2020年8月31日月曜日

ソーシャルワーク系の事例問題のポイント

事例問題のうち,ソーシャルワーク系の問題は,知識なしでも解けます。

そのため,ミスは命取りになりかねません。
絶対に間違ってはいけません。

多くの問題は,インテーク時点です。

既に事前情報があったとしても,ソーシャルワーカーとしての基本姿勢は話を聞くことです。

それでは,今日の問題です。


第29回・問題95 事例を読んで,この場面におけるB介護支援専門員(社会福祉士)によるCさんへの発言として,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Cさん(82歳,女性)は,自宅で夫(85歳)と二人暮らしをしている。Cさんは認知症を患っているが,ある程度の判断能力はある。これまでCさんの身の回りの世話は夫が行ってきたが,夫が持病を悪化させ,半年ほど入院することになった。夫は,Cさんを近隣の施設へ入所させる意向がある。Cさん夫婦には息子がいるが,遠方に住んでいるため,今のままではCさんの身の回りの世話をすることはできない。息子は,Cさんを自分のところに引き取り,同居することを望んでいる。そこで,Cさんと話し合うことになった。

1 「Cさんは今後の暮らしをどのようになさりたいですか」

2 「施設に入所してはいかがでしょうか」

3 「息子さんと同居することが良いと思います」

4 「Cさんが一人で決めるべきです」

5 「私(B介護支援専門員)が決めます」


悩むことなく,答えは,

1 「Cさんは今後の暮らしをどのようになさりたいですか」


これしかありません。


<今日の一言>


今日の問題は,答えを悩むことなく選ぶことができるでしょう。


そういった意味では,問題作りが下手だと言えるのかもしれません。


しかし,今まで何度も述べてきたように,事例問題は答えがあいまいになっては,不適切問題になってしまうので,問題文の中に答えにつながる情報を必ず組みこんでいます。


今日の問題の場合は,


そこで,Cさんと話し合うことになった。


これがポイントです。正解以外の選択肢では,話し合いになりません。


2020年8月30日日曜日

ソーシャルワークの統合化とは

ソーシャルワークは,


ケースワーク

グループワーク

コミュニティワーク(コミュニティオーガニゼーション)


とそれぞれの専門領域で発展していきました。


ソーシャルワークの統合化とは,それらのソーシャルワークとしての共通基盤を明確にすることを意味しています。


そのきっかけとなったのが,1929年のミルフォード会議報告書です。


どの領域にも共通するものとして「ジェネリック・ソーシャル・ケースワーク」が提唱されています。ジェネリックとは「一般的な」といった意味合いです。


それでは今日の問題です。


第29回・問題94 アメリカにおけるソーシャルワークの統合化に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 統合化の背景には,専門分化されたソーシャルワーク実践が多様化する社会問題に対応できていたことがある。

2 統合化とは,ケースマネジメントとカウンセリングに共通する新しい知識や方法を明らかにする動きのことである。

3 ミルフォード会議の報告書(1929年)において,「ソーシャルケースワーク」という概念が初めて示され,統合化への先駆けとなった。

4 ジェネラリスト・アプローチは,ソーシャルワークの統合化の一形態である。

5 精神分析学は,ソーシャルワークの統合化に大きな影響を与えた。


変な問題に感じませんか?


その理由は,この文章です。


1 統合化の背景には,専門分化されたソーシャルワーク実践が多様化する社会問題に対応できていたことがある。


この文章に違和感があるのは,もともとの文章を変えたものだからです。


もともとの文章は,


1 統合化の背景には,専門分化されたソーシャルワーク実践が多様化する社会問題に対応できていなかったことがある。


だと考えられます。無理に変えたことでつじつまが合わなくなっています。


それではこれ以外の選択肢の解説です。


2 統合化とは,ケースマネジメントとカウンセリングに共通する新しい知識や方法を明らかにする動きのことである。


統合化は,前説のように,「ケースワーク」「グループワーク」「コミュニティワーク」に共通するものを明らかにするものです。


3 ミルフォード会議の報告書(1929年)において,「ソーシャルケースワーク」という概念が初めて示され,統合化への先駆けとなった。


ミルフォード会議報告書で示されたのは「ジェネリック・ソーシャル・ケースワーク」です。


4 ジェネラリスト・アプローチは,ソーシャルワークの統合化の一形態である。


これが正解です。

現代の福祉ニーズは,複雑化しています。一領域の方法論では,対応が難しくなっています。


例えば,8050問題などがそれにあたります。

ジェネラリスト・アプローチは,いかにもそういった問題に対応できるアプローチ法です。


5 精神分析学は,ソーシャルワークの統合化に大きな影響を与えた。


精神分析学が大きな影響を与えたのは,ケースワーク,とりわけ診断主義ケースワークです。

この流れの先には,心理社会的アプローチがあります。

クライエントとワーカーとの間のコミュニケーションでアプローチしていくのが特徴です。


診断主義ケースワークと心理社会的アプローチの違いは,診断主義ケースワークは,クライエントのトラウマとなったものを治療していくのに対し,心理社会的アプローチでは,「状況の中の人」という概念を取り入れていることです。


