正解がすぐわかる問題なら良いですが,すぐわからない問題も多くあります。
そういった問題には,間違いを誘発するような道筋が隠れていることがあるので,やっかいです。
いくつも仕掛けられているトラップ(わな)を用心深く避けながら,迷い道に入らないように慎重に足元に目を凝らしてみましょう。
それでは,今日の問題です。
第26回・問題13
クライエントの行動特徴と防衛機制に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 大学生B男さんは,女性Cさんに心を惹かれ強い衝動を抱いたが,Cさんに対しては恋愛や女性の職業の自由について高尚な考えを述べた。これは転換と考えられる。
2 保育園児のD子ちゃんは,不安感に脅かされているが,しばしば自分は強くて万能な人間だというファンタジーを作り出す。これは同一化と考えられる。
3 不登校中の中学生E男さんは,学校に行けない理由として「眠れなかったから」とか,「朝,熱が出たから」と言ったりする。これは投影と考えられる。
4 5歳児のF男ちゃんは,弟が生まれ母親が弟に付きっきりになったとき,とっくにやめていた指しゃぶりをまた始めた。これは昇華と考えられる。
5 父親に対する憎しみの感情を抑えた高校生のG男さんは,ときに父親に対して極端な気遣いや過剰な配慮を示すことがある。これは反動形成と考えられる。
防衛機制は出題頻度が高いので確実に得点しておきたいものですが,出題頻度が高いということは,仕掛けられたトラップはいくつもあることが想像できます。
まず,問題全体に対するトラップ①
単純に「防衛機制に関する」ではなく,「クライエントの行動特徴と防衛機制」とちょっと複雑にした設問になっています。
行動特徴と防衛機制なので,それらを関連させて考える受験生は必ずいたはずです。
選択肢の文章もちょっと変わっているので,より考えさせるものとなっています。
1 大学生B男さんは,女性Cさんに心を惹かれ強い衝動を抱いたが,Cさんに対しては恋愛や女性の職業の自由について高尚な考えを述べた。これは転換と考えられる。
トラップ②
トラップ①「行動特徴と防衛機制」という設問で混乱気味にされていると思います。
そこにこの「転換」です。
ハートビートがさらに激しくなったはずです。
〇も×もつけられないので,冷静に▲をつけます。
2 保育園児のD子ちゃんは,不安感に脅かされているが,しばしば自分は強くて万能な人間だというファンタジーを作り出す。これは同一化と考えられる。
2つめの選択肢で,過去にも出題されたことのある「同一化」が出題されました。
同一化は,自分の好きなアイドルや尊敬する人のまねをすることで欲求を満たすことです。よって×。
3 不登校中の中学生E男さんは,学校に行けない理由として「眠れなかったから」とか,「朝,熱が出たから」と言ったりする。これは投影と考えられる。
3つめの選択肢で,過去にも出題されたことのある「投影」が出題されました。選択肢の文章は,合理化のことを述べています。よって×。
4 5歳児のF男ちゃんは,弟が生まれ母親が弟に付きっきりになったとき,とっくにやめていた指しゃぶりをまた始めた。これは昇華と考えられる。
4つめの選択肢で,過去にも出題されたことのある「昇華」が出題されました。選択肢の文章は,退行のことを述べています。よって×。
5 父親に対する憎しみの感情を抑えた高校生のG男さんは,ときに父親に対して極端な気遣いや過剰な配慮を示すことがある。これは反動形成と考えられる。
5つめの選択肢で,過去にも出題されたことのある「反動形成」が出題されました。選択肢の文章は正しいので〇です。
最初に▲をつけておいた1つめの選択肢は,ここでようやく▲ → ✖ に格下げです。因みに1は「知性化」と言うらしいです。
一つひとつ解説すると比較的やさしい問題に感じるかも・・・
しかし・・・
防衛機制は覚えにくい
抑圧のようにわかりやすいものもありますが,しっかり覚えるのはかなりやっかいです。
それだけに,2~5を自信もって消去できなかった人もいることでしょう。
なぜなら設問の「行動特徴と防衛機制」がピリッと利いているからです。
深読みしてしまうと・・・
1 大学生B男さん
2 保育園児のD子ちゃん
3 中学生E男さん
4 5歳児のF男ちゃん
5 高校生のG男さん
ここに答えのヒントがあるのではないかと考えてしまうかもしれません。
しかし,年齢や性別などの属性は一切関係しません。
ここがトラップ③となります。
2~5の選択肢をしっかり消去できないと,▲にした1つめの選択肢を正解にすることにつながります。
国試は本当に怖いですね。
先に述べたように,防衛機制の出題頻度は高いです。こういったものを確実に覚えると合格が近くなります。
今日の教訓
深読みの先に待っているのは迷い道