は同じ年月を刻んでいます。

平成30年の国試は第30回でした。

医療の資格から比べると歴史は短いとは言え,30年の歴史は長いです。

第30回国試はおそらく一つの区切りになることでしょう。

さて,第30回国試の合格発表は3/15です。

その日にならないと第30回国試の合格基準点が分からないので,ギリギリの点数の人は本当に辛いと思います。

先日から,過去にさかのぼって,この問題はここに出ていた,といったことを書いていますが,それは実は完全に後出しじゃんけんです。

振り返れば「○○だった」と言えます。

本当は,国試はそんなものではなく,その日まで誰も予想できません。

予想したとしても的中するのは,150問のうちのたった数問でしょう。


多くの人たちもチームfukufuku21も今年の国試で予想していたのは,社会福祉法人改革です。

実際に出題された問題は以下の通りです。


第30回・問題122
社会福祉法人の財務に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 再投下可能な財産(社会福祉充実残額)を算定しなければならない。 
2 土地は,減価償却の対象となる資産である。
3 財務会計は,組織内での使用を目的とする。
4 財務諸表に関する開示義務はない。
5 役員の報酬等の支給の基準を公表する義務はない。

ばっちりあたったと言えるでしょう。

しかしポイントは当たっているかもしれませんが,厳密に言えば,正解するためには,勉強したことプラス自分の現実的な体験を通して答えを選んだ人が多いのではないかと思います。

過去問では完璧に解けたのに,本番では取れませんでした。

といった話はよく聞きます。

過去問がそのまま出題されるのであれば,過去問の丸覚えでも対応できるかもしれません。

国試は,少しずつ重なり,少しずつ違います。

ここが怖いところです。

過去3年の過去問を3回解けば合格できる

このようにアドバイスしてくれる人がいるでしょう。

それはその人にとって真実です。

しかし他の人が真似して同じようにいくわけがありません。

なぜならベースが違うからです。

つまりほかの知識で知らず知らずのうちに知識で補正しているからです。


過去3年の過去問を3回解けば合格できる

すべての選択肢をばらして,解説してみると分かりますが,その知識で点数が取れるのはほんのわずかです。

この都市伝説がある限り,本当はそうではないことが分かっている人は合格できます。

それとは違う勉強をすればよいわけです。


3か月の勉強で合格できる

現役受験生で不合格になる方は,ほとんどが準備不足です。

第31回国試まであと11か月を切りました。

基礎力をつけて国試に臨めば,決して合格は難しい試験ではありません。

しかし,3か月の勉強で合格できるほど簡単ではありません。

時間がない,覚えるのが苦手,と自覚している方ほど,合格しています。


60歳以上の方は,特に合格率が高いと推測しています。

  ↓    ↓

60歳以上の合格率は極めて高い!! 40歳以上で合格できる勉強方法

記憶力の低下を自覚しているからでしょう。

おそらく,第30回国試でも,ここで分析したものとそれほど大きく変わらないデータが示されるでしょう。

2018年3月9日金曜日

国試は「少しずつ重なっていて,少しずつ違う」という現実

参考書も過去問も完璧で臨んだ

しかし

合格点には届かなかった

どうしたらよいのか,分からなくなるのではないでしょうか。

国試は,少しずつ重なっていて,少しずつずれています。

以下の問題で確認してみましょう。

第27回・問題25 救貧制度の対象者として,正しいものを1つ選びなさい。
1 恤救規則(1874年(明治7年))では,身寄りのある障害者も含まれた。
2 軍事救護法(1917年(大正6年))では,戦死した軍人の内縁の妻も含まれた。
3 救護法(1929年(昭和4年))では,労働能力のある失業者も含まれた。
4 旧生活保護法(1946年(昭和21年))では,素行不良な者も含まれた。
5 現行生活保護法(1950年(昭和25年))では,扶養義務者のいる者も含まれる。

第30回・問題24 次のうち,日本の社会福祉制度に関する歴史の記述として,正しいものを1つ選びなさい。
1 恤救規則(1874年(明治7年))は,政府の救済義務を優先した。
2 行旅病人及行旅死亡人取扱法(1899年(明治32年))は,救護法の制定によって廃止された。
3 感化法の制定(1900年(明治33年))を機に,内務省に社会局が新設された。
4 救護法(1929年(昭和4年))における救護施設には,孤児院,養老院が含まれる。
5 児童虐待防止法(1933年(昭和8年))は,母子保護法の制定を受けて制定された。