ちなみにソーシャルワークの統合化に大きな影響を与えたのは,システム理論です。

2020年8月29日土曜日

慈善組織協会(COS)の活動について

慈善組織協会(COS)の活動は,ケースワーク(個別援助技術)の源流の一つになったものです。

それでは今日の問題です。


第29回・問題93 慈善組織協会(COS)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 COSは,労働者や子どもの教育文化活動,社会調査とそれに基づく社会改良を目的に設立された。

2 COSの救済は,共助の考えに基づき,社会資源を活用して人と人が支え合う支援を行った。

3 COSは,把握した全ての貧困者を救済の価値のある貧困者として救済活動を行った。

4 COSは,友愛訪問員の広い知識と社会的訓練によって友愛訪問活動の科学化を追求した。

5 COSの友愛訪問活動の実践を基に,コミュニティワーカーに共通する知識,方法が確立された。


COSもセツルメントも出題ポイントは明確です。

参考書などに書かれているものをしっかり覚えておけば必ず正解できることでしょう。


それでは解説です。


1 COSは,労働者や子どもの教育文化活動,社会調査とそれに基づく社会改良を目的に設立された。


COSの設立目的は,救済者を登録して,不正受給や救済の重複を避けるものです。

労働者や子どもの教育文化活動,社会調査とそれに基づく社会改良を目的に設立されたのは,セツルメントです。


2 COSの救済は,共助の考えに基づき,社会資源を活用して人と人が支え合う支援を行った。


COSは自助の考えに基づいて支援を行いました。


3 COSは,把握した全ての貧困者を救済の価値のある貧困者として救済活動を行った。


COSは選択肢2のように,自助の考えに基づいています。

そのため,貧困者を労働意欲によって「救済の価値のある貧民」と「救済の価値のない貧民」に分けて,前者を救済の対象としました。


4 COSは,友愛訪問員の広い知識と社会的訓練によって友愛訪問活動の科学化を追求した。


これが正解です。

最初は無給のボランティアが友愛訪問活動を担いましたが,そのうち,専門職が担っていきました。


5 COSの友愛訪問活動の実践を基に,コミュニティワーカーに共通する知識,方法が確立された。

COSの活動から生まれたのは,ケースワークです。

コミュニティワークの源流となったのは,セツルメントです。


2020年8月28日金曜日

ソーシャルワーク専門職のグローバル定義について

 ソーシャルワークの定義は,2000年に採択されたものを用いてきましたが,2014年に新しく,「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」が採択されています。

 

28回国試以降毎年出されています。

 

ソーシャルワーク専門職のグローバル定義

 ソーシャルワークは,社会変革と社会開発,社会的結束,および人々のエンパワメントと解放を促進する,実践に基づいた専門職であり学問である。社会正義,人権,集団的責任,および多様性尊重の諸原理は,ソーシャルワークの中核をなす。ソーシャルワークの理論,社会科学,人文学,および地域・民族固有の知を基盤として,ソーシャルワークは,生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう,人々やさまざまな構造に働きかける。

 この定義は,各国および世界の各地域で展開してもよい。

 

グローバル定義を受けて,2020年6月に日本社会福祉士会が新しい倫理綱領を採択しています。

出題基準には,日本社会福祉士会倫理綱領は含まれていませんが,一度はこれも目を通しておきたいです。

 

それでは今日の問題です。

 

29回・問題92 「ソーシャルワークのグローバル定義」(2014年)におけるソーシャルワークの中核をなす原理として,正しいものを1つ選びなさい。

1 個人的正義

2 集団主義

3 自民族中心主義

4 自己責任

5 多様性尊重 

(注) 「ソーシャルワークのグローバル定義」とは,2014年7月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)の総会・合同会議で採択されたものを指す。

 

正解は,選択肢5の「多様性尊重」です。

 

グローバル定義を知らずとも正解できそうな問題です。

まだグローバル定義が浸透していなかったからでしょう。

 

この後の年から問題がだんだん難しくなってきています。

2020年8月27日木曜日

社会福祉士及び介護福祉士法について

今回から科目は「相談援助の基盤と専門職」に変わります。

 

社会福祉士は「社会福祉士及び介護福祉士法」に定められる国家資格です。

 

一度は必ず目を通しておきたいです。

 

2020年8月時点で,同法の最も新しい改正は,社会福祉士に関する欠格条項の変更です。

 

改正前

被後見人と被保佐人は社会福祉士及び介護福祉士になることができない

↓            ↓

改正後

心身の故障により社会福祉士又は介護福祉士の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの

 

それでは今日の問題です。

 

29回・問題91 社会福祉士及び介護福祉士法に規定されている社会福祉士に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会福祉士の名称使用は,登録後でなければならない。

2 業務を行うに当たっては,クライエントの主治医の指導を受けなければならない。

3 専門性の維持・向上を目的として,資格更新研修を受けなければならない。

4 所属する勤務先の立場を優先して業務を行わなければならない。

5 資質向上の責務として,相談援助に関わる後継者の教育指導に努めなければならない。

 

社会福祉士及び介護福祉士法に関する問題は,出題されてもオーソドックスな内容なので,確実に得点しなければなりません。

 

この問題もそうです。

 

正解は,選択肢1です。

 

1 社会福祉士の名称使用は,登録後でなければならない。

 

合格しても,登録されるまで社会福祉士を名乗ると名称詐称となるので注意が必要です。

 

