社会福祉士の国家試験には,カタカナ語がたくさん登場します。
覚えにくい分,しっかり覚えると得点力がみるみるアップします。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題123
福祉サービス提供組織の社会的責任に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 コンプライアンスは,営利組織のためのものであるため,福祉という公益性の高いサービス提供組織においてその確立は求められていない。
2 ディスクロージャーとは,組織内において課題を発見し事故を未然に防ぐ内部監査である。
3 アカウンタビリティとは,ステークホルダーに対する説明責任を指す。
4 ガバナンスは,営利組織の問題であり非営利組織にはその確立が求められていない。
5 公益事業への苦情を通報した利用者を保護するために,公益通報者保護法を遵守しなければならない。
カタカナ語が登場しないのは,選択肢5のみです。
しかし,何と問題づくりが下手なのでしょう。
こんな下手な問題は,もう二度と見られないかもしれません。
下手すぎて,選択肢1と4は,意味がわからずとも消去できてしまいます。
しかし,ここで重要なのは,この問題を正解することではなく,ここに出題されているものをしっかり覚えることです。
これをしないと,過去問を解いても,合格できる知識量にはなりません。
過去問を解くとき,正解することを目的にしている人がいるとは思ってもみませんでしたが,結構そういう人がいるようです。
それでは,解説です。
1 コンプライアンスは,営利組織のためのものであるため,福祉という公益性の高いサービス提供組織においてその確立は求められていない。
コンプライアンスは,近年では,自主規制といった文脈で使われることがありますが,本来は「法令遵守」という意味です。
法令遵守がなされない組織は,虐待,不正などが発生します。
2 ディスクロージャーとは,組織内において課題を発見し事故を未然に防ぐ内部監査である。
ディスクロージャーとは,情報開示を意味します。
クローズ(閉じる)に,否定の「ディス」がついて,「閉じないこと」,つまり「オーブン」を意味します。
3 アカウンタビリティとは,ステークホルダーに対する説明責任を指す。
アカウンタビリティは,説明責任のことです。
ステークホルダーは,利害関係者のことです。
ということで,これが正解です。
4 ガバナンスは,営利組織の問題であり非営利組織にはその確立が求められていない。
ガバナンスは,内部統制のことです。
ガバナンスがあってこそ,組織に緊張感が生まれ,適切な組織運営ができるようになります。
逆にガバナンスが確立していない組織は,その組織に属するそれぞれの者が自分勝手に考えて動き,統制が取れなくなっていきます。
その結果として,やる気のあるものが退職し,残ったものに無理がかかり,さらに退職者が生まれる,といった悪循環に陥ります。
5 公益事業への苦情を通報した利用者を保護するために,公益通報者保護法を遵守しなければならない。
公益通報者保護法は,賞味期限の付け替えなど,企業の不正が次々と明らかとなった時代に作られました。
利用者保護ではなく,従業員保護のための法律です。
企業に不都合な通報をしたことを理由に退職を迫ることなどを禁止しています。
利用者は,外部の第三者なので,このような保護がなくても,通報できます。
〈今日の注意ポイント〉
この問題で注意しなければならないのは,選択肢5です。
一読すると正解に思えます。それには理由がちゃんとあります。
下手な問題を作った試験委員の割に,この選択肢だけはうまいです。
「公益事業への苦情を通報した利用者を保護」という文章の中に,「公益・通報・(者)保護・(法)」の要素が詰まっています。
そのために正解に思えます。
国家試験の中には,でたらめな内容にもかかわらず,このような問題づくりをしているために,正しく思えてしまう問題があります。気をつけないとミスします。