2019年7月31日水曜日

特定非営利活動法人の組織

特定非営利活動法人(NPO法人)は,平成10年(1998年)の特定非営利活動促進法で規定されている法人です。

国家試験では,第22・23・24・29回に出題されています。

特定非営利活動法人の定義は以下の通りです。

一 次のいずれにも該当する団体であって,営利を目的としないものであること。
イ 社員の資格の得喪に関して,不当な条件を付さないこと。
ロ 役員のうち報酬を受ける者の数が,役員総数の三分の一以下であること。
二 その行う活動が次のいずれにも該当する団体であること。
イ 宗教の教義を広め,儀式行事を行い,及び信者を教化育成することを主たる目的とするものでないこと。
ロ 政治上の主義を推進し,支持し,又はこれに反対することを主たる目的とするものでないこと。
ハ 特定の公職(公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第三条に規定する公職をいう。以下同じ。)の候補者(当該候補者になろうとする者を含む。以下同じ。)若しくは公職にある者又は政党を推薦し,支持し,又はこれらに反対することを目的とするものでないこと。


それでは,今日の問題です。

第24回・問題112 特定非営利活動法人制度に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 特定非営利活動法人は,その主たる目的を,宗教の教義を広める活動とすることはできないが,政治上の主義を推進する活動とすることはできる。
2 特定非営利活動法人の社員(法人の構成員)は,10名以上であるとともに,社員の資格の得喪について不当な条件を付さずに,加入脱退の自由を保障する必要がある。
3 特定非営利活動法人の業務は,定款で社員総会の決議によるとしたものを除き,すべて理事会の決議によって行う。
4 特定非営利活動法人の理事は,当該法人から報酬を受け取ることはできない。
5 特定非営利活動法人が解散する場合,残余財産は,法人の開設者に帰属させることができる。


社会福祉士の国試で出題される社会福祉法人,NPO法人,医療法人は,それぞれの特徴があります。

その一つが最高議決機関です。

法人の種類
最高議決機関
社会福祉法人
評議員会
特定非営利活動法人
社員総会
医療法人
財団
評議員会
社団
社員総会


このように書くと覚えるのがとても難しく感じるかもしれません。
しかし押さえておきたいのは,それぞれ違うということです。

それでは解説です。

1 特定非営利活動法人は,その主たる目的を,宗教の教義を広める活動とすることはできないが,政治上の主義を推進する活動とすることはできる。

宗教の教義を広める活動も政治上の主義を推進することもNPO法人の主たる活動にすることはできません。

2 特定非営利活動法人の社員(法人の構成員)は,10名以上であるとともに,社員の資格の得喪について不当な条件を付さずに,加入脱退の自由を保障する必要がある。

これが正解です。

3 特定非営利活動法人の業務は,定款で社員総会の決議によるとしたものを除き,すべて理事会の決議によって行う。

特定非営利活動促進法では,以下のように規定されています。

(社員総会の権限)
第十四条の五 特定非営利活動法人の業務は、定款で理事その他の役員に委任したものを除き、すべて社員総会の決議によって行う

4 特定非営利活動法人の理事は,当該法人から報酬を受け取ることはできない。

特定非営利活動促進法では,以下のように規定されています。

役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の三分の一以下であること。

三分の一以下であれば,受け取ることができます。

5 特定非営利活動法人が解散する場合,残余財産は,法人の開設者に帰属させることができる。

特定非営利活動促進法では,以下のように規定されています。

(残余財産の帰属)
第三十二条 解散した特定非営利活動法人の残余財産は、合併及び破産手続開始の決定による解散の場合を除き、所轄庁に対する清算結了の届出の時において、定款で定めるところにより、その帰属すべき者に帰属する。
2 定款に残余財産の帰属すべき者に関する規定がないときは、清算人は、所轄庁の認証を得て、その財産を国又は地方公共団体に譲渡することができる。
3 前二項の規定により処分されない財産は、国庫に帰属する。