社会人の中には,雇用保険の専門実践教育訓練給付制度を利用されている方もいることでしょう。

 

学校卒業後,1年以内に目的となる資格を取得するとさらに2割が給付されますが,社会福祉士の場合,合格通知が届いたことをもってOKなのか,登録証が届いたことをもってOKなのか,地域のハローワークによって見解が異なるようです。

 

法律上は,登録されて資格取得になりますが,対象となる方はハローワークに聞いてみると良いかもしれません。早く給付された方がよいですものね。

 

それではほかの選択肢を確認します。

 

2 業務を行うに当たっては,クライエントの主治医の指導を受けなければならない。

 

クライエントの主治医の指導を受けなければならないと規定されているのは,精神保健福祉士です。

 

介護福祉士の場合は,以下のように規定されています。

診療の補助として、医師の指示の下に、特定行為(喀痰吸引等のうち当該認定特定行為業務従事者が修了した次条第二項に規定する喀痰吸引等研修の課程に応じて厚生労働省令で定める行為をいう。以下同じ。)を行うことを業とすることができる。

 

という規定があります。社会福祉士には,指示も指導もなく,連携を図ると規定されているのにとどまります。

 

3 専門性の維持・向上を目的として,資格更新研修を受けなければならない。

 

社会福祉士も介護福祉士も精神保健福祉士も資格更新制度はありません。

 

4 所属する勤務先の立場を優先して業務を行わなければならない。

 

社会福祉士は,常にその者の立場に立って,誠実にその業務を行わなければならないという誠実義務があります。

 

5 資質向上の責務として,相談援助に関わる後継者の教育指導に努めなければならない。

 

資質向上の責務は「社会福祉を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため,相談援助等に関する知識及び技能の向上に努めなければならない」です。

 

後継者の教育指導についての責務の法規定はありません。

2020年8月26日水曜日

KJ法のすすめ方

観察やインタビュー,あるいは日記や議事録など質的調査で得られた質的データは,貴重なデータの集まりです。


社会福祉士の国家試験では,このデータの分析方法として,KJ法とグラウンデッドセオリーアプローチ(GTA)が出題されます。


どちらもよく似た手法で,生まれたのも1960年代後半というところも似ています。

違うのは,KJ法は日本で生まれ,GTAはアメリカで生まれたことです。


そのため,GTAの方が難しい用語が用いられます。

しかし,どちらの手法も似ていることは頭に入れておきましょう。


それでは,今日の問題です。


第29回・問題90 Q市の社会福祉協議会では,住民座談会で地域の福祉ニーズを把握するため,参加者にブレインストーミング形式で話合いを行ってもらい,そこで得られた意見についてKJ法を用いて整理することにした。

 次のうち,その際の参加者によるKJ法の進め方として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 KJ法に必要な器具として,話合いにおける発言を一字一句正確に記録するためのビデオカメラとICレコーダーを購入した。

2 意見を付箋紙に記録する際,ソーシャルワークの専門用語を用いて表現した。

3 意見が記録された付箋紙をグループ編成する際,Q市社協の重点目標に即して大まかにグループ分けした上で,徐々に小分けにしていった。

4 付箋紙をグループ編成する際,1枚だけで残るものがないように,まんべんなく全ての付箋紙をいずれかのグループに含めた。

5 付箋紙のグループ編成を何段階か行った後,話合いの内容に基づく複数のユニットができたので,それらを模造紙上に再配置していった。


KJ法を用いたことがある人なら,とても簡単な問題です。

そうでない人にとっては,少し難しいかもしれません。


しかし,面白い出題だと思います。共通科目の「地域福祉の理論と方法」で出題されても良いような問題ですね。


それでは解説です。


1 KJ法に必要な器具として,話合いにおける発言を一字一句正確に記録するためのビデオカメラとICレコーダーを購入した。


議会などの議事録は,一字一句正確に記録する必要があります。そのために,速記者が配置されます。ただし今も速記者が配置されているかは知りません。


KJ法の目的は,得られたデータから新しいアイディアなどを見つけ出すことにあります。


一字一句を正確に記録する必要はありません。


2 意見を付箋紙に記録する際,ソーシャルワークの専門用語を用いて表現した。


ソーシャルワークの専門用語を用いて表現してもまったく不適切だということはありません。

しかしそれだと,もともと話していたことを正確に表現しないこともあります。


得られたデータを適切に表現することが大切です。


3 意見が記録された付箋紙をグループ編成する際,Q市社協の重点目標に即して大まかにグループ分けした上で,徐々に小分けにしていった。


KJ法もGTAも分析軸を持たないで,データを集約していくのが特徴です。

先に分析軸があると,そこから抜け出せずに新しい発想ができなくなってしまうからでしょう。


GTAでは,分析軸を持たずにまとめられたものをコード化することを「オープンコーディング」と呼びます。

「さあ,ここから始まるよ」という真っ白な気持ちでコード化することからオープンコーディングと名付けられています。


GTAでは,このあとに,軸足コーディングと呼ばれるサブカテゴリーをまとめてコード化する作業を行います。さらにデータ収集とコード化を繰り返していきます。そして,どう頑張ってもこれ以上は何も出てこない状態までになります。この状態を「理論的飽和」と呼びます。

