2024年3月31日日曜日

問題の出題意図を考える

問題のプール制


現在の国家試験は「問題のプール制」というものを採用しています。

国家試験問題は,第37回国家試験から129問になりますが,試験委員が作る問題はそれよりも多く,国試で使われる問題は実際に作成した問題のうちの一部です。


以前は,その年に作った問題のうち,使われなかった問題はすべて廃棄されていました。


問題のプール制は,使われなかった問題は廃棄せず,いつか出題する時まで取っておく制度です。この制度のため,作問の傾向が大きく変わることはなく,安定した国試にすることができます。


その一方で,出題者の意図よりも問題を選び出す人の意図が大きく影響していくことにもなります。


5個のうちから1つ選ぶよりも10個のうちから1つ選ぶほうが,選択の幅が大きくなるからです。


それでは今日の問題です。


第26回・問題41 

地域における福祉サービス等の評価に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会福祉法によると,社会福祉事業の経営者は,自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うこととされている。

2 福祉サービス第三者評価事業を行う評価者は,国が設立する第三者評価機関の認証が必要である。

3 介護保険事業においても,社会福祉法で規定される福祉サービスの第三者評価を受けることが義務づけられている。

4 保育所の福祉サービス第三者評価結果の公表は,義務化されている。

5 福祉サービス第三者評価では,法人の理念は評価対象とされていない。


今では,ほとんどのものが参考書に載っていると思うので,勉強が進んでいる人にとってはそれほど難しく感じない人もいるのではないでしょうか。


しかし,この試験が実施された当時はそんなに簡単なものではなかったはずです。


それでは詳しく見ていきましょう。


1 社会福祉法によると,社会福祉事業の経営者は,自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うこととされている。


早速,社会福祉法からの出題です。


結論から言うと,これが正解です。


社会福祉法は,福祉の基本法です。


この問題には,社会福祉士には,細かい法制度よりももっと根幹を押さえて欲しいという出題意図が感じられます。


検討がつかない問題に出会った時には,出題意図が分かれば答えを導くことができることもあります。


なお,この選択肢に〇を付けられないと,迷い道に足を踏み入れることになります。


2 福祉サービス第三者評価事業を行う評価者は,国が設立する第三者評価機関の認証が必要である。


参考書を使って勉強した人は×をつけられたと思います。

3年間の過去問を中心に勉強した人はおそらくわからなかったはず。


なぜなら,第三者評価がその前に出題されたのは,第22回です。この時点の3年間は,第23回,第24回,第25回なのでその間には出題されていないのです。

認証を受けるのは国ではなく,都道府県です。


よって×。


3 介護保険事業においても,社会福祉法で規定される福祉サービスの第三者評価を受けることが義務づけられている。


介護保険事業では,社会福祉法ではなく,介護保険法で規定されています。


よって×。


4 保育所の福祉サービス第三者評価結果の公表は,義務化されている。


これに引っ掛けられた人は多いのではないかと想像しています。


なぜなら,平成24年から社会的養護関係施設は第三者評価を受けることが義務化されたからです。


社会的養護施設に義務づけられているのは,施設長により親権代行が規定されていたり,措置のために施設を選べないなどの理由からだそうです。


保育所はそれらとは施設の性格が違うことから,義務化されていません。


よって×。


国は,いろいろなものについて,布石を打っておきます。

この問題はそろそろ機が熟してきています。



5 福祉サービス第三者評価では,法人の理念は評価対象とされていない。


このようになおかしな文章をときどき見かけます。


予測されるのは,もともと


福祉サービス第三者評価では,法人の理念は評価対象とされている。


と言う文章を否定形に変えることで間違いの選択肢をつくったのではないかということです。


もちろん法人の理念も評価対象としています。


よって×。


何かの条件を除外するような文章は,誤りの文章にするときによく使われます。


社会福祉士の国家試験の特徴は,とにかく広いということです。社会福祉士にはそれだけの知識が必要だということです。


細かい法制度よりも根幹になる部分をしっかり理解することが大切です。

2024年3月30日土曜日

勉強が進めば,ほかの科目とつながっていく

 勉強の初めは大変でも知識が増えれば加速していく


最初は,用語がわからないので,一つひとつ覚えていくのにとても時間がかかると思います。


それに耐えて,勉強を続けていくと知識は増えます。そうするといろいろな知識がつながっていきます。


試験科目は19科目ですが,それらは独立して存在しているわけではなく,関連しながら展開されています。


つまり,一つの科目の勉強をしていくことで,他の科目も強化されていくことになります。 



それでは,今日の問題を見てみましょう。



第26回・問題40 

地域福祉におけるニーズ把握に関する次の記述のうち,より適切なものを2つ選びなさい。

1 生活上のニーズを把握するために,認知症高齢者の家族から状況を聞き取り,KJ法を応用して意見を集約した。

2 子育てに関する個別具体的なニーズを把握するために,一部の回答者のニーズが強調されすぎるため聞き取り調査は避けて,質問紙調査で全体のニーズを把握した。

3 在宅介護を受けている認知症高齢者のニーズを把握するために,本人を対象としてアクション・リサーチの方法を用いて調査した。

4 在宅で暮らす高齢者の潜在的なニーズを把握するために,ふれあい・いきいきサロン活動に参加し,活動の合間に参加者から話を聞いた。

5 住民全体のニーズを把握するために,インターネットで質問に回答してもらうことで,量的に幅広く住民のニーズ把握をすることにした。



実は,地域福祉と包括的支援体制は,社会福祉調査の知識が生かされる問題が出題されます。


KJ法,アンケート収れん法,面接法,アクション・リサーチ,などです。


「社会福祉調査の基礎」とつながっていることがわかるでしょう。


それでは,それぞれの選択肢を見ていきましょう。


1 生活上のニーズを把握するために,認知症高齢者の家族から状況を聞き取り,KJ法を応用して意見を集約した。


KJ法は,自由に書いたものを,分類していく方法です。


これは正解です。


2 子育てに関する個別具体的なニーズを把握するために,一部の回答者のニーズが強調されすぎるため聞き取り調査は避けて,質問紙調査で全体のニーズを把握した。


ニーズを把握するためには,聞き取り調査は重要ですよね。言葉もそうですが,非言語による情報も重要です。


よって×。


3 在宅介護を受けている認知症高齢者のニーズを把握するために,本人を対象としてアクション・リサーチの方法を用いて調査した。


アクション・リサーチは,社会的な問題のある集団の問題解決のために,対象と一緒に改善を目指していく方法です。


つまり,個別ではなく集団を対象にするものなので,×。


4 在宅で暮らす高齢者の潜在的なニーズを把握するために,ふれあい・いきいきサロン活動に参加し,活動の合間に参加者から話を聞いた。


潜在的なニーズを把握するためには,相談窓口で待っていてもだめですね。ふれあい・いきいきサロン活動は,アウトリーチ法としてよく使われるものです。


よって〇。


5 住民全体のニーズを把握するために,インターネットで質問に回答してもらうことで,量的に幅広く住民のニーズ把握をすることにした。


インターネットを使った調査の出題は多いですが,基本的にインターネットは,母集団を代表するサンプルは得られないことを押さえておきましょう。


よって×。


<今日の一言>


勉強が進めば,知識はつながっていく!!

2024年3月29日金曜日

想像力を働かせるには,心に余裕が必要です

 知らないものを穴埋めするのは想像力


言葉で表現するのは簡単です。しかし,どのように想像するのかは難しいところです。


チームfukufuku21はこれをずっと考えていきたいと思います。



さて,今日の問題です。



第26回・問題39

地域福祉の財源に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村社会福祉協議会の財源構成について全国的な平均をみると,会費,寄附金,共同募金配分金を合計した割合は5割程度である。

2 共同募金の方法別割合で,最も大きな割合を占めているのは戸別募金である。

3 都道府県及び市町村が設置する地域福祉基金の残高は,1991年度(平成3年度)からの地方交付税措置もあいまって,一貫して増大してきた。

4 特定非営利活動法人は,社会福祉法人と同等の税制上の優遇措置がある。

5 社会福祉法人が寄附金募集を行うことは,かつては自由に行われていたが,現在では都道府県知事の許可が必要となっている。


地域福祉の財源についての問題ですが,おそらく一問まるまる出題されることはないと思います。


そのため,覚えておきたいものと覚えておかなくてもよいものが混ざっていますが,「想像力」について考えるのはよい問題です。


それでは問題を見ていきましょう。



1 市町村社会福祉協議会の財源構成について全国的な平均をみると,会費,寄附金,共同募金配分金を合計した割合は5割程度である。


想像の結果,当たる場合と当たらない場合はあります。それでも何度も想像していくことで精度は高まります。


さて,市町村社協を考えてみましょう。福祉関係八法改正(1990)によって,在宅福祉サービスが位置づけられたのは,前回お伝えしました。


その時に,訪問介護やデイサービスなどの在宅福祉サービスの担い手になったのが,市町村社協です。このような社協は事業型社協と呼ばれます。


2000年に介護保険が導入された時点で,それらのサービスに多くの民間事業者が参入しました。


それでも市町村社協がそれらのサービスの主な担い手である地域も多いことと思います。


つまり事業収入が多いことは想像つきます。


調べてみると,会費,寄附金,共同募金配分金が占める割合は1割程度だそうです。


よって×。


想像通りの結果です。


2 共同募金の方法別割合で,最も大きな割合を占めているのは戸別募金である。


共同募金と言えば,10/1に街頭に立つ「街頭募金」のイメージが強いと思います。

そのためこの選択肢に×をつけた人は多かったのではないでしょうか。


しかし,街頭募金は,実際には全体のわずか数パーセントにすぎません。


ここに出題者のひっかけポイントがあります。


一般イメージが強いもの,この場合は「街頭募金」です。


しかし,この場合,「戸別募金」という意外なものが最も大きいと言っています。


その時点で,「おや?」と思いませんか。なぜなら予想と違うからです。この認識のずれをうまく使って,ひっかけが作られています。


戸別募金は毎年7割を占めます。


街頭募金は純粋(?)な自発的な行動による募金ですが,戸別募金は,町内会などか持ち回りで家庭を訪問するために,毎年いくら出すということが暗黙の了解であることが根底にある場合があります。


そのため,安定して全体の7割を集めることができています。知っている人なら断りにくいですからね。


このように最も多いのは戸別募金です。よって正解です。



3 都道府県及び市町村が設置する地域福祉基金の残高は,1991年度(平成3年度)からの地方交付税措置もあいまって,一貫して増大してきた。


地域福祉基金は,ゴールドプランに伴って高齢者福祉施策を充実させるために平成3年に創設したものです。


地方交付税を経費に充てており,基金は預金などの運用益で福祉活動の補助を行っています。基本的には,基金は取り崩さないようにしている自治体も多いようです。


しかし今は創設当時よりも低金利時代。運用益が多く出る時代ではありません。


一貫して増大させるのは難しいです。調べてみるとやっぱり減少傾向にあるそうです。


よって×。


想像力が最大限に発揮される選択肢でしょう。



4 特定非営利活動法人は,社会福祉法人と同等の税制上の優遇措置がある。


この問題は,この科目よりも「福祉サービスの組織と経営」で出題されるものかもしれません。


社会福祉法人は,固定資産税は原則非課税ですが,NPO法人は課税されます。ほかにも違いがあります。

よって同等ではないので,×。


「同等」という表現を考えると,何か違いそうだな? と思える感性を育てたいものです。


5 社会福祉法人が寄附金募集を行うことは,かつては自由に行われていたが,現在では都道府県知事の許可が必要となっている。


自由に行われていたものが,許可が必要になったということは,不正などの社会問題になり規制が入ったというようなことが考えられます。


そんなことがあっただろうか,という疑問が生じればOKです。


もちろん,許可制ではないです。


よって×。



自分の持っている知識を総動員して,想像力を働かせましょう。


そのためには,国試には気持ちの余裕をもって臨むことが大切です。


<今日の一言>


今やっている地道な勉強は,国試会場で少しでも落ち着くためのものである


2024年3月28日木曜日

社協の歩みは絶対に押さえたい

歴史は,人名と同じく苦手としている人が多いようです。


しかし,社会福祉士の試験は歴史の試験ではありません。出題されるポイントは限られています。


それ以外のものは,ほとんどは,間違いの選択肢であると言っても過言ではありません。


それでは,今日の問題を見ていきましょう。


第26回・問題37

社会福祉協議会の歴史に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 全国社会福祉協議会は1984年(昭和59年),『地域福祉計画―理論と方法』を刊行し,都道府県,市町村,市町村社協がそれぞれの計画を一体的に策定する,いわゆる「三相計画」の構想を示した。

2 1990年(平成2年)のいわゆる福祉関係八法改正の際,社会福祉事業法の改正に伴って市町村社会福祉協議会が法制化された。

3 1999年(平成11年),国庫補助で配置されていた福祉活動専門員の経費が一般財源化された。

4 2000年(平成12年)の社会福祉法の改正において,市町村社会福祉協議会は地域福祉の推進を図ることを目的とする団体として位置づけられ,都道府県社会福祉協議会は広域的なボランティア活動を調整する団体であると位置づけられた。

5 全国社会福祉協議会は,2012年(平成24年)に「社協・生活支援活動強化方針」を策定し,主として,今後急増する在宅の認知症高齢者の生活支援を,より一層充実させていくことを目的とした。



社協の歩みについての問題です。



歴史が苦手な人は,なぜ昔のことを学ばなければならないのか,と思うでしょう。その気持ちはよく分かります。


しかし,この問題はそんなに遠い昔のことではありません。


リアルアイムで知っていることも含まれているかもしれません。



それでは,それぞれの選択肢を見て行きますね。


1 全国社会福祉協議会は1984年(昭和59年),『地域福祉計画―理論と方法』を刊行し,都道府県,市町村,市町村社協がそれぞれの計画を一体的に策定する,いわゆる「三相計画」の構想を示した。


これはまったくわかりません。冷静に▲をつけましょう。


「三相計画」って何?