つまり,定款で定めた者に帰属します。

<今日の一言>

今日の問題には出題されていませんでしたが,NPO法人にはいくつか特徴的なものがあります。

その一つが設立です。

設立にあたっては,

NPO法人は,所轄庁の「認証」を受けて設立されます。

社会福祉法人及び医療法人は,「認可」を受けて設立されます。

「認証」と「認可」は,たった一文字違いです。

国試会場の独特な雰囲気の中では,見落とす恐れがあります。
「設立」ときたら,認証なのか,認可なのか,この部分を真っ先に確認することが大切です。

2019年7月30日火曜日

社会福祉法人が行う事業~「定めはない」に注意

今回も社会福祉法人を取り上げます。

早速,今日の問題です。

第25回・問題119 社会福祉法人が行う事業に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 自主的に福祉サービスの質の向上に取り組むとともに,地域住民が求める限りにおいて,事業経営を透明にすることに,できるだけ協力しなくてはならない。
2 社会福祉事業を実施する必要があるが,当該法人の実施する事業において社会福祉事業は主たる地位を占める必要はない。
3 公益事業において剰余金が生じたときには,当該社会福祉法人の社会福祉事業や公益事業に充てることとされている。
4 収益事業として行う事業は,法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるものや投機的なものはもちろん,福祉に関連しないものは適当ではないとされている。
5 社会福祉事業を行うために必要な物件について,所有権を持つべきかどうかについて,特段の定めはない。

この問題は,今までの国試の中で,合格基準点(いわゆるボーダーライン)が最も低くなった第25回のものです。

近年の国試では見られないような言い回しが長ったらしい選択肢が並んでいます。

長くなれば,引っ掛けポイントを多く作ることができるので,勉強している人でも引っ掛けられやすくなります。

問題文が長くなると,文章にほころびを生じやすくなりますので,そういったところに気がつけば,知識がなくても正解できる可能性が高まります。


さて,この問題の正解は,

3 公益事業において剰余金が生じたときには,当該社会福祉法人の社会福祉事業や公益事業に充てることとされている。


必須事業(法人の事業の主たる地位を占めていなければならない)

〇社会福祉事業

第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業

任意事業(社会福祉事業の円滑な遂行を妨げるおそれのないもの)



〇公益事業
公益を目的としたもので,社会福祉事業以外の事業。例えば,子育て支援,有料老人ホームの経営など。
要件:社会福祉と関係のないものは認められない。社会福祉事業の円滑な遂行を妨げるおそれのないものであること。
剰余金は,当該法人が行う社会福祉事業又は公益事業に充てること。



〇収益事業
収益を社会福祉事業又は公益事業の財源に充てるために実施する事業。
事業の種類:制限はないが,法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるもの又は投機的なものは適当ではない。
収益は,当該法人が行う社会福祉事業又は公益事業の経営に充てること。

公益事業の剰余金も収益事業の収益ともに,社会福祉事業又は公益事業に充てることが必要です。

ほかの選択肢も見てみましょう。

1 自主的に福祉サービスの質の向上に取り組むとともに,地域住民が求める限りにおいて,事業経営を透明にすることに,できるだけ協力しなくてはならない。

社会福祉法では以下のように規定されています。

(経営の原則等)
第二十四条 社会福祉法人は、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため、自主的にその経営基盤の強化を図るとともに、その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図らなければならない。

(経営の原則等)は,これで3回目の登場です。しっかり覚えておきましょう。

地域住民が求める,求めないにかかわらず,福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明。性の確保を図らなければなりません。


2 社会福祉事業を実施する必要があるが,当該法人の実施する事業において社会福祉事業は主たる地位を占める必要はない。

社会福祉事業が主たる地位を占めることが必要です。


4 収益事業として行う事業は,法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるものや投機的なものはもちろん,福祉に関連しないものは適当ではないとされている。

福祉に関連しないものは適当ではないとされているのは,公益事業です。

収益事業は,法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるもの又は投機的なものは適当ではないとされていますが,事業の制限はありません。

もしこの選択肢が正しければ,

収益事業として行う事業は,法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるもの,投機的なもの,福祉に関連しないものは適当ではないとされている。

