パターナリズムは,父権主義などと訳されます。
ソーシャルワークの場面では,クライエントよりもワーカーの方が情報もあるし,専門家としていろいろなことを知っているので,クライエントに変わって,ワーカーが判断するというようなことです。
国家試験の事例問題では,パターナリズムになっているようなタイプのものが正解になることはありません。
なぜだかわかりますか?
ケースワークの原則の1つである「自己決定の原則」から外れるためです。
国家試験では,さまざまに出題してきますが,パターナリズムの選択肢は,真っ先に消去しても良いでしょう。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題107
ソーシャルワークにおける援助関係に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ラポールとは,被援助者に代わって援助者が意思決定することを表す。
2 パートナーシップとは,援助者と被援助者が共に課題に取り組む関係性を表す。
3 逆転移とは,被援助者が自己の感情を援助者に向けることを表す。
4 パターナリズムとは,援助者と被援助者間の情動的な絆を表す。
5 アタッチメントとは,被援助者が援助者から自立している状態を表す。
事例問題を取り上げると思ったでしょう。
時には,こういった用語問題も出題されます。
この問題は,少し難しめです。
知識を使って考えなければならないからです。
ただし,この問題は専門知識がなくても正解できます。
そういう意味では,問題づくりが下手なのかもしれません。
正解は,
2 パートナーシップとは,援助者と被援助者が共に課題に取り組む関係性を表す。
びっくりするほどのものが正解になっています。
それでは,正解以外のものの解説です。
1 ラポールとは,被援助者に代わって援助者が意思決定することを表す。
被援助者に代わって援助者が意思決定することを表すのは,今回のテーマである「パターナリズム」です。
3 逆転移とは,被援助者が自己の感情を援助者に向けることを表す。
被援助者が自己の感情を援助者に向けることを表すのは,転移です。
逆転移は,援助者が自己の感情を被援助者に向けることです。
4 パターナリズムとは,援助者と被援助者間の情動的な絆を表す。
援助者と被援助者間の情動的な絆を表すのは,ラポールです。
5 アタッチメントとは,被援助者が援助者から自立している状態を表す。
アタッチメントは,愛着形成と訳されます。心理学で学びます。
〈今日の注意ポイント〉
今日の問題の正解は,あまりに素直すぎるので,何か裏があるのかと思う人もいるかもしれません。
国試で点数が伸びない人に共通していることとして,文章を素直に読めないことがあるように思います。
文章を読むことは慎重であるべきですが,「慎重であること」と「裏があると思うこと」は別物です。
うまく言葉で伝えられないのがもどかしいですが,国家試験の中には,びっくりするほど素直なものが正解になることは本当によくあります。