この2つの問題で重なっているのは,

恤救規則
救護法

重なっていないのは,

軍事救護法
旧生活保護法
現行生活保護法
行旅病人及行旅死亡人取扱法
感化法
旧・児童虐待防止法

第30回で正解なのは,救護法です。

しかし,第27回に出題されているのは,

同じ救護法でも,出題ポイントが違います。

第27回の出題ポイント ➡ 労働能力のある失業者も含まれた。
第30回の出題ポイント ➡ 救護施設には,孤児院,養老院が含まれる。

間違い選択肢で重なっているのは,恤救規則です。

同じ恤救規則でも,出題ポイントは違います。

第27回の出題ポイント ➡ 身寄りのある障害者も含まれた。
第30回の出題ポイント ➡ 政府の救済義務を優先した。

同じように見える問題でも,実はまったく内容が違う出題になっています。


第28・29回の間に出題された救護法に関する出題は。

第28回・問題63 救護法(1929年(昭和4年))は,救護を目的とする施設への収容を原則とした。

第28回・問題63 救護法(1929 年(昭和4 年))における扶助の種類は,生活扶助,生業扶助,助産の3種類であった。

第29回・問題35 戦前の方面委員による救護法制定・実施の運動は,ソーシャルアクションの事例とされる。


やっぱり第30回に直結する問題はありません。

第27回と第30回に出題されているので,問題を講評する先生は,「簡単な問題です」と言うと思います。

しかし,過去3回の国試問題では,この問題に対しては,どこにもヒントはありません。

この問題で正解するためには,過去3年間の問題の知識ではないことが分かるでしょう。

実は,この問題を正解にできる問題は過去には,以下のように出題されています。

第23回・問題24・選択肢4

昭和4年に救護法が施行され,居宅における救護のほか,養老院,孤児院等の救護施設での救護を行うとともに,市町村長を民生委員が補助する体制を整えた。

例示している施設も,養老院と孤児院というように重なっています。

この2つについて,過去に出題されたのは,旧カリ時代も含めてこの1回しかないのです。

簡単そうに見えて,実はそんなに簡単ではない問題です。

国試の講評をされる先生方は,知識に関して,恤救規則も救護法も知識があるので,その知識で補正して問題を見ています。

しかし,一つひとつを詳しくみていくと,決して簡単な問題ではないことが改めて分かっていただけるのではないでしょうか。



〈今日の一言〉


簡単そうに見えても,決して国試は簡単ではありません。

過去問を解くことで国試に慣れることは,合格するための必要条件です。

しかし,十分条件ではありません。

なぜなら,多くの人が手にする過去3年間の問題では,知識が足りないからです。

本来は,過去に出題された問題を分析して編集された参考書を使って勉強するのが適切です。

3年間の過去問で合格する知識をつけることは困難です。

参考書が,過去問を分析して編集されていることから分かるように,国試は過去に出題された内容の8~9割が出題されています。

過去問で勉強するためには,それなりの年度をこなす必要があります。

古本屋で古い年度の過去問を購入しても,法制度が変わっているものがあるので,あまり使えません。

過去問を提供してくれる学校があると思います。

それらは,法制度を修正してあるはずです。それは使えます。

提供してくれる学校に通っている方は,積極的に使いましょう。

それらは,

少しずつ重なっていて,少しずつ違う

の少しずつ重なっている部分をそろえることになります。

そういう環境にない方は,参考書を使って勉強していくのが王道です。

2018年3月8日木曜日

後から問題を読んだら解けた,という出来事を考える

第30回の国家試験の合格発表まであと一週間となりました。
受験された方は,どきどきしてその時を待っていることでしょう。

試験が終わると・・・

知っているのに間違った
後から読んだら解けた

という声をたくさん聴きます。

誰もが同じことを経験していることなのでしょう。

そのため,理想を言えば,

ミスがあってもよい点数を取る!

しかしそんなに簡単に得点できないのが,国家試験の怖いところです。

しかも,合格発表で,合格基準点(いわゆるボーダーライン)が分かると,そのミスがなければ合格していたという気持ちになります。

とても悔しいことでしょう。

来年の国試で合格をつかむために,重要なことは,

なぜ問題が解けなかったのかをしっかりつかむことです。

知識が足りなかった

初めて受験された方なら,そういうこともあるはずです。

しかし,何度も受験している方は,そのほかの要因があると考えています。


知識が足りなかった
知識があいまいだった

➡ もっとしっかり勉強しよう

それこそあいまいな認識だと,同じ勉強を繰り返すことになるでしょう。
おそらく同じことが来年も起きます。

なぜなら,国試は,

少しずつ同じで,少しずつ違う

参考書を完璧にマスターしても,過去問や模擬問題集を完璧にして臨んでも,同じようには出題されないからです。

来年合格をつかむなら,

まだ国試の時の思考を振り返ってみることが大切です。

緊張感や国試会場の独特の雰囲気に呑まれて,冷静でいられなかった

こんなことはありませんでしたか?