で良いはずです。「もちろん」が余計です。


5 社会福祉事業を行うために必要な物件について,所有権を持つべきかどうかについて,特段の定めはない。

社会福祉法では,以下のように規定されています。

(要件)
第二十五条 社会福祉法人は、社会福祉事業を行うに必要な資産を備えなければならない。


<今日の一言>

今日の問題のうち,

5 社会福祉事業を行うために必要な物件について,所有権を持つべきかどうかについて,特段の定めはない。

に着目したいと思います。

この選択肢が正しければ,

社会福祉事業を行うために必要な物件について,所有権を持つべきかどうかについて,特段の定めはない。

という選択肢は出題しないはずです。

定めがないものをわざわざ出題する意味がないからです。

「定めはない」「定められていない」は,ほぼ間違いであると考えてよいと思います。
旧カリキュラムも含めて出題されたものは,以下の通りです。


<定めはない>
・福祉事務所の現業を行う所員の定数については,特に法令上の定めはない。
・審査請求に対する裁決はできる限り速やかに行われるべきではあるが,拙速な判断は避けるべきであるから,介護保険法,障害者自立支援法,生活保護法などの社会保障立法には裁決をすべき期間についての定めはない。
・この法律では,国及び地方公共団体に,成年後見制度の利用促進のための措置を講じることを求める規定は定められていない。

<定められていない>
・この法律では,国及び地方公共団体に,成年後見制度の利用促進のための措置を講じることを求める規定は定められていない。


もちろん,これらはすべて間違いです。

2019年7月29日月曜日

社会福祉法人が実施する事業,及び「解散」「合併」

社会福祉法人は,「社会福祉事業」を行うための法人です。

社会福祉法人が行う事業は,以下のように整理することができます。

必須事業(法人の事業の主たる地位を占めていなければならない)

〇社会福祉事業

第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業

任意事業(社会福祉事業の円滑な遂行を妨げるおそれのないもの



〇公益事業
公益を目的としたもので,社会福祉事業以外の事業。例えば,子育て支援,有料老人ホームの経営など。
要件:社会福祉と関係のないものは認められない。社会福祉事業の円滑な遂行を妨げるおそれのないものであること。
剰余金は,当該法人が行う社会福祉事業又は公益事業に充てること。



〇収益事業
収益を社会福祉事業又は公益事業の財源に充てるために実施する事業。
事業の種類:制限はないが,法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるもの又は投機的なものは適当ではない。
収益は,当該法人が行う社会福祉事業又は公益事業の経営に充てること。


医療法人と比較すると,医療法人には,一部の公益事業を行うは認められていますが,収益事業は求められていないところに違いがあります。

医療法人が収益事業を実施するためには,「社会医療法人」として都道府県知事の認定を受けなければなりません。

特定非営利活動法人(NPO法人)には,収益事業が認められます。

社会福祉法人の社会福祉事業が主たる地位を占めているという意味は以下の通りです。

社会福祉事業の規模 > (公益事業+収益事業)の規模

全体を100とすると,社会福祉事業の規模は50を超えていなければなりません。

それでは,今日の問題です。

第28回・問題119 社会福祉法人の制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会福祉法人は,社会福祉事業と公益事業以外を行ってはならない。
2 非営利組織である社会福祉法人は,自主的に経営基盤の強化を図る必要はない。
3 社会福祉法人には,出資持分が認められている。
4 社会福祉法人が解散した際の残余財産は,社会福祉法人その他の社会福祉事業を行う者又は国庫に帰属する。
5 1つの市の区域のみを事業の対象とする社会福祉法人の所轄庁は,都道府県知事である。

「出資持分」という聞き慣れない用語が出題されていますが,そういったところには正解はめったにありません。慌ててはなりません。

正解は,

4 社会福祉法人が解散した際の残余財産は,社会福祉法人その他の社会福祉事業を行う者又は国庫に帰属する。


社会福祉法人の解散及び合併については,旧カリキュラムの国試では,1問丸ごと出題されたこともあります。

しかし,現在のカリキュラムでは,あまり出題されず,解散1回(第28回),合併1回(第29回)が選択肢の1つとして出題されているだけです。

とはいうものの,しっかり覚えておきたいです。

解散及び合併は後述します。

ほかの選択肢も見てみましょう。


1 社会福祉法人は,社会福祉事業と公益事業以外を行ってはならない。

社会福祉法人は,収益事業を行うことができるのが特徴です。
収益事業を行うことができないのは,医療法人です。


2 非営利組織である社会福祉法人は,自主的に経営基盤の強化を図る必要はない。

社会福祉法では,以下のように規定されています。

(経営の原則等)
第二十四条 社会福祉法人は,社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実,効果的かつ適正に行うため,自主的にその経営基盤の強化を図るとともに,その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図らなければならない。

