アセスメントの過程では,情報を収集し,その情報から問題点を明らかにすることまでを含みます。
アセスメントするときには,図などで視覚化すると問題点が見えやすくなります。
それでは今日の問題です。
第29回・問題104 ソーシャルワークにおけるアセスメントに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 コミュニティはアセスメントの対象に含まれない。
2 ソシオグラムは,クライエントと複数世代の家族メンバーとの関係性を表す。
3 パーソナリティに焦点化して,クライエントに関する情報を収集する。
4 プライバシー保護のため,クライエント以外の者から情報収集は行わない。
5 支援プロセスの進行と共に展開する動的なプロセスである。
この問題は,難易度が極めて高いものだと思います。
知識だけではなく,知恵が求められます。
考えることを訓練していない人は,おそらく正解することが難しいのではないかと思います。
正解は,選択肢5です。
5 支援プロセスの進行と共に展開する動的なプロセスである。
動的なプロセスというのが,理解しにくいと思います。
わかりにくいときは,逆の意味の言葉を考えることもよいと思います。
動的 ⇔ 静的
静的は,変わらないという意味だととらえられます。
アセスメントは,ワーカーとクライエントの協働で行われるものです。
静的だとは思えません。
具体的には,この文章は,アセスメントは,援助過程で常に行われるものである,という意味です。
相談機関にいると,個別面談の場面がアセスメントの機会だということができますが,生活場面では,クライエントと話すことがなくても,ほかの援助者から情報を収集することもあるでしょう。廊下ですれ違う場面でのあいさつからアセスメントすることもあるでしょう。
ほかの選択肢も見てみましょう。
1 コミュニティはアセスメントの対象に含まれない。
コミュニティは,クライエントにとっての環境です。
環境を視野に入れなければ,適切な援助はできません。
2 ソシオグラムは,クライエントと複数世代の家族メンバーとの関係性を表す。
ソシオグラムは,人間関係を図示するものです。
刑事ドラマなどでは,ホワイトボードに被害者を中心として,被疑者を周りに配置し,→ でその関係を示したものを見ることができます。これがソシオグラムです。
クライエントと複数世代の家族メンバーとの関係性を表すのは,ジェノグラムです。
3 パーソナリティに焦点化して,クライエントに関する情報を収集する。
パーソナリティの面も重要ですが,環境も重要です。人は環境との交互作用を行っているからです。
4 プライバシー保護のため,クライエント以外の者から情報収集は行わない。
プライバシー保護は重要です。
しかし,必要であれば適切な手続きを行って,クライエント以外の者から情報収集を行います。
<今日の一言>
国試は,受験生に考えて答えてもらうように作られます。
知識があることは必要条件ですが,必要十分条件ではありません。
勉強しているときは,知らないこと,理解しにくいことがあれば,調べることができます。
まじめな人は,一つひとつをつぶしながら,先に進んでいくことでしょう。
しかし国家試験では,知らないことがあっても調べることができません。
そうすると,ペースがくるって,問題文を冷静に読むことができなくなります。
そうならないためには,勉強しているときは,すぐ調べるのではなく,おおよそこういったことの意味ではないか,と自分なりに予測するようにしましょう。
そのあとで,調べてみて,そんなに違わなければそれでよし。見当違いであったとしたら,その時はしっかり正しく覚えるようにしましょう。
これは極めて重要な勉強方法です。
最新の記事
障害者福祉の歴史
今回は,わが国の障害者福祉の歴史を取り上げます。 わが国の障害者福祉の始まりは,1949(昭和24)年の身体障害者福祉法だと言えるでしょう。 それ以前は,救貧制度の対象でした。 障害者の入所施設の始まりは,1960(昭和35)年の精神薄弱者福祉法(現在の知的障害者福祉法)です...
過去一週間でよく読まれている記事
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
ソーシャルワークは,外国生まれです。 これから社会福祉士を目指そうと思う人は,カタカナの言葉が多いので,覚えるのがとても大変だと思うでしょう。 しかし,それらをうまく使いこなすことができれば,とてもかっこよいと思いませんか? ただし,かっこよいから使うのではありません。専門用語は...
-
19世紀は,各国で産業革命が起こります。 この産業革命とは,工業化を意味しています。 大量の労働力を必要としましたが,現在と異なり,労働者を保護するような施策はほとんど行われることはありませんでした。 そこに風穴を開けたのがブース,ラウントリーらによって行われた貧困調査です。 こ...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
バートレット は, ソーシャルワーク実践の共通基盤 として「 価値 」「 知識 」「 介入(技術) 」を挙げています。 ソーシャルワーカーなら,フィールドが違えど,共通してもっているもの,という意味です。 3つの中のうち「価値」は,「ソーシャルワークの基盤と専門職」で中心的に学ぶ...
-
ソーシャルワークにおけるネットワーキングとは,福祉課題を解決するために様々な機関,住民たちが連携することをいいます。 誰かが「それは良いことだ,やろう」と思っても,人を動かすのは,決して簡単なことではありません。 社会福祉士が連携の専門家だとしたら,ネットワーキングは,社会福祉士...