もしこれが間違った要因だとしたら,知識を定着させる勉強のほかに,メンタル面を考えた勉強を考えなければなりません。

それができれば,

少しずつ同じで,少しずつ違う

に対応できることでしょう。

国試が難しいのは,少しずつ違うところです。

メンタル面が弱ければ,この少しずつ違う部分でやられます。


〈今日の一言〉

お酒と同じように

試験は,飲んでも,飲まれるな!

メンタル面も強化して,国試合格を目指していきましょう!!

これは現役受験組も同じです。



2018年3月7日水曜日

第30回国試を振り返る~試験委員を味方につけよう!!

最近強く思うのは,

国試に合格するためには,強いメンタルが必要

だということです。

試験当日に心が弱くなると,実力通りの力が発揮できなくなります。

このブログでは,試験委員の仕掛けるトラップをさんざん指摘してきましたが,本当は試験委員の方の方々は心優しき先生方です。

その先生方を身近に感じて,懐にちょっと飛び込む気持ちで国試に臨むことは,試験当日の心の余裕につながります。

第30回国試の委員長,副委員長は,以下の通りです。

試験委員長

坂田周一先生 立教大学名誉教授(西日本大学教授) 第26回~
秋元美世先生 東洋大学教授 第22回~
小笠原浩一先生 東北福祉大学教授 第26回~
川崎二三彦先生 子どもの虹情報研修センター センター長 第29回~
後藤澄江先生 日本福祉大学教授 第30回~
鶴岡浩樹先生 日本社会事業大学教授 第30回~
野村豊子先生 日本福祉大学教授 第28回~
福田素生先生 埼玉県立大学教授 第30回~
和気康太先生 明治学院大学教授 第30回~

これらの先生方のもとで,約60名の試験委員が第30回国試問題を作りました。

福祉現場でなじみのある方々だと思います。

どんな人が国試問題を作っているのか,実は発表されています。

知っていましたか?

試験委員が発表されるのは,毎年8月です。

ネットで調べると,各試験委員の顔写真もヒットします。

今は,問題のプール制という制度を取っているので,過去の委員が作った問題が使われることもあるとは思いますが,基本はやっぱり現在の試験委員が作った問題だと思います。

試験委員の方々は,本当に苦労して作っています。

旧カリ時代には,誤っているものを選ぶ問題が多くありました。

正しいものを選ぶよりも誤っているものを選ぶ方が受験生は楽です。実は,試験委員も同じで,誤っているものを選ぶ問題を作問する方が楽です。

自分で作問してみれば分かりますが,間違い選択肢をそれっぽく見せるように作問するのはとても難しい作業です。

そのために,間違い選択肢をつくるための常とう手段に頼ることになります。

国試問題の文字数が少なくなっているのは,基礎力をもった人には解きやすい問題となります。しかし,文字数が短くなっていることは,日本語的な言い回りの不自然さがなくなることにもつながります。

基礎力のある人と基礎力が不足している人では,かなりの点数の開きが出てくることが予測できます。


試験委員は,専門領域から出題する!!

試験委員は誰がなってもそんなに変わらないと思うかもしれません。

しかし,人がつくる問題なので,不得意領域の問題ではなく,自分の専門領域から出題したいと思うはずです。

明治学院大学教授の和気康太先生の研究領域を調べると,「高齢者保健福祉の領域における国際比較調査の方法論の研究」があります。

後出しじゃんけんのようで申し訳ありませんが,それが以下の問題につながっているように思います。

第30回・問題126 

「平成28年版高齢社会白書」(内閣府)における,国際比較調査(日本,アメリカ,ドイツ,スウェーデン)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 現在の貯蓄や資産が老後の備えとして「やや足りない」と「まったく足りない」と回答した高齢者の割合の合計は,日本が最も多い。
2 近所の人と「病気の時に助け合う」と回答した高齢者の割合は,日本が最も多い。
3 「今後,収入を伴う仕事をしたい(続けたい)」と回答した高齢者の割合は,日本が最も少ない。
4 ふだん,近所の人と「お茶や食事を一緒にする」と回答した高齢者の割合は,日本が最も多い。
5 老後生活に「満足している」と「まあ満足している」と回答した高齢者の割合の合計は,日本が最も多い。


答えは,1です。

受験した人は,この問題を見たとき「この問題は何?」と思ったことでしょう。

改めて今思うと,和気先生が作問されたのかなあ,と思います。

だからと言って,試験委員の情報を受験生の皆さんが分析する必要はありません。

それよりも,試験委員を身近に感じて,懐にに飛び込む気持ちで試験に臨むことができたとしたら,必ず実力通りの力を発揮することができると信じています。

これからパラリンピックが開幕します。

強いメンタルを持った選手たちが活躍してくれることでしょう。


〈今日の一言〉

国試に向けた勉強は,孤独で辛いかもしれません。

それでも,歯を食いしばって勉強を続けた先には,資格取得という最高の結末が待っています。

その明るい未来を想像しながら,頑張っていきましょう!!