前回に引き続いて,2回目の登場です。


3 社会福祉法人には,出資持分が認められている。

出資持分とは,出資者の責任です。

株式会社の場合は,株券の分の責任を持ちます。
100万株を10人の株主で10万株ずつ持っていたとすると,その会社の10分の1ずつの責任を持つことになります。

この場合の責任とは,10分の1は自分の持ち物であることを指します。
出資持分が認められているとは,出資者の持ち物であることが認められていることを意味しています。

社会福祉法人は,誰かが土地や建物を提供して設立しますが,法制度上は誰の持ち物でもありません。つまり,出資持分は認められていない,ということになります。


5 1つの市の区域のみを事業の対象とする社会福祉法人の所轄庁は,都道府県知事である。

社会福祉法人の所轄庁は変更があったので,出題されたと思います。

1つの市の区域のみを事業の対象とする社会福祉法人の所轄庁は,市長です。
これは難しいと思うかもしれません。

しかし日本語的に考えるとちょっと変です。そして都道府県の役割としても不自然です。

都道府県の事務は,地方自治法の規定により,広域にわたるもの,市町村に関する連絡調整に関するもの及びその規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないもの,とされています。

1つの市の区域のみを対象とするなら,都道府県の出番はないはずです。

日本語的なちょっと変だと思う理由は,

1つの市の区域のみを事業の対象とする社会福祉法人の所轄庁は,都道府県知事が正しいなら,1つの都道府県の区域のみを事業の対象とする社会福祉法人の所轄庁は,都道府県知事である。

で良いはずです。

1つの市の区域のみを事業の対象とする社会福祉法人の所轄庁 → 都道府県知事
1つの都道府県の区域のみを事業の対象とする社会福祉法人の所轄庁 → 都道府県知事

といったようにどちらも都道府県の役割になってしまいます。

正しくは

1つの市の区域のみ → 市長
2つ以上の市の区域 → 都道府県知事
2つ以上の都道府県にまたがる場合 → 厚生労働大臣

所轄庁で重要なことは,基本は都道府県であるが,市長にも権限移譲がなされているということです。


<今日の一言>

現在のカリキュラムではほとんど出題されていませんが,解散及び合併について押さえておきたいです。
社会福祉法では,第46~55条で規定されています。

<解散事由>
第四十六条 社会福祉法人は,次の事由によって解散する。
一 評議員会の決議
二 定款に定めた解散事由の発生
三 目的たる事業の成功の不能
四 合併(合併により当該社会福祉法人が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 所轄庁の解散命令
2 前項第一号又は第三号に掲げる事由による解散は,所轄庁の認可又は認定がなければ,その効力を生じない。
3 清算人は,第一項第二号又は第五号に掲げる事由によつて解散した場合には,遅滞なくその旨を所轄庁に届け出なければならない。

<残余財産の帰属>
第四十七条 解散した社会福祉法人の残余財産は,合併(合併により当該社会福祉法人が消滅する場合に限る。)及び破産手続開始の決定による解散の場合を除くほか,所轄庁に対する清算結了の届出の時において,定款の定めるところにより,その帰属すべき者に帰属する。
2 前項の規定により処分されない財産は,国庫に帰属する。

<合併>
第四十八条 社会福祉法人は、他の社会福祉法人と合併することができる。この場合においては、合併をする社会福祉法人は、合併契約を締結しなければならない。

合併には,以下の2つの形が規定されています。

〇吸収合併(一方の社会福祉法人がもう一方の社会福祉法人を吸収するもの)
〇新設合併(既存の社会福祉法人を消滅させて,新たな社会福祉法人を設立するもの)

いずれの場合も,登記することによって,その効力を生じます。

2019年7月28日日曜日

社会福祉法における社会福祉法人の規定

社会福祉法人は,社会福祉法に規定される特別法人です。

社会福祉法は134条ありますが,社会福祉法人に関する規定は,第22~59条です。
約3割を占めています。

社会福祉事業に関する規定は第60~79条です。
この2つを合わせると社会福祉法の半分を占めていることになります。

社会福祉法は,2000年(平成12年)に制定されたものです。
社会福祉法人及び社会福祉事業の分量が多いのは,この法律は1951年(昭和26年)の「社会福祉事業法」を改称して作られたことによります。

社会福祉法の背景や目的等は別の科目で学ぶとして,この科目では,社会福祉法人の具体的内容が問われます。

勉強を始める前に社会福祉法の社会福祉法人に関する部分は目を通しておきましょう。

最新の社会福祉法(e-gov)
 ↓   ↓
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=326AC0000000045#1374

