2020年8月2日日曜日

社会保険と公的扶助の特質


社会保障制度は,財源に着目すると,

社会保険(社会保険料)と社会扶助(税)に分類することができます。

社会扶助は,さらに,公的扶助(生活保護)と社会福祉制度に分類されます。

国家試験では,これらの特質について,出題されることがあります。

落ち着いて考えると解けるように作られていますが,とにかく混乱しそうなくらいに面倒なので,注意が必要です。

それでは,今日の問題です。


第29回・問題67 日本の公的扶助と公的年金保険の特質に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 公的扶助は扶養義務者の扶養を優先するが,公的年金保険は扶養義務者の扶養を優先することなく給付される。

2 公的扶助は個人単位で給付されるが,公的年金保険は世帯単位で給付される。

3 公的扶助は画一的に給付されるが,公的年金保険は所得に応じて給付される。

4 公的扶助は原則として金銭で給付されるが,公的年金保険は原則として現物により給付される。

5 公的扶助は貧困予防のための給付であるが,公的年金保険は貧困救済のための給付である。


読むだけで面倒になってしまいそうです。


正解は,選択肢1です。

1 公的扶助は扶養義務者の扶養を優先するが,公的年金保険は扶養義務者の扶養を優先することなく給付される。

言われてみると「ああ,なるほどね」と思うでしょう。

公的扶助(以下,生活保護)は,「補足性の原理:扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」があります。

社会保険(この問題の場合は,公的年金保険)は,規定の保険事故が発生した場合に給付されます。



2 公的扶助は個人単位で給付されるが,公的年金保険は世帯単位で給付される。

生活保護には,「世帯単位の原則」があります。

社会保険は,被保険者に給付されます。


3 公的扶助は画一的に給付されるが,公的年金保険は所得に応じて給付される。

生活保護は,「必要即応性の原則:保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効且つ適切に行うものとする」があります。

画一的に給付されるのは,社会保険です。

4 公的扶助は原則として金銭で給付されるが,公的年金保険は原則として現物により給付される。

生活保護は基本的に金銭給付ですが,医療扶助と介護扶助は原則として現物給付です。

年金保険は,所得補償なので,金銭給付です。


5 公的扶助は貧困予防のための給付であるが,公的年金保険は貧困救済のための給付である。

生活保護は,貧困に陥った場合,最後のセイフティネットとして機能します。つまり,救貧機能を持ちます。

年金保険は,貧困に陥らないように,貧困のリスクが高まる「老齢」「障害」「働き手の喪失」に対して,保険給付されるので,防貧機能を持ちます。

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