GTAは,オープンコーディング,軸足コーティング,理論的飽和という用語を覚えておけばばっちりです。


4 付箋紙をグループ編成する際,1枚だけで残るものがないように,まんべんなく全ての付箋紙をいずれかのグループに含めた。


KJ法は,グループ化できないものがあった場合は,その一枚で一つの島をつくります。


GTAは,グループ化できないものがあった場合は,ムリに使わなくても良いとされます。


ここが日本生まれのKJ法と北米生まれのGTAの違いです。


5 付箋紙のグループ編成を何段階か行った後,話合いの内容に基づく複数のユニットができたので,それらを模造紙上に再配置していった。


これが正解です。

個別のデータでは気づかなかったものを結びつけることで,新しいアイディアや発想が生まれます。


例えば,買い物で困っているという意見と余剰な幼稚園バスという情報を結び付けて,日中そのバスを使って,買い物の配達サービスを行うといった発想です。

実際には,様々な法規制があるので簡単には進まないかもしれませんが,そこでいろいろ活動を行うことで新しい何かが生まれてくる可能性があります。


ブレインストーミングの原則は,多くの意見を出し合い,ほかの人の意見は批判しないという姿勢です。


そうやって出てきた意見は,大切に扱いたいものです。

2020年8月25日火曜日

事例研究法について

今回は,事例研究法を取り上げます。

事例研究法は,これまでほとんど出題されてませんでしたが,次のカリキュラムの中に含まれるので,しっかり押さえておきたいです。

事例研究法は,文字通り,事例を分析することで,適切な対応法などを見つけ出したりするものです。

それでは今日の問題です。


第29回・問題89 事例研究法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 観察対象となる個体が示す値を集合した,集団の分布に関心がある。

2 研究対象は,質的データにあり,量的データは対象としない。

3 事例の置かれた社会的文脈や個別の局面,状況の詳細な理解を目的とする。

4 手紙や日記といった私的文書は,収集対象とはならない。

5 探索的目的に有効であるが,説明的目的には有効ではない。


とんちのような問題です。


知識をベースにして,知恵を使って考えることで答えが見いだせるものです。

とにかく落ち着いて読むことが求められます。


この問題の正解は,選択肢3です。

3 事例の置かれた社会的文脈や個別の局面,状況の詳細な理解を目的とする。


これができるためには,ソーシャルワーク場面をしっかり覚えておくことが必要です。

どんな声掛けをしたのか,クライエントはどんな表情を見せていたのか,などを分析します。


適切な社会資源を提示するにしても,タイミングがあります。


そういったものに気づき,よりよい援助に結び付けることが事例研究の目的です。

なお,事例研究法は,質的研究に位置づけられるものです。


1 観察対象となる個体が示す値を集合した,集団の分布に関心がある。


事例研究は,個を深めていきます。もちろん集団援助技術(グループワーク)も対象になりますが,集合ではなく,個にスポットを当てて,深めていきます。

グループワークの事例研究は,各クライエントへのかかわりを振り返るので,とても高度なものとなるでしょう。


2 研究対象は,質的データにあり,量的データは対象としない。


量的データも対象となります。

例えば,相談援助場面で,面接の回数と会話が成り立った回数などを比較検討してみるといったものもあるでしょう。

適切なイメージがしにくい設問ですが,日本語的に消去できることでしょう。


4 手紙や日記といった私的文書は,収集対象とはならない。


手紙や日記を分析することをドキュメント分析といいます。自ら記録したものは,観察やインタビューとは異なる別の角度から分析することができるでしょう。


5 探索的目的に有効であるが,説明的目的には有効ではない。


探索的目的,説明的目的とはどのようなものかはよくわからなくても,これも日本語的に消去できるでしょう。

探索的というのは,新しいかかわり方を見つけ出すことなど,説明的というのは,既にある理論を使って解析することなどを指していると思います。

説明的の例としては,事例をバイステックの7原則の視点で分析してみる,といったものが考えられるでしょう。


<今日の一言>

今日のような問題は,知識だけでは解けません。

落ち着いて,知恵を使って考えながら答えを考えていくタイプの問題です。

国家試験は,社会福祉士が目指すべき姿を追い求めて出題します。

知識があっても知恵がない社会福祉士は,現場では必要とされません。

こういった問題をくぐりぬけて,社会で役立つ社会福祉士になりましょう。

2020年8月24日月曜日

クロス集計表の作り方

  

クロス集計表とは,縦軸と横軸でクロスする表でデータを集計したものです。

 

アンケートなどで得られたデータをまとめるときに用います。

 

例えば,「あなたは旅行が好きですか?」という質問に対するクロス集計です。

 

調べたいのは,どの年代が旅行好きの人が多いかです。

表頭

表側

年齢

はい

いいえ

どちら

でもない

合計

2029

25

12

5

42

59.5%

28.6%

11.9%

3039

30

7

3

40

75.0%

17.5%

7.5%

4049

42

12

15

69

60.9%

17.4%

21.7%

5059

23

45

3

71

32.4%

63.4%

4.2%

60

32

32

12

76

42.1%

42.1%

15.8%


横列のパーセントは,行パーセント

縦列のパーセントは,列パーセント

「年齢」の部分は,表側頭

 

