成年後見人と成年被後見人の利益が相反する場合とは,成年被後見人が所有するものを成年後見人が購入する場合などです。
この場合,一方が有利だと,もう一方は不利になります。
任意後見制度の場合は,任意後見監督人が選任されているので,利益相反する場合には,任意後見監督人が本人を代表します。
法定後見制度の場合も成年後見監督人が選任されていることもありますが,任意後見制度のように,必ず選任されているものではありません。
成年後見監督人が選任されていない場合に利益相反状態になると,成年後見人は,家庭裁判所に対して,特別代理人の選任を請求しなければなりません。
それでは,今日の問題です。
第35回・問題79
事例を読んで,成年後見人の利益相反状況に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
共同生活援助(グループホーム)で暮らすAさん(知的障害,52歳)には弟のBさんがおり,BさんがAさんの成年後見人として選任されている。先頃,Aさん兄弟の父親(80歳代)が死去し,兄弟で遺産分割協議が行われることとなった。
1 Aさんは,特別代理人の選任を請求できる。
2 Bさんは,成年後見監督人が選任されていない場合,特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
3 Bさんは,遺産分割協議に当たり,成年後見人を辞任しなければならない。
4 特別代理人が選任された場合,Bさんは,成年後見人としての地位を失う。
5 特別代理人が選任された場合,特別代理人は,遺産分割協議に関する事項以外についても代理することができる。
〈状況の整理〉
Aさん:成年被後見人
Bさん Aさんの成年後見人
特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならないのは,成年後見人です。
つまり,この事例で請求しなければならないのは,Bさんです。
正解は,選択肢2ということになります。
これ以外はすべて誤りです。