社会福祉法はしっかり押さえよう!
先生は「出題される法には目を通しておくこと」と言います。
「福祉」の勉強には欠かせませんが,「国試」に合格するための勉強には最適とは言えないと思います。
以前にもご紹介しましたが,法律に慣れていないと理解するのに時間がかかるからです。また,条文が多いのでどれを注目すればよいのかがわからないということもあります。
しかし,社会福祉法だけは,別です。なぜなら,社会福祉法は,多くの条文から出題されているからです。
しっかり覚えることができなくても,社会福祉法は,一度だけでも目を通しておきましょう。
それでは,今日の問題を見てみましょう。
第26回・問題36 社会福祉法における地域福祉に関係する規定についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 地域住民には,「社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者」の事業や活動を代替する役割があると規定されている。
2 福祉サービスの利用に際して苦情があるとき,利用者は都道府県社会福祉協議会に設置された運営適正化委員会に申し立てることができるとされている。
3 地域福祉計画の策定に当たっては,要援護者への意見聴取をしなければならないと規定されている。
4 市町村社会福祉協談会の業務は,「社会福祉を目的とする事業の企画及び実施」や「社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助」であり,「社会福祉を目的とする事業の調査,普及,宣伝,連絡,調整及び助成」は含まれない。
5 共同募金において寄附金を募集する区域は都道府県を単位とし,募集期間は都道府県知事が定めるとされている。
社会福祉法から幅広く出題されていますね。
社会福祉法は,福祉の基本法である,ということを強く意識させる問題だと言えます。
社会福祉法は,1951年の社会福祉事業法を2000年に改正したものです。
その中で,地域福祉の推進が強く打ち出されているのが特徴です。
それでは,それぞれの選択肢を確認します。
1 地域住民には,「社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者」の事業や活動を代替する役割があると規定されている。
社会福祉法は,覚えなくても一度は目を通そう,と言いました。
目を通しておけば,間違いがある文を見たとき,「何か変だな?」と思えます。
少しでもそう感じたらすかさず×をつけましょう。「何か変だ?」と感じることができるのはほんの一瞬です。問題文を全部読んでから,×をつけようと思ったら,もうその違和感はなくなっています。
地域住民は,「社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者」とともに推進主体です。地域住民には地域住民としての役割があります。代替したり,補完したりするようなものではなく,「地域福祉の推進主体」です。
よって×。
2 福祉サービスの利用に際して苦情があるとき,利用者は都道府県社会福祉協議会に設置された運営適正化委員会に申し立てることができるとされている。
運営適正化委員会は,利用者と福祉サービス事業者の間で起きた利用者の苦情が生じたとき,助言,あっせんなどでトラブル解決を図る中立・第三者機関です。
設置されるのは,都道府県社会福祉協議会です。
よって正解。
運営適正化委員会が出題されるときは,どこに設置されるかが問われます。
運営適正化委員会が設置されるのは,市町村でもなく,都道府県でもなく,都道府県社協!
しっかり押さえていきましょう。
3 地域福祉計画の策定に当たっては,要援護者への意見聴取をしなければならないと規定されている。
福祉計画の策定・変更する場合については,この科目よりも「福祉行財政と福祉計画」でよく出題されています。
市町村地域福祉計画を策定・変更する場合
第百七条 市町村は,地域福祉の推進に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「市町村地域福祉計画」という。)を策定し,又は変更しようとするときは,あらかじめ,住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者その他社会福祉に関する活動を行う者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるとともに,その内容を公表するよう努めるものとする。
都道府県地域福祉支援計画を策定・変更する場合
第百八条 都道府県は,市町村地域福祉計画の達成に資するために,各市町村を通ずる広域的な見地から,市町村の地域福祉の支援に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「都道府県地域福祉支援計画」という。)を策定し,又は変更しようとするときは,あらかじめ,公聴会の開催等住民その他の者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるとともに,その内容を公表するよう努めるものとする。
市町村計画も都道府県計画ともに
必要な措置を講ずるよう努める
となっています。つまり努力義務です。
地域福祉計画は,法定受託事務ではなく,自治事務です。そのほかの行政計画と違って策定義務はありません。そのため,ちょっとほかの行政計画と違っています。詳しくは「福祉行財政と福祉計画」の時に整理したいと思いますが,それらをしっかり押さえておくことが大切です。
話を戻します。
要援護者に対して,「しなければならない」という規定はありません。よって×。
4 市町村社会福祉協談会の業務は,「社会福祉を目的とする事業の企画及び実施」や「社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助」であり,「社会福祉を目的とする事業の調査,普及,宣伝,連絡,調整及び助成」は含まれない。
近年は「含まれない」という条件を除外する問題は少なくなったものの,間違った選択肢を作る場合の常とう手段です。不適切問題になりにくいためです。
もちろん,この選択肢も間違いです。
「社会福祉を目的とする事業の調査,普及,宣伝,連絡,調整及び助成」も市町村社協の業務です。
5 共同募金において寄附金を募集する区域は都道府県を単位とし,募集期間は都道府県知事が定めるとされている。
共同募金は,共同募金会が実施しています。10月1日になると,街頭に共同募金を呼びかける風景が広がります。
そのため共同募金と言えば街頭募金というイメージが強いですが,募金総額に占める街頭募金の割合はわずか数パーセントにすぎません。
毎年7割を超えるのは戸別募金
それにもかかわらず街頭募金にあれだけの人を動員しているのは,「共同募金が始まりました」ということを地域住民に強くアピールする意味合いが強いです。
一般的なイメージと実態が違うものは,引っ掛けとして出題されやすいです。注意しましょう。
話は変わります。
共同募金は戦後すぐにQHQの肝いりで始めました。日本は国を挙げて成功させる必要があったと思われます。そのためには国全体で一枚岩になることが求められます。
そのように考えると,共同募金の期間は地域によって変わるよりも全国統一したほうが国民に強くアピールしやすくなります。共同募金の期間を定めるのは,都道府県知事ではだめなのです。
よって×。
もちろん期間を定めるのは厚生労働大臣です。