社会福祉調査には,「量的調査」と「質的調査」があります。
「量的調査」は,アンケートなどでデータを集めることがあります。
その場合,母集団をすべて調査する「全数調査」と母集団から標本を抽出して調査を行う標本調査(サンプリング)があります。
本来は,全数調査を行いたいところですが,規模が多くなると時間がかかる,費用が大きくなる,などのデメリットを生じます。
費用が大きくなることはデメリットとしてわかりやすいですが,時間がかかることがデメリットとなる理由は,時間がかかると,最初に調査した人と最後に調査した人では,置かれた環境が大きく変わってしまうことがあるからです。
標本調査には,無作為抽出と有意抽出の2つの方法があります。
このうち,母集団を推測できるのは,無作為抽出です。
大きな鍋料理があった場合,かき混ぜないですくうと底にあるものが入りません。
かき混ぜないで食べた人と,かき混ぜて食べた人がそれぞれその鍋料理について感想を述べた時,的確に答えられそうなのは,かき混ぜて食べた人です。
これが無作為抽出です。
かき混ぜないで食べた人は,有意抽出に当たります。
なお,無作為抽出は「確率標本抽出」,有意抽出は「非確率標本抽出」ともいいます。
それでは今日の問題です。
第29回・問題86 量的調査における標本抽出に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 単純無作為抽出法は,集団の規模にかかわらず作業時間が節約できる効率的な抽出法である。
2 系統抽出法では,抽出台帳に何らかの規則性がある場合,標本に偏りが生じる危険がある。
3 標本抽出では,男女別や年齢別の割合など,あらかじめ分かっている母集団の特性を利用してはならない。
4 用いる尺度の問題から測定上の誤差が生じることを標本誤差という。
5 機縁法は確率標本抽出の一種である。
「社会調査の基礎」が苦手な人は,結構多いようです。
実務と遠いところにあるからでしょう。
しかし,苦手意識さえなくなれば,それほど難しいものではありません。
さて,この問題の正解は,選択肢2です。
2 系統抽出法では,抽出台帳に何らかの規則性がある場合,標本に偏りが生じる危険がある。
系統抽出法とは,母集団の成員に順番をつけて,最初に抽出する番号だけを乱数表で決めて,それ以降は,等間隔で抽出する方法です。
<例>
1 父
2 母
3 兄
4 妹
5 父
6 母
7 兄
8 妹
9 父
10 母
11 兄
12 妹
13 父
14 母
15 兄
16 妹
もし,このような台帳があった場合,乱数表で4が出て,そのあと4つごとに抽出すると,すべての家の妹ばかりが抽出され続けます。
これが「抽出台帳に何らかの規則性」という意味です。
それではほかの選択肢も見てみましょう。
1 単純無作為抽出法は,集団の規模にかかわらず作業時間が節約できる効率的な抽出法である。
単純無作為抽出法は,抽出精度が最も高い抽出法です。
しかし,母集団が大きくなると乱数表を作るのが大変になります。
3 標本抽出では,男女別や年齢別の割合など,あらかじめ分かっている母集団の特性を利用してはならない。
男女別や年齢別の割合など,あらかじめ分かっている母集団の特性を利用して抽出する方法は,層化抽出法といいます。
抽出精度は若干下がりますが,適切な抽出法です。
4 用いる尺度の問題から測定上の誤差が生じることを標本誤差という。
標本誤差とは,母集団の性質とのずれのことをいいます。
標本抽出の場合,必ず標本誤差を生じますが,それがある程度の範囲で収まるように考えたのが,無作為抽出です。
5 機縁法は確率標本抽出の一種である。
機縁法は,知り合いに調査協力を行う方法です。
有意抽出=非確率標本抽出の一つです。
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