といいます。

 

横と縦の呼び方は,エクセルと同じですね。

 

調査の目的の「どの年代が旅行好きの人が多いか」は,この表をざっと見た感じでは,3039歳が最も多そうに見えます。

 

しかし,実際にはそうではないかもしれないので,χ(かい)二乗検定といった方法を用いて調べなければなりません。

 

それでは,今日の問題です。

 

29回・問題88 量的調査におけるデータの集計方法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 クロス集計表において,セルの度数の比が全ての行で等しい場合,そのクロス集計表の2変数間には関連がない。

2 クロス集計表において,2変数間の関連をみる場合,行パーセント,列パーセントのどちらを示しても,得られる情報に変わりはない。

3 クロス集計表では,2変数間の関連をみることができるが,3変数以上の関連についてみることはできない。

4 度数分布表における相対度数とは,度数を合計した値を各カテゴリーの値で割って算出したものである。

5 連続変数では,値が連続的に変化するため,度数分布表を作成することができない。

 

この問題は,

否定形が4つ

肯定形が1つ

の問題です。

 

こういったばらつきのあるものは,ばらついたものの中に答えがあることが多い傾向にありますが,この問題はそうはなっていません。

 

ちゃんと問題文を読まなければ答えられない問題ですね。手抜きはできません。

 

まずは,唯一の肯定形の選択肢です。

4 度数分布表における相対度数とは,度数を合計した値を各カテゴリーの値で割って算出したものである。

 

「相対度数」という言葉で焦ってはいけません。

簡単に言えば割合です。

 

落ち着いて読めば,「度数を合計した値を各カテゴリーの値で割って」ではなく,「各カテゴリーの値を度数を合計した値で割って」です。

 

上の表で言えば


60

32

32

12

76

42.1%

42.1%

15.8%


下のパーセントは,3276で割ったものとなっています。

合計した値を度数で割ると,2.375というおかしな数字が出てきてしまいます。

 

それでは解説です。

 

1 クロス集計表において,セルの度数の比が全ての行で等しい場合,そのクロス集計表の2変数間には関連がない。

 

これが正解です。

上の表ではいろいろな数値が得られましたが,すべて同じ数値でそろった場合は,「あなたは旅行が好きですか?」という仮説は成り立たないことになります。

 

2 クロス集計表において,2変数間の関連をみる場合,行パーセント,列パーセントのどちらを示しても,得られる情報に変わりはない。

 

上の費用では,行パーセントは,答えの割合を示しています。

列パーセントは,年代同士で比較しています。

 

見ているものが異なります。

 

3 クロス集計表では,2変数間の関連をみることができるが,3変数以上の関連についてみることはできない。

 

上の表では2変数しかありませんが,3変数以上の関連もみることができます。

 

例えば,性別,旅行先などです。

 

5 連続変数では,値が連続的に変化するため,度数分布表を作成することができない。

 

上の表では,名義尺度の度数を表にまとめています。

 

値が連続的に変化する間隔尺度や比例尺度では,データを区切って度数を表にまとめます。

 

例えば,間隔尺度では,09℃,1019℃,2029℃,3039℃といった感じです。

比例尺度では,6069点,7079点,8089点,9099点といった感じです。

 

このように区切ることをカテゴリー化といいます。

 

名義尺度と順序尺度は,実はもともとカテゴリー化されているデータです。

 

上の表では,10歳ごとに区切っていますが,それを1歳ごとにしてもやっぱりカテゴリー化されたデータです。

30歳と言っても30歳1か月,30歳2か月,など様々な30歳がありますが,それを30歳としてまとめています。

2020年8月23日日曜日

調査票の配布と回収について

調査票の配布と回収に関する出題は,第25回,第26回,第28回,第29回,第30回に出題されています。

直近2回では出題されていません。

もしかすると出題するのが飽きてしまったのかもしれません。


しかし,出題頻度が高いことには変わりはないので,確実に覚えておきたいです。


それでは,今日の問題です。


第29回・問題87 社会調査における調査票を用いた方法に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 郵送調査は,回答者が十分に時間をかけて回答することができるため,質問項目数の上限がないというメリットがある。