と頭が真っ白になってしまうかもしれません。


この手の問題はそのように感じさせるのがねらいです。

その手に引っかかっては,問題を正しく読めなくなります。

気を付けましょう。


三相計画はもう二度と出題されないと思いますが,一応調べてみました。出題されても正解にはならないタイプのものです。


「東京都における地域福祉推進計画の基本的あり方について」(1989)

東京都地域福祉推進計画等検討委員会


三相とは


都全域を圏域として東京都が策定する「推進計画」

区市町村の策定する「区市町村福祉計画」

多様な福祉活動を基盤に住民が主体的に策定する「住民活動計画」


という,都,市町村,住民の三相だそうです。


よって×。


2 1990年(平成2年)のいわゆる福祉関係八法改正の際,社会福祉事業法の改正に伴って市町村社会福祉協議会が法制化された。


これはしっかり×をつけたい問題です。


全社協・都道府県社協の法制化は,1951年の社会福祉事業法制定時。


市町村社協の法制化は,1983年の社会福祉事業法改正時。


よって×。



福祉関係八法改正では,「在宅福祉サービスの位置づけ」,「高齢者・身体障害者の町村への入所措置の移譲」,「老人保健福祉計画の策定義務」が行われました。



3 1999年(平成11年),国庫補助で配置されていた福祉活動専門員の経費が一般財源化された。


福祉活動専門専門員は,市町村社協に配置されています。都道府県社協に配置される福祉活動指導員とともに1966年に国庫補助で始まりました。しかし,現在はどちらも一般財源化されています。

よって正解です。


4 2000年(平成12年)の社会福祉法の改正において,市町村社会福祉協議会は地域福祉の推進を図ることを目的とする団体として位置づけられ,都道府県社会福祉協議会は広域的なボランティア活動を調整する団体であると位置づけられた。


まったくわかりません。冷静に▲をつけましょう。


しかし,ヒントはあります。


都道府県が広域的な立場から市町村を調整するのなら理解できます。


しかし,ボランティアを考えたとき,都道府県社協が広域的なボランティア活動を調整することは困難ではないでしょうか。なぜならボランティアは自発的な活動です。


もっと身近なところで調整しないと厳しいのではないでしょうか。


答えは×です。



5 全国社会福祉協議会は,2012年(平成24年)に「社協・生活支援活動強化方針」を策定し,主として,今後急増する在宅の認知症高齢者の生活支援を,より一層充実させていくことを目的とした。



もっともらしい選択肢をつくったなぁ,と感じます。


しかし,よく考えてみてください。


全社協が,認知症高齢者の生活支援を目的として「社協・生活支援活動強化方針」を策定するとは思えません。


なぜなら,認知症は国民的課題ですが,地域のニーズはそれだけにとどまらないからです。ニーズの充足を図る中には認知症高齢者の生活支援も含まれます。


もし,この方針に「認知症」というタイトルがついていれば,認知症を「主として」となるかもしれません。しかし,そうなっていないので,「主として」ではないと想像できます。


もちろん「主として」いません。よって×。


1と4の選択肢に▲をつけましたが,3を見た時点でこれが正解であるとわかる人も多かったのではないでしょうか。


珍しく,消去法でなくても正解がわかる問題だったと思います。


ただし,選択肢1の「三相計画」に引っかかった人は,これに〇をつけてしまいがちです。


わからないものには,まずは冷静に▲をつけることが大切です。

そうしないと,迷いの森の入ってしまいます。


これが国試の恐ろしさです。国試会場ではよく見られることです。


この問題では,知らないものが複数出題されています。

しかし,答えは,何度も出題されている「福祉活動専門員の経費の一般財源化」です。


国試問題の出題の癖が分かれば,知らないものが出てきてもそんなに怖くはないです。

迷いの森に入らないコツでもあります。

2024年3月27日水曜日

社会福祉法は一度読もう!

 社会福祉法はしっかり押さえよう!


先生は「出題される法には目を通しておくこと」と言います。


「福祉」の勉強には欠かせませんが,「国試」に合格するための勉強には最適とは言えないと思います。


以前にもご紹介しましたが,法律に慣れていないと理解するのに時間がかかるからです。また,条文が多いのでどれを注目すればよいのかがわからないということもあります。


しかし,社会福祉法だけは,別です。なぜなら,社会福祉法は,多くの条文から出題されているからです。


しっかり覚えることができなくても,社会福祉法は,一度だけでも目を通しておきましょう。


それでは,今日の問題を見てみましょう。


第26回・問題36 社会福祉法における地域福祉に関係する規定についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 地域住民には,「社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者」の事業や活動を代替する役割があると規定されている。

2 福祉サービスの利用に際して苦情があるとき,利用者は都道府県社会福祉協議会に設置された運営適正化委員会に申し立てることができるとされている。

3 地域福祉計画の策定に当たっては,要援護者への意見聴取をしなければならないと規定されている。

4 市町村社会福祉協談会の業務は,「社会福祉を目的とする事業の企画及び実施」や「社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助」であり,「社会福祉を目的とする事業の調査,普及,宣伝,連絡,調整及び助成」は含まれない。

5 共同募金において寄附金を募集する区域は都道府県を単位とし,募集期間は都道府県知事が定めるとされている。


社会福祉法から幅広く出題されていますね。


社会福祉法は,福祉の基本法である,ということを強く意識させる問題だと言えます。

社会福祉法は,1951年の社会福祉事業法を2000年に改正したものです。


その中で,地域福祉の推進が強く打ち出されているのが特徴です。


それでは,それぞれの選択肢を確認します。


1 地域住民には,「社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者」の事業や活動を代替する役割があると規定されている。


社会福祉法は,覚えなくても一度は目を通そう,と言いました。


目を通しておけば,間違いがある文を見たとき,「何か変だな?」と思えます。


少しでもそう感じたらすかさず×をつけましょう。「何か変だ?」と感じることができるのはほんの一瞬です。問題文を全部読んでから,×をつけようと思ったら,もうその違和感はなくなっています。


地域住民は,「社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者」とともに推進主体です。地域住民には地域住民としての役割があります。代替したり,補完したりするようなものではなく,「地域福祉の推進主体」です。


よって×。


2 福祉サービスの利用に際して苦情があるとき,利用者は都道府県社会福祉協議会に設置された運営適正化委員会に申し立てることができるとされている。


運営適正化委員会は,利用者と福祉サービス事業者の間で起きた利用者の苦情が生じたとき,助言,あっせんなどでトラブル解決を図る中立・第三者機関です。

設置されるのは,都道府県社会福祉協議会です。


よって正解。


運営適正化委員会が出題されるときは,どこに設置されるかが問われます。

運営適正化委員会が設置されるのは,市町村でもなく,都道府県でもなく,都道府県社協!


しっかり押さえていきましょう。



3 地域福祉計画の策定に当たっては,要援護者への意見聴取をしなければならないと規定されている。


福祉計画の策定・変更する場合については,この科目よりも「福祉行財政と福祉計画」でよく出題されています。


市町村地域福祉計画を策定・変更する場合


第百七条 市町村は,地域福祉の推進に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「市町村地域福祉計画」という。)を策定し,又は変更しようとするときは,あらかじめ,住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者その他社会福祉に関する活動を行う者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるとともに,その内容を公表するよう努めるものとする。


都道府県地域福祉支援計画を策定・変更する場合


第百八条 都道府県は,市町村地域福祉計画の達成に資するために,各市町村を通ずる広域的な見地から,市町村の地域福祉の支援に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「都道府県地域福祉支援計画」という。)を策定し,又は変更しようとするときは,あらかじめ,公聴会の開催等住民その他の者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるとともに,その内容を公表するよう努めるものとする。


市町村計画も都道府県計画ともに


必要な措置を講ずるよう努める


となっています。つまり努力義務です。


地域福祉計画は,法定受託事務ではなく,自治事務です。そのほかの行政計画と違って策定義務はありません。そのため,ちょっとほかの行政計画と違っています。詳しくは「福祉行財政と福祉計画」の時に整理したいと思いますが,それらをしっかり押さえておくことが大切です。


話を戻します。


要援護者に対して,「しなければならない」という規定はありません。よって×。



4 市町村社会福祉協談会の業務は,「社会福祉を目的とする事業の企画及び実施」や「社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助」であり,「社会福祉を目的とする事業の調査,普及,宣伝,連絡,調整及び助成」は含まれない。


近年は「含まれない」という条件を除外する問題は少なくなったものの,間違った選択肢を作る場合の常とう手段です。不適切問題になりにくいためです。


もちろん,この選択肢も間違いです。


「社会福祉を目的とする事業の調査,普及,宣伝,連絡,調整及び助成」も市町村社協の業務です。



5 共同募金において寄附金を募集する区域は都道府県を単位とし,募集期間は都道府県知事が定めるとされている。


共同募金は,共同募金会が実施しています。10月1日になると,街頭に共同募金を呼びかける風景が広がります。


そのため共同募金と言えば街頭募金というイメージが強いですが,募金総額に占める街頭募金の割合はわずか数パーセントにすぎません。


毎年7割を超えるのは戸別募金


それにもかかわらず街頭募金にあれだけの人を動員しているのは,「共同募金が始まりました」ということを地域住民に強くアピールする意味合いが強いです。


一般的なイメージと実態が違うものは,引っ掛けとして出題されやすいです。注意しましょう。


話は変わります。


共同募金は戦後すぐにQHQの肝いりで始めました。日本は国を挙げて成功させる必要があったと思われます。そのためには国全体で一枚岩になることが求められます。


そのように考えると,共同募金の期間は地域によって変わるよりも全国統一したほうが国民に強くアピールしやすくなります。共同募金の期間を定めるのは,都道府県知事ではだめなのです。


よって×。


もちろん期間を定めるのは厚生労働大臣です。

2024年3月26日火曜日

数字に関連する問題の解き方

 国試問題のタイプは


1 法制度に関連するもの

2 歴史に関するもの

3 福祉の理論に関連するもの

4 実態に関連するもの(白書や報告書含む)