私たち,チームfukufuku21は,努力を底支えするプラスアルファの情報を提供していきたいと思います。

2018年3月6日火曜日

国家試験を攻略する勉強法~人名問題はくせをつかむことが大切!!

前回の歴史に続いて,今回は多くの人が苦手とする人名を取り上げます。

第30回国試を見てみましょう。

第30回・問題10 思考や知能に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 拡散的思考とは,問題解決の際に,一つの解答を探索しようとする思考方法である。
2 洞察とは,問題解決のための方法を一つひとつ試して,成功する手法を探していく思考方法である。
3 知能指数(IQ)は,知能検査から得られる生活年齢と暦年齢の比によって計算される。
4 結晶性知能とは,過去の学習や経験を適用して得られた判断力や習慣のことである。
5 成人用知能検査であるWAISは,フランスのビネー(Binet,A)によって開発された。

正解は,4。

【30-12】 ピアジェ(Piaget,J.)の認知発達理論に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 体積や量の保存の概念は,感覚運動期に獲得される。
2 自己中心的な思考は,形式的操作期の特徴である。
3 抽象的な論理的思考は,前操作期に発達する。
4 可逆的な操作は,具体的操作期に可能となる。
5 対象の永続性は,形式的操作期に獲得される。

正解は,4。


第30回・問題17 次の記述のうち,ウェルマン(Wellman,B.)の「コミュニティ解放論」の説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 特定の関心に基づくアソシエーションが,コミュニティを基盤として多様に展開している。
2 都市化の進展によってコミュニティは喪失若しくは解体されている。
3 都市化が進展しても,近隣を単位としたコミュニティは存続している。
4 交通通信手段の発達によって,コミュニティは地域という空間に限定されない形で新しく展開している。
5 コミュニティが,地域での自立生活を可能にする対人サービスを提供するようになっている。

正解は,4。

第30回・問題22 ロールズ(Rawls,J.)が論じた「正義」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 成員の快楽の総和を最大化する社会が,最も望ましいと論じた。
2 社会で最も不遇な人の最大の便益となるように,資源配分の是正が行われるべきであると論じた。
3 諸個人に対する平等な基本的自由の実現が不可能であることを前提に,正義を論じた。
4 「無知のヴェール」に包まれた個人を想定した議論では,功利主義的な社会が構想されることになると論じた。
5 「さまざまな生き方」を選べる基本的なケイパビリティを平等に配分することが,正義であると論じた。

正解は,2。

第30回・問題28 貧困に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ポーガム(Paugam,S)は,車輪になぞらえて,経済的貧困と関係的・象徴的側面の関係を論じた。
2 タウンゼント(Townsend,P)は,相対的剥奪指標を用いて相対的貧困を分析した。
3 ピケティ(Piketty,T.)は,資産格差は貧困の世代間連鎖をもたらさないと論じた。
4 ラウントリー(Rowntree,B.S)は,ロンドン市民の貧困調査を通じて「見えない貧困」を発見した。
5 リスター(Lister,R.)は,社会的降格という概念を通して,現代の貧困の特徴を論じた。

正解は,2。

第30回・問題93 日本の社会福祉の発展に寄与した人物に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 石井十次は,医療ソーシャルワーカーとして実践に携わった。
2 浅賀ふさは,北海道家庭学校を創設し,感化教育を実践した。
3 岡村重夫は,社会関係の主体的側面に焦点を当てた社会福祉固有の視点と領域を提起した。
4 留岡幸助は,ケースワーク技術や援助プロセスにおける理論を発展させた。
5 竹内愛二は,「無制限主義」を掲げ,孤児を救済する民間社会事業を展開した。

正解は,3。

第30回・問題95 次のうち,ノーマライゼーションの原理を八つに分けて整理した人物として,適切なものを1つ選びなさい。
1 ソロモン(Solomon,B)
2 バンク-ミケルセン(Bank-Mikkelsen,N)
3 ヴォルフェンスベルガー(Wolfensberger,W.)
4 サリービー(Saleebey,D)
5 ニィリエ(Nirje,B)

