2022年5月31日火曜日

社会福祉士及び介護福祉士法

改めて言うまでもなく,社会福祉士は,社会福祉士及び介護福祉士法が根拠法です。


この法律は,1987(昭和62)年にできたものです。


実は,これよりもずっと以前,1970年代にソーシャルワーカーの国家資格化が検討されたことがあり,社会福祉士法という法案が作られましたが,成立しませんでした。


それから長い年月を経て,高齢社会を目前として介護職員の確保が必要となり,介護福祉士と抱き合わせで社会福祉士及び介護福祉士法ができました。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題91 社会福祉士及び介護福祉士法に規定されている社会福祉士に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 相談援助に関する知識と技能の向上に努めなければならない。

2 診療の補助として喀痰吸引業務を行うことができる。

3 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し,その結果を分析することを業とする。

4 資格更新のため所定の講習を受講しなければならない。

5 相談援助の業務を独占的に行う。


公認心理師をご存じでしょうか。


2015(平成27)年にできた国家試験です。


それをさりげなく出題しています。5年間に限り,現任者が受験できたルートが設けられていました。


2022(令和4)年7月の第5回国家試験がその最後のチャンスとなっていました。


多くの社会福祉士が公認心理師の資格を持って活動しています。


そんなこともあり,公認心理師を含めて出題したのだと思います。


それでは解説です。


1 相談援助に関する知識と技能の向上に努めなければならない。


これが正解です。


資質向上の責務は,2007(平成19年)改正で加わったものです。


近年の改正では,欠格条項が変わっているので,必ず押さえておきたいです。


2 診療の補助として喀痰吸引業務を行うことができる。


これは,介護福祉士です。


3 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し,その結果を分析することを業とする。


これが公認心理師です。


公認心理師の業務は,以下の4つです。


第二条 この法律において「公認心理師」とは、第二十八条の登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう。

一 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。

二 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。

三 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。

四 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。


社会福祉士にはない「指導」という文言が使われているのが特徴です。


4 資格更新のため所定の講習を受講しなければならない。


社会福祉士にも介護福祉士にも資格更新制は設けられていません。


5 相談援助の業務を独占的に行う。


社会福祉士は,名称独占の資格です。業務独占ではありません。


資格がなくても相談援助ができます。しかし,資格のあるソーシャルワーカーと資格のないソーシャルワーカーでは,見た目は変わりませんが,知識の深さがまったく異なります。

それは,クライエントの高い信頼を得ることにもつながります。


実習で指導者が見事なソーシャルワークを見せてくれたことでしょう。

今度はあなたがそのソーシャルワークを実践する番です。


2022年5月30日月曜日

令和元年度カリキュラム改正におけるソーシャルワーク系の科目

平成19年度カリキュラムと令和元年度のカリキュラムを対照すると以下のようになります。













総時間は,新旧とも共通の1,200時間ですが,実習時間が現行の180時間から240時間に延長されることから,それ以外の科目の時間が少なくなっています。


そのあおりを受けて,「福祉行財政と福祉計画」と「就労支援サービス」の2科目が消滅しています。


しかし,演習・実習を除くと,科目数は19科目と現行と同じです。


その理由は,ソーシャルワーク系は,


⑥ソーシャルワークの基盤と専門職    30時間

⑦ソーシャルワークの基盤と専門職(専門) 30時間

⑧ソーシャルワークの理論と方法   60時間

⑨ソーシャルワークの理論と方法(専門) 60時間


という4科目となります。


国家試験では,共通科目と専門科目にソーシャルワーク系の科目が配置されます。


平成19年度カリキュラムの2科目のうち,「相談援助の基盤と専門職」は,不得意とする人が多かったように思います。


歴史にあたる部分は,共通科目に移動することから,共通科目はまたまた手ごわくなりそうです。

2022年5月29日日曜日

ドキュメント分析について



社会福祉調査を大別すると量的調査と質的調査があります。


それぞれを簡単にでも説明できますか?


社会福祉調査の基礎が苦手な人は,この整理から始めることをおすすめしたいです。


今回のテーマは,ドキュメント分析です。


ドキュメント分析のドキュメントとは「記録」を意味し,ドキュメント分析は,記録を分析することです。


対象となるドキュメントには,手紙や日記,家計簿などの私的な記録,議会の議事録,裁判記録などの公的な記録,新聞や雑誌などのマスメディアの記録,など多彩なものがあります。


目的は,社会的な事実を把握して,考察を深めるためです。


1事例を深めると質的調査となり,数値化すると量的調査となります。

社会福祉士の国家試験の文脈では,質的調査に置かれているのではないかと思います。


というのは,国家試験の問題の並びは,ある程度意味があるものです。

多くの人は気がついているのかいないのかはわかりませんが,現時点の国家試験の問題の並びは,出題基準に沿っています。


並びは,

量的調査 → 質的調査 となっていて,ドキュメント調査は,量的調査の部分では出題されたことがありません。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題90 質的調査の記録やデータの収集方法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 仮説検証などに必要な数量的なデータの収集を行う。

2 調査対象者を抽出する方法として,主に無作為抽出法を用いる。

3 音声データや映像データを用いることができる。

4 手紙や日記などの私的文書は除外する。

5 面接者は,インタビューの場において相手の発言内容の一言一句を正確にメモすることに専念する。


この問題は,簡単そうに思うかもしれませんが,量的調査と質的調査が理解できていないと正解するのは,それほど簡単ではありません。


量的調査は,仮説を検証するために実施します。


調査対象者は,有意抽出で行うこともできますが,それだと,この調査の結果はたまたま選ばれた人のデータにすぎないではないかと,言われてしまいます。


それはそれで悪くはないですが,社会に役立つデータであるためには,抽出されたデータが母集団の縮図になっていて,抽出されたデータから母集団を推測できることが必要です。


