第31回国試の合格発表がありました。
合格基準点(いわゆるボーダーライン)は,99点という過去にはないものとなりました。
これまでの最高点は,第15回の91点です。
しかし,この時は4問も不適切問題があり,実質は87点だったと考えられます。
不適切問題がなくて最高点なのは,第27回の88点です。
今回の結果は2つのことが考えられます。
①記念受験組の減少
第29回の受験者は45,828名。第30回は43,937名です。受験料が大幅に上がったことで,あまり勉強しないで受験するいわゆる記念受験組,そしてリベンジ組が受験を控えたことで受験者数が減ったと考えられます。そのために,受験者の多くは,実力者ぞろいになったと考えられます。たら,ればで言うと,受験者が昨年並みだったとすれば,合格基準点は95点前後になっていたのではないでしょうか。
②合格率の安定化
旧カリキュラム時代の国試の合格率は,30%程度を保っていました。現行カリキュラムになってからは,問題が解きにくくなり,30%に届くことはなくなり,合格率が最も高かったのは,第26回の27.5%にとどまっています。第29回は25.8%にまで低下しています。
これらから考えられるのは,社会福祉士の国試は,合格基準点は90点程度,合格率は30%程度を基本にしているのではないか,ということです。
近年は国試問題の文字数を少なくすることで,解きやすい問題づくりを図ってきていました。しかしそれでも思うような成果は得られず,選択肢の内容を工夫してきました。今までは間違い選択肢の中には,まったくのでたらめの文章を挟み込んでいましたが,今年はそれがほとんど見られません。
それによって,しっかり勉強してきた人は高得点が取れたことと思います。
そこに記念受験組の減少という要因が重なって,意図以上に高得点に偏ったものと考えられます。
第31回国試を考えます。
国試が30%程度,90点程度を目指すのは,今まで通りだと思います。
それを前提に考えると,今年とは違ったものとなることでしょう。
確実に難易度は上がります。
とても厳しいものとなることは確実です。
大きな動きがあった次の年は,必ず揺り戻しがあります。
第31回国試を初めて受験する予定の方で,第30回国試問題を解いた方もいらっしゃることでしょう。
勉強があまり進んでいなくても80点台が取れたという方もいるでしょう。
第31回は確実に難しくなります。
今年取れたということで安心しないで,しっかり勉強をすることが大切です。
勉強したことは得点できる。
勉強が足りない人は得点できない。
こんな試験になるのは間違いないです。
国試はいつも難しい
ここを間違えると大変なことになります。
最新の記事
障害者総合支援法における相談支援
今日のテーマは,「障害者総合支援法における相談支援」です。 同法に規定される相談支援機関の中心は,基幹相談支援センターです。 〈基幹相談支援センターの業務〉 ・総合的・専門的な相談の実施 ・地域の相談支援体制強化の取組 ...
過去一週間でよく読まれている記事
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
診断主義は,1920年代に登場して,現在は,心理社会的アプローチに発展しています。 機能主義は,機能主義の批判的な立場で,1930年代に登場して,現在,機能的アプローチに発展しています。 それでは,今日の問題です。 第32回・問題101 ソーシャルワーク実践理論の基礎に関する次...
-
19世紀は,各国で産業革命が起こります。 この産業革命とは,工業化を意味しています。 大量の労働力を必要としましたが,現在と異なり,労働者を保護するような施策はほとんど行われることはありませんでした。 そこに風穴を開けたのがブース,ラウントリーらによって行われた貧困調査です。 こ...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
模擬試験を受験するとその場で解答をもらえることが多いので,すぐ自己採点する人も多いことと思います。 しかし,ここで気を付けなければならないのは,模擬試験は,実際の国家試験よりも点数が取りにくい傾向にあることです。 そこを押さえておかないと「あれだけ勉強したのに点数が取れな...
-
社会保障制度審議会は,かつて内閣総理大臣の諮問機関として,社会保障制度を審議していたもので,現在は廃止されています。 国家試験に出題されている同審議会の勧告は,1950年勧告,1962年勧告,1995年勧告の3つです。 〈1950年勧告〉 1950年勧告は,社会保障の範囲と方法を...