2021年2月17日水曜日

ソーシャルアクションってなんだ?

ソーシャルワークは,外国生まれです。


これから社会福祉士を目指そうと思う人は,カタカナの言葉が多いので,覚えるのがとても大変だと思うでしょう。


しかし,それらをうまく使いこなすことができれば,とてもかっこよいと思いませんか?


ただし,かっこよいから使うのではありません。専門用語はしっかり覚えると,同じ専門職の共通言語になります。


ソーシャルワークという用語でさえ,正式に使われるのは,令和3年度改正の新しいカリキュラムからです。


社会福祉士が創設された当初は,社会福祉援助技術と呼ばれていました。


平成19年度改正で,相談援助という名称になりました。


現時点(令和3年2月)で,国家試験にチャレンジしている人の多くは,この言葉になじみがあるでしょう。


そして,令和3年度改正で,ようやくソーシャルワークという名称が使われる科目が誕生します。


30年以上かかったということです。


言葉が定着するのは長い年月が必要です。カタカナの用語を覚えるのが大変だと思うのは,至極普通のことだと言えるでしょう。


しかし,国家試験というものを考えたとき,カタカナの用語は,受験生を振り分けるためにとても有効です。


苦手だと悠長なことは言っていられません。

頑張って覚えていくしかありません。


さて,今日のテーマは,ソーシャルアクションです。


カタカナの用語に苦手意識を持つのは,その言葉から意味を推測することが難しいものが多いからでしょう。


ソーシャルアクションを直訳すると

ソーシャル=社会

アクション=行動,活動


合わせて,社会行動,あるいは社会活動という意味となります。


社会行動,あるいは社会活動という言葉からその内容を推測するのはとても難しいことでしょう。


勘のよい人なら,見当をつけることができるかもしれません。


それでは,ソーシャルアクションとは,どのような意味なのでしょうか。


ソーシャルアクションとは,社会問題の解決のために制度の創設などを求める活動のことを言います。


つまり,外向きの活動です。


第33回国試では,民生委員の前身である方面委員が救護法の実施を求めた活動のことが出題されました。


これがまさにソーシャルアクションです。


ソーシャルアクションとは,おおよそどんなことなのか理解できましたか?


社会福祉士の国試は,丸暗記がそのまま使える問題はそれほど多くはありません。大多数は,その意味を知っていることを前提にして正しく答えさせるものが基本です。


それでは,今日の問題です。


第28回・問題113 ソーシャルアクションに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 目的には,社会参加の促進は含まれない。

2 対象には,個人は含まれない。

3 内容には,ソーシャルアドミニストレーションが含まれる。

4 展開過程には,学習会や調査などによる問題と要求の明確化が含まれる。

5 形態には,自らの課題を克服し要求を実現する組織化は含まれない。


とても美しくない問題です。センスがちょっと足りません。


そのために,勝手に順番を変えます。


第28回・問題113 ソーシャルアクションに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 対象には,個人は含まれない。

2 目的には,社会参加の促進は含まれない。

3 形態には,自らの課題を克服し要求を実現する組織化は含まれない。

4 内容には,ソーシャルアドミニストレーションが含まれる。

5 展開過程には,学習会や調査などによる問題と要求の明確化が含まれる。


少し美しくなったと思いませんか?


変えたポイントは,「含まれる」と「含まれない」を分類したことです。


もう一つのポイントは,問題の長さがバラバラになっていることを整理したことです。


さて,それであっても「含まれる」と「含まれない」が混在している問題は,あまり良い出来ではありません。


なぜなら,「含まれる」のほうに正解があることが多いからです。


それでは解説です。


1 対象には,個人は含まれない。


ソーシャルアクションは,社会を対象にしていることが多いですが,個人の権利擁護を通して,ソーシャルアクションにつながることはよくあります。


古くは,朝日訴訟で知られる朝日茂さんには,多くの支援者が集まりました。

この活動を通して,生活保護費の給付額の見直しがされるようになったのです。


まさにソーシャルアクションだと思いませんか。


2 目的には,社会参加の促進は含まれない。


これは意味がわかりにくいものかもしれません。

社会参加の促進とは,たとえば,合理的配慮を求めて,会社に交渉することなどです。


それによって,障害があっても働きやすい職場となります。

まさに社会参加の促進です。


3 形態には,自らの課題を克服し要求を実現する組織化は含まれない。


一人では,難しい活動でも支援者を募ることで,社会の関心を集めることができます。



4 内容には,ソーシャルアドミニストレーションが含まれる。


カタカナの用語が出てきました。今日の問題の中で最も手ごわいものでしょう。


言葉を知らないと推測することができません。勉強不足の人は,こういうものに引っ掛けられて間違います。


アドミニストレーションとは,運営管理のことです。


運営管理は,既にある制度を実行する過程なので,ソーシャルアクションとは逆向きです。


この制度が良くないから,法令遵守はしない,なんてことになったら制度の運営ができません。


最悪の場合は,指定取消しもあり得ます。


5 展開過程には,学習会や調査などによる問題と要求の明確化が含まれる。


これが正解です。


学習会や調査などによる問題と要求の明確化は,要求する内容に説得力が生まれることでしょう。


たとえば,LGBTの問題に関して,現在「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案」という法案が提出されています。


この法案を提出してもらうのには,説得力が必要です。


主観(時には情熱)も重要ですが,多くの人を動かすには,客観的に説得力があると良いです。


そのための準備が,勉強会の開催やデータの集積です。


<今日の一言>


今日の問題は,勉強不足の人にとってね少しハードルが高いです。

だからこそ,国家試験で出題されます。誰もが簡単に解ける問題ばかりだと,受験生に差がつかないので,ほんの少しハードルを上げた問題の出題が必要です。

しかし決して難しいものではありません。こういう問題を確実に正解するする力が必要です。

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