そのために用いられるのが,無作為抽出です。


これが理解できていることがこの問題を確実に正解するポイントです。


それでは解説です。


1 仮説検証などに必要な数量的なデータの収集を行う。


仮説検証などに必要な数量的なデータの収集を行うのは,量的調査です。


2 調査対象者を抽出する方法として,主に無作為抽出法を用いる。


主に無作為抽出法を用いるのは,量的調査です。


3 音声データや映像データを用いることができる。


これが正解です。


これを正解にできない人は,勝手に録音や録画をしてはいけないと考えるからでしょう。


もしそうだったら,


調査対象者の許可を得なくても音声や録画することができる。


という文章でなければ,確実に謝りにすることができません。


事前に許可を得ることで,録音や録画ができて,それを利用することの許可を得るで利用することができるからです。


4 手紙や日記などの私的文書は除外する。


前説のように,ドキュメント分析の対象には,私的文書も含まれます。


5 面接者は,インタビューの場において相手の発言内容の一言一句を正確にメモすることに専念する。


記録は正確でなければなりませんが,メモすることに専念しては,面接を進めることができません。


録音できない場合で,面接者が記録を正確にメモする自信がないなら,記録係を用意することも考えなければならないでしょう。



〈今日の一言〉


ドキュメント分析の対象となる記録は,私的文書,公的文書など多岐にわたる。


2022年5月28日土曜日

面接法の種類

面接法には質問内容によって以下のように分類できます。


非構造化面接(自由面接)

半構造化面接

構造化面接



構造化とは・・・


前もって聞く質問を決めておくこと。


構造化面接は,それに沿って面接を行うことを言います。


非構造化面接は,逆に前もって質問項目は決めておかない面接法です。そのため,自由面接と言われます。


非構造化面接は質問が決まっていないので,インタビュアには高度な技術が求められます。


半構造化面接は,テーマに沿った質問をいくつか行って,その後は自由に語ってもらいます。


構造化面接は,決められた質問構造に沿って行われるので,比較的誰でも同じような答えを引き出すことができます。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題89 調査方法としての面接法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 非構造化面接では,調査者が事前に定めた質問項目の順序で調査を進める。

2 半構造化面接では,準備した質問項目のうち半数を質問する。

3 非構造化面接では,通常,回答の選択肢を印刷した回答票を提示して調査を進める。

4 構造化面接では,事前に準備をせず,調査対象者が自由に語りやすいように調査を進める。

5 半構造化面接では,面接中に新たな質問項目を追加することがある。


面接法の出題で勉強不足の人が混乱しがちなのは,半構造化面接です。


それでは,解説です。


1 非構造化面接では,調査者が事前に定めた質問項目の順序で調査を進める。


調査者が事前に定めた質問項目の順序で調査を進めるのは,構造化面接です。


2 半構造化面接では,準備した質問項目のうち半数を質問する。


半構造化面接は,テーマに沿った質問をいくつか行って,その後は自由に語ってもらうものです。


3 非構造化面接では,通常,回答の選択肢を印刷した回答票を提示して調査を進める。


回答の選択肢を印刷した回答票を提示して調査を進めるのは,構造化面接です。


4 構造化面接では,事前に準備をせず,調査対象者が自由に語りやすいように調査を進める。


事前に準備をせず,調査対象者が自由に語りやすいように調査を進めるのは,非構造化面接です。


5 半構造化面接では,面接中に新たな質問項目を追加することがある。


これが正解です。


半構造化面接は,テーマに沿った質問をいくつか行って,その後は自由に語ってもらうものです。その後,必要なら話に合わせて質問を追加することもあります。


〈今日の一言〉


半構造化面接に注意!

2022年5月27日金曜日

ピアソンの積率相関係数について

今回は,いよいよ多くの人が苦手にしている統計に関するものを取り上げます。


まずは,相関関係と因果関係の違いを考えます。


相関関係とは,要因(独立変数)と結果(従属変数)の間に何らかの関係があることをいいます。


因果関係とは,要因(独立)によって結果(従属変数)が変わることをいいます。


相関関係が認められるからといって,因果関係が認められるとは限らないことに注意しなければなりません。


量的変数の相関関係を見る指標には,相関係数があります。


相関係数はいくつも種類がありますが,社会福祉士の国家試験で出題されているのは,ピアソンの積率相関係数です。


係数の範囲は,-1~1です。


-1,あるいは1が最も相関が強いことを示します。


国家試験で,ピアソンの積率相関係数が出題される時には「測定単位が変わっても数値は変化しない」ということを絡めて出題されることが多いのです。


実は,これは,ピアソンの積率相関係数の特徴なのです。


相関係数を見るのに,共分散という方法があります。


共分散は,相関の強さは変わらなくても測定単位が変わると数値が変化してしまうというデメリットがあります。


たとえば,メートルで測定した数値で計算するのとセンチメートルで測定した数値で計算するのでは,センチメートルのほうが100倍になってしまうのです。


このデメリットがないのが,ピアソンの積率相関係数です。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題88 量的データの集計や分析に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 中央値とは,データの中で出現率が一番高い値のことである。

