2020年8月4日火曜日

生活保護の決定と実施



生活保護には,基本原理・基本原則があります。

基本原理
(国家責任)
第一条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
(無差別平等)
第二条 すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる。
(最低生活)
第三条 この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。
(保護の補足性)
第四条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。

基本原則
(申請保護の原則)
第七条 保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。
(基準及び程度の原則)
第八条 保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。
2 前項の基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。
(必要即応の原則)
第九条 保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行うものとする。
(世帯単位の原則)
第十条 保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができる。

言葉が難しいと思うかもしれませんが,しっかり理解しておくことが必要です。

それでは,今日の問題です。


29回・問題69 生活保護の決定と実施に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。

1 他の法律に定める扶助は,生活保護法による保護に優先して行われる。

2 生活に困窮していても借金がある場合は,保護を受けることができない。

3 資力調査等に日時を要する場合は,保護の開始の申請から60日まで保護の決定を延ばすことができる。

4 急迫した状況にある場合は,資産等の調査を待たずに保護を開始することができる。

5 生活保護法による生活扶助は,居宅よりも保護施設において行うことが優先される。



この問題の内容自体はそれほど難しくないかもしれませんが,2つ選ぶことは忘れないようにしなければなりません。

それでは,解説です。


1 他の法律に定める扶助は,生活保護法による保護に優先して行われる。

これは,適切です。

保護の補足性を述べたものです。

(保護の補足性)
民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。



2 生活に困窮していても借金がある場合は,保護を受けることができない。

これは,不適切です。

(無差別平等)
第二条 すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる。

無差別平等ですから,借金があっても,怠惰であっても,困窮の事実があれば,この法律の定める要件を満たす限り,保護を受けることができます。



3 資力調査等に日時を要する場合は,保護の開始の申請から60日まで保護の決定を延ばすことができる。

所持金がない人が申請した場合,60日も待たされたら大変なことになります。
保護の決定を延ばすことができるのは,30日です。

これでも長いです。通常は14日以内に保護の決定を行います。



4 急迫した状況にある場合は,資産等の調査を待たずに保護を開始することができる。

これがもう一つの正解です。

(申請保護の原則)
第七条 保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。



5 生活保護法による生活扶助は,居宅よりも保護施設において行うことが優先される。

これは間違いです。

生活扶助を目的とする施設には,救護施設と更生施設がありますが,原則金銭給付です。

原則金銭給付ではないのは,医療扶助と介護扶助です。

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