正解は,4。

第30回・問題100 ソーシャルワーク実践理論に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 グループワークを体系化したのは,リッチモンド(Richmond,M)である。
2 治療モデルを確立したのは,タフト(Taft,J)とロビンソン(Robinson,V)である。
3 生活モデルを提唱したのは,ピンカス(Pincus,A)とミナハン(Minahan,A)である。
4 ジェネラリスト・ソーシャルワークは,ソーシャルワーク理論の統合化により発展した。
5 ナラティブ・アプローチは,専門性に基づく支援者の知識に着目した。

正解は,4。

第30回・問題102 リード(Reid,W.)とエプスタイン(Epstein,L.)が提唱した課題中心アプローチに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ストレングスモデルの影響を受けている。
2 過去に起きた出来事について探索し,問題の原因を究明する。
3 支援期間を短期に設定し,処遇目標や面接の回数などを明確化する。
4 クライエント自らが解決困難と考える問題を,支援対象とする。
5 精神分析的な方法を用いて,クライエントのアセスメントをする。

答えは,3。

第30回・問題137 以下の文章は,障害児福祉の発展に貢献した人物の紹介である。紹介されている人物として,正しいものを1つ選びなさい。
近江学園の創設者。重度の障害児であっても,人間らしく生きていくことが重要であると考え,「この子らに世の光を」ではなく,「この子らを世の光に」という言葉を通して,人間尊重の福祉の取組を展開した。
1 石井亮一
2 高木憲次
3 糸賀一雄
4 福井達雨
5 留岡幸助

全部で,10問。

A=B

で解ける問題は,3問。

それ以外は,人名部分ではないところに正解がある。

多くの場合は,人名よりも,その内容が分かっていないと解けません。



第30回・問題22 ロールズ(Rawls,J.)が論じた「正義」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 成員の快楽の総和を最大化する社会が,最も望ましいと論じた。
2 社会で最も不遇な人の最大の便益となるように,資源配分の是正が行われるべきであると論じた。
3 諸個人に対する平等な基本的自由の実現が不可能であることを前提に,正義を論じた。
4 「無知のヴェール」に包まれた個人を想定した議論では,功利主義的な社会が構想されることになると論じた。
5 「さまざまな生き方」を選べる基本的なケイパビリティを平等に配分することが,正義であると論じた。

この問題であれば,

ロールズ=格差原理

の知識ではなく,格差原理とは・・・,といった覚え方が必要です。

第30回・問題102 リード(Reid,W.)とエプスタイン(Epstein,L.)が提唱した課題中心アプローチに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ストレングスモデルの影響を受けている。
2 過去に起きた出来事について探索し,問題の原因を究明する。
3 支援期間を短期に設定し,処遇目標や面接の回数などを明確化する。
4 クライエント自らが解決困難と考える問題を,支援対象とする。
5 精神分析的な方法を用いて,クライエントのアセスメントをする。

この問題であれば,

リードとエプスタイン=課題中心アプローチ

の知識ではなく,課題中心アプローチとは・・・。

といった覚え方が必要です。

人名そのものが問われる問題は,本当に数少ないです。

参考書に書いてある人名の多くは,覚える必要のないもの(一見さん)です。

常連さんである人たちを覚えれば何とかなります。

問題28では・・・

1 ポーガム(Paugam,S) 一見さん ➡ 不正解

2 タウンゼント(Townsend,P) 超常連さん(10回出題) ➡ 正解

3 ピケティ(Piketty,T.) 一見さん ➡ 不正解

4 ラウントリー(Rowntree,B.S) 超常連さん(16回) ➡ 不正解

5 リスター(Lister,R.) 2回目の出題 ➡ 不正解

近年では,一見さんで正解になったのは,第27回のスピッカーのみです。

〈今日のまとめ〉

人名問題は,人の名前を覚えることに力を入れるのではなく,その内容を覚えることです。


2018年3月5日月曜日

第31回国試攻略のための勉強法~歴史は誰もが苦手!!

第27回国試で出題された歴史にかかわる問題です。

第27回・問題25 
救貧制度の対象者として,正しいものを1つ選びなさい。
1 恤救規則(1874年(明治7年))では,身寄りのある障害者も含まれた。
2 軍事救護法(1917年(大正6年))で× (内縁の妻は含まれない)
3 救護法(1929年(昭和4年))では,労働能力のある失業者も含まれた。
4 旧生活保護法(1946年(昭和21年))では,素行不良な者も含まれた。
5 現行生活保護法(1950年(昭和25年))では,扶養義務者のいる者も含まれる。