2 度数分布表は,一つの変数について,それぞれのカテゴリー(階級)に当てはまる度数をまとめた表である。

3 分散と標準偏差は,どちらも平均値からの散布度を示すが,これら二つの指標には関係はない。

4 クロス集計表により変数間の関係を観察するには,相対度数ではなく,観測度数を表示する。

5 ピアソンの積率相関係数は,二つの変数間の非線形関係を表している。


苦手に思う人には,とてもいやな問題でしょう。


しかし,知識がなくても消去できる可能性がある選択肢が含まれているので,少しラッキーです。


それでは,解説です。


1 中央値とは,データの中で出現率が一番高い値のことである。


中央値は,小さいほうからデータを並べた際,真ん中にあたる値です。


中央値の特徴は,中央値よりも小さい数値と大きい数値は同じであることです。


平均値と中央値は,同じ点に重なることもありますが,平均値は,いわゆるはずれ値に影響を受けるので,中央値とずれることが多いことに注意が必要です。


データの中で出現率が一番高い値は最頻値です。



2 度数分布表は,一つの変数について,それぞれのカテゴリー(階級)に当てはまる度数をまとめた表である。


これが正解です。


度数分布表は,カテゴリー化した数値をまとめたものです。


カテゴリー化とは,

0~9歳,10~19歳

10~19℃,20~29℃


といったように,数値を区切ってまとめることをいいます。


カテゴリー化した数値は,質的変数となります。


3 分散と標準偏差は,どちらも平均値からの散布度を示すが,これら二つの指標には関係はない。


標準偏差は,分散の正の平方根です。つまり関係があります。



4 クロス集計表により変数間の関係を観察するには,相対度数ではなく,観測度数を表示する。


クロス集計表は,実際に得られたデータである観測度数とそれらの割合である相対度数も表示することで,変数間の関係を観察します。


しかし,それだけではよくわかりません。


有意差があるかを調べるには,カイ2乗検定という方法が用いられます。


カイ2乗検定は,期待度数の表と観測度数の表の差を見ることで行います。


期待度数は,ここでは詳しくは紹介しません。



5 ピアソンの積率相関係数は,二つの変数間の非線形関係を表している。


相関がある場合,散布図で表わすと直線的(線形)になります。


相関がない場合,非直線(円形)となります。

2022年5月26日木曜日

社会福祉調査における欠損データの処理方法

社会福祉調査を大別すると調査票などを使って行う「量的調査」と観察や面接などによる「質的調査」があります。


今回は,そのうちの量的調査です。


誰が調査票に記入するのかによって「自記式(自計式)」と「他記式(他計式)」に分類されますが,それぞれを説明できますか?


説明に自信がないという人は以下で確認してください。

https://fukufuku21.blogspot.com/2022/05/blog-post_24.html


調査票を使うと,未回答や誤記入も発生します。


これらを欠損データといいます。


調査票は,そのままではデータ処理ができないので,データに数値を割り当ててエクセルなどで入力していきます。


データに数値を割り当てることは「コーディング」といいます。


データ入力する際,欠損データは,そのままにしておかず,意味のない数値(例えば「999」など)を入力しておきます。


調査票を使った調査では,回答すべき人ではない人が回答してしまうこともあります。


回答すべき人ではない人が回答するとは,例えば,18歳以上を対象とした質問に18歳未満の人が回答するなどです。そういったことを「非該当」と呼びます。


要介護認定の結果で,要介護でも要支援でもない人を「非該当」と言いますが,それと似ています。


非該当のデータも非該当として欠損データと同じように処理を行います。


それでは今日の問題です。


第31回・問題87 調査票の回収後の手続に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 調査票で記入者が回答していないところは,欠損値として数値を割り当てる必要はない。

2 回収した調査票が正確かどうかを確認する作業のことをコーディングという。

3 40歳以上65歳未満を対象とした調査で,40歳代のみを対象とした質問項目の場合,50歳以上の当該質問項目の回答は「非該当」として処理する。

4 複数の質問項目の組合せの論理的な矛盾は調査票作成時に確認するので,回収後に確認する必要はない。

5 入力ミス以外のはずれ値は,必ず除去しなければならない。


問題のつくり方が少し下手です。


選択肢5の「必ず除去しなければならない」の「必ず」は正解になることはほとんどないことを多くの人が知っているので,極力使われない傾向にあります。


この問題をつくった試験委員は,そのことを知らなかったのか,あるいは知っていても問題づくりに困って,苦し紛れに使ってしまったのか,いずれにせよ,この選択肢は知識がなくても消去できてしまいます。


社会福祉士国家試験の在り方に関する検討会報告書では,試験委員の支援のために研修を行うことを提言しているので,今後は「日本語的に解ける」問題は出題されなくなります。


勉強不足の受験者がラッキーで合格できることはなくなります。


それでは,改めて解説です。


1 調査票で記入者が回答していないところは,欠損値として数値を割り当てる必要はない。


これも下手です。


この文章は,正しい文章を否定形にした手抜き的なものです。


正しい文章は,


調査票で記入者が回答していないところは,欠損値として数値を割り当てる。


国家試験は,覚えていてほしいものを出題するものです。

本当に「必要がない」なら出題する意味がありません。今後はこういった出題もなくなるでしょう。


2 回収した調査票が正確かどうかを確認する作業のことをコーディングという。


コーディングは,データに数値を割り振ることです。


国家試験を受験した人に対しての調査で


模擬試験は受けましたか?