に分類できます。


この中で,対策が取りにくいものは,


4 実態に関連するもの(白書や報告書含む)です。


実態に関する数字は,参考書には掲載されていると思います。


それらは過去に出題されたものです。


しかし,それらがまた出題されることはほとんどありません。

つまり,一度きりの出題のものが多いということが言えます。


「白書類に目を通しておくこと」とアドバイスする先生がいます。


しかし,分厚い白書を理解しながら覚えていくのはほぼ不可能です。

普段からそういう文献になじんでいる方なら,どこに着目すればよいか,わかるかもしれません。


しかししかし・・・


そこに時間を割いて

仮に得点できたとしても,たった1点のプラス

得点できなくても,たった1点のマイナス


結果的に,1点が取れなかったために,合格できなかったということはよくあることです。


この手の問題が解けなかったのは事実だとしても,その他の得点できなかった問題をよく見てみると,本来得点すべき問題を落としていた,というものが必ずあるはずです。


何度も1点に泣く経験をすると,もっと広い知識をつけたいと思いがちになると思います。


しかし,手を広げた結果,「曖昧な知識が増えただけ」では意味がありません。


白書などを根拠とする数字系の問題は難しい


なぜなら,先述のように,ほとんど対策ができないからです。

「白書に目を通しておくこと」は,効果的な対策とは言えません。


それよりももっと大切なことは・・・


感性を磨き上げる


ちょっと非科学的だと思われる人もいるでしょう。


しかし,結局は,感性が大きくものを言うことは往々にしてあります。


感性とは,偶然に左右される「勘」ではないです。


さまざまな知識の上に積み上げていくものだと言えます。


ある問題に対し,例えば・・・


男性と女性の比率はどちらが多いのか。

50%という数字は多いのか,少ないのか。


などなど。


数字が出て来た時には,なぜそのような数字になったのか,アナリスト(分析家)ばりに考えてみましょう。


その上での傾向は・・・


判断できにくいものが正解であることが多い



これも押さえておきましょう。




それでは,今日の問題を見て行きますね。


第26回・問題35

問題35 民生委員・児童委員に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 2011年度(平成23年度)現在の民生委員・児童委員数の男女比は,およそ6:4で男性の方が多い。

2 民生委員・児童委員の定数は,主任児童委員も併せると,2001年度(平成13年度)以降2011年度(平成23年度)まで22~23万人台で推移している。

3 民生委員・児童委員の定数を定める配置基準は,全国一律で150から250世帯ごとに1人とされている。

4 2000年(平成12年)の民生委員法の改正により,民生委員の任期は3年から5年に延長されている。

5 2011年度(平成23年度)の民生委員・児童委員の「相談・支援件数」は,分野別にみると「障害者に関すること」が最も多い。



この問題に含まれる数字は,実態系と法制度の抱き合わせ問題となっています。


<実態系の選択肢>


1 民生委員・児童委員の男女比

2 民生委員・児童委員の定数

5 民生委員・児童委員の分野別の相談支援件数


の3つです。



<法制度系の選択肢>


3 民生委員・児童委員の配置基準

4 民生委員の任期


の2つです。


これをもとに各選択肢を見て行きますね。



1 2011年度(平成23年度)現在の民生委員・児童委員数の男女比は,およそ6:4で男性の方が多い。


これは,実態系の問題ですね。自分の感性を信じましょう。


地方では男性の方が多そうですが,都市部では女性の方が多そうです。

それらを考えると男性が多いということはなさそうです。


実際には,6:4で女性の方が多いそうです。


よって×。


2 民生委員・児童委員の定数は,主任児童委員も併せると,2001年度(平成13年度)以降2011年度(平成23年度)まで22~23万人台で推移している。


これも実態系の問題ですね。


想像することができません。


▲をつけておきます。結果的にこれが正解です。


3 民生委員・児童委員の定数を定める配置基準は,全国一律で150から250世帯ごとに1人とされている。


これは法制度系ですね。制度を知っていることが大切です。


民生委員法では,


民生委員の定数は、厚生労働大臣の定める基準を参酌して、前条の区域ごとに、都道府県の条例で定める。


とされています。つまり全国一律ではありません。


よって×。


4 2000年(平成12年)の民生委員法の改正により,民生委員の任期は3年から5年に延長されている。


これも法制度系ですね。制度を知っていることが大切です。


民生委員の任期は3年。

保護司の任期は2年。


これはしっかり☓をつけたい問題です。


2000年の民生委員法改正については,それまであった「名誉職規定」が削除された,が過去に出題されたことかあります。この時の改正には,民生委員の基本理念が「保護指導」から「相談・援助」に変わったことがあります。


5 2011年度(平成23年度)の民生委員・児童委員の「相談・支援件数」は,分野別にみると「障害者に関すること」が最も多い。


これは実態系の問題ですね。自分の感性を信じましょう。


対象者の数を考えると,障害者の数が最も多いとは思えません。×がつけられそうです。


調べてみると,最も多いのは「高齢者に関すること」だそうです。高齢者数はどんどん増えているので納得ですね。


よって×。


先ほどの「名誉職規定」は,民生委員の一つの源流である方面委員で規定されていたものを民生委員制度になってからも引き続き規定されたものです。

2024年3月25日月曜日

覚えるものが少ない歴史問題は意外と得点源になる!

 歴史や人名を覚えるのを苦手としている人は多いのではないかと思います。


しかし,もったいないなぁ,という感じがします。


なぜなら・・・


出題されるものは限られているから。

ほとんど繰り返しと言ってもよいから。


参考書を見るとたくさんの人名が出ていますが,ほとんど出題されないものもたくさん混じっています。


覚えなければならないものが多いと感じるかもしれませんが,本当はそんなに覚える必要はありません。


頻出のものだけを押さえていくだけで十分!


どうしても覚えられない場合は,捨てるという方法もありますが,今はまだたっぷり時間があります。


「捨てる」という切り札は,もっと後まで取っておきましょう。


さて,今日の問題です。


第26回・問題33 地域福祉の発展過程に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 スラム地区などにおいて隣保館が普及したことが,隣保相扶を強調する恤救規則の制定につながった。

2 近代日本の代表的な労働運動家である片山潜が,東京の神田に開設した善隣館は,日本における友愛訪問活動の代表的な事例の一つである。

3 慈善事業を組識化した中央慈善協会は,当時の慈善救済活動の調査や団体相互の連絡などを行い,現在の共同募金会の源流とされている。

4 岡山県知事の笠井信一が創設した済世顧問制度は,石井十次による岡山孤児院での取組を参考にして制度化された。

5 民間の篤志家が個別的援助と社会測量を行う方面委員制度は,小河滋次郎がドイツのエルバーフェルト制度を参考に考案した制度とされている。



歴史問題です。


この問題を概観すると,良いバランスの問題だなぁ,と感じます。


というのは・・・


勉強をした人なら得点できる

勉強が足りない人にはひっかけられる


という意図が見えるからです。


よくない問題は・・・


勉強しても得点できない

勉強不足でも得点できる


こういう問題は,国試問題としては適切とは言えません。


そういう時代もありましたが,今は努力が報われる時代になっています。

問題が安定しています。


それでは,早速各選択肢を見て行きますね。


1 スラム地区などにおいて隣保館が普及したことが,隣保相扶を強調する恤救規則の制定につながった。


勉強が進んでいない人をひっかけようとする選択肢が最初に登場しました。


引っ掛けポイント


関連しそうな似た言葉を並列させている

この問題では・・・


隣保館 と 隣保相扶 


の部分です。


隣保館も隣保相扶が意味が分からなければ,「ふんふん,そうか~」と問題文を読んでしまうのです。


勉強をしっかりした人とそうでない人を調べたら,おそらく勉強が不足していた受験生はこの選択肢を選んだ率が高かったのではないかと思います。


勉強が十分だった人がこの選択肢を選ぶ人は多くはないはずです。


この引っ掛けポイントと同じ出題には,以下のようなものがあります。


統制理論では,逸脱を統制する権力の弱体化が逸脱の生成要因であると考える。


社会学で出題されたものです。


これも統制理論と統制する権力を並立で出題しています。

統制理論がわからないと,その説明の中に統制という用語が使われているので,「ふんふん,そうか~」と思いやすいのです。


問題の作り方がとても巧妙に思います。


統制理論は,逸脱しないためには何かの要因があるとするものです。

「統制」というイメージをうまく使って,ひっかけようとしているのが分かるでしょう。



それでは,問題に戻りますね。


隣保館とは,セツルメントの話です。


イギリスのトインビーホールなどは1880年代に創設,日本の岡山博愛会,キングスレー館は1890年代の創設です。


おおよその時代だけ覚えておけば,何年に設立したという知識はまったく必要とされていないことに着目しましょう。


次は,隣保相扶です。ご近所同士が助け合うことですね。


基本は隣保相扶助,その上で「無告の窮民」を救済の対象とした恤救規則が制定されたのは,1874(明治7)年。


これも年号は覚える必要なし。明治初期に作られたものという認識で十分です。


恤救規則はそのあと長生きして,1929年の救護法制定時まで存続します。


これからもうわかったと思いますが,セツルメントが生まれたのは恤救規則のずっと後ということになります。


よって☓。


2 近代日本の代表的な労働運動家である片山潜が,東京の神田に開設した善隣館は,日本における友愛訪問活動の代表的な事例の一つである。


片山潜(かたやま・せん)は,絶対に覚えておきたいです。家庭学校の留岡幸助と同等に出題頻度が高いです。


留岡は,キングスレー館を設立してセツルメント活動を行いました。その後ソビエト連邦に渡り,その地で亡くなっています。


そのように片山潜が設立したのは,キングスレー館です。


よって×。


3 慈善事業を組識化した中央慈善協会は,当時の慈善救済活動の調査や団体相互の連絡などを行い,現在の共同募金会の源流とされている。



結論から言うと,中央慈善協会は,現在の全国社会福祉協議会(全社協)の源流の一つです。


よって×。


初代会長は,明治の経済王の渋沢栄一が務めました。日本資本主義の父と呼ばれた人です。


そのため渋沢の功績は数知れません。第一国立銀行(現・みずほ銀行),王子製紙などを設立しています。


福祉に関係するものでは,東京養育院院長(石原都知事時代に廃止),聖路加病院(現・聖路加国際病院)理事長,滝乃川学園理事長などを務めています。


中央慈善協会は中央社会事業協会,日本社会事業協会,中央社会福祉協議会と変遷し,現在の全社協に至ります。


共同募金は,GHQの肝いりで戦後に実施されたのが始まりです。


第1回の共同募金のポスターには,以下のように書かれています。


アメリカでは年一回,村,町,市などにそれぞれ市民の委員会を設けて,生活に困る人々の為の施設に必要な資金の寄附募集をしています。この運動には全米の一人残らずが参加し国民がたすけあって明るい社会生活を営んでおりますが,こんどはこの制度を日本でも11月25日より12月25日まで共同募金運動を実施します。



ポスターには,社会事業 共同募金運動と書かれており,共同募金のところに「コミュニティチェスト」と英語表記がされています。


「全米の一人残らず」という表現が面白いですね。


4 岡山県知事の笠井信一が創設した済世顧問制度は,石井十次による岡山孤児院での取組を参考にして制度化された。


社会福祉の歴史で岡山と言えば,岡山博愛会,岡山孤児院,そして済世顧問制度が出て来ます。岡山以外でこれだけそろう都道府県は他には見当たらないのではないでしょうか。


それをうまく結びつけた出題です。この問題も


関連しそうな似た言葉を並列させている

岡山県知事 と 岡山孤児院 が並列で出題されています。


勉強不足で試験に臨んだ人は「ふんふん,そうか~」と思って問題を読んでしまうでしょう。


済世顧問制度と方面委員制度は現在の民生委員の源流ですが,いずれも参考にしたものは,ドイツのエルバ―フェルト制度です。


よって×。


石井十次のよき理解者であり,スポンサーだったのは,倉敷紡績(現・クラボウ)の社長の大原孫三郎です。彼のコレクションが大原美術館として現代に引き継がれています。


先述の渋沢栄一やこの大原孫三郎など明治の豪傑は,社会貢献も多く果たしています。


現在は国の社会保障制度が整備されていますが,制度がなかった明治・大正期は民間の慈善事業が果たした役割は大きかったと言えます。


日本では,1874年に出来た「無告の窮民」という救済の対象が極めて限られている恤救規則が1929年まで存続した時代を慈善事業で支えた明治の豪傑には頭の下がる思いです。


5 民間の篤志家が個別的援助と社会測量を行う方面委員制度は,小河滋次郎がドイツのエルバーフェルト制度を参考に考案した制度とされている。


先述のように,済世顧問制度と方面委員制度ともにドイツのエルバーフェルト制度を参考に創設した制度です。


よって正解。



民生委員制度は,1917年に作られた済世顧問制度から今年でちょうど100年という節目の年だそうです。


100年の歴史の重みをかみしめながら,しっかり制度も覚えておきたいです。



共同募金 ⇒ アメリカのコミュニティチェストを参考とした


済生顧問制度・方面委員制度(民生委員の源流) ⇒ ドイツのエルバーフェルト制度を参考とした


2024年3月24日日曜日

推測力が国試合格に導く!