2 集合調査は,特定の団体が集まる会合の場で実施できるため,代表性のある標本を確保しやすいというメリットがある。

3 電話調査は,近年,固定電話に加え,携帯電話を持つ人が増えてきたため,回収率が高いというメリットがある。

4 留置調査は,調査票を配布したその場で回答がなされないため,他の方法に比べて回収率が低いというデメリットがある。

5 インターネット調査は,インターネット上で調査対象者を公募する場合,代表性の偏りが生じるというデメリットがある。


メリットが3つ

デメリットが2つ


の問題です。

できれば,メリット,あるいはデメリットで統一して出題してほしかったと思います。

そうすれば,同じような問題でも難易度が上がります。


それでもメリットとデメリットで出題してきたので,そこそこのレベルの問題だと言えるでしょう。

表現がばらつくと,知識がなくてもそこを切り口として答えられる可能性が高くなります。


それでは解説です。


1 郵送調査は,回答者が十分に時間をかけて回答することができるため,質問項目数の上限がないというメリットがある。


郵送調査は,ある一定規模以上の調査では,よく使われる方法です。

郵送費だけで済むからです。


しかし,どの方法であっても,質問項目には限りがあります。たくさんあると答えてくれないからです。


2 集合調査は,特定の団体が集まる会合の場で実施できるため,代表性のある標本を確保しやすいというメリットがある。


集合調査は,そこに集まっている人を無作為抽出しても,標本に偏りが生じます。

そりゃあそうです。

そこに集まっている人は,無作為抽出ではないからです。


3 電話調査は,近年,固定電話に加え,携帯電話を持つ人が増えてきたため,回収率が高いというメリットがある。


電話調査は,国政選挙が近くなると世論調査のためにマスコミがよく行う方法です。

固定電話は,不在だとつながりませんが,携帯電話でも見知らぬ電話番号からかかってきた電話には出ない人も多いと思われます。


4 留置調査は,調査票を配布したその場で回答がなされないため,他の方法に比べて回収率が低いというデメリットがある。


回収率が低いのは,郵送調査です。


留置調査法は,調査員が調査票を配布して,回収するので,無視しにくいこともあり,回収率はある程度高くなります。しかし,費用も高くなります。


5 インターネット調査は,インターネット上で調査対象者を公募する場合,代表性の偏りが生じるというデメリットがある。


これが正解です。


インターネット調査は,最も手軽でスピーディに行える調査法です。

しかし,アクセスできる人は限られますし,アクセスできても,そのテーマに興味を持つ人が回答するため,母集団に対して代表性の高いサンプルとはならないデメリットがあります。


2020年8月22日土曜日

サンプリングの方法

社会福祉調査には,「量的調査」と「質的調査」があります。


「量的調査」は,アンケートなどでデータを集めることがあります。


その場合,母集団をすべて調査する「全数調査」と母集団から標本を抽出して調査を行う標本調査(サンプリング)があります。

本来は,全数調査を行いたいところですが,規模が多くなると時間がかかる,費用が大きくなる,などのデメリットを生じます。


費用が大きくなることはデメリットとしてわかりやすいですが,時間がかかることがデメリットとなる理由は,時間がかかると,最初に調査した人と最後に調査した人では,置かれた環境が大きく変わってしまうことがあるからです。


標本調査には,無作為抽出と有意抽出の2つの方法があります。


このうち,母集団を推測できるのは,無作為抽出です。


大きな鍋料理があった場合,かき混ぜないですくうと底にあるものが入りません。


かき混ぜないで食べた人と,かき混ぜて食べた人がそれぞれその鍋料理について感想を述べた時,的確に答えられそうなのは,かき混ぜて食べた人です。


これが無作為抽出です。

かき混ぜないで食べた人は,有意抽出に当たります。

なお,無作為抽出は「確率標本抽出」,有意抽出は「非確率標本抽出」ともいいます。


それでは今日の問題です。


第29回・問題86 量的調査における標本抽出に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 単純無作為抽出法は,集団の規模にかかわらず作業時間が節約できる効率的な抽出法である。

2 系統抽出法では,抽出台帳に何らかの規則性がある場合,標本に偏りが生じる危険がある。

3 標本抽出では,男女別や年齢別の割合など,あらかじめ分かっている母集団の特性を利用してはならない。

4 用いる尺度の問題から測定上の誤差が生じることを標本誤差という。

5 機縁法は確率標本抽出の一種である。



「社会調査の基礎」が苦手な人は,結構多いようです。

実務と遠いところにあるからでしょう。

しかし,苦手意識さえなくなれば,それほど難しいものではありません。


さて,この問題の正解は,選択肢2です。


2 系統抽出法では,抽出台帳に何らかの規則性がある場合,標本に偏りが生じる危険がある。


系統抽出法とは,母集団の成員に順番をつけて,最初に抽出する番号だけを乱数表で決めて,それ以降は,等間隔で抽出する方法です。


<例>

1 父

2 母

3 兄

4 妹


5 父

6 母

7 兄

8 妹


9 父

10 母

11 兄

12 妹


13 父

14 母

15 兄

16 妹


もし,このような台帳があった場合,乱数表で4が出て,そのあと4つごとに抽出すると,すべての家の妹ばかりが抽出され続けます。


これが「抽出台帳に何らかの規則性」という意味です。


それではほかの選択肢も見てみましょう。


1 単純無作為抽出法は,集団の規模にかかわらず作業時間が節約できる効率的な抽出法である。


単純無作為抽出法は,抽出精度が最も高い抽出法です。

しかし,母集団が大きくなると乱数表を作るのが大変になります。


3 標本抽出では,男女別や年齢別の割合など,あらかじめ分かっている母集団の特性を利用してはならない。


男女別や年齢別の割合など,あらかじめ分かっている母集団の特性を利用して抽出する方法は,層化抽出法といいます。

抽出精度は若干下がりますが,適切な抽出法です。


4 用いる尺度の問題から測定上の誤差が生じることを標本誤差という。


標本誤差とは,母集団の性質とのずれのことをいいます。

標本抽出の場合,必ず標本誤差を生じますが,それがある程度の範囲で収まるように考えたのが,無作為抽出です。


5 機縁法は確率標本抽出の一種である。


機縁法は,知り合いに調査協力を行う方法です。

有意抽出=非確率標本抽出の一つです。

2020年8月21日金曜日

社会調査における倫理

社会調査,とりわけ質的調査は,文化人類学から発展してきた経緯があります。

19世紀は,科学が大きく発展したこともあり,地球が小さくなり,文化人類学者は,世界中のさまざまな地域に赴き,研究活動を行いました。

今では容認できないような調査もあったようです。

研究には,いつも高い倫理性が求められます。


それでは今日の問題です。


第29回・問題85 調査者の倫理に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 仮説と異なるデータが得られた場合でも,そのデータも含めて報告書をまとめなければならない。

