日本において,在宅福祉が大きく変わったのは,1990年(平成2年)の福祉関係八法改正です。
福祉関係八法改正で何が変わったのか?
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この改正によって,老人福祉法では,在宅介護支援センターが創設されています。
1991年(平成3)年には,老人保健法で老人訪問看護が創設されています。
一方,医療では,在院日数の短縮化の流れが進んでいきます。
1990年代では,急性期病院は患者を早期退院させる政策誘導がなされていきます。
医療機関の地域連携という考え方が根付いていくのはこの辺りのことだったように思います。
1994年(平成6)年には,訪問看護の対象を高齢者以外にも広げます。
地域連携は,急性期病院 ➡ 介護力強化病院(のちの療養病床)という流れであり,今から比べると,在宅生活の支援のための機能はまだまだ弱かったと言えます。
このころにようやく「病診連携」(病院と診療所の連携)という言葉が一般化していきます。
現在では,地域の関係機関が患者の治療計画などを共有する「地域連携クリティカルパス」が診療報酬上で評価されるようになっています。
平成の30年間で大きく変わるものですね。
なお,もともと「クリティカルパス」は,アメリカで医療費の削減のために,標準的な治療方針などを定めて,それを医療従事者が共有するものでした。
日本では患者の在院日数を短縮するために導入され,チーム医療の推進につながっていきます。それを地域医療に応用したものが「地域連携クリティカルパス」です。
現在,クリティカルパスは,院内で用いられるものと地域で用いられる2種類があります。そのため,前者を「院内パス」,後者を「地域連携パス」と呼んでいます。
それでは今日の問題です。
第29回・問題76 地域連携クリティカルパスに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
2 病院内のチーム医療の推進が目的である。
3 連携する機関の間で診療計画や診療情報を共有する。
4 連携する機関に地域包括支援センターは含まれない。
5 患者が退院する病院の専門職が決定した診療方針に従い,地域の医療機関が診療を行う。
問題としては,少し美しくないものです。
なぜなら,選択肢5だけが長すぎです。
美しく加工すると
1 病院内のチーム医療の推進を目的とする。
2 保険薬局は,連携する機関に含まれない。
3 地域包括支援センターは,連携する機関に含まれない。
4 連携する機関は,診療計画や診療情報を共有する。
5 地域の医療機関は,患者が退院する病院の方針に従い診療を行う。
これでもちょっと長いですね。
美しい問題を作るのは,高度なテクニックが必要です。
選択肢の長さに極端に差があるような問題は,極力作らない傾向にありますが,もしそのような問題を見かけたら,「へたくそ」と笑ってあげましょう。
気持ちがかなり楽になることでしょう。
それでは,解説です。
1 連携する機関に保険薬局は含まれない。
4 連携する機関に地域包括支援センターは含まれない。
わざわざ連携する機関から除外する必然性はありません。
こんな選択肢は誰も選ばないことでしょう。
問題づくりがへたです。
2 病院内のチーム医療の推進が目的である。
チーム医療の推進を目的とするのは,院内パスです。
3 連携する機関の間で診療計画や診療情報を共有する。
これが正解です。
先に述べたように,地域連連携パスは,現在,診療報酬でも評価されています。
5 患者が退院する病院の専門職が決定した診療方針に従い,地域の医療機関が診療を行う。
このような役割分担はありません。
関係機関で協議して診療方針を決定します。
<今日の一言>
今日の問題で間違わないためのポイントは,選択肢5です。
地域連携がわからないと正解だと思ってしまう人がいると思います。
しかし,地域連携は,患者のために行われるものです。様々な機関がそれぞれの専門性から知恵を出し合うのが本来の姿です。
わからなくなった時は,「その目的は何?」という視点を思い出すと良い結果を得られることが多いようです。
わからなくなった時,困った時は,ぜひ実践してみてください。