どんなに勉強しても,わからないものは出題されます。


知識を知恵に変える


知識で得点できる問題もあります。

それに知恵が加われば,鬼に金棒です。


ところで・・・


知恵とは何でしょう?


知識のすき間を埋めるもの,つまり「想像力」「推測力」です。


ソーシャルワークでは,ご利用者様のニーズを充足するように支援していきます。


その時に,ご利用者様の発する言葉(デマンド)に耳を傾けることと同時に,ニーズはどこにあるのだろうと「想像する」「推測する」ということは,日常的に行っているものと思います。


多くの方法論をもっていることで,ご利用者様の可能性は大きく広がるのではないでしょうか。


それを国試にも活用してみませんか?


「●●という状況は,▲▲だからではないか」といった具合です。


もちろん,国試では「想像したもの」「推測したもの」が結果的に間違っていることもあるでしょう。


すべてが必ずしも当たらなくても,良いと思います。


過去問などを解いてみて,その推測があまりにも間違うことが多いとしたら,「想像する」「推測する」ことを日常で見聞きするもので訓練することも時には必要かもしれません。


勉強は必ずしもテキストを読む,問題を解くだけのものではありません。日常すべてが勉強につながります。


その点で社会人は学生よりも人生経験が長い分,有利だと言えます。記憶力の低下という生理現象を十二分にカバーし,それ以上の発揮することができます。


さて,それでは今日の問題を見ていきましょう。



第26回・問題32 

地域福祉にかかわる諸外国の動向や学説に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 ロス(Ross,M.)によればコミュニティ・オーガニゼーションとは,地域社会を構成するグループ間の協力と協働の関係を調整・促進することで地域社会の問題を解決していく過程であるとされている。

2 ヨーロッパにおける若者の労働問題に端を発したノーマライゼーションの思想は,失業や貧困を社会から排除される原因ととらえ,その解消を目指すものである。

3 イギリスのNHS及びコミュニティケア法では,地方自治体が必要なサービスを多様な供給主体から購入して,継ぎ目のないサービスを提供することを目標としていた。

4 地域全体の共助の仕組みやリーダーシップの醸成を促しても福祉ニーズの充足には至らないため,地域において福祉サービスの充実を図るコミュニティ・ビルディングというアプローチが注目されている。

5 グラノヴェッター(Granovetter,M.)は,人間関係のネットワークの分析を通じて,親密さや情緒的なつながりがある「強い紐帯」の方が,「弱い紐帯」よりもネットワーク間の橋渡しには有効であることを示した。



地域福祉と包括的支援体制は,出題範囲が極めて広いのが特徴です。


さて,それではそれぞれの選択肢を見ていきますね。


1 ロス(Ross,M.)によればコミュニティ・オーガニゼーションとは,地域社会を構成するグループ間の協力と協働の関係を調整・促進することで地域社会の問題を解決していく過程であるとされている。


ロスという外国人の名前が出てきましたね。1つめの選択肢に難しめのものを配置させて,混乱させるという出題パターンが久々に出てきました。


ロスのコミュニティ・オーガニゼーションの理論は,「住民の連帯と協働で問題解決を図るもの」としています。


「グループ間の協力と協働の関係を調整・促進する」を詳しく調べると,ニューステッターの「インターグループワーク説です。


答えは×ですが,この時点ではよくわからないので,とりあえず▲をつけておきましょう。


2 ヨーロッパにおける若者の労働問題に端を発したノーマライゼーションの思想は,失業や貧困を社会から排除される原因ととらえ,その解消を目指すものである。


何のことを指した文章なのかはわからなくても,ノーマライゼーションではないことはわかります。なぜなら,ノーマライゼーションは,デンマークの知的障害児の親の会の活動が端緒であることは有名だからです。


よって×。


因みに,これはソーシャルインクルージョン(社会的包摂)を述べています。


3 イギリスのNHS及びコミュニティケア法では,地方自治体が必要なサービスを多様な供給主体から購入して,継ぎ目のないサービスを提供することを目標としていた。


「NHS及びコミュニティケア法」のNHSは「国民保健サービス」のことですね。

同法は,1988年「グリフィス報告」を受けて,サッチャーが作った法律です。


サッチャーは,保守党の首相です。保守党は,資本家・企業側を支持母体としています。国を疲弊させているのは「べヴァリッジ型」の福祉国家体制だと考えました。


べヴァリッジ型の福祉国家体制とは,福祉サービスは国の責任で実施するものです。同法では,必ずしも国がサービスを提供するのではなく,地方自治体が多様なサービス提供主体からサービスを購入し提供するものです。


そのためにサービスを調整するケアマネジメントという手法が取り入れられています。


よって〇。


イギリスの地域福祉改革に関連する報告書はいくつかありますが,その中で出題回数が多いものは,シーボーム報告とグリフィス報告です。


4 地域全体の共助の仕組みやリーダーシップの醸成を促しても福祉ニーズの充足には至らないため,地域において福祉サービスの充実を図るコミュニティ・ビルディングというアプローチが注目されている。


コミュニティ・ビルディングという聞き慣れない言葉が出てきました。

ここで「想像力」「推測力」が求められます。


コミュニティ・ビルディングがわからなくても「地域全体の共助の仕組みやリーダーシップの醸成を促しても福祉ニーズの充足には至らない」のところに着目したいです。


「至らない」 言い切り表現となっています。


言い切り表現に正解少なし


ニーズの充足に至らないのであれば,コミュニティ・オーガニゼーションやインターグループワークは意味をなさないことになってしまいます。


そう考えると,〇をつけようがありません。コミュニティ・ビルディングがわからなくても決して慌てる必要がないことがわかります。


コミュニティ・ビルディングとは,地域全体の共助の仕組みやリーダーシップの醸成を促すことなどを言います。よって×。


5 グラノヴェッター(Granovetter,M.)は,人間関係のネットワークの分析を通じて,親密さや情緒的なつながりがある「強い紐帯」の方が,「弱い紐帯」よりもネットワーク間の橋渡しには有効であることを示した。


まったく知らないものが出てきました。3番目の選択肢が正解ですが,そこを正解にできなければ,迷いの道に入り込みます。


この選択肢は,「弱い紐帯(ちゅうたい)理論」を指しています。この理論は,身近な人(強い紐帯)よりも,めったに連絡を取り合わない人(弱い紐帯)の方が,重要な情報をもたらす,というものです。


よって×。

2024年3月23日土曜日

人名・歴史が苦手なら法制度はしっかり覚えたい

 国試問題を難易度でみると


最も難しい問題は,社会学,心理学,社会福祉の原理の科目に集中しています。

しかし超難易度が高い問題は全体の1割もありません。


法制度の問題も難易度が高い問題もありますが,多くの問題はそれほど高くはなく,正解不正解の分かれ目は,しっかり覚えているかどうか,ということになります。


例えば,


義務なのか,努力義務なのか

都道府県の役割なのか,市町村の役割なのか


などです。


あいまいに覚えていると,いとも簡単に深みにはまります。

過去問を解くときに意識してほしいことは多々ありますが,そのうちの一つは,


間違いはどのように作られるのかを意識すること

法制度の問題は,特にこれを意識してほしいです。


さて,それでは今日の問題を見てみましょう。


第26回・問題31 

我が国の雇用保険制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 雇用保険は,従業員が5人以下の事業所は任意加入とされている。

2 雇用保険で支給される基本手当の1日の額(基本手当日額)は,離職した日の直前の6か月間における一日平均の賃金額の50%と規定されている。

3 雇用保険には,失業等給付のほか,失業の予防,雇用状態の是正及び雇用機会の増大,労働者の能力開発及び向上を図るための事業がある。

4 雇用保険への加入を決める基準は,6か月以上の雇用見込みがあることとなっている。

5 求職者給付の諸手当の支給は,継続的な求職活動を要件とする。


この問題は「社会福祉の原理と政策」の問題ですが,あたかも「社会保障」の問題のようです。

人名や歴史が苦手だという人は,この手の問題はしっかり取りたいです。


日本の社会保険は,「年金保険」「医療保険」「介護保険」「労働者災害補償保険」「雇用保険」の5つがあります。


そのうち,労働者災害補償保険と雇用保険の2つを合わせて「労働保険」と呼ばれていますが,年金保険,医療保険よりも覚えるポイントは少ないので,労働保険はしっかり得点したいです。


さて,それではそれぞれの選択肢を見ましょう。


1 雇用保険は,従業員が5人以下の事業所は任意加入とされている。


社会保険の種類によって,すべての事業所に強制適用になるものと,一部の事業所は任意になるものがあります。


仕組みを考えてみると,なぜそのように分かれるのかが分かります。法制度は合理的に作られているので,必ずそこには意味があるからです。


雇用保険・労災保険 ⇒ すべての事業所に強制適用


年金保険・医療保険 ⇒ 常時5名以上雇用している事業所に強制適用。4名以下の事業所は任意適用。


労働保険は,労働者を守るための保険であり,いずれも戦後に制度が出来上がりました。労働者を守るための保険なので,すべての事業所に強制適用しなければ,他の制度で代替できるものがありません。


年金保険・医療保険は,国民皆保険・皆年金が実施されています。この2つの保険は戦前の1922年の健康保険から始まり,徐々に対象を広げて,1961年に皆年金・皆保険となりました。


ここで気づいた人もいると思いますが,強制適用事業所以外ではほかの制度で補完します。つまり,年金保険なら国民年金,医療保険なら国民健康保険ということになります。


ただし,国民年金は基礎年金なので,厚生年金加入者は国民年金に加入しなくてよいということではないので注意しましょう。


話を戻します。

雇用保険は,すべての事業所に強制適用です。


よって×。


法制度は理屈で押さえていくのがコツです。


2 雇用保険で支給される基本手当の1日の額(基本手当日額)は,離職した日の直前の6か月間における一日平均の賃金額の50%と規定されている。


雇用保険の失業等給付は,仕事をやめたことのある人はお世話になる制度です。

すべての人が50%なわけではなく,賃金によって,違いがあります。


よって×。


3 雇用保険には,失業等給付のほか,失業の予防,雇用状態の是正及び雇用機会の増大,労働者の能力開発及び向上を図るための事業がある。


雇用保険には,失業等給付のほかに雇用保険二事業があります。

失業の予防,雇用状態の是正及び雇用機会の増大,労働者の能力開発及び向上を図るための事業はそのうちの雇用保険二事業です。


よって正解。


保険料については,失業等給付は労使折半,雇用保険二事業は雇用主のみです。合わせて覚えておきましょう。


4 雇用保険への加入を決める基準は,6か月以上の雇用見込みがあることとなっている。


6か月ではなく,31日です。よって×。

また労働時間は,週20時間以上であることも条件となります。


5 求職者給付の諸手当の支給は,継続的な求職活動を要件とする。


継続的な求職活動は要件としていません。誠実かつ熱心に求職活動を行うことが努力義務とされているだけです。


よって×


全体的に難しめの内容が並んだ問題だったと思います。


しかし,答えは複雑な内容のものではなく,雇用保険制度の根幹中の根幹である,「失業等給付」「雇用保険二事業」が正解となっています。


戦後すぐにできた失業保険は,1974年に雇用保険に変わっています。もう40年以上も経つのにいまだに「失業保険」と言う人がいます。失業等給付のイメージが強いからでしょう。


雇用保険は,失業等給付だけではなく,雇用保険二事業もあるのだ,と国は言いたかったことに他なりません。雇用保険二事業には,「雇用調整助成金」などがあります。

2024年3月22日金曜日

出題頻度の高いものに仕掛けられるトラップ(わな)

