保健所は,地域保健法に規定される保健衛生行政の第一線の機関です。
対人保健と対物保健に関する業務がありますが,ここでは,対人保健を整理してみたいと思います。
感染症等対策 |
エイズ 難病対策 |
精神保健対策 |
母子保健対策 |
健康診断,患者発生の報告等 結核の定期外健康診断,予防接種,訪問指導,管理検診等 |
エイズ個別カウンセリング事業(無料匿名検査を含む),エイズ相談 難病医療相談等 |
精神保健に関する現状把握,精神保健福祉相談,精神保健訪問指導,医療・保護に関する事務等 |
未熟児に対する訪問指導,養育医療の給付等 |
新型コロナウイルスによる感染症が疑われる場合,保健所に連絡して,PCR検査を行っていますが,保健所の業務のうち「感染症等対策」で行っているのでしょう。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題72 保健所に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 保健所が行うメンタルヘルスの相談では,精神障害者保健福祉手帳所持者は対象外である。
2 保健所における対人保健分野の業務として,エイズに関する個別カウンセリング事業がある。
3 保健所は,「感染症法」に基づき結核患者の発生届を受理した場合には,治療に当たることが義務づけられている。
4 都道府県が設置する保健所の所管区域は,医療法に規定する三次医療圏と一致する。
5 保健所は,母子保健法に基づき母子健康手帳を交付する。
社会福祉士の国試では,保健所の出題はほとんどありません。
保健所は,精神保健行政を担っていることから,精神保健福祉士で出題するからでしょう。
そういう意味では,この問題は精神保健福祉士を受験する人にとっては,ちょっと有利だったかもしれません。
精神保健行政の第一線の機関である精神保健福祉センターも社会福祉士では出題されていません。
それでは解説です。
1 保健所が行うメンタルヘルスの相談では,精神障害者保健福祉手帳所持者は対象外である。
メンタルヘルスの相談とは,精神保健福祉相談のことです。
精神衛生に関する専門機関として,1965年・昭和40年の精神衛生法の改正で精神衛生センター(現在の精神保健福祉センター)が創設されましたが,現在も保健所は,精神障害者の地域生活を支える機能を持ちます。
精神保健福祉センターは,都道府県及び指定都市に設置されるので,日常の相談機関としては距離が遠いのです。
精神障害者保健福祉手帳について覚えておいてほしいことがあります。
身体障害者は,身体障害者手帳の交付を受けなければ利用できないサービスがありますが,精神障害者の場合,精神障害者保健福祉手帳の交付を受けなければ利用できないサービスはありません。
それでは何のために交付を受けるのでしょうか?
理由は,税の減免や各種割引などがあるからです。
これは,療育手帳も同じです。
身体障害者は,身体障害者手帳の交付を受けなければ利用できないサービスがあるのは,身体障害者福祉法によって,身体障害者手帳の交付を受けないと身体障害者とならないという理由です。
2 保健所における対人保健分野の業務として,エイズに関する個別カウンセリング事業がある。
これが正解です。
「エイズ・難病対策」の中に
エイズ個別カウンセリング事業(無料匿名検査を含む),エイズ相談
が含まれています。
3 保健所は,「感染症法」に基づき結核患者の発生届を受理した場合には,治療に当たることが義務づけられている。
保健所には,医師が配置されていますが,治療は医療機関で行います。
なぜなら,感染症に関して保健所が担っているのは,感染症の予防だからです。
4 都道府県が設置する保健所の所管区域は,医療法に規定する三次医療圏と一致する。
保健所の所管区域は,医療法の二次医療圏と一致します。
三次医療圏は,基本的に都道府県に一つの圏域なので広すぎます。
5 保健所は,母子保健法に基づき母子健康手帳を交付する。
母子保健手帳を交付するのは,市町村です。
各種手帳の交付事務
市町村 |
都道府県 |
母子健康手帳 健康手帳 |
身体障害者手帳 療育手帳 精神障害者保健福祉手帳 |
都道府県が交付する手帳は,等級の判定が必要なものです。
市町村が交付する手帳は,等級の判定を必要としないものです。