日本国憲法は,基本的人権として以下の権利を保障しています。
②社会権
③参政権
④国務請求権
社会福祉士の国試で特に重要なのは,このうちの「②社会権」です。
生存権,教育権,勤労権などが社会権に含まれます。
日本国憲法では,基本的人権について「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる」と規定しています。
この条文のとおり,基本的人権は,国家が日本国民に対して保障するものです。
そのため,以前は,法で外国人を規定している場合に基本的人権が及ぶと考えられていましたが,現在は,逆に法で限定されない限り,できる限り外国人に及ぶように変化してきています。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題78 日本国憲法における社会権を具体化する立法の外国人への適用に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 労働基準法は,就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。
2 労働者災害補償保険法は,就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。
3 生活保護法は,就労目的での在留資格で在留する外国人に適用されることはない。
4 国民年金法は,永住外国人に適用されることはない。
5 国民健康保険法は,永住外国人に適用されることはない。
この問題は「適用されることはない」で統一されているので,日本語的に正解を見つけ出すことができません。
受験生にとっては厳しいものになります。
しっかり知識をつけましょう。
永住者とは,法務大臣から永住の許可を受けた者をいいます。
永住者の在留期間は無期限です。
それでは解説です
1 労働基準法は,就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。
労働基準法の規定
労働基準法は,労働者であれば,不法就労であっても労働基準法は適用されます。
2 労働者災害補償保険法は,就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。
労働者災害補償保険法の規定
この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする。 |
労災保険は,労働者であれば,不法就労であっても適用されます。
3 生活保護法は,就労目的での在留資格で在留する外国人に適用されることはない。
これが正解です。
生活保護法の規定
生活保護法は,「すべての国民に対し」と,国民(つまり日本国民)と限定しているために,日本人以外には,適用されません。
ただし,外国人には,人道上の観点から,一定の外国人には,予算措置で生活保護法を準用しています。
具体的には,以下の外国人を準用の対象としています。
生活保護法が準用される外国人
・入管法の別表第2の在留資格を有する者(永住者、定住者、永住者の配偶者等、日本人の配偶者等)
・特別永住者(在日韓国人、在日朝鮮人、在日台湾人)
・入管法上の認定難民
4 国民年金法は,永住外国人に適用されることはない。
国民年金法の規定
日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者 |
永住者はおそらく日本国内に住所を有していると考えられます。
5 国民健康保険法は,永住外国人に適用されることはない。
国民健康保険法の規定
被保険者 都道府県の区域内に住所を有する者 |
永住者はおそらく日本国内に住所を有していると考えられます。
今日の問題に出題されているもののほかに外国人に適用されているものには,以下のようなものがあります。
・児童扶養手当法
・特別児童扶養手当法
・児童手当法
これらは,1981年の難民条約の批准に伴って,国籍要件が撤廃されて,難民以外の外国人にも適用されています。
この時に,国民年金法,国民健康保険法などからも国籍要件が撤廃されています。