近年の出題基準から「日本社会福祉士会倫理綱領」が消えています。
第37回国家試験から新しいカリキュラムに移行しますが,そのカリキュラムでは「社会福祉士の倫理綱領」が示されています。
日本社会福祉士会も組織メンバーである日本ソーシャルワーカー連盟が「ソーシャルワーカーの倫理綱領」を定めているので,今後はそれも出題されていくことでしょう。
社会福祉士会の倫理綱領が消えたからということはないと思いますが,近年は,ソーシャルワーク専門職のグローバル定義の出題が続いています。
ソーシャルワーク専門職のグローバル定義
ソーシャルワークは,社会変革と社会開発,社会的結束,および人々のエンパワメントと解放を促進する,実践に基づいた専門職であり学問である。 社会正義,人権,集団的責任,および多様性尊重の諸原理は,ソーシャルワークの中核をなす。 ソーシャルワークの理論,社会科学,人文学,および地域・民族固有の知を基盤として,ソーシャルワークは,生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう,人々やさまざまな構造に働きかける。 この定義は,各国および世界の各地域で展開してもよい。 |
文字数はわずか200字ちょっとです。
このくらいは,そらで言えるようにしておきたいものです。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題92 「ソーシャルワークのグローバル定義」(2014年)に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 定義は,各国および世界の各地域で展開してもよい。
2 中核となる原理の一つに画一性の尊重がある。
3 セラピーやカウンセリングを含めず実践する。
4 複数の学問分野をまたぎ,その境界を超えていく。
5 経済成長が社会開発の前提条件になるとされている。
(注) 「ソーシャルワークのグローバル定義」とは,2014年7月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)の総会・合同会議で採択されたものを指す。
グローバル定義がなぜ採択されたのかという背景は,先生方から聞いていることでしょう。
ここでは改めては紹介しません。
もし「知らないよ」という人がいたら,ネットで調べてみるとよいと思います。
正解を選ぶのはなかなか難しい問題でしょう。
しかし消去法で正解にアプローチすることができます。
まずグローバル定義に限らず,社会福祉士の国家試験で正解になったのを見たことがないフレーズがあります。
それは「画一」です。ソーシャルワークの原則の「個別化」とは対極にある概念ではないかと思います。
いかがでしょうか。
セラピーやカウンセリングが必要でなければ,心理学理論と心理的支援という科目は必要ではないこととなります。
心理療法や心理カウンセリングを学びますね?
経済成長も社会が豊かになるために必要なことでしょう。しかし,経済成長が望めないとしたら,社会開発はできないことになってしまいます。
ということで,正解は
1 定義は,各国および世界の各地域で展開してもよい。
4 複数の学問分野をまたぎ,その境界を超えていく。
の2つです。
選択肢1は選べると思いますが,選択肢4はグローバル定義の中にはないので,難しいと思います。
選択肢4は,注釈の中にあるのです。
知
ソーシャルワークは、複数の学問分野をまたぎ、その境界を超えていくものであり、広範な科学的諸理論および研究を利用する。ここでは、「科学」を「知」というそのもっとも基本的な意味で理解したい。ソーシャルワークは、常に発展し続ける自らの理論的基盤および研究はもちろん、コミュニティ開発・全人的教育学・行政学・人類学・生態学・経済学・教育学・運営管理学・看護学・精神医学・心理学・保健学・社会学など、他の人間諸科学の理論をも利用する。ソーシャルワークの研究と理論の独自性は、その応用性と解放志向性にある。多くのソーシャルワーク研究と理論は、サービス利用者との双方向性のある対話的過程を通して共同で作り上げられてきたものであり、それゆえに特定の実践環境に特徴づけられる。 |
このような出題があると,何をどこまで覚えたらよいのか,がわからなくなるという人もいることでしょう。
しかし,先に書いたように,消去法で正解できるように道筋をつけていることが多いものです。
この問題の場合は「画一」でしょう。
新しいカリキュラムになると,タクソノミーⅡ型の問題が多く出題されます。
タクソノミーⅡ型の問題は,知識があることを前提にして,1回思考することで答えを出すタイプです。
思考する分,正解を出すのに時間がかかると思いますが,おそらく受験時間は長くしないのではないかと思います。
なぜなら,今よりも国家試験の文字数がとんでもなく多かった時でさえ,今と同じ時間だったからです。
解く訓練が必要です。