診断主義は,1920年代に登場して,現在は,心理社会的アプローチに発展しています。
機能主義は,機能主義の批判的な立場で,1930年代に登場して,現在,機能的アプローチに発展しています。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題101
ソーシャルワーク実践理論の基礎に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ランク(Rank,0.)の意志療法は,利用者の過去に着目し,利用者のパーソナリティの構造や自我の働きを捉える診断主義学派の礎となった。
2 ロス(Ross,M.)のコミュニティ・オーガニゼーション説は,地域における団体間調整の方法としてのインターグループワークを提唱した。
3 ホリス(Holis,F.)の心理社会的アプローチは,診断主義学派と機能主義学派,両アプローチの折衷アプローチであり,両学派の統合を試みた。
4 タフト(Taft,J.)ら機能主義学派は,ソーシャルワーカーが所属する機関の機能に着目し,機関におけるソーシャルワーカーの役割を重視した。
5 パールマン(Perlman,H.)の問題解決アプローチは,精神分析や自我心理学の理論を否定し,人・状況・その双方の関連性においてケースワークを捉えた。
人の勉強には,その人に合ったそれぞれの方法がありますが,問題を解きながら覚える方法は,実践的なので,知識をすぐに得点力に変えることができます。
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それでは,解説です。
1 ランク(Rank,0.)の意志療法は,利用者の過去に着目し,利用者のパーソナリティの構造や自我の働きを捉える診断主義学派の礎となった。
診断主義学派の礎となったのは,フロイトの精神分析学です。
ランクの意志心理学・自我心理学,ここでいう意志療法は,機能主義の礎になりました。
2 ロス(Ross,M.)のコミュニティ・オーガニゼーション説は,地域における団体間調整の方法としてのインターグループワークを提唱した。
ロス(Ross,M.)がコミュニティ・オーガニゼーション説を提唱したのは適切です。
しかし,地域における団体間調整を行うインターグループワークを提唱したのは,ニューステッターです。
3 ホリス(Holis,F.)の心理社会的アプローチは,診断主義学派と機能主義学派,両アプローチの折衷アプローチであり,両学派の統合を試みた。
診断主義学派と機能主義学派,両アプローチの折衷アプローチは,パールマンが提唱した問題解決アプローチです。
4 タフト(Taft,J.)ら機能主義学派は,ソーシャルワーカーが所属する機関の機能に着目し,機関におけるソーシャルワーカーの役割を重視した。
これが正解です。
機能主義は,ソーシャルワーカーが所属する機関の機能に着目し,クライエントが機関の効果的に機能を活用できるソーシャルワーカーの役割を重視したものです。
5 パールマン(Perlman,H.)の問題解決アプローチは,精神分析や自我心理学の理論を否定し,人・状況・その双方の関連性においてケースワークを捉えた。
パールマンは,選択肢3で紹介したように,診断主義(精神分析学がベース)と機能主義(意志心理学・自我心理学がベース)の折衷(つまりいいとこ取り)が問題解決アプローチです。
〈今日の注意ポイント〉
診断主義は,クライエントとのコミュニケーションを通して,クライエントが抑圧しているものを治療して,パーソナリティの変容を図ります。
機能主義は,クライエントは潜在的に問題解決する力をもち,その力を機関の機能を使って支援するものです。
この2つのいいとこ取りが問題解決アプローチです。
そのため,問題解決アプローチは,多くのクライエントに対して適用できる万能的アプローチです。
しかし,適用できないものも存在します。
自ら変わりたい,問題意識を持たないクライエントには適用できません。何となく,意味はわかるでしょう?