歴史問題に見せかけて,選択肢5が正解です。

第30回・問題33 
地域福祉にかかわるイギリスの歴史に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 チャルマーズ(Chalmers,T.)による隣友運動(1819年)では,貧困家庭への訪問活動が行われ,救貧法の改正に大きな影響を与えた。
2 ロンドンで設立された慈善組織協会(1869年)は,慈善活動を組織化するとともに友愛訪問を実施し,ソーシャルワークの形成に大きな影響を与えた。
3 ロンドンの富裕地域に設立されたトインビーホール(1884年)は,セツルメントの拠点として,富裕層による慈善活動を喚起する役割を担った。
4 「ベヴァリッジ報告」(1942年)は,社会保障制度の基礎となるとともに,地方自治体におけるパーソナル・ソーシャルサービスを中心とした組織改革をもたらした。
5 イギリス政府の病院計画(1962年)では,10年間で知的障害者の入所施設の利用者数をほぼ半数に減らし,コミュニティケアを推進する政策を打ち出した。

正解は,選択肢2。COSに関するものです。地域福祉の理論と方法とともに相談援助の基盤と専門職でも出題されます。

第27回・問題50 
社会保障制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 1950年の社会保障制度審議会勧告は,日本の社会保障制度について,租税を財源とした社会扶助制度を中心に充実させるとした。
2 1952年の「ILO第102号条約」では,社会保障の給付事由の一つとして,すでに日本の介護保険法にいわれる意味での要介護状態にあることを挙げていた。
3 1962年の社会保障制度審議会勧告は,社会保障制度の体系化を構想し,社会福祉対策を「一般所得階層に対する施策」として位置づけた。
4 1981年の「難民条約」の批准に伴う法整備により,国民年金法,児童手当法,児童扶養手当法,「特別児童扶養手当法」から国籍要件が削除された。
5 1995年の社会保障制度審議会勧告は,後期高齢者医療制度の創設を提言した。

正解は,選択肢4です。これも歴史問題に見せかけて,国籍要件がないという現在の問題です。

第30回・問題75 
日本における医療ソーシャルワーカーの職能としての発展に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 第二次世界大戦前に,聖路加国際病院の前身病院の医療社会事業部に医療ソーシャルワーカーとして清水利子が採用された。
2 第二次世界大戦後に,連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)主導の下,モデル保健所として初めて専任の「医療社会事業係」が配置されたのは板橋保健所である。
3 1953年(昭和28年)に,日本医療社会事業家協会が設立されたことにより,日本における全国的な医療ソーシャルワーカーの職能団体が立ち上がった。
4 医療機関が社会福祉士養成課程における実習施設等の範囲に含められたのは,社会福祉士及び介護福祉士法が成立した時からである。
5 診療報酬改定により,初めて社会福祉士が報酬点数上に位置づけられるようになったのは1992年(平成4年)からである。

正解は,選択肢3。現在の日本医療社会福祉協会の発足に関する問題です。

第30回・問題93 
日本におけるソーシャルワークの形成過程に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 大正期には,公営のセツルメントが誕生し活動を展開した。
2 昭和初期から第二次世界大戦中には,感化救済事業が活発化した。
3 第二次世界大戦直後には,社会福祉教育の実践が連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の指示で中断された。
4 高度経済成長期には,エビデンスに基づくソーシャルワークのあり方が重視された。
5 社会福祉基礎構造改革時には,ソーシャルワークの統合化の考え方が外国から初めて紹介された。

正解は,選択肢1。セツルメントは,相談援助の基盤と専門職とともに地域福祉の理論と方法でも出題されます。


歴史にかかわる問題は,第27回ではこの5問だけです。

この法律は何年にできたといった出題はないのが分かるでしょう。

第30回国試の問題131の高齢者施策の開始が最も早いものを選びなさい,という問題が,現行カリキュラムでは初めて出題されていますが,それ以外にはそのようなタイプの出題はありません。

どのように発展してきたのか,という流れをつかむことの方が大切です。

年号を覚えるよりも,年代を押さえることが適切です。

このような問題を見ても,まだ年号を覚えますか?