2 学術研究上の調査は,調査対象者に強制的に回答を求める必要がある。

3 調査対象者への謝礼は,謝礼目的で迎合的な回答をする恐れがあるので,禁じられている。

4 調査対象者に調査の協力依頼をする際には,誤解がないように電話ではなく,文書で行わなければならない。

5 公益社団法人日本社会福祉士会が作成した社会福祉士の倫理綱領および行動規範には,調査や研究に関する専門職としての倫理責任についての項目はない。


この問題はそれほど難しくないかもしれません。


しかし,だからといって甘く見ていると間違う恐れがあります。

それが国試です。


ミスが少ない人は合格し,ミスが多い人は不合格になります。

国試とはそういうものです。


この問題の答えは,選択肢1です。


1 仮説と異なるデータが得られた場合でも,そのデータも含めて報告書をまとめなければならない。


考え込むと,これを正解には見えなくなってきます。


なぜなら「まとめなければならない」というところに引っ掛かりを感じるからです。

迷う理由は「まとめなければならない」という「義務か?」と思うからでしょう。

この文章が

1 仮説と異なるデータが得られた場合でも,そのデータも含めて報告書をまとめる。


であれば,迷わないと思います。


しかし,国試はそんなところに引っ掛けポイントは作りません。


さて,この選択肢は極めて重要です。


得られたデータは,自分にとって有利とならないこともあるかもしれません。


刑事ドラマなら,それも含めて発表しようとしていた研究者がそのデータが発表されたら窮地に立たされる企業によって殺害されるというシナリオができそうです。


2 学術研究上の調査は,調査対象者に強制的に回答を求める必要がある。


調査は常に自発的協力によって行われます。

「強制的」であってはなりません。


3 調査対象者への謝礼は,謝礼目的で迎合的な回答をする恐れがあるので,禁じられている。


市場調査の場合など,調査対象者に謝礼を渡すことはよくあります。


みなさんの中にもも,調査に協力してクオカードなどをもらったことがある,という人もいるのではないでしょうか。


何事も度を過ぎれば不適切でになりますが,すべては運用次第です。


4 調査対象者に調査の協力依頼をする際には,誤解がないように電話ではなく,文書で行わなければならない。


調査の協力依頼は,文書でなくても,口頭や電話でもOKです。


そうでなければ電話調査や街頭での聞き取り調査は行えなくなってしまいます。


5 公益社団法人日本社会福祉士会が作成した社会福祉士の倫理綱領および行動規範には,調査や研究に関する専門職としての倫理責任についての項目はない。


もちろんあります。


<今日の一言>


ゲシュタルト崩壊という認知心理学の用語があります。

国試では出題されたことがありません。


ゲシュタルト崩壊とは,同じ文字などを見続けると,その文字を認知できなくなる現象などのことを言います。


国試問題にも同じような効果があるように思います。


読み間違いしないように,慎重に問題文を読むことは必要ですが,じっくり読むことにより,重要なサインが見えなくなってくるのではないかと思います。


特に社会福祉士の国試は,誤っているものを消去することが極めて重要です。

最初は「?」と思ったことも,じっくり読んでいるうちにその違和感がなくなっていき,どれもが正解に見えて,逆にすべてが不正解に見えてきてしまいます。

慎重に読みながらも,直感を信じることも時には必要です。

2020年8月20日木曜日

社会福祉調査とは?

 今回から,専門科目に入っていきます。

 最初の科目は「社会福祉調査の基礎」です。

 

 それでは,今日の問題です。


29回・問題84 社会調査の種類と意義に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 センサスとは,民間企業が消費者の動向を把握するために行う調査である。

2 研究者が個人で行うフィールドワークは,社会調査には含まれない。

3 新聞社が行う世論調査が,社会調査の最も古い起源である。

4 社会踏査とは,社会的な問題を解決するために行われる調査である。

5 統計的なデータとして結果をまとめられない調査は,社会調査とはいえない。

 

この国試が実施された当時,「センサス」はそれまでの国試に出題されたことがありませんでした。

 

初めて出題されるものが正解になるのは,多くの場合,ほかの選択肢を消去できる問題です。

 

社会福祉調査の基礎は,第22回国試から加わったものですが,社会福祉調査の内容は,旧カリキュラム時代でも,「社会学」(現在の社会理論と社会システムに当たる科目)や「社会福祉援助技術」で出題されていました。

 

第4回・問題102 社会調査(social research)に関する次の記述のうち,誤っているものを一つ選びなさい。

1 クロス集計とは,は,二つ以上の標識(要因,変数)の組み合わせに関して,度数を示した相関表をつくることである。

2 多変量解析(multivariate analysis)とは,クラスター・アナリシス,因子分析などを指しており,その最も簡単な形態は三重クロス集計によるエラボレーションである。

