2023年8月31日木曜日

困難な問題を抱える女性への支援に関する法律

「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」は,2022(令和4)年に成立したものです。 ※施行:2024(令和6)年4月。

 

基本理念

第三条 困難な問題を抱える女性への支援のための施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

 一 女性の抱える問題が多様化するとともに複合化し、そのために複雑化していることを踏まえ、困難な問題を抱える女性が、それぞれの意思が尊重されながら、抱えている問題及びその背景、心身の状況等に応じた最適な支援を受けられるようにすることにより、その福祉が増進されるよう、その発見、相談、心身の健康の回復のための援助、自立して生活するための援助等の多様な支援を包括的に提供する体制を整備すること。

 二 困難な問題を抱える女性への支援が、関係機関及び民間の団体の協働により、早期から切れ目なく実施されるようにすること。

 三 人権の擁護を図るとともに、男女平等の実現に資することを旨とすること。

 

 

これまで婦人保護政策は,売春防止法が担ってきましたが,この法律によって,売春防止法も大改正され,多くは新法で規定されます。

 

名称

設置

売春防止法

(廃止されるもの)

女性相談支援センター

(必置)都道府県

(任意)指定都市

※一時保護施設を設置しなければならない。

婦人相談所

女性相談支援員

(必置)都道府県

(任意)市町村

婦人相談員

女性自立支援施設

(任意)都道府県

婦人保護施設

 

売春防止法は,売春防止に関係する部分だけが残ります。

 

婦人補導院法は廃止され,保護観察の5号観察もなくなります。

※今日の問題は休みます。

2023年8月30日水曜日

フォスタリングとは

フォスタリングとは,里親養育包括支援と訳されます。

 

フォスタリング業務

・里親の広報・リクルート及びアセスメント

・里親登録前後及び委託後における里親に対する研修

・子どもと里親家庭のマッチング

・子どもの里親委託中における里親養育への支援

・里親委託措置解除後における支援

 

それでは,今日の問題です。

 

35回・問題136

事例を読んで,V里親養育包括支援(フォスタリング)機関のD相談員(社会福祉士)の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Vフォスタリング機関のソーシャルワーカーであるD相談員は,養育里親であるEさん夫婦からFさん(9歳)の相談を受けた。Eさん夫婦はFさんの養育里親委託を受け,5年になる。このところ,Fさんが実親のことを詳しく知りたいと言い出し,どうしたらよいか悩んでいると話す。Eさん夫婦は,実親のことを知ることで,自分たちとの関係が不安定になるのではないかと危惧しているとD相談員に話した。

1 Fさんは思春期に入る前なので,今は伝えない方がよいと助言する。

2 Fさんの最善の利益を考え,Fさんに実親のことをどのように伝えるかについて相談する。

3 Eさん夫婦が自分たちを追い詰めないことを優先する必要があり,実親の話題が出たら話を変えてみることを提案する。

4 D相談員からFさんに,実親のことを知らない方がFさんのためだと伝えることを提案する。

5 実親についての全ての情報を,Fさんに直ちに伝えなければならないと助言する。

 

この事例問題は,フォスタリング業務のうち「子どもの里親委託中における里親養育への支援」にあたります。

 

 

正解は,

2 Fさんの最善の利益を考え,Fさんに実親のことをどのように伝えるかについて相談する。

 

フォスタリングを知らずとも,正解は選べるのではないかと思います。

 

国家試験問題は,このようにして,少しずつ,知識を国民に広げていく役割を担っています。

2023年8月29日火曜日

母子健康包括支援センターの業務

母子保健法に規定される母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)は,母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進に関する包括的な支援を行うことを目的として,以下の業務を行います。

 

母子健康包括支援センターの業務

・母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進に関する支援に必要な実情の把握。

・母子保健に関する各種の相談に応じる。

・母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導。

・母性及び児童の保健医療又は福祉に関する機関との連絡調整その他母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進に関し,厚生労働省令で定める支援。

・健康診査,助産その他の母子保健に関する事業。

 

近年では,安心・安全で健やかな妊娠・出産・産後を支援するために母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)を中心として,以下の業務を行っています。

 

産前・産後サポート事業

妊娠・出産や子育てに関する悩みを抱える妊産婦等に対して,地域の子育て経験者やシニア世代の人たちなどが,気軽に話し相手になって相談に応じるなどの支援を行う。

 

産後ケア事業

退院直後の母子に対して,短期入所,通所又は居宅訪問の形態により,助産師等が心身のケアや育児のサポートを行う。

令和元年の母子保健法改正によって,市町村に実施の努力義務化。

 

若年妊婦等支援事業

予期せぬ妊娠等により,身体的,精神的な悩みや不安を抱えた若年妊婦等への身近な地域での支援として,NPO等も活用して,

①アウトリーチやSNS等による相談支援。

②不安や金銭面の心配から医療機関受診を躊躇する特定妊婦等に対して,支援者が産科受診に同行するとともに,受診費用を補助する。

③行き場のない若年妊婦等に,緊急一時的な居場所を提供する。

(※本事業の実施主体は,都道府県,指定都市,中核市)

 

それでは,今日の問題です。

 