 正解がすぐわかる問題なら良いですが,すぐわからない問題も多くあります。


そういった問題には,間違いを誘発するような道筋が隠れていることがあるので,やっかいです。


いくつも仕掛けられているトラップ(わな)を用心深く避けながら,迷い道に入らないように慎重に足元に目を凝らしてみましょう。


それでは,今日の問題です。


第26回・問題13

クライエントの行動特徴と防衛機制に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 

1 大学生B男さんは,女性Cさんに心を惹かれ強い衝動を抱いたが,Cさんに対しては恋愛や女性の職業の自由について高尚な考えを述べた。これは転換と考えられる。

2 保育園児のD子ちゃんは,不安感に脅かされているが,しばしば自分は強くて万能な人間だというファンタジーを作り出す。これは同一化と考えられる。

3 不登校中の中学生E男さんは,学校に行けない理由として「眠れなかったから」とか,「朝,熱が出たから」と言ったりする。これは投影と考えられる。

4 5歳児のF男ちゃんは,弟が生まれ母親が弟に付きっきりになったとき,とっくにやめていた指しゃぶりをまた始めた。これは昇華と考えられる。

5 父親に対する憎しみの感情を抑えた高校生のG男さんは,ときに父親に対して極端な気遣いや過剰な配慮を示すことがある。これは反動形成と考えられる。


防衛機制は出題頻度が高いので確実に得点しておきたいものですが,出題頻度が高いということは,仕掛けられたトラップはいくつもあることが想像できます。


まず,問題全体に対するトラップ①


単純に「防衛機制に関する」ではなく,「クライエントの行動特徴と防衛機制」とちょっと複雑にした設問になっています。


行動特徴と防衛機制なので,それらを関連させて考える受験生は必ずいたはずです。

選択肢の文章もちょっと変わっているので,より考えさせるものとなっています。


1 大学生B男さんは,女性Cさんに心を惹かれ強い衝動を抱いたが,Cさんに対しては恋愛や女性の職業の自由について高尚な考えを述べた。これは転換と考えられる。


トラップ②

トラップ①「行動特徴と防衛機制」という設問で混乱気味にされていると思います。

そこにこの「転換」です。

ハートビートがさらに激しくなったはずです。


〇も×もつけられないので,冷静に▲をつけます。


2 保育園児のD子ちゃんは,不安感に脅かされているが,しばしば自分は強くて万能な人間だというファンタジーを作り出す。これは同一化と考えられる。


2つめの選択肢で,過去にも出題されたことのある「同一化」が出題されました。


同一化は,自分の好きなアイドルや尊敬する人のまねをすることで欲求を満たすことです。よって×。


3 不登校中の中学生E男さんは,学校に行けない理由として「眠れなかったから」とか,「朝,熱が出たから」と言ったりする。これは投影と考えられる。


3つめの選択肢で,過去にも出題されたことのある「投影」が出題されました。選択肢の文章は,合理化のことを述べています。よって×。


4 5歳児のF男ちゃんは,弟が生まれ母親が弟に付きっきりになったとき,とっくにやめていた指しゃぶりをまた始めた。これは昇華と考えられる。


4つめの選択肢で,過去にも出題されたことのある「昇華」が出題されました。選択肢の文章は,退行のことを述べています。よって×。


5 父親に対する憎しみの感情を抑えた高校生のG男さんは,ときに父親に対して極端な気遣いや過剰な配慮を示すことがある。これは反動形成と考えられる。


5つめの選択肢で,過去にも出題されたことのある「反動形成」が出題されました。選択肢の文章は正しいので〇です。


最初に▲をつけておいた1つめの選択肢は,ここでようやく▲ → ✖ に格下げです。因みに1は「知性化」と言うらしいです。


一つひとつ解説すると比較的やさしい問題に感じるかも・・・


しかし・・・


防衛機制は覚えにくい


抑圧のようにわかりやすいものもありますが,しっかり覚えるのはかなりやっかいです。


それだけに,2~5を自信もって消去できなかった人もいることでしょう。


なぜなら設問の「行動特徴と防衛機制」がピリッと利いているからです。


深読みしてしまうと・・・


1 大学生B男さん

2 保育園児のD子ちゃん

3 中学生E男さん

4 5歳児のF男ちゃん

5 高校生のG男さん


ここに答えのヒントがあるのではないかと考えてしまうかもしれません。


しかし,年齢や性別などの属性は一切関係しません。


ここがトラップ③となります。


2~5の選択肢をしっかり消去できないと,▲にした1つめの選択肢を正解にすることにつながります。


国試は本当に怖いですね。

先に述べたように,防衛機制の出題頻度は高いです。こういったものを確実に覚えると合格が近くなります。


今日の教訓


深読みの先に待っているのは迷い道

2024年3月21日木曜日

知識を知恵に変える勉強法


国家試験に合格するための勉強は・・・


前回,「自分で見つけ出すのが大事」と書きました。


正しい勉強法は,「国家試験で合格できること」です。


まずは知識をつけることが大前提です。


何度も受験されている方は,知識はあると確信しています。


「知識をもっとつけなきゃ」


間違いではありません。


しかし・・・


知識をつける→知識を広げる


中途半端な知識を増やすのは何の意味もありません。


国家試験で必要なのは・・・

知識に裏付けされた知恵

丸覚えは知識レベルです。


しっかり考えながら,勉強していきましょう。


どのように考えるのかは,これからもお伝えしていきます。


さて,それでは今日の問題を見ましょう。


第26回・問題30 

福祉に関する住まいについての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 サービス付き高齢者向け住宅の供給促進のため,所定の登録要件を満たしたサービス付き高齢者向け住宅の建設や改修等に対しては,国の補助制度がある。

2 公営住宅は,住宅に困窮する低額所得者が低廉な家賃で利用できる賃貸住宅であるため,入居に際して,敷金や礼金は存在しない。

3 無料低額宿泊所は,住居のない要保護者の世帯に対して,住宅扶助を行うことを目的とする保護施設である。

4 住宅支援給付は,職業訓練受講給付金を受給している離職者のうち,住宅を喪失又は喪失するおそれのある者に対して支給される。

5 東日本大震災の被災者向けの住宅として活用されたみなし仮設住宅は,国が貸主と契約して借上げた民間賃貸住宅のことである。


住宅政策に関する出題ですね。

法制度は,いくつかありますが,高齢者住まい法を中心として覚えていきましょう。


それではそれぞれの選択肢を見ていきましょう。


1 サービス付き高齢者向け住宅の供給促進のため,所定の登録要件を満たしたサービス付き高齢者向け住宅の建設や改修等に対しては,国の補助制度がある。


高齢者住まい法は,現在急速に増えているサービス付き高齢者住宅(サ高住)を規定する法律ですね。

既存の高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃),高齢者専用賃貸住宅(高専賃),高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)を廃止して2011年にサ高住ができました。


国が新しい制度を推進ときによく行う方式


★補助金支給,報酬単価を高く設定する(はしごをかける)

 ↓  ↓

(ある程度普及したら)

 ↓  ↓

★補助金を廃止,報酬単価を引き下げる(はしごを外す)



サ高住は新しい制度なので補助金が支給されているのではないかと想像できます。


実際には,補助額は,建築費の1/10,改修費の1/3が補助されています。


よって正解。しかしこの時点では▲をつけておきます。


あともう一つヒント・・・


国がやっていることを広めたい


これも覚えておくとよいでしょう。


2 公営住宅は,住宅に困窮する低額所得者が低廉な家賃で利用できる賃貸住宅であるため,入居に際して,敷金や礼金は存在しない。


公営住宅は,1951年の公営住宅法が根拠法の古い制度です。


問題にあるように公営住宅は,地方公共団体が提供する住宅に困窮する低額所得者が低廉な家賃で利用できる賃貸住宅です。


敷金,礼金があるかどうかはわかりませんので,この時点では▲を付けます。


法を改めて見ると,

第18条 事業主体は、公営住宅の入居者から3月分の家賃に相当する金額の範囲内において敷金を徴収することができる。


とされています。よって×。


3 無料低額宿泊所は,住居のない要保護者の世帯に対して,住宅扶助を行うことを目的とする保護施設である。


無料低額宿泊所は,第二種社会福祉事業に規定されていますものです。近年は貧困ビジネスの温床となっていることが指摘され,社会福祉法の改正によって,設立はほかの第二種社会福祉事業よりも一段階上がっています。


保護施設は,たった5つしかないので覚えやすいです。

救護施設(生活扶助を目的とする)

更生施設(生活扶助を目的とする)

医療保護施設(医療扶助を目的とする)

授産施設(生業扶助を目的とする)

宿所提供施設(住宅扶助を目的とする)


住宅扶助を目的としている保護施設は「宿所提供施設」です。


よって×。


4 住宅支援給付は,職業訓練受講給付金を受給している離職者のうち,住宅を喪失又は喪失するおそれのある者に対して支給される。


住宅支援給付はあまり聞いたことがない制度かもしれません。

ここで確認しておきますね。


住宅支援給付

離職者であり,かつ就労能力及び就労意欲のある者のうち,住宅を喪失しているもの又は喪失するおそれのあるものに対して支給する。


職業訓練受講給付金は,求職者支援法に基づくもので,住宅支援給付は,職業訓練受講給付金などの支給を受けていない者が対象となります。


よって×。


ちなみに,住宅に関連するものは,生活困窮者自立支援法に基づく「住居確保給付金」(離職で住宅を失った生活困窮者等に対し家賃相当を支給)があります。これも覚えておきたいです。福祉事務所を設置する地方公共団体の必須事業です。


5 東日本大震災の被災者向けの住宅として活用されたみなし仮設住宅は,国が貸主と契約して借上げた民間賃貸住宅のことである。


仮設住宅は,地方公共団体が災害など家に住めなくなった人に対して提供するものです。プレハブ住宅などで対応することが多いです。


それに対して,みなし仮設住宅は,民間賃貸住宅を借り上げ提供します。


いずれも国の事業ではありません。現在は地方分権の時代です。特に地域ニーズに対応するためには,地方公共団体の役割が大きく,国はそれを支援する形を取ります。


福祉は,法定受託事務ではなく,自治事務であることも覚えておきたいですね。


この時点では,1と2が▲になっています。


1は国のいつもの手(最初は補助金をつけることで制度の拡大を図る)


2は入居に際して,敷金や礼金は存在しない と言い切り表現に正解少なし。となっている。


2つの選択肢を比べた場合,より正解になりやすいものは,1の選択肢と考えられます。


1を▲から〇に昇格させることができそうです。


消去法を的確に使えるためには,知識に裏付けされた知恵が必要です。

2024年3月20日水曜日

「正しい努力」「間違った努力」見極め法

 国試に合格する勉強法とは?


ネットで検索すると,合格した人からのアドバイスの情報があふれています。


勉強法では・・・


過去問を徹底的にやりました。

参考書にひたすらマーカーを引きました。

参考書を口に出して読んだものを録音して,仕事の行き帰りに聴きました。


などなど・・・



勉強時間では・・・


3か月前から勉強を始めました。

試験1か月前からの勉強でも合格できます。

10月以降は毎日4時間勉強しました。


などなど・・・


それぞれが言っていることが違うだけに,情報を集めると集めるだけどうしたら良いかわからなくなってきます。



質問:なぜそれぞれ違うのだろうか?


答え:勉強法は人それぞれだから。


すべては真実です。ただし,「その人にとって」という前提があります。


人によってもともと持っている知識,文章を読むスキルは違います。

すべての人が同じなわけがありません。


それを考慮しておかないと痛い目に遭うことは,火を見るよりも明らかです。


合格するための勉強法は・・・


自分で見つけ出すことが大切です。

しかし・・・

やらなければならないことは決まっています。


参考書等に書いてあることを正しく理解すること


言葉で表現するとたったこれだけのことです。


しかし・・・


正しく理解する


この部分がとても難しいのです。


正しく理解する,の意味は,国試で正解できる理解ができたことを指します。


人によって理解の仕方は千差万別


どのようにすると理解(国試で正解)できるのか。


これは自分でつかみとること

この学習部屋も含めて,アドバイスはヒントにすぎません。



最初は,合格した人の勉強をまねても良いでしょう。それぞれが真実だからです。

だめだったと気づいたときに修正すればよいです。


正しい努力は,正しい方向に進みます。

間違った努力は,間違った方向にしか進みません。


しかし,どれが正しいのか,間違っているのかは,分かりません。

それをつかむための指標となるものの一つに模擬試験があります。


過去問が解けるようになるのも指標になるのでは?