という質問の答えは「はい」と「いいえ」です。


「はい」を「1」,「いいえ」を「2」などの数値を割り当てます。


これは,尺度水準では,名義尺度です。



3 40歳以上65歳未満を対象とした調査で,40歳代のみを対象とした質問項目の場合,50歳以上の当該質問項目の回答は「非該当」として処理する。


これが正解です。


前説で述べたとおりです。


4 複数の質問項目の組合せの論理的な矛盾は調査票作成時に確認するので,回収後に確認する必要はない。


これも下手です。


回収後に本当に確認する必要がないなら,出題する意味がありません。



5 入力ミス以外のはずれ値は,必ず除去しなければならない。


はずれ値とは,標本分布のうち,極端に大きな数値や小さい数値のことをいいます。


得られたデータが意味のあるものなのかを確認するために統計的検定を行います。

その場合,上側と下側のはずれ値を抜いた95%の範囲のデータを使うことが多いです。

統計的検定の場合に,はずれ値を除去しますが,どんな時でも除去しなければならないということはありません。

例えば,最大値や最小値は,はずれ値の中にある数値です。

はずれ値を除去すると最大値も最小値もわからなくなります。

2022年5月25日水曜日

尺度水準とは

度水準とは,測定したデータをその性質によって分類したものです。

 

一般的には,名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の4つが知られます。

 

名義尺度

測定したものを区別するものの意味しかない。使える代表値は,最頻値のみ。

〈例〉

1.日本人

2.アメリカ人

3.イギリス人

4.中国人

5.その他

1から5までの数字があるが,その数字には意味がない。

間隔尺度

数値の大小だけに意味があるもの。使える代表値は,最頻値,中央値。

〈例〉

果物の好き嫌いについて

りんご 1.大好き 2.好き 3.ふつう 4.嫌い 5.大嫌い

みかん 1.大好き 2.好き 3.ふつう 4.嫌い 5.大嫌い

いちご 1.大好き 2.好き 3.ふつう 4.嫌い 5.大嫌い

間隔尺度

数値の大小に意味をもち,間隔は等しいもの。使える代表値は,最頻値,中央値,平均値。

〈例〉

気温

比例尺度

数値の大小に意味をもち,間隔は等しいもの。間隔尺度と異なるのは,ゼロ以下はないこと。使える代表値は,最頻値,中央値,平均値。

〈例〉

体重・身長

 

 

それでは,今日の問題です。

 

31回・問題86 測定と尺度に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 測定とは,一定の規則や基準を用いて,調べたい対象の経験的な特性に数値や記号を与える手続である。

2 信頼性とは,測定したい概念をどのくらい正確に測定できているか,という測定の適切性のことをいう。

3 妥当性とは,同じ調査をもう一度行ったときに同じ結果になる安定性のことをいう。

4 社会調査の測定では,信頼性と妥当性のどちらかが満たされていればよい。

5 名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度という四つの尺度水準のうち,大小関係を測定することができるのは,名義尺度である。

 

なかなかの難問です。この機会に確実に押さえておきたいです。

 

さて,この問題の正解は,選択肢1です。

 

1 測定とは,一定の規則や基準を用いて,調べたい対象の経験的な特性に数値や記号を与える手続である。

 

これが正解ですが,測定を定義するとこんなに難しい表現になるようです。

 

この文章が難しいのは「経験的な特性」でしょう。

 

「経験的」の対義語は「理論的」などです。

 

「理論的」というのは,実際に調べなくてもわかっていること。

 

「経験的」というのは,実際に調べてわかること。

 

といった意味です。

 

この文章を簡単に書くと,測定とは,調べようと思ったものを実際に調べてそれをある基準で表わすことをいう,といった意味合いになります。

 

目の前にいる人の国籍を調べることを例に考えます。

 

この場合,国籍が尺度です。理論的には国籍はわかりません。

 

実際に聞くなり,アンケートに答えてもらうなり,といった方法で調べることが必要です。

 

これが経験的な特性という意味です。


それでは,ほかの選択肢も見てみます。

 

2 信頼性とは,測定したい概念をどのくらい正確に測定できているか,という測定の適切性のことをいう。

3 妥当性とは,同じ調査をもう一度行ったときに同じ結果になる安定性のことをいう。

 

この2つは,信頼性と妥当性を入れ替えています。

  

信頼性は,同じ調査をもう一度行ったときに同じ結果になる安定性のことです。

 

妥当性は,測定したい概念をどのくらい正確に測定できているか,という測定の適切性のことです。

このような「セット入れ替え作問法」が使われた問題は,受験生にとってラッキーです。入れ替えに気づくと得点力が上がります。

 

4 社会調査の測定では,信頼性と妥当性のどちらかが満たされていればよい。

 

信頼性と妥当性は,研究や実験などを行う際に必要ですが,もちろか社会調査も同じです。

 

信頼性が低い調査方法であれば,結果が異なってしまいます。

 妥当性が低い調査方法であれば,得たい結果が得られません。

 

5 名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度という四つの尺度水準のうち,大小関係を測定することができるのは,名義尺度である。

 

名義尺度は,数値に意味がないので,大小関係は測定することができません。

 

国籍では,

1.日本人

2.アメリカ人

 

という例を出しましたが,

1.アメリカ人

2.日本人

 

と数値を割り当てても良いです。

 

名義尺度以外は,大小関係を測定することができます。

2022年5月24日火曜日

自記式と他記式

今回は,調査票への記入方法である自記式(自計式)と他記式(他計式)について取り上げます。

 

誰が調査票に記入するかによる分類です。

 

自記式(他計式)

調査対象者が記入する。

他記式(他計式)

調査者が記入する。

 

主体は,調査対象者であることが注意ポイントです。

 

調査対象者・調査者という言葉がわかりにくければ,訪問調査におけるクライエントとワーカーに置き換えると良いと思います。

 

クライエント(つまり調査対象者)が記入するのが,自記式(自計式)です。

 

ワーカー(つまり調査者)が記入するのが,他記式(他計式)です。

 

これを押さえたところで,今日の問題です。

 

31回・問題85 質問紙を用いた調査に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 調査対象者から口頭で聞き取った内容を,調査員が記入する方法を自記式という。

2 プライバシーに関する質問は,自記式の方が他記式よりも望ましい。

3 自記式の方が他記式よりも,誤記入が起こりにくい。

4 他記式の方が自記式よりも,調査対象者以外の人が本人の代わりに回答する可能性が高い。

5 調査対象者が調査員に口頭で答えた後に,調査対象者が調査票に記入する方法を他記式という。

 

