2021年2月3日水曜日

モニタリングに要注意!

 今回は,相談援助のプロセスのうち,モニタリングを取り上げたいと思います。

 

相談援助のプロセス

受理面接(インテーク)

事前評価(アセスメント)

支援計画(プランニング)

支援の実施(インターベンション・介入)

経過観察(モニタリング)

支援の終結(ターミネーション)

終結後の支援(アフターケア)

 

モニタリングは,相談援助のプロセスのうち,ほかのプロセスと比べるといつ実施するのかがわかりにくいこともあり,要注意です。

 

モニタリングとは

 

支援(インターベンション)の実施中に行われるもので,支援が計画通りに進んでいるかなどを確認します。そのうえで必要な場合は,再アセスメントなどを検討するものです。

 

それでは,今日の問題です。

 

28回・問題105 事例を読んで,B社会福祉士がモニタリングの後に行うべきこととして,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 C君(7歳)は,軽度の発達障害がある。友達とうまくコミュニケーションをとることができず,他の児童との良好な関係を構築することが難しい状態である。両親は,このまま小学校に通学させることに対して不安を持つようになり,Y児童発達支援センターの放課後等デイサービス事業を利用することとした。児童発達支援管理責任者のB社会福祉士が,C君とともに作成した支援計画で「友達に対して挨拶ができる」を短期目標とした。

 今月,この計画作成時に定めた期間を迎えたので,定期モニタリングを実施したところ,挨拶ができていないことが分かった。その理由をC君に尋ねたところ,「あいさつはいや」と答えた。

1 C君とC君の友達との間に問題が生じたと考え,C君の友達に指導を行う。

2 「あいさつはいや」と答えたC君の真意を尋ねるとともに,必要に応じて支援計画の再検討を行う。

3 想定した短期目標を達成していると考え,当面の間,現状の支援を継続する。

4 改訂長谷川式簡易知能評価スケールによる発達障害の程度を確認する。

5 挨拶はできていないが,それを失敗とするのではなく,引き続きC君を見守るよう両親に働きかける。

 

この事例のポイントは,

短期目標:友達に対して挨拶ができること。

モニタリングの結果:挨拶ができていないこと。

 

ポイントが明確な問題ですが,正解するのはそれほど簡単ではありません。

 

なぜなら,この問題は,正解を2つ選ぶ問題だからです。

 

正解を2つ選ぶ問題は,1つめは,比較的簡単に選ぶことができますが,2つめを選ぶのに判断しにくいという傾向にあります。

 

この事例の場合は,それほど難しくはないかもしれませんが,注意しなければならないことには変わりはありません。

 

正解の1つめは,選択肢2です。

 

2 「あいさつはいや」と答えたC君の真意を尋ねるとともに,必要に応じて支援計画の再検討を行う。

 

再アセスメントして,支援計画の見直しするという,モニタリングそのものの内容となっています。

 

C君は,軽度の発達障害のコミュニケーションがうまく取れない状況です。

なぜあいさつができないのかを確認すると,さまざまなものが見えてくるでしょう。

 

もしかすると,どういったときに挨拶するのか,というタイミングがわからなくて困っているのかもしれません。

 

さて,もう1つの正解は,選択肢5です。

 

5 挨拶はできていないが,それを失敗とするのではなく,引き続きC君を見守るよう両親に働きかける。

 

この事例の場合,重要なのは,このまま小学校に通学させることに対して両親が不安を持っていることです。

 

つまり,支援の対象者は,C君だけではなく,両親も含まれることになります。

 

もし,両親への支援が必要でなければ,事例中の「両親は,このまま小学校に通学させることに対して不安を持つようになり」のいう部分は必要ではありません。

 

事例問題は,事例の中の情報だけで解けるように作られます。

 

それにもかかわらず,「事例に書かれていないけれど,おそらくこういうことなんだろう」と勝手に思い込んだり,情報を補完して問題を読むとミスする元となるので,くれぐれも注意が必要です。

 

この問題では,

1 C君とC君の友達との間に問題が生じたと考え,C君の友達に指導を行う。

3 想定した短期目標を達成していると考え,当面の間,現状の支援を継続する。

 

の2つがそれらに当たると言えるでしょう。

 

選択肢1は,「C君とC君の友達との間に問題が生じた」という判断するための情報は,一切ありません。モニタリングの結果は,単に「挨拶ができていないことが分かった」いうことだけです。

 

選択肢3は,挨拶ができていないが,コミュニケーションは取れているのかもしれないと思うと間違う恐れがあります。素直に,短期目標は達成できていないと判断します。

 

選択肢4の「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」は,わが国で最もよく使われる認知症のスクリーニングで用いる検査です。

 

満点は,30点でカットオフ値は,20点以下です。

 

カットオフ値とは,検査の結果,その疑いがあるということを判断するための基準となる数値のことを言います。

 

世界的には,認知症のスクリーニングには,MMSE(ミニメンタルステート検査)が使われます。

 

満点は,30点ですが,カットオフ値がちょっと異なり,23点以下です。

 

HDS-RにしてもMMSEにしても,発達障害のスクリーニングに用いられるものではありません。

 

また,HDS-Rではなく,発達障害の程度を確認するための心理検査だとしても適切だとは言えません。

 

なぜなら,もし心理検査を実施する必要があるなら,最初に支援目標を立てる時だからです。

 

それをせずに,この時点で心理検査を実施するようなら,あまりにお粗末な支援計画だったと言わざるを得ません。

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