2022年6月26日日曜日

個人情報保護法

今回は,個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)です。

 

この法律に示されている各種定義を確認したいと思います。

  

個人情報

生存する個人に関する情報

個人識別符号

特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字、番号、記号その他の符号。

個人に提供される役務の利用若しくは個人に販売される商品の購入に関し割り当てられ、又は個人に発行されるカードその他の書類に記載され、若しくは電磁的方式により記録された文字、番号、記号その他の符号。

要配慮個人情報

本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するもの。

仮名加工情報

他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報。

匿名加工情報

特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報。

個人情報取扱事業者

個人情報データベース等を事業の用に供している者。

〈対象外〉

・国の機関

・地方公共団体

・独立行政法人等

・地方独立行政法人

 

なお,法ができた時は,個人情報取扱事業者には,規模の小さい事業者が除かれていましたが,今は規模の大小にはかかわりはなく,個人情報取扱事業者となり,この法律の対象となります。

 

個人情報取扱事業者の義務

個人情報を取り扱うに当たっては、利用目的をできる限り特定しなければならない。

利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。

 

 

 

今日の問題は2問です。

 

まずは,1問目です。

 

31回・問題117 個人情報の保護に関する法律の規定について,次のうち,正しいものを2つ選びなさい。

1 個人を識別できない情報も個人情報の保護の対象である。

2 この法律において「個人情報」とは,生存する個人に関する情報である。

3 業務に関して知り得た個人情報は,理由のいかんを問わず漏らしてはならないとされている。

4 個人情報取扱事業者は,個人情報を取り扱うに当たり,その利用目的をできる限り包括的に設定しなければならない。

5 国は,個人情報の取扱いに関し事業者と本人との間に生じた苦情の適切かつ迅速な処理を図るために必要な措置を講ずるものとされている。

 

とても難しい問題です。

 

しかし,ここで注目してほしいことは,法の細部を聞いているわけではないことです。

 

落ち着いて考えると答えは何とか見えてくる,というか,正解ではないものは消去できそうです。

 

必ず押さえておかなければならないことは,「個人情報とは何なのか」です。

 

正解は,選択肢1と5です。

 

2 この法律において「個人情報」とは,生存する個人に関する情報である。

5 国は,個人情報の取扱いに関し事業者と本人との間に生じた苦情の適切かつ迅速な処理を図るために必要な措置を講ずるものとされている。

 

迷うのは,選択肢5でしょう。

 

国ではなく,地方公共団体かもしれないと考えてしまうかもしれません。

 

福祉に関することは,基本的に地方公共団体の自治事務にあたるので,必要な措置を講じることは地方公共団体の役割になり得ます。

 

しかし,個人情報保護を考えてみた場合,地域の実状に合わせて対策を立てる意味がありません。

 

そう考えると国が行うものだと考えられます。

 

そして,もう一つ重要なことは,試験問題をつくるにあたって,まったくないものを考えることは難しいということです。

 

もともとある規定を変えて出題することは簡単ですが,規定されていないものを新たに考えて出題するのは,かなり面倒な作業です。

 

それでもたまにそれにチャレンジした問題もあります。そうすると正解はとても単純でわかりやすいものであっても受験生は混乱します。そして間違えます。

 

それでは正解以外の解説です。

 

1 個人を識別できない情報も個人情報の保護の対象である。

 

個人を識別できない情報は個人情報ではありません。

 

3 業務に関して知り得た個人情報は,理由のいかんを問わず漏らしてはならないとされている。

 

ソーシャルワークでも秘密保持義務がありますが,秘密を開示することができる場面はあります。

 

例えば,クライエントの生命に危機があるような場合です。

 

そこから「理由のいかんを問わず」ということはないだろうと考えることができます。

この法律の場合は,生命,健康,生活,財産を害するおそれがある場合は開示できます。

 

しかし,これは開示であり,漏らすということではありません。

 

何な問題です。

 

4 個人情報取扱事業者は,個人情報を取り扱うに当たり,その利用目的をできる限り包括的に設定しなければならない。

 

この問題が難しいのは,この選択肢を消去できないためです。

 

正しくは「包括的に設定しなければならない」が「特定しなければならない」です。

 

この問題は,消去ではなく,選択肢5を正解だろうと思うことができなければ,得点することは不可能に近いものだと思います。

 

もう1問です。

 

34回・問題115 次の記述のうち,個人情報の保護に関する法律の内容として,正しいものを1つ選びなさい。

1 死亡した個人に関する個人情報も保護の対象とする。

2 個人情報取扱事業者の権利利益を保護することを目的として,個人情報取扱事業者の遵守すべき義務等を定めている。

3 個人情報取扱事業者が第三者に個人データを提供するときは,本人の生命の保護のために必要な場合でも,常に本人の同意を得なければならない。

4 個人情報取扱事業者は,個人情報の取扱いに関する苦情の解決について,地方公共団体に委ねなければならない。

5 匿名加工情報とは,特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって,当該個人情報を復元できないようにしたものである。

 

これは,1問目と異なり,消去法で正解できます。

 

キーとなるのは,

 

1 死亡した個人に関する個人情報も保護の対象とする。

 

個人情報は,生存する個人に関する情報です。

 

これを知らなければ,消去することができません。国家試験は,結局こういったところの知識の差が合否を分けます。

 

法の細部まで知らないといけないわけではありません。

 

それでは,それ以外の解説です。

 

2 個人情報取扱事業者の権利利益を保護することを目的として,個人情報取扱事業者の遵守すべき義務等を定めている。

 

個人情報取扱事業者の権利利益を保護することを目的にするわけがありません。

 

保護されるのは,個人の権利利益です。

 

3 個人情報取扱事業者が第三者に個人データを提供するときは,本人の生命の保護のために必要な場合でも,常に本人の同意を得なければならない。

 

「常に」があるので,「常に」ではないと考えることができるでしょう。

 

本人の生命の保護のために必要な場合でも,本人の同意を得なければなりません。

 

同意を得なくても良いのは本人の同意を得ることができない場合です。

 

 

4 個人情報取扱事業者は,個人情報の取扱いに関する苦情の解決について,地方公共団体に委ねなければならない。

 

(個人情報取扱事業者による苦情の処理)

個人情報取扱事業者は、個人情報の取扱いに関する苦情の適切かつ迅速な処理に努めなければならない。

 

と規定されています。

 

5 匿名加工情報とは,特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって,当該個人情報を復元できないようにしたものである。

 

これが正解です。

 

匿名加工情報を知らずとも,ほかの選択肢を消去していくことで,この選択肢が残ります。

 

正解するために重要なことは,選択肢1を消去できることです。

 

個人情報保護の対象には,死亡した人の情報は含まれないことを知っていることが必要だったということです。



〈今日の一言〉


国家試験に合格するのに必要なのは,深い知識ではなく,確実な知識!

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