2019年7月18日木曜日

相談援助の過程~事前評価(アセスメント)~その2

アセスメントの過程では,情報を収集し,その情報から問題点を明らかにすることまでを含みます。

アセスメントするときには,図などで視覚化すると問題点が見えやすくなります。

それでは今日の問題です。

第29回・問題104 ソーシャルワークにおけるアセスメントに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 コミュニティはアセスメントの対象に含まれない。
2 ソシオグラムは,クライエントと複数世代の家族メンバーとの関係性を表す。
3 パーソナリティに焦点化して,クライエントに関する情報を収集する。
4 プライバシー保護のため,クライエント以外の者から情報収集は行わない。
5 支援プロセスの進行と共に展開する動的なプロセスである。

この問題は,難易度が極めて高いものだと思います。

知識だけではなく,知恵が求められます。
考えることを訓練していない人は,おそらく正解することが難しいのではないかと思います。

正解は,選択肢5です。

5 支援プロセスの進行と共に展開する動的なプロセスである。

動的なプロセスというのが,理解しにくいと思います。

わかりにくいときは,逆の意味の言葉を考えることもよいと思います。
動的 ⇔ 静的

静的は,変わらないという意味だととらえられます。

アセスメントは,ワーカーとクライエントの協働で行われるものです。

静的だとは思えません。

具体的には,この文章は,アセスメントは,援助過程で常に行われるものである,という意味です。

相談機関にいると,個別面談の場面がアセスメントの機会だということができますが,生活場面では,クライエントと話すことがなくても,ほかの援助者から情報を収集することもあるでしょう。廊下ですれ違う場面でのあいさつからアセスメントすることもあるでしょう。

ほかの選択肢も見てみましょう。


1 コミュニティはアセスメントの対象に含まれない。

コミュニティは,クライエントにとっての環境です。
環境を視野に入れなければ,適切な援助はできません。


2 ソシオグラムは,クライエントと複数世代の家族メンバーとの関係性を表す。
ソシオグラムは,人間関係を図示するものです。

刑事ドラマなどでは,ホワイトボードに被害者を中心として,被疑者を周りに配置し,→ でその関係を示したものを見ることができます。これがソシオグラムです。

クライエントと複数世代の家族メンバーとの関係性を表すのは,ジェノグラムです。


3 パーソナリティに焦点化して,クライエントに関する情報を収集する。

パーソナリティの面も重要ですが,環境も重要です。人は環境との交互作用を行っているからです。


4 プライバシー保護のため,クライエント以外の者から情報収集は行わない。
プライバシー保護は重要です。

しかし,必要であれば適切な手続きを行って,クライエント以外の者から情報収集を行います。


<今日の一言>

国試は,受験生に考えて答えてもらうように作られます。

知識があることは必要条件ですが,必要十分条件ではありません。

勉強しているときは,知らないこと,理解しにくいことがあれば,調べることができます。
まじめな人は,一つひとつをつぶしながら,先に進んでいくことでしょう。
しかし国家試験では,知らないことがあっても調べることができません。

そうすると,ペースがくるって,問題文を冷静に読むことができなくなります。
そうならないためには,勉強しているときは,すぐ調べるのではなく,おおよそこういったことの意味ではないか,と自分なりに予測するようにしましょう。

そのあとで,調べてみて,そんなに違わなければそれでよし。見当違いであったとしたら,その時はしっかり正しく覚えるようにしましょう。

これは極めて重要な勉強方法です。

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