今回は,社会福祉法人を取り上げます。
社会福祉法人の根拠法を念のために確認しますが社会福祉法です。
社会福祉士を目指す人で福祉六法の類いを持たない人はいないと思いますが,もし持っていないという人がいたら,このくらいは購入しましょう。
福祉小六法なら安いです。
政府のネット検索システムであるe-Govで調べることもできますが,小六法のほうが勉強には向きます。
読み物的に使えるからです。
特に社会福祉法は,必ず全体に目を通すようにします。
社会福祉の基本法なのが社会福祉法です。どこからでも出題されると言えます。
だからと言って,丸暗記することは必要ありません。どんなことが書かれているのかを押さえることをまず優先します。
小六法の良いところは,制度改正があったところに線が引いてあることです。
ただし,多くの人が言っている「制度改正があったものが出題される」というのは,半分合っていて,半分間違っています。
というのは,制度改正があってからすぐは出題されるものはほとんどないからです。
特に,4月改正のものが次の年の国試に出題されるものはほとんどありません。多くの場合は,数年後の出題になります。
なので,大学生なら,数年分を先輩から後輩へ受け継いでいけばよいことになります。
先輩からもらったものに自分が購入した最新のものを加えて後輩に受け継いでいきます。
社会人はそれができませんが,そういったものを必ずしも追いかけることはありません。
基本的には参考書に書かれているものをかっちりきっちり覚えていけば,国家試験では100点以上は必ずねらえます。
手を広げることによって,すべてがあいまいな知識になることだけは避けなければなりません。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題119 社会福祉法人の制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 社会福祉法人は,社会福祉事業と公益事業以外を行ってはならない。
2 非営利組織である社会福祉法人は,自主的に経営基盤の強化を図る必要はない。
3 社会福祉法人には,出資持分が認められている。
4 社会福祉法人が解散した際の残余財産は,社会福祉法人その他の社会福祉事業を行う者又は国庫に帰属する。
5 1つの市の区域のみを事業の対象とする社会福祉法人の所轄庁は,都道府県知事である。
社会福祉法人の解散の出題は,旧カリキュラム時代にはよく出題されていましたが,この時が久しぶりです。
以前によく出題されていた利用は,社会福祉法人の体力強化のために合併がすすめられたからです。
それにしても国家試験が大変だと思うのは,たくさんたくさん知識を入れても,国試で使われる知識はそのうちのほんの一部です。しかも勉強しなかったものも出題されます。
しかし,きっちりかっちり勉強した人は,合格をつかむことができます。
近年の国試はそのように出題されています。
それでは解説です。
1 社会福祉法人は,社会福祉事業と公益事業以外を行ってはならない。
社会福祉法人は社会福祉事業を行うための法人ですが,社会福祉事業を主たる事業として,公益事業も収益事業も行うことができるのが特徴です。
それに比べると医療法人は,収益事業を行うことができません。医療法人が収益事業を行うためには,社会医療法人に認定される必要があります。
2 非営利組織である社会福祉法人は,自主的に経営基盤の強化を図る必要はない。
社会福祉法人であっても,自主的に経営基盤の強化を図る必要があります。
社会福祉法では,「経営の原則等」として,以下のように規定されます。
(経営の原則等) 第二十四条 社会福祉法人は、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため、自主的にその経営基盤の強化を図るとともに、その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図らなければならない。 2 社会福祉法人は、社会福祉事業及び第二十六条第一項に規定する公益事業を行うに当たつては、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない。 |
特に重要なのが,平成28年の法改正で加わった第2項です。
3 社会福祉法人には,出資持分が認められている。
出資持分とは,法人に出資したとき,出資分に相当する権利を持つことをいいます。
医療法人社団の中には,出資持分を認める定款を持つ法人もありますが,現在はそのような定款を持つ法人の新規設立は認められていません。
社会福祉法人には,出資持分は一切認められていません。
社会福祉法人は,誰かが出資して設立されますが,だれの持ち物でもないことを意味しています。
そのため,利益が出ても利益を分配することは認められていないのです。
4 社会福祉法人が解散した際の残余財産は,社会福祉法人その他の社会福祉事業を行う者又は国庫に帰属する。
これが正解です。
法では以下のように書かれています。
残余財産の帰属 第四十七条 解散した社会福祉法人の残余財産は、合併(合併により当該社会福祉法人が消滅する場合に限る。)及び破産手続開始の決定による解散の場合を除くほか、所轄庁に対する清算結了の届出の時において、定款の定めるところにより、その帰属すべき者に帰属する。 2 前項の規定により処分されない財産は、国庫に帰属する。 |
5 1つの市の区域のみを事業の対象とする社会福祉法人の所轄庁は,都道府県知事である。
社会福祉法人の所轄庁は,基本的に都道府県です。
しかし,現在は権限委譲によって,1つの市の区域の中でしか事業を行わない社会福祉法人の場合,当該市の市長が所轄庁となります。