と思われる方も多いでしょう。


過去問は,国家試験問題そのものなので,解けるようになることは実力をつけるためには必要なことです。


過去問を使っての勉強は,参考書だけを使って勉強するよりはずっと優れた方法です。


国試問題は同じようには出題してくれません。


ここが要注意です。トラップ(わな)です。


参考書類や過去問で覚えて来たものをアウトプットするは,国試です。


しかし,国試当日に間違った勉強法をしていたことに気が付くのでは遅すぎます。


国試の代わりになるものが模擬試験


勉強法が間違っていれば得点できません。

勉強法が正しければ得点できます。

得点出来なければ,勉強法を変えます。

そしてまた別の模試を受けて,得点出来なければまた勉強法を変えます。


このようにして国試まで修正していきます。

模擬試験は,さまざまな時期にあるので,複数は受けておきたいです。


4つも5つも受けさせる学校もあります。そういう学校は概して合格率が高いです。

そりゃそうですよね。点数が悪かったら辛いですから努力するようになるからです。


中には,最初の模試から50点アップさせて合格したという人もいると聞きます。


自分の実力を知らずに国試に臨んで合格できれば良いですが,大学生の場合は内定が取り消されてしまう事態にも追い込まれることもあるだけに,国試には万全を期して臨みたいものです。


なお,模試の場合は,問題の難易度によって,得点できるものとなかなか得点できないものがあります。


どこの模試でも国試よりも難易度が高いので,模試の点数プラス10~20点くらいが国試の時の実力になります。


さて,今日も問題を見てみましょう。



第26回・問題29 

福祉政策に関する社会福祉法の規定についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 都道府県は,社会福祉施設の設備の規模及び構造並びに福祉施設の運営について,要綱で基準を定めなければならない。

2 地方社会福祉審議会は,有識者から専門的意見を聞くための機関であり,合議により処理することが適当な事務をつかさどるものではない。

3 国及び地方公共団体は,社会福祉を目的とする事業を経営する者と協力して,福祉サービスの供給体制の確保及び適切な利用の推進に関する施策その他の必要な措置を講じなければならない。

4 社会福祉事業従事者の確保及び国民の社会福祉に関する活動への参加を促進するために必要な措置を講ずるよう努めるのは,地方公共団体ではなく国であるとされている。

5 市町村長は,社会福祉事業従事者の確保及び住民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置に関する基本指針を定めなければならない。



「現代社会と福祉」の問題です,

この科目は,福祉政策が中心なので,法制度でもちょっと他の科目とは違う視点の出題がされます。


この問題は社会福祉法からの出題されたものです。

社会福祉の基本法である社会福祉法であっても,他の法律と同じような規則性はあります。


問題を解きながら,知識を知恵に変えていきましょう。


それでは,詳しく見て行きますね~


1 都道府県は,社会福祉施設の設備の規模及び構造並びに福祉施設の運営について,要綱で基準を定めなければならない。


結論から言うと,要綱ではなく条例です。よって×。


福祉現場では要綱はなじみ深いものだと思います。


条例:地方自治体が定める法 ⇒ 議会で決める。

要綱:地方自治体の内部規定 ⇒ 議会で決めない。


順序で言えば,条例が上位にあって,要綱が下位にあります。

施設運営については,おおまかに条例で定めて,運営規定と言える要綱を作成します。


2 地方社会福祉審議会は,有識者から専門的意見を聞くための機関であり,合議により処理することが適当な事務をつかさどるものではない。


地方社会福祉審議会とは,都道府県,指定都市に必置の合議制の機関です。よって×。


知識がなくても見当はつけることができた選択肢です。


「合議により処理することが適当な事務をつかさどるものではない」というわざわざ省く条件を明示している場合は,逆に「合議により処理することが適当な事務をつかさどるものである」ことが正しいことが多い。


3 国及び地方公共団体は,社会福祉を目的とする事業を経営する者と協力して,福祉サービスの供給体制の確保及び適切な利用の推進に関する施策その他の必要な措置を講じなければならない。


結論から言うと,これが正解です。


講じなければならないのか(義務),講ずるよう努めるものとする(努力義務)なのかをしっかり覚えておく必要があります。


4 社会福祉事業従事者の確保及び国民の社会福祉に関する活動への参加を促進するために必要な措置を講ずるよう努めるのは,地方公共団体ではなく国であるとされている。


結論から言うと☓です。


2の選択肢とスタイルは違いますが,同じように「地方公共団体ではなく」とわざわざ省く条件を明示しています。この場合は,2と同じように逆の表現「地方公共団体とともに」となりそうだと予測できます。


この作問方法は,不適切問題を作らないための王道です。


なお,社会福祉士法では,国と地方公共団体とにそれぞれ定めがあります。


第九十二条 国は、社会福祉事業等従事者の確保及び国民の社会福祉に関する活動への参加を促進するために必要な財政上及び金融上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならない。


2 地方公共団体は、社会福祉事業等従事者の確保及び国民の社会福祉に関する活動への参加を促進するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。


5 市町村長は,社会福祉事業従事者の確保及び住民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置に関する基本指針を定めなければならない。


基本方針は,中央官庁が定めるものです。この場合は厚生労働省です。よって×。


「基本指針」など基本がつくものは,基本的に中央官庁の責務です。地方公共団体ではありません。


例外として・・・


基本が入っていますが「基本構想」(バリアフリー新法)は,地方公共団体(この場合は市町村)の責務です。


どんなに勉強しても知らない問題は出題される

知っている問題でも表現を変えて出題されます。


これに対応するのは,知識を知恵に変えることができた人だけです。

国試は試験委員との知恵比べと言えるでしょう。


知識を知恵に変えられるようにチームfukufuku21は情報提供していきたいと思います。


知恵になったかどうかを確かめる機会が模擬試験です。


知らない問題に対応できるのは,知識に裏付けられた知恵です。



<今日のまとめ>


国試に合格できる勉強法とは・・・


知識を知恵に変えることができる勉強だと言えるでしょう。


複数回受験されている方は,本当に大変だと思います。

不合格になっても受験を続けると必ず合格できます。


去年と勉強法を変えてみることで道は開けます。

2024年3月19日火曜日

外国人の名前や歴史を覚えるのが苦手な人へ

 外国人の名前,外国語を覚えるのは,本当にいやなものですね。

歴史も好きな人にとっては,面白いかもしれませんが,「こんなことを学んでもどうなる?」と思ったら,本当につまらないものになります。


チームfukufuku21も,外国人の名前,業績,そして歴史が得意な人はいません。


しかししかし・・・


そんなのは,国試のうちのほんの一部にすぎません。


社会福祉士の国試で最も多く出題されるものは,外国人の名前や歴史ではなく,法制度です。


社会福祉士とケアマネジャーを比較して考えてみましょう。


社会福祉士に最も必要とされているものは・・・


社会保障制度全体をつかんでおくことです。


社会福祉士の資格はなくても仕事はできます。法の使い手ではないからです。


ケアマネジャーは,介護保険法に関する法の使い手です。資格がなければ仕事ができません。


ここに勉強のヒントがあります。


社会福祉士は,法の使い手ではない。


それに対して・・・


ケアマネジャーは,法の使い手である。


何か気が付きましたか?


社会福祉士国試には,細かい法制度は出題されない


ケアマネジャーは,法制度を知らないと仕事ができません。

だから細部に至る問題が出題されます。


先日,最新の法制度は出題されにくい,と書きました。


社会保障制度全体から見ると,小さな法改正は些末なものにすぎません。


最新の法制度だって,本当は試験委員も出題したいはずです。


しかし,全体を見た時,それよりも優先度の高いものがあるから,最新の法制度の優先度が低くなってしまうのです。


「高齢者に対する支援」を考えると,老人福祉法,高齢者虐待防止法,バリアフリー新法,高齢者住まい法などメインである介護保険法以外からも出題されます。たった10問しかありませんから,そのうちどれを出題しようかと考えながら選び出すのでしょう。


そうすると,最新の法制度を出題する余地がだんだん少なくなっていきます。


心理学や社会学,そして歴史を学ぶのは,社会福祉士が専門職であるために必要なことです。

難しいかもしれませんが,そんなに出題されるものは多くはないので,対応は可能です。


しかし,社会福祉士の出題範囲は広いのが特徴です。


メインは,法制度です。


外国人の名前や歴史をどうしても覚えられなければ,思い切って捨ててしまって,その時間を法制度の勉強にあてる方法もあります。


ただし,それはもっと先の話。


今はまだ時間がたっぷりあるので,苦手だとしても捨てるのはもったいないですよ~


しかし,社会福祉士の国家試験は出題範囲が広いことともう一つ問題数が多いというのも特徴です。


苦手なものに時間をかけてやっと1点をゲットするのも満足感は高いかもしれませんが,効率が悪すぎ。


法制度は,合理的にできているので,その仕組みが理解できれば,得点力はぐんぐん伸びて行きます。極端なことを言えば,その法制度を知らなくても,推測で正解できることさえできます。


苦手なものがあっても,得意な部分を作れば逆転できるのが社会福祉士の国試です。


社会福祉士国試の必勝法は・・・


法制度をどれだけしっかり押さえるか,ということにかかっていると言っても良いかもしれません。



さて,前置きが長くなりましたが,今日の問題を見てみましょう。



第26回・問題28

福祉サービスの提供の仕組みに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 国及び地方公共団体は,福祉サービスを利用しようとする者が必要な情報を容易に得られるように,必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

2 社会福祉事業の経営者は,福祉サービスの利用契約が成立したときには,その利用者に遅滞なく口頭で契約事項を説明しなければならない。

3 準市場(疑似市場)は,市場における自由な取引を通じて福祉サービスを提供しようとする考え方である。

4 介護保険制度は,事業者との契約を通じた介護サービス利用を原則としていることから,市町村には指定サービス事業者を指定したり,その取消しを行ったりする権限はない。

5 認可保育所における保育サービスの利用は,利用者と保育所との直接契約による。


多くの人が苦手かもしれない「現代社会と福祉」の問題です。

この科目だって,理論や概念,歴史だけではなく,このような法制度に関する問題もありますよ~



歴史が苦手という人は,この手の問題は絶対に死守したいです。


社会福祉士に最も必要とされているものは,社会保障制度全体をつかんでおくことだからです。


さて,それでは細かく見ていきますね~


1 国及び地方公共団体は,福祉サービスを利用しようとする者が必要な情報を容易に得られるように,必要な措置を講ずるよう努めなければならない。


社会福祉法からの出題です。


チームfukufuku21は,国試勉強のために,法律を読むのは勧めません。なぜなら法の条文を理解するのは難しいからです。しかし,社会福祉法だけは別です。そのために法の表現に慣れることが必要です。


「・・・をおく」は,必置なのでしょうか。それとも任意設置なのでしょうか。


答えは


必置


任意の場合は,「おくことができる」という表現になります。


しかし,こんなことにストレスを感じたくないですよね。


社会福祉法人はほかの社会福祉法人と合併できる。


参考書には,このまま書いていないです。


社会福祉法人は社会福祉法人以外とは合併できない。


と書かれています。


基本的には,法の条文を読むことは,国試対策としておすすめしませんが,この社会福祉法だけは別です。一度だけでも良いので,全体を読んでみましょう。


改めて読んでみると,いろいろな発見があると思いますよ~


社会福祉法は,社会福祉における最も中心となる法律です。その分,出題もされやすいということになります。


問題に戻ります。


国及び地方公共団体は,福祉サービスを利用しようとする者が必要な情報を容易に得られるように,必要な措置を講ずるよう努めなければならない。


これは正解です。


このような法律の場合,


講じなければならない・・・・・・・・義務

講ずるよう努めなければならない・・・努力義務


をしっかり覚えることを意識しましょう。

これだけで得点力はアップするはずです。


2 社会福祉事業の経営者は,福祉サービスの利用契約が成立したときには,その利用者に遅滞なく口頭で契約事項を説明しなければならない。


口頭ではなく,文書を交付しなければならないですよね。


よって×。



文書,文書,と単純に覚えているとひっかけられることがあるので,気を付けましょう。


文書で交付しなければなりませんが,受付する時は,必ずしも文書でなくても口頭でできる法律もあります。


 生活保護法などがそうですよね。


 3 準市場(疑似市場)は,市場における自由な取引を通じて福祉サービスを提供しようとする考え方である。


準市場(疑似市場)をもし知らなくても,「市場における自由な取引を通じて」であれば,わざわざ「準」や「擬似」をつけなくても,単純に「市場」で良いのではないかと考えられるのではないでしょうか。