それでは,今日の問題です。

第29回・問題119 社会福祉法人に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 第二種社会福祉事業の経営主体は,社会福祉法人に限られる。
2 社会福祉法人は,社会福祉事業の主たる担い手である。
3 社会福祉法人は,他の社会福祉法人と合併することはできない。
4 社会福祉法人の非営利性とは,収益を出してはならないという意味である。
5 社会福祉法人には,株式会社の法人税率と同じ税率が適用される。

近年の国試の問題の特徴は,「最も適切なもの」あるいは「適切なもの」を選びなさいという出題が多くなってきていることです。

以前は,こういった出題の多くは,事例問題に多く,一般的な一問一答式の問題にはあまり見られなかったものです。

多くは「正しいもの」あるいは「誤っているもの」を選びなさい,というものです。
問題の厳密性を高めること意味合いなのでしょう。

この問題の正解は,

2 社会福祉法人は,社会福祉事業の主たる担い手である。

です。

社会福祉法では,

(経営の原則等)
第二十四条 社会福祉法人は、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため、自主的にその経営基盤の強化を図るとともに、その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図らなければならない。
2 社会福祉法人は、社会福祉事業及び第二十六条第一項に規定する公益事業を行うに当たつては、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない。

と規定しています。

二項は平成28年改正で加わったものです。

社会福祉法人は,社会福祉事業を行うことを目的とした法人です。

社会福祉事業には,2種類あります。

第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業です。
第一種社会福祉事業は,国、地方公共団体又は社会福祉法人が経営することを原則としています。

第二種社会福祉事業は,実施主体は限定されていません。

これらで,社会福祉事業を主としているものは,社会福祉法人しかないことになります。


この問題が「最も適切なもの」として出題したのは,

4 社会福祉法人の非営利性とは,収益を出してはならないという意味である。

があるからです。

この選択肢のみが法制度に規定された内容ではありません。
そのために,「最も適切なもの」としての出題が必要だったと思います。

このように出題しないと,「あるコンサルタントは『社会福祉法人,収益を出してはなりません』と言っているので正解ではないのか」と考える人が出てきますし,不適切問題として指摘する人も出てくるかもしれません。
しかし一般的には,「非営利」という意味は,収益を分配してはならないという意味だとされています。

株式会社は,収益を「配当」という形で株主に還元します。そのため「営利法人」と言われます。

社会福祉法人には,収益の分配が認められていません。これが「非営利」という意味です。


<今日の一言>

社会福祉法では,

第四十八条 社会福祉法人は、他の社会福祉法人と合併することができる。

と規定しています。

参考書には,社会福祉法人は、社会福祉法人意外と合併することができない。

と記載していることでしょう。

法制度は読みにくいので,参考書を発行する会社が読み替えてくれているのです。
法律は読みにくいですが,法制度の問題に強くなるためには,法に慣れることは必要です。

何度も受験している人は,新しい発見をすることもできるでしょう。

2019年7月27日土曜日

社会福祉法人改革の内容

現在の国試の「福祉サービスの組織と経営」の「福祉サービスに係る組織や団体」は,

1 福祉サービスに係る組織や団体
1)社会福祉法人制度
定義、役割、税制、実際
その他
2)特定非営利活動法人制度
定義、役割、税制、実際
その他
3)その他の組織や団体
医療法人、公益法人、営利法人、市民団体、自治会
その他


という出題基準になっています。

しかし,実際には「社会福祉法人」「特定非営利活動法人」「医療法人」しか出題されていません。

そのうち,社会福祉法人は,ほぼ毎回出題されています。

第22回以降は

第22,23,25,26,28,29,30回に出題されています。

出題確率は,なんと70%!!

出題されなかったのは,第24,27,31回のわずか3回です。

2年連続出題されなかったことはないことから,第32回国試は
ほぼ100%の確率で出題されることでしょう。


必ず得点したいです。

さて,社会福祉法人は,社会福祉法に規定されている特別な法人です。

普段,法律を見ない人も社会福祉法は必ず目を通すことをお勧めします。
社会福祉法は,社会福祉士にとって,最も中心となる法律だからです。

社会福祉法人は,社会福祉事業の主な担い手です。
社会福祉士が対象とする事業は,社会福祉事業だけではありませんが,社会福祉士は社会福祉の士(第一線で活躍する人)なので,覚えておかなければなりません。


