ソーシャルワークで,初回面接(エンゲージメント,あるいはインテーク)が重視されるのは,初回面接は特別なものだからです。
クライエントはワーカーに対して,どこまで話したらよいのだろう,この人は何をしてくれる人なのだろう,という気持ちを抱いています。
どんなにクライエントとの関係づくりが下手な人でも,2回目の面接は1回目よりも親しみを持ってもらっていると思います。
そのため,初回面接の基本がより求められます。
国家試験では,基本が問われます。
教科書の初回面接の部分をもう一度確認しておくようにしてください。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題102
事例を読んで,Kソーシャルワーカー(社会福祉士)の援助の初回面接における応答として,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
Ⅹ小児がん拠点病院のKソーシャルワーカーは医師からの依頼で,これからの治療や生活に対する支援実施のため,同院の血液腫瘍科で小児がんと告知された女児(3歳)の両親と面談することになった。面接の冒頭,目を真っ赤にした母親は,「先生から娘の病気の説明は受けましたが,現実味がありません。ただ,なぜと繰り返し考えてしまいます。私たちの娘はなぜ3歳でがんになったのですか。できることなら私が代わってあげたい」と訴えた。
1 「今は混乱しているでしょうが,そのうち冷静に考えることができますよ」
2 「同じ経験をされている方はたくさんいます。その方々と会ってみませんか」
3 「ご心配が募る中でも娘さんの病気に向き合おうと努めておられるのですね」
4 「今は治療も進歩しているので大丈夫。安心して治療に専念しましょう」
5 「これからの治療や生活について,ご一緒に考えていきたいと思います」
初回面接の基本に沿ったものは,以下の2つしかありません。
3 「ご心配が募る中でも娘さんの病気に向き合おうと努めておられるのですね」
5 「これからの治療や生活について,ご一緒に考えていきたいと思います」
選択肢3は,受容し,言い換えの技法を用いて返しています。
選択肢5は,援助者の役割を明示しています。
これらに比べると,正解とならなかったものの3つは,初回面接の基本には沿っていません。
1 「今は混乱しているでしょうが,そのうち冷静に考えることができますよ」
これは,初回面接でなくても,正解になることはありません。
個別化の原則から外れた対応だからです。
2 「同じ経験をされている方はたくさんいます。その方々と会ってみませんか」
初回面接では,通常,解決策を提示することはありません。
解決策を提示するのは,クライエントの主訴を整理し,分析した後のことです。
4 「今は治療も進歩しているので大丈夫。安心して治療に専念しましょう」
これを正解だと思う人はいないとは思いますが,根拠のない保障は,どの時点でも不適切です。
〈今日の注意ポイント〉
初回面接であっても,解決策を提示することがあるかもしれません。
しかし,国家試験は,基本を軸にして出題します。基本が正解の根拠となります。
そういった意味で,初回面接の事例問題では,具体的な解決策を示す内容が含まれる選択肢が正解になることはありません。
ここに気をつけて問題を解くことが大切です。