社会福祉士の国家試験の出題範囲は広いので,毎年出題されているものはほとんどありません。
国家試験が近くなると「ここが出るよ」といった情報がまことしやかに飛び交いますが,ここが出るなんてことは誰もわかりません。
そんなことを信じてヤマを張るのは,利口なことではありません。
国家試験突破に重要なのは,出題基準に示されている範囲をまんべんなく,そして確実に覚えることです。
たまたまヤマが当たって得点できたとしても,たった数問です。
おそらくはほとんど外れます。
現時点(2022年6月)で,毎回必ず出題されているものは心理療法とさまざまなアプローチの2つしかありません。
しかし,これらも今まで必ず出題されているからと言って,次回も必ず出題されることが約束されているものではありません。
とは言え,確実に押さえておきたいものであることは間違いありません。
出るか出ないかわからないものに時間をかけるよりも,出る確率の高いものを覚えたほうが良いです。
ということで,今回は,さまざまなアプローチを覚えます。
覚え方で間違ってほしくないのは,
ホリス=心理社会的アプローチ
といった人名と実績だけを覚えるものです。
その中身がないとせっかく覚えても得点することは不可能です。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題103 ソーシャルワークのアプローチに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 解決志向アプローチは,クライエントが抱く解決のイメージを尊重し,その実現に向けてクライエントの社会的機能を高めることを目指す。
2 行動変容アプローチは,クライエントが,置かれている否定的な抑圧状況を認識し,自らの能力に気付き,その能力を高め,問題に対処することを目指す。
3 エンパワメントアプローチは,行動を学習の結果として捉え,正しく学習することにより問題行動を消去することを目指す。
4 フェミニストアプローチは,クライエント自らが問題を解決するための課題を設定し,あらかじめ決められた期間の中で課題を達成することを目指す。
5 課題中心アプローチは,クライエントが自らの人生のストーリーを理解し,新たなストーリーに書き換えていくことを目指す。
必ず得点したい問題です。
こういった問題をミスすることは,不合格につながることを覚えておきたいです。
カタカナを覚えるのが苦手,なんて甘っちょろいことを言っていたら合格をつかむことはおそらくできないでしょう。
苦手でも覚えるしかありません。
解説です。
1 解決志向アプローチは,クライエントが抱く解決のイメージを尊重し,その実現に向けてクライエントの社会的機能を高めることを目指す。
これが正解です。
解決志向アプローチと問題解決アプローチは,どちらも「解決」という言葉が入っているので,違いがわからないという人がいますが,解決志向アプローチは,問題自体の解決を目指しません。
この文章にあるように,「クライエントが抱く解決のイメージ」をうまく利用して,「クライエントの社会的機能を高めること」が解決志向アプローチです。
どこにも問題を解決するということは書かれていません。
何となくわかりますか?
解決志向アプローチが影響を受けているブリーフセラピー(短期療法)自体がそういったものです。
イメージしにくい人は,ネットなどで調べてみると記憶に強く残ると思います。
2 行動変容アプローチは,クライエントが,置かれている否定的な抑圧状況を認識し,自らの能力に気付き,その能力を高め,問題に対処することを目指す。
抑圧,という言葉が出てきたら,エンパワメントアプローチか,フェミニストアプローチです・
ここには,女性に関する記述がないので,エンパワメントアプローチのことだと目星をつけることができます。
3 エンパワメントアプローチは,行動を学習の結果として捉え,正しく学習することにより問題行動を消去することを目指す。
学習,という言葉が出てきたら,行動変容アプローチです。
4 フェミニストアプローチは,クライエント自らが問題を解決するための課題を設定し,あらかじめ決められた期間の中で課題を達成することを目指す。
課題を設定,といった言葉が出てきたら,課題中心アプローチです。
5 課題中心アプローチは,クライエントが自らの人生のストーリーを理解し,新たなストーリーに書き換えていくことを目指す。
これは,ナラティブ・アプローチを述べたものですが,特徴的な「語り」といった言葉が出てきません。しかし,課題中心アプローチではないという目星をつけることができます。