今回は,事例研究法を取り上げます。
事例研究法は,これまでほとんど出題されてませんでしたが,次のカリキュラムの中に含まれるので,しっかり押さえておきたいです。
事例研究法は,文字通り,事例を分析することで,適切な対応法などを見つけ出したりするものです。
それでは今日の問題です。
第29回・問題89 事例研究法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 観察対象となる個体が示す値を集合した,集団の分布に関心がある。
2 研究対象は,質的データにあり,量的データは対象としない。
3 事例の置かれた社会的文脈や個別の局面,状況の詳細な理解を目的とする。
4 手紙や日記といった私的文書は,収集対象とはならない。
5 探索的目的に有効であるが,説明的目的には有効ではない。
とんちのような問題です。
知識をベースにして,知恵を使って考えることで答えが見いだせるものです。
とにかく落ち着いて読むことが求められます。
この問題の正解は,選択肢3です。
3 事例の置かれた社会的文脈や個別の局面,状況の詳細な理解を目的とする。
これができるためには,ソーシャルワーク場面をしっかり覚えておくことが必要です。
どんな声掛けをしたのか,クライエントはどんな表情を見せていたのか,などを分析します。
適切な社会資源を提示するにしても,タイミングがあります。
そういったものに気づき,よりよい援助に結び付けることが事例研究の目的です。
なお,事例研究法は,質的研究に位置づけられるものです。
1 観察対象となる個体が示す値を集合した,集団の分布に関心がある。
事例研究は,個を深めていきます。もちろん集団援助技術(グループワーク)も対象になりますが,集合ではなく,個にスポットを当てて,深めていきます。
グループワークの事例研究は,各クライエントへのかかわりを振り返るので,とても高度なものとなるでしょう。
2 研究対象は,質的データにあり,量的データは対象としない。
量的データも対象となります。
例えば,相談援助場面で,面接の回数と会話が成り立った回数などを比較検討してみるといったものもあるでしょう。
適切なイメージがしにくい設問ですが,日本語的に消去できることでしょう。
4 手紙や日記といった私的文書は,収集対象とはならない。
手紙や日記を分析することをドキュメント分析といいます。自ら記録したものは,観察やインタビューとは異なる別の角度から分析することができるでしょう。
5 探索的目的に有効であるが,説明的目的には有効ではない。
探索的目的,説明的目的とはどのようなものかはよくわからなくても,これも日本語的に消去できるでしょう。
探索的というのは,新しいかかわり方を見つけ出すことなど,説明的というのは,既にある理論を使って解析することなどを指していると思います。
説明的の例としては,事例をバイステックの7原則の視点で分析してみる,といったものが考えられるでしょう。
<今日の一言>
今日のような問題は,知識だけでは解けません。
落ち着いて,知恵を使って考えながら答えを考えていくタイプの問題です。
国家試験は,社会福祉士が目指すべき姿を追い求めて出題します。
知識があっても知恵がない社会福祉士は,現場では必要とされません。
こういった問題をくぐりぬけて,社会で役立つ社会福祉士になりましょう。