社会福祉士の国家試験は,第22回にカリキュラムが変わり,第37回でまた新しいカリキュラムになります。
大学で最も早く新しいカリキュラムに変わり,その学生が卒業する時に,新しいカリキュラムでの国家試験に移行します。
いよいよ科目にソーシャルワークという名称が入ります。資格創設から30年以上かかって,ようやくです。
ソーシャルワークは,以下のように分かれます。
①ケースワーク
②グループワーク
③コミュニティワーク
今回は,そのうちグループワークを取り上げます。
グループワークは,集団を活用した援助技術です。
この視点を忘れてはなりません。
第28回・問題115 事例を読んで,グループワークにおけるMソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士)の対応について,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
総合病院の精神科病棟でMソーシャルワーカーは,退院支援の一環としてグループワークを活用した社会生活技能訓練(SST)を行っている。退院後に症状が再発したときに備えて,どんなときに体調不良になるのかをグループで話し合っていたとき,メンバーのAさんが,唐突に「どうせ,そんなこと考えてもしょうがない。悪くなるときは悪くなるんだから」とぶっきらぼうに言った。それを聞いたメンバーのBさんは,「お前みたいなやる気がない奴は居ても仕方ない。出て行けよ」と冷たく言った。Aさんは怒りの表情でBさんをにらみつけた。
1 「Bさん,そんなふうに言わないで,みんな仲良くしましょう」
2 「Aさん,同じことを言ってた人が前にいたけど,グループで変わりましたよ」
3 「二人とも,気が済むまで話してください」
4 「お二人それぞれ思いがあるんですよね」
5 「Aさん,無理にグループに参加しなくてもいいですよ」
グループワークの作業期では,メンバー間の葛藤やぶつかり合いが現れることがあります。
これを避けてはなりません。というか,それを活用するするのがグループワークです。
避けているのは,
1 「Bさん,そんなふうに言わないで,みんな仲良くしましょう」
5 「Aさん,無理にグループに参加しなくてもいいですよ」
これらは絶対に正解になりません。
2 「Aさん,同じことを言ってた人が前にいたけど,グループで変わりましたよ」
これは一般化している返しです。グループワークであっても,個別化の原則は貫かれます。
3 「二人とも,気が済むまで話してください」
これは一見よさそうな対応だと思う人もいるでしょう。
しかし,これも絶対に正解になりません。
なぜなら「気が済むまで話してください」では,グループワーカーの役割を放棄していますし,「気が済むまで」と言っていますが,気が済まなければどうするのでしょう?
先を見通せない,つまり戦略のない対応は,その場しのぎでしかありません。
4 「お二人それぞれ思いがあるんですよね」
これが正解です。
葛藤が起きていることを受け止めて,リフレーミングの技法を使って返しています。
争っていることを「それぞれの思いがあるからだ」と発想を変えています。
このように見方を変えることをリフレーミングと言います。
とても素敵な返しだと思いませんか?
<今日の一言>
グループワークは,集団を活用した援助技術です。
できるグループワーカーは,葛藤が生まれてきたら,うろたえるどころか,「やったー」と思うでしょう。
葛藤は,グループが成長するきっかけとなるからです。
それにもかかわらず,国家試験では「葛藤が起きないようにする」といったような内容で出題されます。
こういったタイプのものは,当然ですがすべて誤りです。
集団を活用しないのなら,ケースワークで良いということになってしまいます。