3 パス解析(path analysis)とは,あらかじめ因果連鎖のモデルを想定して,変数間の相関係数の大きさを因果の道筋にそって分解し,因果関係を分析する方法である。

4 社会調査の歴史的に最も古い系譜は,社会改良を目指す実践的調査で,社会踏査(social survey)と呼ばれるものの流れである。

5 パネル調査(panel survey)とは,固定した対象者に対し,反復して同一質問により調査を行う縦断的調査法のことである。

 

科目として独立している現在でもかなり難しい内容です。科目が独立していなかった当時ではとてつもなく難しかったと思います。

 しかし,この問題で正解するのは,決して難しくありません。

 なぜなら,現在は存在しない「誤っているものを一つ選ぶ」問題だからです。

 誤っているものは,

4 社会調査の歴史的に最も古い系譜は,社会改良を目指す実践的調査で,社会踏査(social survey)と呼ばれるものの流れである。

 

社会踏査は,社会改良を目指す実践的調査です。

 

社会改良が始まっていくのは,1800年代のことです。

「最も古い」というのは,ちょっと怪しいものだと感じます。

 

そう思えると正解できます。

 

今は,一つ消去できたところで,得点することはできません。

しかし,消去できないよりも消去できた方が得点できる確率が格段に上がります。

 

それでは,今日の問題に戻ります。

 

1 センサスとは,民間企業が消費者の動向を把握するために行う調査である。

 

「センサス」を見て,慌てる人は,国試に合格するのはかなり難しいタイプです。

知識をつけてもつけても,こういったところで慌ててしまい,冷静な判断ができず,思わず選んでしまいます。

 

正解を1つ(あるいは2つ)選ぶ問題の落とし穴です。

 落ち着いて問題を読めば,センサスの意味はわからなくても,民間企業が消費者の動向を把握するために行う調査は,市場調査(マーケットリサーチ)であることは推測できそうです。

 センサスとは,公的な統計調査のことです。

 実は,第29回国試が実施された2017年に,第2回の「経済センサス」が実施されました。そのため,当時公共交通機関や官庁などにポスターが掲示されていました。

 そういったトレンドで出題したのかもしれません。しかし,こういったものがいきなり正解になることは,ほとんどありません。慌ててはなりません。

 

2 研究者が個人で行うフィールドワークは,社会調査には含まれない。

 

社会調査は,一般的に大がかりな調査であるイメージがあるので出題してきたのでしょう。

フィールドワークは,野外活動のことですが,一人で行っても大勢で行っても社会調査です。

 

3 新聞社が行う世論調査が,社会調査の最も古い起源である。

 

第4回国試よりもこちらの文章の方が,もっと怪しいものだと思えます。

今は「最も古い」と思われているものであっても,新しい史実が出てきたら,変わることがあり得ます。

そう考えると,最も古いのが何か知らなくても,正解にしにくいと思いませんか?

試験委員も調べ尽くすことは不可能です。

 

4 社会踏査とは,社会的な問題を解決するために行われる調査である。

 

第4回国試に出題されていたように,正解はこれです。

 

歴史的に有名なのは,ブースやラウントリーらの貧困調査があります。

 

新しいカリキュラムの科目名は「社会福祉調査の基礎」となることは先に述べました。

 

社会調査は,もともと福祉と親和性があるものですが,科目名を「社会調査の基礎」としたことで,福祉を学ぶ人の心から離れてしまいがちになったことを引き戻すために「社会福祉調査」としたのではないかと推測しています。

 

5 統計的なデータとして結果をまとめられない調査は,社会調査とはいえない。

 

社会調査は,大がかりな量的調査であるイメージを持っている人が多いことからの出題でしょう。

 

社会調査は,大きくわけると,「量的調査」と「質的調査」があります。

 

統計的データをまとめられるのは,量的調査です。

インタビューや観察などによって行う「質的調査」は,統計的データにまとめることはできませんが,それでも社会調査です。

 

<今日の一言>

 

社会調査には「量的調査」と「質的調査」があります。

「量的調査」はアンケートなどを実施して,得られたデータを分析して仮説を検証します。

社会調査のイメージを「量的調査」に持つ人も多くいることでしょう。

しかし,福祉人にとって,「質的調査」を忘れてはなりません。質的調査は,インタビューや観察によって得られたデータから新しい知見を見出すものです。

 

新しいカリキュラムでは,質的調査の中に「事例研究」が加わります。

そうなると,「社会調査=量的調査」というイメージはなくなることでしょう。

 

ソーシャルワークでの会話をすべて書き起こす「逐語記録」を分析することで,ソーシャルワークの効果を考えることもできます。

 

ソーシャルワークは科学的なアプローチです。

そういった意味で,今の科目の後継となる「社会福祉調査の基礎」はますます重要になる科目となることでしょう。

最新の記事

その分野の基本法をまず押さえよう!

  勉強にはいろいろなやり方がありますが,枝葉だけを見ていると見えるものも見えなくなってしまうものもあります。   法制度は,必然性があって出来上がるものです。   法制度を勉強する時には,必ずそれを押さえておくようにしましょう。   そうすれば,試験当日...

過去一週間でよく読まれている記事