問題の作り方が実に下手な問題です。

 

クイズのように考えると,自記式は何か,他記式は何か,推測ができてしまうのです。

 

その理由は,

 

1 調査対象者から口頭で聞き取った内容を,調査員が記入する方法を自記式という。

5 調査対象者が調査員に口頭で答えた後に,調査対象者が調査票に記入する方法を他記式という。

 

この問題は,正解を1つ選ぶものなので,どちらも正解にはなりません。

 

つまりどちらも誤りです。

 

選択肢1が正解でないとすると,調査対象者から口頭で聞き取った内容を,調査員が記入する方法は他記式だと推測できます。

 

選択肢5も正解でないとすると,調査対象者が調査員に口頭で答えた後に,調査対象者が調査票に記入する方法は他記式だと推測できます。

 

さあ,自記式と他記式が推測できました。

 

そこから,答えを探り出していきます。

 

2 プライバシーに関する質問は,自記式の方が他記式よりも望ましい。

 

これが正解です。

 

これは,これまでに似たような出題が何度かされています。

 

他記式は,調査者が記入するものです。

 

つまり,他記式は,調査対象者は調査者に口頭で答えなければならないので,プライバシーに関すること,反社会的なこと,などは言いにくいのです。

 

社会的に好ましいように答える人もいるでしょう。

 

クライエントとワーカーの間につながりができていれば,なおのこと,こんなことを答えると変に思われないだろうか,と考える人もいるでしょう。

 

そのため,口頭では答えにくいものが質問に含まれるような調査は,自記式が望ましいと言えます。

 

3 自記式の方が他記式よりも,誤記入が起こりにくい。

 

誤記入や無回答などのエラーは,非標本誤差といいます。

非標本誤差は,全数調査,標本調査ともに生じます。

 

非標本誤差は,自記式,他記式ともに生じますが,より多く生じるのは,自記式です。

 

なぜなら,調査対象者は調査に慣れていないからです。

 

他記式でもミスしますが,自記式よりも少ないと考えられるでしょう。

 

4 他記式の方が自記式よりも,調査対象者以外の人が本人の代わりに回答する可能性が高い。

 

これは,なかなか面白い出題です。

そのために似たようなものが何度か繰り返されてきたのでしょう。

 

自記式は,調査対象者が記入する方法だと言いました。

 

実は,自記式の中には,留置調査と呼ばれる,調査票を置いて帰って,別の日に回収するという調査もあります。

 

留置調査は,記入しているのを見ていないので,別の人が回答していることがあるのです。

2022年5月23日月曜日

量的調査と質的調査の整理

社会福祉調査は,量的調査と質的調査に分類されます。

 

量的調査は,仮説を証明するために実施されます。

 

調査の方法には,アンケートなどがあります。

 

質的調査は,対象の質的な特徴をつかむために実施されます。

 

調査の方法には,観察やインタビューなどがあります。

 

「社会福祉調査の基礎」が苦手だと感じるのは,量的調査の仮説の検証に用いられる統計学に関するものがあるからでしょう。

 

しかし,そこを除けば決して難しいものではありません。

 

それでは,今日の問題です。

 

31回・問題84 社会調査に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 統計調査とは,社会事象を質的に捉えることを目的とした社会調査である。

2 市場調査とは,行政の意思決定に役立てることを目的として市場の客観的基礎資料を得るための社会調査である。

3 世論調査とは,自治体の首長の意見を集約するための社会調査である。

4 アクションリサーチとは,特定の状況における問題解決に向けて調査者が現場に関与する社会調査である。

5 センサスとは,企業の社会貢献活動を把握することを目的とした社会調査である。

 

5つの調査を量的調査と質的調査に分類すると以下のようになります。

 

量的調査

質的調査

・統計調査

・市場調査

・世論調査

・センサス

・アクションリサーチ

 

これらの調査の大体のイメージがつく人はかなり勉強が進んだ人だと言えます。

 

解説です。

 

1 統計調査とは,社会事象を質的に捉えることを目的とした社会調査である。

 

統計調査は,量的調査です。

 

社会事象を捉えるのは「量的」です。

 

2 市場調査とは,行政の意思決定に役立てることを目的として市場の客観的基礎資料を得るための社会調査である。

 

市場調査を行うのは。一般的には企業です。

 

3 世論調査とは,自治体の首長の意見を集約するための社会調査である。

 

世論調査は,市民(国民)の意見を調べるために行うものです。

 

4 アクションリサーチとは,特定の状況における問題解決に向けて調査者が現場に関与する社会調査である。

 

これが正解です。

 

アクションリサーチとは,特定の状況における問題解決に向けて調査者が現場に関与しながら行うものです。

 

質的調査の関与観察よりも関与の度合いが強いのがアクションリサーチの特徴です。

 

アクションリサーチは,地域福祉の科目でも出題されます。以下はその例です。

 

・実践課題の解決を重視するアクションリサーチは,研究者や専門家を関与させずに,当事者自身が地域ニーズを把握するのに適した方法である。 ×

 

・認知症高齢者の家族介護者の不安を軽減する方法を明らかにするため,当事者と共にアクションリサーチを実施した。 〇

 

2つめのものが,アクションリサーチをイメージするのに良いでしょう。

 

 

5 センサスとは,企業の社会貢献活動を把握することを目的とした社会調査である。

 

センサスとは,全数調査を意味するものです。

 

日本では,2009年から総務省が経済センサスを実施しています。

 

また,同じく総務省が実施する国勢調査は,外国では人口センサスと呼ばれることもあります。

 

