2024年3月21日木曜日

知識を知恵に変える勉強法


国家試験に合格するための勉強は・・・


前回,「自分で見つけ出すのが大事」と書きました。


正しい勉強法は,「国家試験で合格できること」です。


まずは知識をつけることが大前提です。


何度も受験されている方は,知識はあると確信しています。


「知識をもっとつけなきゃ」


間違いではありません。


しかし・・・


知識をつける→知識を広げる


中途半端な知識を増やすのは何の意味もありません。


国家試験で必要なのは・・・

知識に裏付けされた知恵

丸覚えは知識レベルです。


しっかり考えながら,勉強していきましょう。


どのように考えるのかは,これからもお伝えしていきます。


さて,それでは今日の問題を見ましょう。


第26回・問題30 

福祉に関する住まいについての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 サービス付き高齢者向け住宅の供給促進のため,所定の登録要件を満たしたサービス付き高齢者向け住宅の建設や改修等に対しては,国の補助制度がある。

2 公営住宅は,住宅に困窮する低額所得者が低廉な家賃で利用できる賃貸住宅であるため,入居に際して,敷金や礼金は存在しない。

3 無料低額宿泊所は,住居のない要保護者の世帯に対して,住宅扶助を行うことを目的とする保護施設である。

4 住宅支援給付は,職業訓練受講給付金を受給している離職者のうち,住宅を喪失又は喪失するおそれのある者に対して支給される。

5 東日本大震災の被災者向けの住宅として活用されたみなし仮設住宅は,国が貸主と契約して借上げた民間賃貸住宅のことである。


住宅政策に関する出題ですね。

法制度は,いくつかありますが,高齢者住まい法を中心として覚えていきましょう。


それではそれぞれの選択肢を見ていきましょう。


1 サービス付き高齢者向け住宅の供給促進のため,所定の登録要件を満たしたサービス付き高齢者向け住宅の建設や改修等に対しては,国の補助制度がある。


高齢者住まい法は,現在急速に増えているサービス付き高齢者住宅(サ高住)を規定する法律ですね。

既存の高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃),高齢者専用賃貸住宅(高専賃),高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)を廃止して2011年にサ高住ができました。


国が新しい制度を推進ときによく行う方式


★補助金支給,報酬単価を高く設定する(はしごをかける)

 ↓  ↓

(ある程度普及したら)

 ↓  ↓

★補助金を廃止,報酬単価を引き下げる(はしごを外す)



サ高住は新しい制度なので補助金が支給されているのではないかと想像できます。


実際には,補助額は,建築費の1/10,改修費の1/3が補助されています。


よって正解。しかしこの時点では▲をつけておきます。


あともう一つヒント・・・


国がやっていることを広めたい


これも覚えておくとよいでしょう。


2 公営住宅は,住宅に困窮する低額所得者が低廉な家賃で利用できる賃貸住宅であるため,入居に際して,敷金や礼金は存在しない。


公営住宅は,1951年の公営住宅法が根拠法の古い制度です。


問題にあるように公営住宅は,地方公共団体が提供する住宅に困窮する低額所得者が低廉な家賃で利用できる賃貸住宅です。


敷金,礼金があるかどうかはわかりませんので,この時点では▲を付けます。


法を改めて見ると,

第18条 事業主体は、公営住宅の入居者から3月分の家賃に相当する金額の範囲内において敷金を徴収することができる。


とされています。よって×。


3 無料低額宿泊所は,住居のない要保護者の世帯に対して,住宅扶助を行うことを目的とする保護施設である。


無料低額宿泊所は,第二種社会福祉事業に規定されていますものです。近年は貧困ビジネスの温床となっていることが指摘され,社会福祉法の改正によって,設立はほかの第二種社会福祉事業よりも一段階上がっています。


保護施設は,たった5つしかないので覚えやすいです。

救護施設(生活扶助を目的とする)

更生施設(生活扶助を目的とする)

医療保護施設(医療扶助を目的とする)

授産施設(生業扶助を目的とする)

宿所提供施設(住宅扶助を目的とする)


住宅扶助を目的としている保護施設は「宿所提供施設」です。


よって×。


4 住宅支援給付は,職業訓練受講給付金を受給している離職者のうち,住宅を喪失又は喪失するおそれのある者に対して支給される。


住宅支援給付はあまり聞いたことがない制度かもしれません。

ここで確認しておきますね。


住宅支援給付

離職者であり,かつ就労能力及び就労意欲のある者のうち,住宅を喪失しているもの又は喪失するおそれのあるものに対して支給する。


職業訓練受講給付金は,求職者支援法に基づくもので,住宅支援給付は,職業訓練受講給付金などの支給を受けていない者が対象となります。


よって×。


ちなみに,住宅に関連するものは,生活困窮者自立支援法に基づく「住居確保給付金」(離職で住宅を失った生活困窮者等に対し家賃相当を支給)があります。これも覚えておきたいです。福祉事務所を設置する地方公共団体の必須事業です。


5 東日本大震災の被災者向けの住宅として活用されたみなし仮設住宅は,国が貸主と契約して借上げた民間賃貸住宅のことである。


仮設住宅は,地方公共団体が災害など家に住めなくなった人に対して提供するものです。プレハブ住宅などで対応することが多いです。


それに対して,みなし仮設住宅は,民間賃貸住宅を借り上げ提供します。


いずれも国の事業ではありません。現在は地方分権の時代です。特に地域ニーズに対応するためには,地方公共団体の役割が大きく,国はそれを支援する形を取ります。


福祉は,法定受託事務ではなく,自治事務であることも覚えておきたいですね。


この時点では,1と2が▲になっています。


1は国のいつもの手(最初は補助金をつけることで制度の拡大を図る)


2は入居に際して,敷金や礼金は存在しない と言い切り表現に正解少なし。となっている。


2つの選択肢を比べた場合,より正解になりやすいものは,1の選択肢と考えられます。


1を▲から〇に昇格させることができそうです。


消去法を的確に使えるためには,知識に裏付けされた知恵が必要です。

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