準市場は,日本で言えば,介護保険サービスがこれに当たります。契約は自由にできますが,介護報酬は公定価格です。サービスの質が良くても悪くても,価格は一緒です。「うちのサービスは,とても良いので他より多くいただきます」ということは許されませんね。これが準市場(疑似市場)です。


公定価格であっても,事業者間の競争は行われます。つまり市場原理の一部を取り入れているので準市場(疑似市場)と言われるわけです。


自由な取引ではないので,間違いですね。


4 介護保険制度は,事業者との契約を通じた介護サービス利用を原則としていることから,市町村には指定サービス事業者を指定したり,その取消しを行ったりする権限はない。


社会福祉士の場合は,専門科目に「高齢者」があるので,地域密着型サービスは,市町村が指定を行うことを勉強していると思いますが,精神保健福祉士にはないのでこれに×をつけるのは難しかったのではないでしょうか。


言い切り表現に正解少なし,は制度系の問題にも応用できることがあります。


分からない時には,いろいろ頭を柔軟にして問題を解いていただきたいと思います。


国試で避けたいのは,緊張で柔軟な思考ができなくなることです。その状態になると,知識を得点に変えることができなくなりますので注意が必要です。


話は戻って,この選択肢は×ですね。



5 認可保育所における保育サービスの利用は,利用者と保育所との直接契約による。



福祉サービス利用には,いくつかの方式があります。


覚えていない方は,今ここで覚えましょう。


措置制度・・・地方公共団体の行政処分としてサービス利用する。


利用契約制度・・・利用者とサービス事業者が直接契約でサービス利用する。


保育所方式・・・利用者は行政と契約して,行政はサービス事業者に委託する形でサービス利用する。


認可保育所は,この保育所方式を取ります。保育所でも公立の保育所は近年の改正によって,保育所と直接契約によって利用します。

保育所方式は知らなくても,利用者と保育所との直接契約ではないことはわかりそうなので,そんなに難しくはないかもしれません。


答えは×です。


この問題の答えは,1となりますが,学校の先生が思うほどこの問題で正解するのは簡単ではないです。


なぜなら,しっかり覚えていないと,義務なのか,努力事務なのかが迷います。しかも1や5には正解は少ない,という中途半端な知識がじゃまして,1には〇をつけにくいからです。


それでも冷静に各選択肢を見ていけば消去法で,1が残ります。


しかし,冷静にはなれないのが国試の怖いところです。


しっかり得点を取るためには,法制度は,正確に覚えておきたいです。


時間に余裕があれば・・・


特に「領域別ではない科目」は,問題文を正しい文に直して覚えていくと良いと思います。



過去問を使った勉強法のメリット・デメリット


メリットは,過去問は問題を解くためのヒントの宝庫なので得点力をつけることができます。


デメリットは,間違った文章が常に目にすることになりますので,試験の時に,「あれっ,これってどっちだっただろう?」と分からなくなる可能性があります。

正しい文を読むことは,脳の栄養になります。


たくさん脳に栄養をあげてください。


そして,法制度をしっかり覚えることは,点数を上げていくための最も近道です。

どんなものが覚え方があいまいになりやすいのは,これから問題を見ながら一緒に考えて行きましょう!!

2024年3月18日月曜日

最新の法制度が出題されることは少ない


ちょっと古い問題です。


第26回・問題26 

在留外国人に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 在留外国人の数を在留資格別にみると「専門的・技術的分野」の労働者数が,日本人の配偶者をもつなど「身分に基づく在留資格」者数を上回っている。

2 在留資格を有する外国人の雇用状況に関する事業主からの届出は,出入国管理局に行うことになっている。

3 外国人の在留資格名称に「医療」は含まれない。

4 在留外国人の世帯に対して生活保護制度は適用されない。

5 出入国管理及び難民認定法等の改正(2012年(平成24年)7月)により,外国人登録制度が廃止された。


前回書いたように・・・


国試には,社会福祉士に期待することを出題します。


ソーシャルワークの対象は,従来の貧困や障害などに加えて,外国人に対するものも含まれます。


そのため,外国人に関する出題は,第26回以降毎回出題されています。

外国人は今後ますます増えていくことから,出題が急になくなるとは思いにくいので,押さえておきたいです。


ただ,第29回は1問まるまる出題されているので,2年続けて1問まるまる出題ということはないかもしれません。


それでは,詳しく見ていきましょう。


1 在留外国人の数を在留資格別にみると「専門的・技術的分野」の労働者数が,日本人の配偶者をもつなど「身分に基づく在留資格」者数を上回っている。


これは,よく分かりません。最初に分からないものが来るとかなり焦りますが,ここは冷静に▲をつけましょう。


答えとしては,身分に基づく在留資格者の方が少ないそうです。


2 在留資格を有する外国人の雇用状況に関する事業主からの届出は,出入国管理局に行うことになっている。


これもちょっぴり難しいですが,入出国管理局は,空港や港があるところにありそうな機関であることは想像つきます。


そう考えれば,事業主にとって身近にある機関ではなさそうだと想像することができます。


これは×に出来そうね。


調べてみるとハローワークだそうです。


よって×。


3 外国人の在留資格名称に「医療」は含まれない。



「含まれない」という表現は多くの場合は,間違い選択肢を作成する際に多用されます。


しかし,ここでは分からないので,冷静に▲をつけておきましょう。


調べてみると,医療も含まれるそうです。



4 在留外国人の世帯に対して生活保護制度は適用されない。



生活保護自体は,日本国民であることが適用条件ですが,通知によって適用されています。


しかし,ここでは分からないので,冷静に▲をつけておきましょう。




5 出入国管理及び難民認定法等の改正(2012年(平成24年)7月)により,外国人登録制度が廃止された。



これは当時話題になりました。覚えている人も多かったのではないでしょうか。


これが正解です。



第26回国試は,2014年1月に実施されたものです。



法改正は2012年の7月ですから,第25回に出題しようと思えば出来ました。

しかし,1年おいた第26回に出題しています。


法改正後,すぐに出題していません。この傾向は今も同じです。もちろん,最新の法改正は覚えたほうが良いですが,そのほとんどがすぐ出題されません。国家試験で得点アップするという目的では,あまり良い方法とは言えないように思います。

それよりもスタンダードな内容を押さえていくことが得点アップの最短の道です。

2024年3月17日日曜日

合格をつかむための法制度を覚えるコツ

 

法律は合理的に作られている


法制度は,それが必要だから規定されます。


法の条文を覚えるのは難しいので,しっかり覚えるのがいやだなぁ,と思う人もいるでしょう。


しかし・・・


合理的につくられているため,覚えるときに,なぜこのように規定したのかを考えるととても頭に残りやすい!


領域の違う法律でも共通するものがあるからです。


これを意識して勉強すれば,たとえ勉強していない法律が出題されても推測で答えられる率が高くなります。


それでは,今日の問題を見ていきましょう。


第26回・問題25 

我が国における虐待及び暴力(ドメスティック・バイオレンス(DV)を含む)に関する法律についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 「高齡者虐待防止法」(2005年(平成17年))では,養護者による高齢者虐待のおそれがある場合に,地域包括支援センターの職員は,自らの判断により,当該高齢者の居所に立ち入ることができることとされている。

2 公益通報者保護法(2004年(平成16年))では,公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇を無効とすることが規定されており,養介護施設における虐待を通報した職員に対してもこれが適用される。

3 「障害者虐待防止法」(2011年(平成23年))で規定する障害者とは,「身体障害,知的障害又は精神障害があるため,継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」のことをいう。

4 「DV防止法」(2001年(平成13年))では,障害者が配偶者から暴力を受けている場合は,「DV防止法」に優先して「障害者虐待防止法」が適用されると規定されている。

5 「児童虐待防止法」(2000年(平成12年))では,小学校や中学校の長に,教職員,児童,生徒に対して,就学する障害児に対する虐待を防止するための必要な措置を講ずることを義務づけている。


社会福祉士に対する期待の一つには,多くの制度に精通しているというものもあると思います。


それらの意味では,法制度をしっかり覚えていくことは,最も社会福祉士らしいのではないでしょうか。


それでは問題を詳しく見ていきます。



1 「高齡者虐待防止法」(2005年(平成17年))では,養護者による高齢者虐待のおそれがある場合に,地域包括支援センターの職員は,自らの判断により,当該高齢者の居所に立ち入ることができることとされている。


これは制度を知らなくても,「自らの判断により」が怪しげであると思えるのではないでしょうか。


立ち入り調査について(高齢者虐待防止法第11条)

市町村長は、養護者による高齢者虐待により高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認めるときは、介護保険法第百十五条の四十六第二項の規定により設置する地域包括支援センターの職員その他の高齢者の福祉に関する事務に従事する職員をして、当該高齢者の住所又は居所に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができる。


判断するのは,市町村長ということになります。


よって×。


2 公益通報者保護法(2004年(平成16年))では,公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇を無効とすることが規定されており,養介護施設における虐待を通報した職員に対してもこれが適用される。



公益通報者保護法は,賞味期限改ざんなど,企業による国民の信頼を裏切る不祥事が続いたことで制定されたものです。


法律には,直接その法律で規定されているものと,その法律そのもので規定されずに,他の法律で規定されているものを適用させるものの2つがあります。


例えば不服申し立てについて・・・


直接規定されているものは,生活保護法などです。

規定されていないものは,行政不服審査法が適用されます。


直接規定されているものの方が珍しいです。


高齢者虐待防止法については,「公益通報者の解雇を無効」とする規定はされておらず,公益通報者保護法が規定されます。


よって〇。


3 「障害者虐待防止法」(2011年(平成23年))で規定する障害者とは,「身体障害,知的障害又は精神障害があるため,継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」のことをいう。


障害者虐待防止法による障害者の規定は,障害者基本法と同じです。


の法律において「障害者」とは、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第二条第一号 に規定する障害者をいう。


とされています。


障害者基本法(第2条1項)

障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。


このうち,社会的障壁(バリア)の部分は,2011年改正で加わったものです。障害者基本法改正,障害者差別解消法制定などは,障害者権利条約批准に向けた国内法の整備の一環として実施されたものです。


問題に戻ると・・・


「社会的障壁」の記載がないので,×。


4 「DV防止法」(2001年(平成13年))では,障害者が配偶者から暴力を受けている場合は,「DV防止法」に優先して「障害者虐待防止法」が適用されると規定されている。


法律によっては,どの法律が優先されるか規定されているものがあります。


その代表格は,生活保護法です。生活保護法はセーフティネットとして機能させるために,他法優先が規定されています。


サービスを規定する法律では,どれが優先するかを規定しないと運用面で困ることが発生します。


他によく知られるものでは,介護保険法と障害者総合支援法では,介護保険法が優先というものがあります。


しかし,サービス以外では,どれを優先するのかの規定を設けても意味がないものもあります。


障害者虐待防止法,DV防止法ともに,虐待を防止することを目的とするものです。虐待を防止できればどの法律が適用されてもよいわけです。

 先述のように法律は極めて合理的にできています。規定されるものには意味があります。意味をなさない規定はされません。


話を戻します。


障害者が配偶者から暴力を受けている場合は,「DV防止法」に優先して「障害者虐待防止法」が適用されると規定されている。


このような規定はありません。

こんなことは知らないと思うと迷い道に入り込みます。

知らないのは勉強不足ではなく,間違いであることが多いです。


5 「児童虐待防止法」(2000年(平成12年))では,小学校や中学校の長に,教職員,児童,生徒に対して,就学する障害児に対する虐待を防止するための必要な措置を講ずることを義務づけている。


