今回は,動機づけ理論を取り上げたいと思います。
誤解を恐れず言えば,共産主義国家がうまくいかなかった理由の一つには,国民に対する動機づけがうまく行うことができなかったことがあるように思います。
マズローの欲求階層説によれば,人には自己実現欲求があるとされます。
共産主義では欠乏欲求は満たされても,自尊・承認欲求でとどまり,自己実現欲求を満たすような環境が生まれにくかったのかもしれません。
第33回国家試験では,以下のような問題が出題されています。
第33回・問題122 動機づけに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ブルーム(Vroom,V.)によれば,上司が部下に対して大きな期待を抱くと,部下の動機づけが高まる。
2 ハーズバーグ(Herzberg,F.)によれば,仕事への満足感につながる要因と仕事への不満足につながる要因とは異なる。
3 マクレガー(McGregor,D.)によれば,X理論では部下は仕事を当然のこととして自律的に目標達成しようとし,責任を率先して引き受ける。
4 デシ(Deci,E.)は,内発的動機によってではなく,むしろ金銭的報酬などの外的報酬によって人は動機づけられるとした。
5 マクレランド(McClelland,D.)は,人間が給与への欲求のために働いていることを示す期待理論を展開した。
この問題の正解は,選択肢2です。
この問題の詳しい解説は別の機会にするとして,この問題の元ネタである問題が,今日の問題です。
第28回・問題121 動機づけに関する理論についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 マグレガー(McGregor,D.)のY理論では,従業員の働く意欲が低いのは,組織の管理者側に原因があるとされる。
2,ハーズバーグ(Herzberg,F.)の動機づけ理論では,労働条件への不満を改善することで,職務に対する満足感を高められるとされる。
3 マクレランド(McClelland,D.)の欲求理論では,権力欲求を持つ人に対しては適度なリスクのある仕事を与えることが,高い業績につながるとされる。
4 ブルーム(Vroom,V.)の期待理論では,管理者が従業員に対して大きな期待をしていることを示すことが,従業員の動機づけを高めるとされる。
5 ロック(Lock,E.)の目標設定理論では,「頑張れ」や「前よりも上回る成績を」といった情動的刺激を与えることで,高い意欲を生み出すとされる。
異なるのは,デシとロックだけです。
それ以外はほぼ同じです。
今は,おそらくすべてが参考書などに書かれていると思います。
そのため,それほど難しくないように思うかもしれませんが,この時に解いた人はとてつもなく難しく思ったはずです。
とは言っても,この問題にはさらに元ネタがあるのですが・・・。
それでは,解説です。
1 マグレガー(McGregor,D.)のY理論では,従業員の働く意欲が低いのは,組織の管理者側に原因があるとされる。
これが正解です。
マクレガーの理論は,X理論とY理論があります。
Y理論は,マズローの理論に従って,人には自己実現欲求があるので,そこに向かって努力していく存在だととらえます。
X理論は,その逆です。人は怠け者なので,アメとムチをうまく使って,動機づけを高めることが必要だとする理論です。
Y理論に従うと,従業員のやる気がないのは,従業員本人の問題ではなく,やる気を引き出すことができなかった上司に問題があるととらえます。
2,ハーズバーグ(Herzberg,F.)の動機づけ理論では,労働条件への不満を改善することで,職務に対する満足感を高められるとされる。
ハーズバークの理論は,動機付け要因と衛生要因に分解されて,動機付け要因は,職務満足に関連するもので,衛生要因は職務不満足に関連するものです。
仕事の達成感など動機付け要因が満たされると職務満足が上がります。
それに対して,職場の人間関係や賃金など衛生要因が満たされると職務不満足が解消されるものです。
この2つをバランスよく満たすことで,従業員はいきいきと働くことができると考えられています。
3 マクレランド(McClelland,D.)の欲求理論では,権力欲求を持つ人に対しては適度なリスクのある仕事を与えることが,高い業績につながるとされる。
権力欲求を持つ人に対しては適度なリスクのある仕事を与えることが,高い業績につながるとされるのは,達成欲求を持つ人です。
権力欲求を持つ人は,責任のある仕事を任されると高い業績につながるとされます。
4 ブルーム(Vroom,V.)の期待理論では,管理者が従業員に対して大きな期待をしていることを示すことが,従業員の動機づけを高めるとされる。
ブルームが示した期待理論とは,どのような努力したら目標を達成できるかを示すことが動機づけを高めると考えるものです。
期待するだけで動機づけが高まるのなら,簡単でしょう。
5 ロック(Lock,E.)の目標設定理論では,「頑張れ」や「前よりも上回る成績を」といった情動的刺激を与えることで,高い意欲を生み出すとされる。
ロックの理論は,具体的な目標を設定することが動機づけを高めるとされます。
「頑張れ」や「前よりも上回る成績を」といったもので動機づけが高まるのなら簡単です。