2018年3月4日日曜日

第31回国試攻略のための勉強法~第22回国試が現行カリキュラムの国試問題の基本形

現行カリキュラムは第22回から実施されています。第31回が10回目の節目となります。

果たしてどんな試験になることでしょう。

さて,第22回の国試は,現行カリキュラムでは,このように出題しますよ,ということを明確にしたものです。

もちろん,現在と同じように出題基準が提示されていましたが,実際にはどんな問題が出題されるのかは,実施されるまで分かりません。

実は科目ごとの問題数は,現在も示されたことはありませんが,何問ずつの出題なるかも第22回国試の実施前には分からない状態でした。

それでも,参考書を発行している会社は,旧カリキュラム時代に出来された問題を分析し,見事おおかた的中させています。

第22回国試問題は,奇をてらうことなく,出題基準どおりに出題したからです。

そのため,この国試問題は,その後の国試に大きな影響を与えています。

つまり第22回国試が現行カリキュラムの基本形なのです。

例えば,こんな問題があります。


第22回・問題47

市町村が策定主体と定められた福祉に関する計画についての次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 市町村は,障害者基本法に基づき,市町村障害者計画を策定しなければならないが,特に計画期間の定めは置かれていない。
2 市町村は,社会福祉法において,5年を一期とする地域福祉計画を策定しなければならないとされている。
3 市町村は,次世代育成支援対策推進法において,3年を一期とする次世代育成支援行動計画を策定するものとするとされている。
4 市町村は,老人福祉法において,5年を一期とする老人福祉計画を作成するものとされている。
5 市町村は,介護保険法において,1年を一期とする介護保険事業計画を定めるもとするとされている。

これを見て,ぴんと来た人もいることでしょう。

第30回は,形を変えて,以下のように出題されました。

第30回・問題47
次の福祉計画のうち,現行法上の計画期間が5年を一期とするものを1つ選びなさい。
1 市町村介護保険事業計画
2 市町村老人福祉計画
3 市町村障害福祉計画
4 市町村子ども・子育て支援事業計画
5 市町村地域福祉計画

時代に合わせて,次世代育成支援行動計画が,子ども・子育て支援事業計画に変わっているくらいの違いです。

実は,策定期間に関する出題がまるごとあったのは,このほかに以下の第26回も含めてたった3回しかありません。

第26回・問題48
都道府県が策定する福祉計画等の計画期間に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 次世代育成支援に関する都道府県行動計画は,3年を一期として定めるものとされている。
2 都道府県介護保険事業支援計画は,3年を一期として定めるものとされている。
3 都道府県健康増進計画は,3年を一期として定めるものとされている。
4 都道府県高齢者居住安定確保計画は,3年を一期として定めるものとされている。
5 都道府県地域福祉支援計画は,3年を一期として定めるものとされている。


実は,この第26回の問題があったからこそ,チームfukufuku21は,ケアしてもらえるように,覚え方のコツを以下のようにお知らせしたのです。

行政計画の基本は,策定期間がないか,あるいは5年を1期です。
3年を1期とするものは,介護保険事業計画と障害福祉計画しかありません。

医療計画は,平成30年から従来の5年を1期とするものから,6年を1期に変更されています。

これは2025年に向けての対策です。2018年は,いろいろな行政計画がそろう年ですが,5年を1期のままだと,介護保険事業計画と医療計画がそろうのは15年先になりますが,6年にすると6年先にそろいます。そうすると2025年の前にもう一度大きな見直しを行うことができるのです。

2025年に向けて国の本気度がよく分かることでしょう。

なお,策定期間が一問まるごと出題されることは,しばらくはないはずです。

社会福祉士の国試は,過去問に出題された範囲から8割は出題されます。

そうでないと,国試で点数を取ることが難しいからです。

しかし,この場合の過去問というのは,直近3年間ではないということだけは銘記しておいていただきたいと思います。

ほんとうは,過去問すべてを使って,解説すれば最も効果的です。

なぜなら,国試問題は,少しずつ同じで少しずつ違いますが,過去問をずっと追っていくことで,ずれている部分が重なり合うからです。

もしそういう教材を提供してくれる学校もあると思います。それは徹底的に活用しましょう。

次に参考となるのが,第27回国試問題です。

ここに第31回のヒントが満載となっています。

合格発表後から,来年に向けた本格スタートを切りたいと思っています。

昨年,第26回国試問題を取り上げたように,今年は第27回国試問題を切り口として,解説と対策を紹介していきたいと思います。

直近3回の問題を中心に勉強するよりも何倍も知識の差がつくはずです。

第30回国試の内容からももちろん第31回に出題されるものはあります。

しかしそれはほんの数問です。

第30回国試問題を解くのは,内容を覚えることよりも,国試問題に慣れる意味の方が大きいです。

<今日の一言>

過去3年間の過去問を3回解いて合格できる国試なら,もっと多くの人が合格しても良いはずです。

そうならないのは,国試は少しずつ同じで,少しずつ違うからです。

直近3年間の国試問題からも繰り返し出題されるものもあります。しかしそれは5つの選択肢がある中のわずか1つか2つです。

それだけの知識では,合格基準点(いわゆるボーダーライン)を上回る得点を取ることはできません。

2018年3月3日土曜日

自己採点する? しない?