この問題の中で最も頭を悩ましたのは,この選択肢だったと思います。


しかし,ヒントはあります。

多くの場合,措置を講じるのは,国,都道府県,市町村です。同法でも義務付けているのは,これらに対してです。


よって×。


なぜ社会福祉士になりたいのか


勉強をしていくと,迷いが出てきたり,壁にぶつかりそうになることもあるでしょう。


そんなときには,今一度社会福祉士を最初に目指そうと思った動機を思い出してみましょう。



きっと何かが見えてくるはずです。


2024年3月16日土曜日

国試は社会福祉士に求める力の具現化を目指して出題する

 

ソーシャルワークの答えは一つではない

 

改めてソーシャルワークの実務を考えてみると・・・

 「あとからこうすればよかった」と思うことはよくあるのではないでしょうか。

 

ソーシャルワークは,それでよいと思います。

 

 

これで良いと思うと,成長はそこで止まってしまうのではないでしょうか。

 

ソーシャルワークは,多くの場合,自分で考えて行動します。

 人から指示されないと動けないワーカーでは,ご利用者が困ってしまいます。

 

教育プログラムは「ワーカーのあるべき姿」を目指して組み立てられています。

 国試は,その集大成として実施されます。

 

テキストや参考書をどれだけ勉強しても,それだけでは解けない出題があるのは,考えるワーカーを育てたいという方針の表れだと言えます。

 

試験センターが繰り出す変化球は,クライエントの多様なニーズだと考えましょう。

多くの経験は,多様なニーズに対応するためのヒントになるはずです。

 

 過去問をたくさん解くことは,経験をたくさん積み重ねていくことと同じです。

 

 それでは今日の問題を見ていきましょう。

 

 

26回・問題24 

 ニーズ(必要)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

 1 欲求は,本人の発言で表現されなければ,ニーズ(必要)とはならない。

 2 充足すべきニーズ(必要)の把握は,行政や専門職が行い,本人や家族がこれに関与することはない。

 3 社会福祉実践は,ニーズ(必要)のうち,その人が自覚し具体的に支援を求めるものを対象にする。

 4 ニーズ(必要)充足のために平等な資源の量を分配すべきであるという考え方を,貢献原則と呼ぶ。

 5 同じ量の資源を用いても,ニーズ(必要)の充足のされ方は個人の健康状態や生活水準などに応じて異なる。

 

 

国試が終わった後に「今年の出題傾向は変わった」と言う方は多いです。

 

国試問題をよく見てみると,毎年少しずつ新しい出題の仕方がされています。

 

この問題も,現在見てみると斬新さはそれほどないと思いますが,受験した人はかなり面食らったはずです。

 

過去問題集で勉強すると詳しく解説されているので,あとから見るとそれほどの新奇さは感じられないと思います。

 

 

それでは詳しく見ていきますね。

 

 

1 欲求は,本人の発言で表現されなければ,ニーズ(必要)とはならない。

 

 

ブラッドショーのニードの分類は,知っていることを当然のこととしての出題です。

 

感得されたニード

表出されたニード

規範的ニード

比較ニード

 

「本人の発言で表現される」のは,表出されたニードに近いと言えるかもしれませんが,必ずしも発言しなければならない,ということはないです。

もちろん,感得されたニード,規範的ニード,比較ニードは,「本人の発言で表現される」ことはないです。

 

よって×。

 

 

2 充足すべきニーズ(必要)の把握は,行政や専門職が行い,本人や家族がこれに関与することはない。

 

 

これもブラッドショーにならって考えてみると,本人がニーズがあることを自覚しているのは,感得されたニード,表出されたニードです。関与していますね。

 

よって×。

 

 

3 社会福祉実践は,ニーズ(必要)のうち,その人が自覚し具体的に支援を求めるものを対象にする。

 

 

その人が自覚し具体的に支援を求めるのは,表出されたニードです。

 

本人が自覚していなくても,規範的ニード,比較ニードは専門家がニーズを把握して支援します。

 

よって×。

 

 

4 ニーズ(必要)充足のために平等な資源の量を分配すべきであるという考え方を,貢献原則と呼ぶ。

 

 

この中で,難しいのはこの選択肢でしょう。

 

貢献原則,必要原則が分かっている必要があります。

 

貢献原則とは,貢献した人には多く分配する福祉政策のことです。

必要原則とは,必要としている人に必要量分配する福祉政策のことです。

 

問題文は,貢献原則ではなく必要原則のことを述べています。

 

よって×。

 

 

5 同じ量の資源を用いても,ニーズ(必要)の充足のされ方は個人の健康状態や生活水準などに応じて異なる。

 

 

ニーズは,クライエントによって千差万別です。ニーズ充足も千差万別です。

 

よって〇ですね。

 

 

ニーズが千差万別だから,ソーシャルワークが単純化しないのは当然のことです。

 

 〈今回のまとめ〉


千差万別なニーズに対応するために・・・

 

ワーカーには確実な専門知識をもち,それを柔軟に運用できる柔軟性が求められます。

 

そのために,国試は簡単に解けるものばかりではだめなのです。

2024年3月15日金曜日

知識に基づく柔軟な思考が国試の突破口です!

 国試会場には魔物がいる


「甲子園に魔物がいる」 高校野球でよく使われる言葉です。


毎日毎日練習を繰り返して,全国大会をつかみ取った高校生でさえ本番では普通考えられないことが起きることを物語った言葉と言えるでしょう。


たった一度のミスで試合に負けてしまうこともあるかもしれません。指導者に言わせれば高校野球は教育なのですから,負けることにも学びがあるはずです。


余談・・・


練習を繰り返すことで「体に覚えこませる」という表現があります。


心理学では・・・


体で覚えた記憶は,手続き記憶です。


思考しなくても「体に覚えこませた」行動はできるようになります。

一瞬でも早く体を動かす,しかも正確に体を動かすためには,「体に覚えこませる」ことは重要な練習だと思います。


学習理論で言えば,レスポンデント条件付け,あるいはオペラント条件付けです。


レスポンデント条件付けの場合

Aという刺激を何度も経験させることで,Bの行動をとるようになる。


オペラント条件付けの場合

Aという自発的な行動に,賞罰(怒られたり,褒められたり)することで,Bの行動をとるようになる。


「体で覚えこませる」ことによって,選手をかなりのレベルまで引き上げることはできそうです。


しかし,レスポンデント条件付けであっても,オペラント条件であっても,そこには思考は介在しません。

 部活のスポーツが,本来の教育であるならば,将来の社会生活で役立つものである必要があります。


本当に優秀な指導者なら,もう一段階,判断を瞬時に行うこと,つまり考えた行動をすることを指導させているはずです。


同じことを繰り返す練習であっても,必ず考えながら体を動かすこと。


瞬時の判断が求められる時に,とても重要になってきます。


迷ったら,せっかくアウトにできるケースでもセーフにしてしまうことになってしまいます。


社会福祉士を目指す人にとっての甲子園は,国試会場です。


普段,起きないことが起きます。日常から,思考をしっかり動かした練習(勉強)をすることが重要です。


迷ったら,正解にできる問題でも不正解になってしまいます。


思考しながら,問題を解く訓練は,社会福祉士を目指す人にとっての甲子園である国試会場で判断ミスを極力減らすことになります。


後で問題を解いたら正解できた,ではなく,試験会場で正解できた,になる道をこれからも模索していきたいと思います。


さて,それでは今日の問題です。



第26回・問題23 

福祉国家に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 T. H.マーシャル(Marshall,T. H.)のシティズンシップの分類に従えば,福祉国家は,市民的権利や政治的権利と並び,社会的権利を重視する国家ということになる。

2 福祉国家に関する様々な学説は,欧米でも日本でも19世紀末に社会保障の基本的な体制が成立したという点では一致している。

3 福祉国家は,その目的を実現するに当たり,人々の行為を法律で禁止又は奨励する「規制的な手段」はとらない。

4 エスピン-アンデルセン(Esping-Andersen,G.)の福祉国家の類型化によれば,社会民主主義レジームでは,市場の役割が大きいとされる。

5 現在の福祉国家は,労働人口の比重がサービス業から製造業に移る工業化への対応を迫られている。



「福祉国家って何?」


マーシャルによると福祉国家=資本主義+民主主義+福祉 ⇒ ハイフン連結社会 を提唱しています。


つまり,



福祉国家とは,資本主義を取っている民主主義国家が福祉を行っている国家を言います。


福祉国家って何? とひっかかってしまっては,次に進めません。


なお,ここで確認しておきたいのは,


マーシャル=ハイフン連結社会


という単純図式だけだとこの問題を理解することは難しいということです。



福祉国家とは,現代の多くの国家に見られる資本主義国家のことである。

 これを「マーシャルはハイフン連結社会」と言った。


これで完璧です。


さて,問題に戻ります。


1 T. H.マーシャル(Marshall,T. H.)のシティズンシップの分類に従えば,福祉国家は,市民的権利や政治的権利と並び,社会的権利を重視する国家ということになる。


市民的権利は自由権などのことです。

政治的権利は参政権などのことです。

社会的権利は生存権などのことです。


生存権 ⇒ 最低限度の生活保障(ナショナルミニマム)


歴史的にみると,自由権,参政権などは,市民革命などで獲得してきた権利です。


それらから比べると,社会権は新しく生まれてきた権利であり,国家により積極的に保障される権利である,という性格をもっています。


そこで先ほどの,ハイフン連結社会を見てましょう。


福祉国家=資本主義+民主主義+福祉


このうち,福祉の部分が社会権となります。


社会権の保障は,福祉国家として必須の条件となります。


よって正解です。


2 福祉国家に関する様々な学説は,欧米でも日本でも19世紀末に社会保障の基本的な体制が成立したという点では一致している。


欧米でも日本でも,という部分は今見たら見落とすことはないでしょう。


しかし,国試会場には魔物がいます。注意が必要です。

社会保障の中の社会保険を見てみると


欧米では,ドイツの社会保険制度は19世紀末に出来上がっています。

日本初の社会保険は,1922年健康保険法です。つまり20世紀初頭です。


この時点で間違いだと言えます。


もう一つのトラップ(わな)が仕掛けられています。


冷静に考えると19世紀は1800年代だとわかります。


試験会場なら,19世紀は1900年代だと認識してしまう恐れがあります。


このように認識してしまえば,1900年代末に社会保障制度の全体が出来上がったと考える恐れがあります。


これが国試の怖いところです。


部分的な社会保障制度は早期に出来上がっていますが,社会保障の基本的な体制と言えば,1942年イギリスのべヴァリッジ報告,1945フランスのラロックプラン,日本の日本国憲法に基づく福祉3法,以降のことと言えます。


よって×。


3 福祉国家は,その目的を実現するに当たり,人々の行為を法律で禁止又は奨励する「規制的な手段」はとらない。



人々の行為を法律で禁止又は奨励する「規制的な手段」


難しい表現です。


しかしよく考えるとたくさんありますよ。


たとえば,近年では


障害者差別解消法


などがされにあたります。


よって×。



4 エスピン-アンデルセン(Esping-Andersen,G.)の福祉国家の類型化によれば,社会民主主義レジームでは,市場の役割が大きいとされる。



エスピン-アンデルセンの福祉国家のレジームには,


スウェーデン・デンマークなどの社会民主主義レジーム

ドイツ・フランスなどの保守主義レジーム

イギリス・アメリカなどの自由主義レジーム


の3類型があります。


そのうち,市場の役割が大きいのは,自由主義レジームということになります。


よって×。


5 現在の福祉国家は,労働人口の比重がサービス業から製造業に移る工業化への対応を迫られている。



資本主義の国なら,製造業からサービス業に移っていくことは想像でそうです。


しかし,福祉国家って何?


にひっかかったままなら,この問題にもひっかけられることもあります。


福祉国家とは,現代の多くの国家に見られる資本主義国家のことである。


つまり,製造業からサービス業に移っていきます。


よって×。


マーシャル=ハイフン連結社会


という単純図式の覚え方で通用しないのが社会福祉士の国試です。


思考をしっかり動かして,問題に対応できるように頑張りましょう。


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