これらで推測できると思いますが,センサスは,国が実施する統計調査です。

2022年5月22日日曜日

児童の一時保護における司法の関与について

児童相談所長及び都道府県知事は,必要がある場合,2か月を超えない範囲で,児童の一時保護を行うことができます。


必要な場合は,親権者の意に反して2か月を超えた一時保護を行うことができますが,その場合は,家庭裁判所の承認を得なければなりません。


この規定は,児童福祉法の平成29年改正で加わったものです。




出典:厚生労働省ホームページ「図表1-4-1 児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案の概要」

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/17/backdata/02-01-04-01.html


現時点(2022年5月)での一時保護における司法の関与は,一時保護の延長の場合ですが,令和4年改正により,今後は,一時保護を行う際に,司法が関与することになるでしょう。













出典:厚生労働省ホームページ「第208回国会(令和4年常会)提出法律案~児童福祉法等の一部を改正する法律案(令和4年3月4日提出)」

https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/208.html


これについては,第35回国試には出題されません。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題83 児童福祉法と「児童虐待防止法」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 児童虐待の通告義務に違反すると刑罰の対象となる。

2 立入調査には裁判所の令状が必要である。

3 親権者の意に反し,2か月を超えて一時保護を行うには,家庭裁判所の承認が必要である。

4 本人と同居していない者が保護者に該当することはない。

5 児童虐待には,保護者がわいせつな行為をさせることは含まれない。

(注) 「児童虐待防止法」とは,「児童虐待の防止等に関する法律」のことである。


前説のとおり,正解は選択肢3です。


3 親権者の意に反し,2か月を超えて一時保護を行うには,家庭裁判所の承認が必要である。


社会福祉士の国家試験にしては珍しく改正で加わったものが早い時期に出題されています。


しかし,すぐ出題されているわけではありません。


それでは,ほかの選択肢も見てみます。


1 児童虐待の通告義務に違反すると刑罰の対象となる。


この問題の中で悩むのはこの選択肢です。


通告義務があっても,罰則があるかまでは知らないからです。

知っているわけがありません。なぜなら罰則はないからです。


通告義務に罰則はおそらく今後も規定されることはないと言えます。



2 立入調査には裁判所の令状が必要である。


立入調査は令状がなくても行うことができます。


令状を必要とするのは,保護者が出頭に応じない場合に行う臨検・捜索を行う場合です。


しかし,実際に臨検・捜索を行うことは少ないようです。臨検・捜索を行うと保護者との関係を築くのが困難になりかねないからです。


4 本人と同居していない者が保護者に該当することはない。


保護者は,親権を行う者,未成年後見人その他の者で,児童を現に監護するものです。


同居の有無は保護者の要件ではありません。


5 児童虐待には,保護者がわいせつな行為をさせることは含まれない。


児童虐待には,性的虐待が含まれます。

2022年5月21日土曜日

クーリング・オフ制度

クーリング・オフ制度は,特定商取引法に規定されています。


さて,いきなり問題です。


次のうち,クーリング・オフ制度によって,解約できないのはどれでしょうか。


①訪問販売

②通信販売

③電話勧誘版売


正解は,「②通信版売」です。通信販売は,クーリング・オフ制度が適用されません。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題82 事例を読んで,特定商取引に関する法律に規定するクーリング・オフによる契約の解除(解約)に関して,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 一人暮らしのDさんは,訪れてきた業者Eに高級羽毛布団を買うことを勧められ,代金80万円で購入する契約を締結し,その場で,Dさんは業者Eに対して,手元にあった20万円,を渡すとともに,残金60万円を1か月以内に送金することを約束し,業者Eは,商品の布団と契約書面をDさんに引き渡した。