それでは,今日の問題です。

第30回・問題119 社会福祉法人に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 役員の選任は,評議員会の決議を必要とする。
2 株主がいないため,事業経営の透明性の確保は求められない。
3 親族等特殊関係者の理事,評議員,監事への選任に係る規定はない。
4 監事は,理事,評議員又は当該法人の職員を兼ねることができる。
5 理事・監事等の関係者に対し特別の利益を与えることができる。


知識がなくても,絶対に正解にならないと思えるものは,

2 株主がいないため,事業経営の透明性の確保は求められない。
3 親族等特殊関係者の理事,評議員,監事への選任に係る規定はない。


2つ消去できたことで,正解できる確率は33.3%となります。
法人の性格を考えると

5 理事・監事等の関係者に対し特別の利益を与えることができる。

も正解にならなさそうだ,と思えます。

3つめの選択肢を消去できたことで,正解できる確率は50%まで跳ね上がります。


残りは

1 役員の選任は,評議員会の決議を必要とする。
4 監事は,理事,評議員又は当該法人の職員を兼ねることができる。

の2つです。

監事は,法人のお目付け役です。
理事,評議員又は当該法人の職員と兼ねては,お目付け役にはなりません。

ということで,正解は,

1 役員の選任は,評議員会の決議を必要とする。

社会福祉法では

(役員又は会計監査人の解任等)
第四十五条の四 役員が次のいずれかに該当するときは、評議員会の決議によって、当該役員を解任することができる。
一 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つたとき。
二 心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。

と規定しています。

評議員会が議決するものは以下の通りです。

評議員会の議決事項
・定款の変更
・理事・監事・会計監査人の選任、解任
・理事・監事の報酬の決定 等


<今日のまとめ>

社会福祉法は,社会福祉法人改革を目的として,平成28年に改正されています。

社会福祉法人制度の改革の内容は以下のとおりです。

<社会福祉法人制度の改革>
(1)経営組織のガバナンスの強化
議決機関としての評議員会を必置(小規模法人について評議員定数の経過措置)、一定規模以上の法人への会計監査人の導入 等
(2)事業運営の透明性の向上
○財務諸表・現況報告書・役員報酬基準等の公表に係る規定の整備 等
(3)財務規律の強化(適正かつ公正な支出管理・いわゆる内部留保の明確化・社会福祉充実残額の社会福祉事業等への計画的な再投資)
○役員報酬基準の作成と公表、役員等関係者への特別の利益供与の禁止 等
○「社会福祉充実残額(再投下財産額)」(純資産の額から事業の継続に必要な財産額)の明確化
○「社会福祉充実残額」を保有する法人に対して、社会福祉事業又は公益事業の新規実施・拡充に係る計画の作成を義務付け 等
(4)地域における公益的な取組を実施する責務
○社会福祉事業及び公益事業を行うに当たって、無料又は低額な料金で福祉サービスを提供することを責務として規定
(5)行政の関与の在り方
○所轄庁による指導監督の機能強化、国・都道府県・市の連携 等

これらは,トピックとして,すべて覚えておきたいです。

今日の問題は,合格基準点が99点となった第30回のものです。
そのため,問題が易しめです。

今後は,知識なしで解ける問題はそれほど多くはないと思われますので,きっちり覚えていくことが大切です。

2019年7月26日金曜日

「福祉サービスの組織と経営」の内容確認


今回から科目は,「福祉サービスの組織と経営」を取り上げます。
この科目は,現行カリキュラムで加わったもので,次のカリキュラムでも同じ名称の科目に引き継がれます。
ただし,内容は大きく異なります。
新しい科目での国家試験は第37回からなので,現時点(2019年7月)では,まだまだ先のことです。
そのうち,少しずつ新カリを意識した出題もされるようになっていくことでしょう。今はそれを意識することはありません。

新しいカリキュラムの内容

教育に含むべき事項

想定される教育内容の例

①福祉ービる組織団体要と役割

1福祉ービ提供する組織

社会福祉施の現状や
・各種法人の特性
・非営利法人,営利法人
・社会福祉法NPO法人社団人,株式
・福祉サービと連携すその他の法人
法人格有しい団(ボランティア団体)等

