社会福祉法人は,社会福祉法に規定される特別法人です。
社会福祉法は134条ありますが,社会福祉法人に関する規定は,第22~59条です。
約3割を占めています。
社会福祉事業に関する規定は第60~79条です。
この2つを合わせると社会福祉法の半分を占めていることになります。
社会福祉法は,2000年(平成12年)に制定されたものです。
社会福祉法人及び社会福祉事業の分量が多いのは,この法律は1951年(昭和26年)の「社会福祉事業法」を改称して作られたことによります。
社会福祉法の背景や目的等は別の科目で学ぶとして,この科目では,社会福祉法人の具体的内容が問われます。
勉強を始める前に社会福祉法の社会福祉法人に関する部分は目を通しておきましょう。
最新の社会福祉法(e-gov)
↓ ↓
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=326AC0000000045#1374
それでは,今日の問題です。
第29回・問題119 社会福祉法人に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 第二種社会福祉事業の経営主体は,社会福祉法人に限られる。
2 社会福祉法人は,社会福祉事業の主たる担い手である。
3 社会福祉法人は,他の社会福祉法人と合併することはできない。
4 社会福祉法人の非営利性とは,収益を出してはならないという意味である。
5 社会福祉法人には,株式会社の法人税率と同じ税率が適用される。
近年の国試の問題の特徴は,「最も適切なもの」あるいは「適切なもの」を選びなさいという出題が多くなってきていることです。
以前は,こういった出題の多くは,事例問題に多く,一般的な一問一答式の問題にはあまり見られなかったものです。
多くは「正しいもの」あるいは「誤っているもの」を選びなさい,というものです。
問題の厳密性を高めること意味合いなのでしょう。
この問題の正解は,
2 社会福祉法人は,社会福祉事業の主たる担い手である。
です。
社会福祉法では,
(経営の原則等)
第二十四条 社会福祉法人は、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため、自主的にその経営基盤の強化を図るとともに、その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図らなければならない。
2 社会福祉法人は、社会福祉事業及び第二十六条第一項に規定する公益事業を行うに当たつては、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない。
と規定しています。
二項は平成28年改正で加わったものです。
社会福祉法人は,社会福祉事業を行うことを目的とした法人です。
社会福祉事業には,2種類あります。
第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業です。
第一種社会福祉事業は,国、地方公共団体又は社会福祉法人が経営することを原則としています。
第二種社会福祉事業は,実施主体は限定されていません。
これらで,社会福祉事業を主としているものは,社会福祉法人しかないことになります。
この問題が「最も適切なもの」として出題したのは,
4 社会福祉法人の非営利性とは,収益を出してはならないという意味である。
があるからです。
この選択肢のみが法制度に規定された内容ではありません。
そのために,「最も適切なもの」としての出題が必要だったと思います。
このように出題しないと,「あるコンサルタントは『社会福祉法人,収益を出してはなりません』と言っているので正解ではないのか」と考える人が出てきますし,不適切問題として指摘する人も出てくるかもしれません。
しかし一般的には,「非営利」という意味は,収益を分配してはならないという意味だとされています。
株式会社は,収益を「配当」という形で株主に還元します。そのため「営利法人」と言われます。
社会福祉法人には,収益の分配が認められていません。これが「非営利」という意味です。
<今日の一言>
社会福祉法では,
第四十八条 社会福祉法人は、他の社会福祉法人と合併することができる。
と規定しています。
参考書には,社会福祉法人は、社会福祉法人意外と合併することができない。
と記載していることでしょう。
法制度は読みにくいので,参考書を発行する会社が読み替えてくれているのです。
法律は読みにくいですが,法制度の問題に強くなるためには,法に慣れることは必要です。
何度も受験している人は,新しい発見をすることもできるでしょう。
最新の記事
振り返るのは辛いことかもしれないが・・・
国家試験で不合格になると,とてもつらい気持ちになります。 もう二度と受験することはないと思う人もいるでしょう。 そこまでは思わずとも,モチベーションを保ち続けることは簡単なことではありません。 しかし,また受験するなら,なるべく早い時点で自分が受験した問題を振り返ってみることが大...
過去一週間でよく読まれている記事
-
受験された方はお疲れさまでした。 新しいカリキュラムによる問題は,単純な知識を問うタクソノミーⅠ型の問題を減らし,知識を使って考えることで答えるタクソノミーⅡ型,Ⅲ型が増えます。 精神保健福祉士は,長文事例を維持することで,タクソノミーⅡ型,Ⅲ型の問題としたのに対し,社会福祉士は...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
第37回国試が終わり,第38回国試に向けてのカウントダウンが始まりました。 受験した人は,ボーダーラインが気になることでしょう。 ネットでは,おそらくさまざまな推測が出ていると思います。 しかし,問題の難易度のみでボーダーラインを決めているのかも不明です。 そして,その難易度でさ...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
ソーシャルワークにおけるネットワーキングとは,福祉課題を解決するために様々な機関,住民たちが連携することをいいます。 誰かが「それは良いことだ,やろう」と思っても,人を動かすのは,決して簡単なことではありません。 社会福祉士が連携の専門家だとしたら,ネットワーキングは,社会福祉士...
-
システム理論は,「人と環境」を一体のものとしてとらえます。 それをさらにすすめたと言えるのが,「生活モデル」です。 エコロジカルアプローチを提唱したジャーメインとギッターマンが,エコロジカル(生態学)の視点をソーシャルワークに導入したものです。 生活モデルでは,クライエントの...
-
今日は,令和元年度の改正カリキュラムによる最初の国家試験の合格発表です。 時事性の高い話題は情報が古くなるのが早いので,この学習部屋では極力取り扱わないようにしています。 しかし,合格発表だけは別です。 自己採点してもしなくてもこの日になりますが,ボーダーラインがよくわからないだ...
-
第37回の合格発表が終わりました。 合格された方にはお祝い申し上げます。 合格基準点(いわゆるボーダーライン)が62点になったことにびっくりされた方も多いことでしょう。 これによって判明したことは,問題が難しくなろうと易しくなろうと,まったく関係ないことです。 覚えるべきものを確...