改めて言うまでもなく,社会福祉士は,社会福祉士及び介護福祉士法が根拠法です。
この法律は,1987(昭和62)年にできたものです。
実は,これよりもずっと以前,1970年代にソーシャルワーカーの国家資格化が検討されたことがあり,社会福祉士法という法案が作られましたが,成立しませんでした。
それから長い年月を経て,高齢社会を目前として介護職員の確保が必要となり,介護福祉士と抱き合わせで社会福祉士及び介護福祉士法ができました。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題91 社会福祉士及び介護福祉士法に規定されている社会福祉士に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 相談援助に関する知識と技能の向上に努めなければならない。
2 診療の補助として喀痰吸引業務を行うことができる。
3 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し,その結果を分析することを業とする。
4 資格更新のため所定の講習を受講しなければならない。
5 相談援助の業務を独占的に行う。
公認心理師をご存じでしょうか。
2015(平成27)年にできた国家試験です。
それをさりげなく出題しています。5年間に限り,現任者が受験できたルートが設けられていました。
2022(令和4)年7月の第5回国家試験がその最後のチャンスとなっていました。
多くの社会福祉士が公認心理師の資格を持って活動しています。
そんなこともあり,公認心理師を含めて出題したのだと思います。
それでは解説です。
1 相談援助に関する知識と技能の向上に努めなければならない。
これが正解です。
資質向上の責務は,2007(平成19年)改正で加わったものです。
近年の改正では,欠格条項が変わっているので,必ず押さえておきたいです。
2 診療の補助として喀痰吸引業務を行うことができる。
これは,介護福祉士です。
3 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し,その結果を分析することを業とする。
これが公認心理師です。
公認心理師の業務は,以下の4つです。
第二条 この法律において「公認心理師」とは、第二十八条の登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう。 一 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。 二 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。 三 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。 四 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。 |
社会福祉士にはない「指導」という文言が使われているのが特徴です。
4 資格更新のため所定の講習を受講しなければならない。
社会福祉士にも介護福祉士にも資格更新制は設けられていません。
5 相談援助の業務を独占的に行う。
社会福祉士は,名称独占の資格です。業務独占ではありません。
資格がなくても相談援助ができます。しかし,資格のあるソーシャルワーカーと資格のないソーシャルワーカーでは,見た目は変わりませんが,知識の深さがまったく異なります。
それは,クライエントの高い信頼を得ることにもつながります。
実習で指導者が見事なソーシャルワークを見せてくれたことでしょう。
今度はあなたがそのソーシャルワークを実践する番です。