財務会計を苦手としている人は多いようです。
問題で慣れていくのが一番です。
第28回・問題123 会計や経営に関する次の記述のうち正しいものを1つ選びなさい。
1 直接金融とは,銀行などの金融機関から直接借入れることを指す。
2 貸借対照表の借方とは,どこから資金を調達したかを示し貸方とは,どのように資金を使用しているかを示す。
3 減価償却とは,固定資産(土地と建設仮勘定を除く)の取得原価を,その耐用年数にわたって費用化する手続である。
4 社会福祉法人のうち,収益が10億円未満の法人には財務諸表開示の義務がない。
5 会計用語上,収益と利益は同一である。
この問題を見て,「あれっ?」と思う人もいるかもしれません。
第33回国試では,以下のように出題されています。
第33回・問題124 社会福祉法人の会計財務等に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 財務会計は組織内部における管理を目的としているため,通常,組織独自の会計ルールを用いる。
2 貸借対照表の純資産とは,外部から調達した負債である。
3 減価償却とは,固定資産(土地と建設仮勘定を除く)の取得原価をその耐用年数にわたり費用化する手続であり,過去に投下した資金を回収するものである。
4 流動資産とは,通常2年以内に費用化,現金化できるものである。
5 社会福祉充実残額とは,社会福祉法人における事業継続に必要な財産額をいう。
第33回国試問題はいずれ解説することもあるかと思いますが,この2つの問題は,いずれも正解は「減価償却」です。
新しく作られる参考書は,最新の問題を参考にして,その部分を付け足して,改訂されます。
しかし,2年連続で出題されるものは少ないので,加わった部分は次の国試に役立つものは少ないということになります。
だから,本当は毎年改訂する必要はないのですが,改訂しないと本が売れないという本を作っている側の事情もあるのではないでしょうか。
最新の参考書のほうが良いという先生は,何か怪しく感じます。
それでは解説です。
1 直接金融とは,銀行などの金融機関から直接借入れることを指す。
金融機関から借り入れるのは,間接金融といいます。
直接金融は,出資者から直接資金調達するものです。
この問題の場合,間違えるように仕掛けが施されています。
直接金融とは,銀行などの金融機関から直接借入れることを指す。
時々このような仕掛けがなされています。こういうものを見ると,勉強不足の人はまんまと引っ掛かるだろうと思って,おかしくなります。
2 貸借対照表の借方とは,どこから資金を調達したかを示し貸方とは,どのように資金を使用しているかを示す。
貸借対照表の貸方は,表の右側です。
ここには,負債と純資産が計上されています。
表の左側は,借方です。
ここには,資産が計上されています。
貸方と借方の額は,同じものとなります。もし異なっていれば,どこかが間違っていることになります。
3 減価償却とは,固定資産(土地と建設仮勘定を除く)の取得原価を,その耐用年数にわたって費用化する手続である。
先に述べたように,これが正解です。
注意したいのは,( )で示されているうちの「土地」です。
土地も固定資産ですが,建物のように経年劣化による資産価値の低下はありません。
逆に取得した時よりも,売却した時のほうが上がることさえあります。
こういった理由で,土地は減価償却の対象から省かれています。
4 社会福祉法人のうち,収益が10億円未満の法人には財務諸表開示の義務がない。
これについては,第33回国試では,
4 規模にかかわらず,決算書類を公表する義務がある。(問題119)
と出題されています。規模にかかわらず財務諸表の開示は義務づけられています。
〈開示が義務づけられている財務諸表〉
・貸借対照表
・事業活動計算書
・資金収支計算書
この3種類の書類は,必ず覚えておかなければなりません。
5 会計用語上,収益と利益は同一である。
収益は,事業収入です。事業収入からかかった費用を引くと利益となります。
同一なら,別の用語を使う必要はないでしょう。