ソーシャルワークは,
ケースワーク
グループワーク
コミュニティワーク(コミュニティオーガニゼーション)
とそれぞれの専門領域で発展していきました。
ソーシャルワークの統合化とは,それらのソーシャルワークとしての共通基盤を明確にすることを意味しています。
そのきっかけとなったのが,1929年のミルフォード会議報告書です。
どの領域にも共通するものとして「ジェネリック・ソーシャル・ケースワーク」が提唱されています。ジェネリックとは「一般的な」といった意味合いです。
それでは今日の問題です。
第29回・問題94 アメリカにおけるソーシャルワークの統合化に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 統合化の背景には,専門分化されたソーシャルワーク実践が多様化する社会問題に対応できていたことがある。
2 統合化とは,ケースマネジメントとカウンセリングに共通する新しい知識や方法を明らかにする動きのことである。
3 ミルフォード会議の報告書(1929年)において,「ソーシャルケースワーク」という概念が初めて示され,統合化への先駆けとなった。
4 ジェネラリスト・アプローチは,ソーシャルワークの統合化の一形態である。
5 精神分析学は,ソーシャルワークの統合化に大きな影響を与えた。
変な問題に感じませんか?
その理由は,この文章です。
1 統合化の背景には,専門分化されたソーシャルワーク実践が多様化する社会問題に対応できていたことがある。
この文章に違和感があるのは,もともとの文章を変えたものだからです。
もともとの文章は,
1 統合化の背景には,専門分化されたソーシャルワーク実践が多様化する社会問題に対応できていなかったことがある。
だと考えられます。無理に変えたことでつじつまが合わなくなっています。
それではこれ以外の選択肢の解説です。
2 統合化とは,ケースマネジメントとカウンセリングに共通する新しい知識や方法を明らかにする動きのことである。
統合化は,前説のように,「ケースワーク」「グループワーク」「コミュニティワーク」に共通するものを明らかにするものです。
3 ミルフォード会議の報告書(1929年)において,「ソーシャルケースワーク」という概念が初めて示され,統合化への先駆けとなった。
ミルフォード会議報告書で示されたのは「ジェネリック・ソーシャル・ケースワーク」です。
4 ジェネラリスト・アプローチは,ソーシャルワークの統合化の一形態である。
これが正解です。
現代の福祉ニーズは,複雑化しています。一領域の方法論では,対応が難しくなっています。
例えば,8050問題などがそれにあたります。
ジェネラリスト・アプローチは,いかにもそういった問題に対応できるアプローチ法です。
5 精神分析学は,ソーシャルワークの統合化に大きな影響を与えた。
精神分析学が大きな影響を与えたのは,ケースワーク,とりわけ診断主義ケースワークです。
この流れの先には,心理社会的アプローチがあります。
クライエントとワーカーとの間のコミュニケーションでアプローチしていくのが特徴です。
診断主義ケースワークと心理社会的アプローチの違いは,診断主義ケースワークは,クライエントのトラウマとなったものを治療していくのに対し,心理社会的アプローチでは,「状況の中の人」という概念を取り入れていることです。
ちなみにソーシャルワークの統合化に大きな影響を与えたのは,システム理論です。