1 Dさんが業者Eに対して解約の意思を口頭で伝えた場合は,解約できない。

2 Dさんは取消期間内に解約書面を発送したが,取消期間経過後にその書面が業者Eに到達した場合は,解約できない。

3 Dさんが商品の布団を使用してしまった場合は,解約できない。

4 Dさんが解約した場合,業者Eは受領済みの20万円を返還しなければならない。

5 Dさんが解約した場合,Dさんの負担によって布団を返送しなければならない。



この問題はクーリング・オフ制度を少し知っていればそんなに難しくないと思いますが,実は混乱するような仕掛けがされています。


国家試験は,とても怖いものです。


それでは解説です。


1 Dさんが業者Eに対して解約の意思を口頭で伝えた場合は,解約できない。


解約は,書面で行います。しかし,口頭で解約を伝えても有効です。


2 Dさんは取消期間内に解約書面を発送したが,取消期間経過後にその書面が業者Eに到達した場合は,解約できない。


クーリング・オフができる期間は定められています。

例えば,訪問販売の場合は8日間です。


その期間内に書面を発信すれば,解約は有効です。


クーリング・オフの起算日は,契約書を受け取った日です。


8日を過ぎていても書面を受け取っていなければ,クーリング・オフできます。


訪問販売業者がそんなミスをするとは思えませんが,覚えておくとよいと思います。


この事例の場合は「契約書面をDさんに引き渡した」と明記されています。


もしこの表記ではなく「契約書面は引き渡されていない」と書かれていたら,期間に関係なく解約できることになります。


3 Dさんが商品の布団を使用してしまった場合は,解約できない。


使用しても期間内なら,無条件で解約できます。


もし業者が「使用してしまったら解約できない」と偽って,解約を妨害した場合は,期間を過ぎていても解約できます。


4 Dさんが解約した場合,業者Eは受領済みの20万円を返還しなければならない。


これが正解です。


既に渡してしまった代金もクーリング・オフによって戻ってきます。


5 Dさんが解約した場合,Dさんの負担によって布団を返送しなければならない。


これが要注意の選択肢です。


通信販売で解約した人は,引っ掛けられる恐れがあるのです。


前説に書いたように,通信販売も特定商取引法の対象ですが,クーリング・オフ制度は適用されません。


訪問販売や電話勧誘などにクーリング・オフ制度があるのは,突然の話で契約するので,冷静に考える期間を設けて消費者を守るためです。


それに対して,通信販売の多くは,消費者から連絡して申込みするので,訪問販売などよりも冷静に申し込みをしていると考えられるからです。


通信販売の場合は,業者が返品特約表示を行うことが義務づけられています。


「ノークレーム,ノーリターン」という返品特約表示も有効です。


大手の通信販売業者は,期間を設けて解約できることを表示しています。


その場合に,受け取った商品を返品することになりますが,クーリング・オフではないので,多くの場合,その送料は消費者が負担します。


このような理由から,通信販売で返品した経験がある人は,クーリング・オフの返品には送料を負担しなければならないと思ってしまうのです。


〈今日の一言〉


消費者契約法も覚えておくこと


この法律も契約を取り消すことができることを定めたものです。


クーリング・オフ制度の期間を過ぎていても,ケースによっては解約できることがあります。


成人年齢が18歳に引き下げられたことに伴い,解約できる範囲が広がっています。


そのため,現時点ではとても重要なものだと言えるでしょう。

2022年5月20日金曜日

日常生活自立支援事業

今回は,日常生活自立支援事業を取り上げます。

 

日常生活自立支援事業とは,判断能力が不十分な認知症高齢者,知的障害者,精神障害者などが地域で自立した生活が送れるように利用者との契約に基づいて福祉サービスの利用援助等を行うものです。

 

以下は,厚生労働省のホームページに書かれているものです。

 

実施主体

都道府県社会福祉協議会・指定都市社会福祉協議会(窓口業務等は市町村の社会福祉協議会等で実施)

対象者

判断能力が不十分な方(認知症高齢者,知的障害者,精神障害者等であって,日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手,理解,判断,意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な方)

本事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる方

援助の内容

本事業に基づく援助の内容は,次に掲げるものを基準とします。

福祉サービスの利用援助

苦情解決制度の利用援助

住宅改造,居住家屋の貸借,日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助等

 

上記に伴う援助の内容は,次に掲げるものを基準とします。

預金の払い戻し,預金の解約,預金の預け入れの手続等利用者の日常生活費の管理(日常的金銭管理)

定期的な訪問による生活変化の察知

 

それでは,今日の問題です。

 

31回・問題81 日常生活自立支援事業の利用等に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 成年後見人による事業の利用契約の締結は,法律で禁じられている。

2 法定後見のいずれかの類型に該当する程度に判断能力が低下した本人が事業の利用契約を締結することは,法律で禁じられている。

3 実施主体である都道府県社会福祉協議会は,事業の一部を市区町村社会福祉協議会に委託することができる。

4 実施主体である都道府県社会福祉協議会は,職権により本人の利用を開始することができる。

5 契約締結に当たって,本人の判断能力に疑義がある場合は,市町村が利用の可否を判断する。

 

日常生活自立支援事業は覚えるものが少ないので,どのように出題されてもよいように準備しておきたいです。

 

それでは,解説です。

 

1 成年後見人による事業の利用契約の締結は,法律で禁じられている。

 

成年後見人は,法律行為に対する代理権が付与されています。

 

利用契約は,法律行為ですから,成年後見人は利用契約の締結を行うことができます。

 

2 法定後見のいずれかの類型に該当する程度に判断能力が低下した本人が事業の利用契約を締結することは,法律で禁じられている。

 

日常生活自立支援事業の利用契約を締結するためには,本人の判断能力があることが必要です。

 

しかし,法律で禁じてしまうのは制度を使いにくいものにしてしまいます。

 

そのため,本人の判断能力に疑義がある場合は,契約締結審査会が利用の可否を判断します。

 

3 実施主体である都道府県社会福祉協議会は,事業の一部を市区町村社会福祉協議会に委託することができる。

 

これが正解です。

 

事業の一部は,市区町村社会福祉協議会等の法人に委託することができます。

 

4 実施主体である都道府県社会福祉協議会は,職権により本人の利用を開始することができる。

 

成年後見制度と混乱させるように出題した問題でしょう。

 

職権ではなく,契約によって利用を開始することができます。

 

5 契約締結に当たって,本人の判断能力に疑義がある場合は,市町村が利用の可否を判断する。

 

選択肢2で紹介したように,契約締結に当たって本人の判断能力に疑義がある場合に利用の可否を判断するのは,契約締結委員会です。


日常生活自立支援事業では,今日の問題に出てきたもののほかに,運営適正化委員会,専門員,生活支援員なども出題されます。

2022年5月19日木曜日

成年後見関係事件の概況

成年後見関係事件の概況の出題頻度はかなり高いです。


しかも覚える分量は少ないこともあり,出題されたら確実に正解したいものです。


成年後見関係事件の概況

https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/kouken/index.html


たった16ページしかありません。


近年の特徴は,「申立人と本人との関係」で最も多いのは「市区町村長」となっていることです。

そのため,今日の問題は現在では成立しません。


出典:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況―令和3年1月~12月―」

https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2021/20220316koukengaikyou-r3.pdf




第31回・問題80 「成年後見関係事件の概況(平成29年1月~12月)」(最高裁判所事務総局家庭局)に示された,2017年(平成29年)1月から12月の「成年後見開始等」の統計に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 申立ての動機として最も多かったのは,身上監護である。

