社会保障制度は,財源に着目すると,
社会保険(社会保険料)と社会扶助(税)に分類することができます。
社会扶助は,さらに,公的扶助(生活保護)と社会福祉制度に分類されます。
国家試験では,これらの特質について,出題されることがあります。
落ち着いて考えると解けるように作られていますが,とにかく混乱しそうなくらいに面倒なので,注意が必要です。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題67 日本の公的扶助と公的年金保険の特質に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 公的扶助は扶養義務者の扶養を優先するが,公的年金保険は扶養義務者の扶養を優先することなく給付される。
2 公的扶助は個人単位で給付されるが,公的年金保険は世帯単位で給付される。
3 公的扶助は画一的に給付されるが,公的年金保険は所得に応じて給付される。
4 公的扶助は原則として金銭で給付されるが,公的年金保険は原則として現物により給付される。
5 公的扶助は貧困予防のための給付であるが,公的年金保険は貧困救済のための給付である。
読むだけで面倒になってしまいそうです。
正解は,選択肢1です。
1 公的扶助は扶養義務者の扶養を優先するが,公的年金保険は扶養義務者の扶養を優先することなく給付される。
言われてみると「ああ,なるほどね」と思うでしょう。
公的扶助(以下,生活保護)は,「補足性の原理:扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」があります。
社会保険(この問題の場合は,公的年金保険)は,規定の保険事故が発生した場合に給付されます。
2 公的扶助は個人単位で給付されるが,公的年金保険は世帯単位で給付される。
生活保護には,「世帯単位の原則」があります。
社会保険は,被保険者に給付されます。
3 公的扶助は画一的に給付されるが,公的年金保険は所得に応じて給付される。
生活保護は,「必要即応性の原則:保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効且つ適切に行うものとする」があります。
画一的に給付されるのは,社会保険です。
4 公的扶助は原則として金銭で給付されるが,公的年金保険は原則として現物により給付される。
生活保護は基本的に金銭給付ですが,医療扶助と介護扶助は原則として現物給付です。
年金保険は,所得補償なので,金銭給付です。
5 公的扶助は貧困予防のための給付であるが,公的年金保険は貧困救済のための給付である。
生活保護は,貧困に陥った場合,最後のセイフティネットとして機能します。つまり,救貧機能を持ちます。
年金保険は,貧困に陥らないように,貧困のリスクが高まる「老齢」「障害」「働き手の喪失」に対して,保険給付されるので,防貧機能を持ちます。