第30回国試から1か月が経ちました。

いろいろな会社から解答速報が出ています。もう既に自己採点をした方もいらっしゃることでしょう。

個々の勉強スタイルによって,「自己採点する」「自己採点しない」はあるでしょう。

自己採点してみて,今改めて問題を見ると解けたものあるのではないでしょうか。

自己採点の結果が芳しくなくても,後から解けた問題を積み上げるとそこそこの点数になるかもしれません。

しかし,今解けても意味がなく,試験会場で取れなければなりません。

学習部屋に来ていただいている方の多くは,すでに自己採点していると思います。

来年に向けた勉強はいつ始める?

合格ラインは合格発表まで分かりませんが,もし再受験になりそうだと思う方は,ぜひ問題の振り返りをしていたたきたいと思います。

「千里の道も一歩から」。合格ラインが分からない中,気が早いと思いますが,1年は本当に早いです。一度ねじがすべて緩んでしまうと,再びねじを巻くのはかなりの労力が必要です。

「気が付いたら秋だった」ということになると負のスパイラルに陥りますので,要注意です。

2018年3月2日金曜日

30回国試から第31回国試のボーダーライン(合格基準点)を読む!!

第30回国家試験の合格発表は,3/15(木)です。

受験された方は,ドキドキしてその日を待っていることでしょう。

第26回国試国試から現在の国家試験委員長が坂田周一先生になり,第30回まで至っています。

本来は試験委員長が変わったからといって,試験が大きく変わるわけではないはずですが,大きな潮目になっていることは間違いありません。

今,確認できるのは第12回国試以降です。

第12~14回 阿部志郎先生(神奈川県立保健福祉大学 元・学長) 3年間

第15~18回 山崎美貴子先生(神奈川県立保健福祉大学 元・学長) 4年間

第19~25回 古川孝順先生(西九州大学 副学長) 7年間

第26~30回 坂田周一先生(西日本大学 教授) 5年間

第12回以前の試験委員長は分かりませんが,山崎先生が4年務めていらっしゃることから,4年が一つの基準のように思います。


第15回は,初めて合格基準点と正答を発表した年です。

第19回は,社会福祉原論が難解すぎて,0点になった人が続出した年です。

第26回は,今の国試の起点となった年です。

古川先生が,7年という奇数年となっている理由が第25回国試だと仮定すれば,任期途中で退任されたということも考えられます。もともと8年務める予定だったものが退任が1年早かったという憶測です。

坂田先生は,5年間勤められていますが,第33回にカリキュラム改正に伴う国試の変更があるとすれば,そのまま3年間試験委員長を務めて,新カリ国試に突入することもあるかもしれません。

しかし,先日書いたように,カリキュラム改正が,当初の予定より1年遅れているので,その前に変わって,慣れたところで新しい試験に対応するということも考えられます。

坂田先生が古川先生の1年を引き継いだとすれば,1年+4年=5年の第30回が最後である可能性もあります。

坂田先生がそのまま第31回も試験委員長を務めることになれば,試験もそれほど変わらないはずです。

しかし,試験委員長が変わるとすれば,新しい潮目となる可能性があります。
基礎力の重要性はますます高まります。

3年間の過去問で対応しようと思っている人はとても危険です。


さて,前置きが長くなりました。

第30回国試から,第31回国試のボーダーラインを考えてみます。

問題の作り方の基本(ルール)は試験センターが各試験委員に示しているはずなので,試験委員長が変わっても大きく変わることはないはずです。

そう考えると,第31回国試の合格ラインが80点台の前半になるような出題にはならないと考えられます。

私たちが指摘しているように,指摘している問題文の文字数が短くなっていることは,勉強不足でも合格できる可能性を低めることにつながります。

なぜなら,問題文が長いことは,問題文の中に矛盾などのロジック的な破たんを起こすことが多かったので,勉強不足の人でもそこに気が付けば,得点することができました。

いわゆる「日本語的におかしい」問題になっていたのでしょう。

問題文の短さは,知識がそのまま得点力につながります。しかし「日本語的におかしい」部分はなくなりますので,知識が足りなくても日本語的に読めば得点できるといった糸口は限りなく見つけにくいことでしょう。

逆の面から言えば,基礎力をしっかりつけた人は得点しやすいので,できる人とできない人の点数の開きはどんどん開いていきます。

勉強不足で合格するのは,とても厳しい試験になることは間違いありません。

<今日の一言>

第30回国試をちょこっと解いてみて,何となく「点数が取れそうだな」というイメージを持つ人は多いかもしれません。

しかし,実際に合格基準点を超える点数を取るのは容易ではありません。

言えるのは,基礎力をつけることが合格につながることです。

しかも今まで以上に,しっかり勉強した人はその努力が報われる国試になることでしょう。

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