2福祉ービ沿革と概況

・福祉サービの歴
・社会福祉基構造改革
・社会福祉法制度改革
・公益法人制

組織間連携

・公益的活動
・多機関
・地域連携,域マネジント

②福祉ービ織と運に係礎理論

1組織営にる基礎理論

・組織運営の基礎
・組織におけ意思決定
・問題解決の考と手順
・モチベーシンと組織活性化

2集団力学する基礎理論

・チームアプーチと集力学
チームの機と構

3リーーシに関する基礎理

リーダーシプ,フォロワーシップ
・リーダーの能と役割

③福祉ービ組織の経営と実際

1経営体制

・理事会評議会等の役
 ・経営戦略,業計
・マーケティング





2福祉ービ組織のンプアンスとガバナンス

・社会的ルーの遵  
・説明責任の遂行
・業務管理体内部管理体制
・権限委譲と任のルー

3適切福祉ビスの管理

・品質マネジントシス
PDCASDCA管理サイ
・リスクマネメント体
・権利擁護制苦情解決体
・福祉サービの質と評

情報管理

・個人情報保護法
・公益情報保護法
・情報公開,ブリックレーションズ

5会計理と

財務諸表の解,財務規律の強化
・自,寄金,各種制度基づく報
調達,ファドレイジン
資金運用,利益

④福祉材のメント

1福祉人材の育成

OJTOFF-JTSDS
職能別研修階層別研
・スーパービョン体制
・キャリアパ

2福祉材マメント

・目標管理制
・人事評価シ
・報酬システ

3働きすい環境の整備

・労働三法及労働関係
・育業,介護
・メンタルヘス対
・ハラスメン


赤字の部分が,新しく学ぶ内容です。
ほかの科目からここに組み込まれたものもありますが,今までにみられなかったものもあります。

特に注目すべきなのは,資金調達の部分です。

今まで社会福祉は,国の社会保障財源で行われることが多かったですが,国に頼るのではなく,自分たちで知恵を絞って,資金調達することが必要であることを物語っています。

わが国で言えば,明治時代の国の主な施策では「恤救規則」しかなく,民間の慈善事業家が,慈善事業を展開していました。

米騒動を契機に,社会事業(現在の社会福祉事業)の重要性に国が気付き,関与するようになりますが,それ以前は,知恵を出してお金を集めて事業を実施しました。

まさにそんな時代が,令和の時代に訪れようとしています。

石井十次の岡山孤児院が無制限主義を掲げられたのも石井に賛同するスポンサーがいたからです。

さて,今のカリキュラムの出題基準です。
大項目
中項目
小項目(例示)
1 福祉サービスに係る組織や団体
1)社会福祉法人制度
定義、役割、税制、実際
その他
2)特定非営利活動法人制度
定義、役割、税制、実際
その他
3)その他の組織や団体
医療法人、公益法人、営利法人、市民団体、自治会
その他
2 福祉サービスの組織と経営に係る基礎理論
1)組織に関する基礎理論
 
2)経営に関する基礎理論
 
3)管理運営に関する基礎理論
 
4)集団の力学に関する基礎理論
 
5)リーダーシップに関する基礎理論
 
3 福祉サービス提供組織の経営と実際
1)経営体制
理事会の役割
その他
2)財源
自主財源、寄付金、補助金、介護報酬
その他
3)福祉サービス提供組織のコンプライアンスとガバナンス
 
4)福祉サービス提供組織における人材の養成と確保
社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針
その他
5)福祉サービス提供組織の経営の実際
財務諸表の理解
その他
4 福祉サービスの管理運営の方法と実際
1)適切なサービス提供体制の確保
スーパービジョン体制
サービスマネジメント
チームアプローチ
苦情対応、リスクマネジメントの方法
その他
2)働きやすい労働環境の整備
キャリアパス
OJTOFF-JT
育児・介護休業
メンタルヘルス対策
その他
3)福祉サービスの管理運営の実際
 



この科目を苦手とする人も多いと思います。
しかし,新しいカリキュラムから比べるとかなりシンプルだと思いませんか?

この内容による国試は10回行われてきました。
どんなことが具体的に問われるのかが,明確になっています。

そこに焦点を合わせると,点数が取れる科目となります。

参考書を見るといろいろな人の名前が出てきて覚えるのが大変そうに思えるかもしれませんが,名前を覚えなければ解けない問題は皆無です。

問題の厳密性を高めるために,提唱者を明記しているだけです。

次回から具体的に焦点を絞るべきポイントを紹介していきたいと思います。

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