2024年3月17日日曜日

合格をつかむための法制度を覚えるコツ

 

法律は合理的に作られている


法制度は,それが必要だから規定されます。


法の条文を覚えるのは難しいので,しっかり覚えるのがいやだなぁ,と思う人もいるでしょう。


しかし・・・


合理的につくられているため,覚えるときに,なぜこのように規定したのかを考えるととても頭に残りやすい!


領域の違う法律でも共通するものがあるからです。


これを意識して勉強すれば,たとえ勉強していない法律が出題されても推測で答えられる率が高くなります。


それでは,今日の問題を見ていきましょう。


第26回・問題25 

我が国における虐待及び暴力(ドメスティック・バイオレンス(DV)を含む)に関する法律についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 「高齡者虐待防止法」(2005年(平成17年))では,養護者による高齢者虐待のおそれがある場合に,地域包括支援センターの職員は,自らの判断により,当該高齢者の居所に立ち入ることができることとされている。

2 公益通報者保護法(2004年(平成16年))では,公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇を無効とすることが規定されており,養介護施設における虐待を通報した職員に対してもこれが適用される。

3 「障害者虐待防止法」(2011年(平成23年))で規定する障害者とは,「身体障害,知的障害又は精神障害があるため,継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」のことをいう。

4 「DV防止法」(2001年(平成13年))では,障害者が配偶者から暴力を受けている場合は,「DV防止法」に優先して「障害者虐待防止法」が適用されると規定されている。

5 「児童虐待防止法」(2000年(平成12年))では,小学校や中学校の長に,教職員,児童,生徒に対して,就学する障害児に対する虐待を防止するための必要な措置を講ずることを義務づけている。


社会福祉士に対する期待の一つには,多くの制度に精通しているというものもあると思います。


それらの意味では,法制度をしっかり覚えていくことは,最も社会福祉士らしいのではないでしょうか。


それでは問題を詳しく見ていきます。



1 「高齡者虐待防止法」(2005年(平成17年))では,養護者による高齢者虐待のおそれがある場合に,地域包括支援センターの職員は,自らの判断により,当該高齢者の居所に立ち入ることができることとされている。


これは制度を知らなくても,「自らの判断により」が怪しげであると思えるのではないでしょうか。


立ち入り調査について(高齢者虐待防止法第11条)

市町村長は、養護者による高齢者虐待により高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認めるときは、介護保険法第百十五条の四十六第二項の規定により設置する地域包括支援センターの職員その他の高齢者の福祉に関する事務に従事する職員をして、当該高齢者の住所又は居所に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができる。


判断するのは,市町村長ということになります。


よって×。


2 公益通報者保護法(2004年(平成16年))では,公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇を無効とすることが規定されており,養介護施設における虐待を通報した職員に対してもこれが適用される。



公益通報者保護法は,賞味期限改ざんなど,企業による国民の信頼を裏切る不祥事が続いたことで制定されたものです。


法律には,直接その法律で規定されているものと,その法律そのもので規定されずに,他の法律で規定されているものを適用させるものの2つがあります。


例えば不服申し立てについて・・・


直接規定されているものは,生活保護法などです。

規定されていないものは,行政不服審査法が適用されます。


直接規定されているものの方が珍しいです。


高齢者虐待防止法については,「公益通報者の解雇を無効」とする規定はされておらず,公益通報者保護法が規定されます。


よって〇。


3 「障害者虐待防止法」(2011年(平成23年))で規定する障害者とは,「身体障害,知的障害又は精神障害があるため,継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」のことをいう。


障害者虐待防止法による障害者の規定は,障害者基本法と同じです。


の法律において「障害者」とは、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第二条第一号 に規定する障害者をいう。


とされています。


障害者基本法(第2条1項)

障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。


このうち,社会的障壁(バリア)の部分は,2011年改正で加わったものです。障害者基本法改正,障害者差別解消法制定などは,障害者権利条約批准に向けた国内法の整備の一環として実施されたものです。


問題に戻ると・・・


「社会的障壁」の記載がないので,×。


4 「DV防止法」(2001年(平成13年))では,障害者が配偶者から暴力を受けている場合は,「DV防止法」に優先して「障害者虐待防止法」が適用されると規定されている。


法律によっては,どの法律が優先されるか規定されているものがあります。


その代表格は,生活保護法です。生活保護法はセーフティネットとして機能させるために,他法優先が規定されています。


サービスを規定する法律では,どれが優先するかを規定しないと運用面で困ることが発生します。


他によく知られるものでは,介護保険法と障害者総合支援法では,介護保険法が優先というものがあります。


しかし,サービス以外では,どれを優先するのかの規定を設けても意味がないものもあります。


障害者虐待防止法,DV防止法ともに,虐待を防止することを目的とするものです。虐待を防止できればどの法律が適用されてもよいわけです。

 先述のように法律は極めて合理的にできています。規定されるものには意味があります。意味をなさない規定はされません。


話を戻します。


障害者が配偶者から暴力を受けている場合は,「DV防止法」に優先して「障害者虐待防止法」が適用されると規定されている。


このような規定はありません。

こんなことは知らないと思うと迷い道に入り込みます。

知らないのは勉強不足ではなく,間違いであることが多いです。


5 「児童虐待防止法」(2000年(平成12年))では,小学校や中学校の長に,教職員,児童,生徒に対して,就学する障害児に対する虐待を防止するための必要な措置を講ずることを義務づけている。


この問題の中で最も頭を悩ましたのは,この選択肢だったと思います。


しかし,ヒントはあります。

多くの場合,措置を講じるのは,国,都道府県,市町村です。同法でも義務付けているのは,これらに対してです。


よって×。


なぜ社会福祉士になりたいのか


勉強をしていくと,迷いが出てきたり,壁にぶつかりそうになることもあるでしょう。


そんなときには,今一度社会福祉士を最初に目指そうと思った動機を思い出してみましょう。



きっと何かが見えてくるはずです。


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