2 申立人として最も多かったのは,市区町村長である。

3 開始原因として最も多かったのは,知的障害である。

4 「成年後見人等」に選任された者として最も多かったのは,司法書士である。

5 鑑定期間として最も多かったのは,2か月超え3か月以内である。

(注)1 「成年後見開始等」とは,後見開始,保佐開始,補助開始及び任意後見監督人選任のことである。

2 「成年後見人等」とは,成年後見人,保佐人及び補助人のことである。



かなり古いデータです。しかし,先に述べたように,傾向に大きな変化はありません。


それでは,解説です。


1 申立ての動機として最も多かったのは,身上監護である。


申立ての動機で最も多いのは「預貯金等の管理・解約」です。


2 申立人として最も多かったのは,市区町村長である。


この問題が出題されたとき,申立人として最も多かったのは「本人の子」でしたが,現在では「市区町村長」が最も多くなっています。

今日の問題は現在では成立しないのはこの選択肢のためです。


3 開始原因として最も多かったのは,知的障害である。


開始原因として最も多いのは「認知症」です。


4 「成年後見人等」に選任された者として最も多かったのは,司法書士である。


これが正解です。


5 鑑定期間として最も多かったのは,2か月超え3か月以内である。


鑑定期間として最も多いのは,1か月以内です。

2022年5月18日水曜日

抗告訴訟の基礎知識

行政事件訴訟には,抗告訴訟,当事者訴訟,民衆訴訟,機関訴訟があります。

 

今回は,このうちの抗告訴訟を学びます。

 

抗告訴訟とは,行政庁の公権力の行使に関して,不服がある場合に行う訴訟です。

 

抗告訴訟の内容

 

〈処分の取消し〉

行政庁の処分の取消しを求める訴訟。

 

〈裁決の取消し〉

審査請求に対する行政庁の裁決の取消しを求める訴訟。

 

〈無効等確認〉

処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟。

 

〈不作為の違法確認〉

行政庁が法令に基づく申請に対し,相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず,これをしないことについての違法の確認を求める訴訟。

 

〈義務付け〉

次に掲げる場合において,行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟。

・行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。

・行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において,当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。

 

〈差止め〉

行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において,行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟。

 

 

それでは,今日の問題です。

 

31回・問題79 事例を読んで,取消訴訟と併せて,Cさんの救済に効果的な手段として,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 重度の身体障害者であるCさんは,N市に対し,「障害者総合支援法」に基づき,1か月650時間以上の重度訪問介護の支給を求める介護給付費支給申請をした。それに対してN市は,1年間の重度訪問介護の支給量を1か月300時間とする支給決定をした。Cさんはこの決定を不服とし,審査請求を行ったが,棄却されたため,N市の決定のうち,「1か月300時間を超える部分を支給量として算定しない」とした部分の取消訴訟を準備している。

1 無効等確認訴訟

2 義務付け訴訟

3 差止訴訟

4 機関訴訟

5 不作為の違法確認訴訟

() 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

 

とんでもなく難しい問題です。

 

この訴訟の争点は,「1か月300時間を超える部分を支給量として算定しない」です。

 

取消訴訟は,行政庁の処分,採決の取消しを求める訴訟です。

 

取消訴訟以外で,この争点に対して有効な訴訟はあるのでしょうか。

 

有効な訴訟がなければ問題として成り立たないので,必ずあります。

 

それを探り出していきましょう。

 

1 無効等確認訴訟

2 義務付け訴訟

3 差止訴訟

4 機関訴訟

5 不作為の違法確認訴訟

 

このうち,抗告訴訟ではないものが含まれています。

 

それは「4 機関訴訟」です。

 

機関訴訟は,国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟です。

 

国が都道府県に対して行う,逆に都道府県が国に対して行う訴訟が機関訴訟です。

 

ついでに行政事件訴訟の種類を整理しておきます。

 

抗告訴訟

行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟。

 

当事者訴訟

当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟。

 

民衆訴訟

 国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で,選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するもの。

 

機関訴訟

 国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟。

 

今回は,処分に関する不服の訴訟なので,抗告訴訟以外は対象となりません。

 

それでは,解説です。

 

1 無効等確認訴訟

 

無効等確認訴訟は,処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟です。

一般的には,取消訴訟と無効等確認訴訟は,同時には行いません。

 

何を言っているかわからないという人もいるでしょう。

 

取消訴訟は,処分の取消しを求めるものです。


それに対して,無効等確認訴訟は,処分自体が無効であることを確認するものです。

「この処分は有効ではない」ということを訴訟で確認するのです。

 

なぜこのような訴訟があるかと言えば,行政行為は,自ら取り消すことができない公定力があるからです。

 

たとえば,「家が崩壊しかけているので家の取り壊し」を命じる行政処分があったとします。

 

しかし,その行政処分を受けた人は,持ち家がなかったとします。

行政庁もミスします。これを明白な瑕疵(かし)といいます。

 

こういったときに無効等確認訴訟で処分が無効であることを確認します。

 

2 義務付け訴訟

 

これが正解です。

 

この事例は,1か月に650時間以上の重度訪問介護が必要だと考えられるのに,300時間までしか認められないものでした。

 

訴訟によって,Cさんが300時間のサービスしか受けられないと重大な問題が起きると認定された場合,行政庁に650時間まで支給するように命じることができます。

 

これが義務付け訴訟です。

 

3 差止訴訟

 

差止訴訟は,行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において,行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟です。

 

この事例の場合は,既に処分を行っているので,差止訴訟の対象ではありません。

 

4 機関訴訟

 

機関訴訟は,国又は公共団体の機関相互間に関する紛争を解決するために行う訴訟です。

抗告訴訟ではありません。

 

5 不作為の違法確認訴訟

 

不作為の違法確認訴訟は,行政庁が法令に基づく申請に対し,相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず,これをしないことについての違法の確認を求める訴訟です。

 

この事例の場合は処分しているので,不作為の違法確認訴訟の対象ではありません。

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