34回・問題139

事例を読んで,T市母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)のE相談員(社会福祉士)の支援に関する次の記述のうち,この段階における対応として,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 若年妊婦等支援事業の担当者であるE相談員は,お腹の大きいFさん(19歳)から相談を受けた。Fさんは,両親との関係が悪く友人宅を転々としており,「妊娠していると思うが,交際相手とは別れてしまい,頼れる人はいない」「自分はどうしたらよいか分からない」「子どもを産んで育てる自信がない」「仕事もしておらず,経済的にも苦しい」と語った。

1 緊急一時的な居場所として宿泊施設等の利用を提案する。

2 出産や子育てには両親の手助けが必要であり,まずは家に戻るよう促す。

3 母親になる自覚を持つよう促す。

4 出産費用の捻出が求められるため就労支援を図る。

5 産科受診の同行支援ができることを伝える。

 

若年妊婦等支援事業を知らなくても,事例を丁寧に読めば正解できる問題です。

 

答えは,

1 緊急一時的な居場所として宿泊施設等の利用を提案する。

5 産科受診の同行支援ができることを伝える。

 

そのほかは,知識がなくても消去できるはずです。

2023年8月28日月曜日

子ども・子育て支援法

今回は,内閣府が所掌している子ども・子育て支援法を取り上げます。

 

子ども・子育て支援法が規定する「子ども・子育て支援給付」と「子ども・子育て支援事業」の実施主体は市町村です。

 

基本的な住民サービスを実施するのが市町村の役割です。

この法制度でも,この基本は同じです。


子ども・子育て支援法の概要

子ども・子育て支援給付
子どものための
現金給付
児童手当法に規定される児童手当の支給
子どものための
教育・保育給付
施設型給付
認定こども園(4類型),幼稚園、保育所に対する給付
地域型保育給付
小規模保育,家庭的保育,居宅訪問型保育,事業所内保育に対する給付
子育てのための施設等利用給付
子どものための教育・保育給付の対象外のもので,市町村が確認したものに対する給付。
地域子ども・子育て支援事業
利用者支援事業
地域子育て支援拠点事業
妊婦健康診査
乳児家庭全戸訪問事業
養育支援訪問事業・子どもを守る地域ネットワーク機能強化事業(その他要保護児童等の支援に資する事業)
子育て短期支援事業
子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポート・センター事業)
一時預かり事業
延長保育事業
病児保育事業
放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)
実費徴収に係る補足給付を行う事業
多様な主体が本制度に参入することを促進するための事業



支給対象

子どものための現金給付
15歳に達する日以後の最初の331日までの間にある児童の保護者に支給。
子どものための教育・保育給付
小学校就学前子どもの保護者に支給。
子育てのための施設等利用給付


幼児教育・保育の無償化について

2019年10月から,幼児教育・保育が無償化されています。それは「子どものための教育・保育給付」と「子育てのための施設等利用給付」によるものです。


無償化の年齢区分

3歳から5歳までの子ども
すべての子どもが無料
0歳から2歳までの子ども
住民税非課税世帯


それでは,今日の問題です。


第29回・問題136 

子ども・子育て支援法に規定されていることとして,正しいものを1つ選びなさい。

1 子ども・子育て支援給付の総合的・計画的実施は都道府県の責務である。

2 一般事業主は一般事業主行動計画を策定しなければならない。

3 病児保育事業は地域型保育事業の一つである。

4 子ども・子育て会議は厚生労働省に置く。

5 子どものための教育・保育給付は小学校就学前子どもの保護者に対して行う。


この時の国家試験を受験した人にとっては,とても難しかったことでしょう。

難しい問題は,ほかの人も解けないので,それほど気にすることはないように思います。


それでは解説です。


1 子ども・子育て支援給付の総合的・計画的実施は都道府県の責務である。


子ども・子育て支援法が規定する「子ども・子育て支援給付」と「子ども・子育て支援事業」の実施主体は市町村です。



2 一般事業主は一般事業主行動計画を策定しなければならない。


一般事業主行動計画を規定しているのは,次世代育成支援対策推進法です。


3 病児保育事業は地域型保育事業の一つである。


子ども・子育て支援法では,13種類の地域子ども・子育て支援事業を規定していますが,病児保育事業はその中の1つです。


こういった問題があると,地域子ども・子育て支援事業の13種類をすべて覚えておかなければならないのか,と思う人もいるでしょう。


もちろん覚えておくことに越したことはないでしょう。


しかし,それではあまりに非効率的です。


それよりも覚えておきたいのは,地域型保育事業とは何かです。


地域型保育事業

・家庭的保育

・小規模保育

・居宅訪問型保育

・事業所内保育


4 子ども・子育て会議は厚生労働省に置く。


子ども・子育て会議は,内閣府に置かれます。


なお,こども基本法が規定する「こども政策推進会議」は,こども家庭庁に置かれます。

こども基本法に関連する記事

https://fukufuku21.blogspot.com/2023/08/blog-post_27.html


5 子どものための教育・保育給付は小学校就学前子どもの保護者に対して行う。


これが正解です。

子どものための教育・保育給付がどのようなものなのかが理解できていれば,これを選べるのではないかと思います。

2023年8月27日日曜日

こども家庭庁とこども基本法について

2023(令和5)年4月,内閣府の外局として開庁したこども家庭庁は,こどもに関する施策の司令塔となります。

 

現在,所掌する法律は,こども家庭庁の設置に関連する法律を除けば,こども基本法のみです。

 

こども基本法の目的

この法律は、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり、次代の社会を担う全てのこどもが、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、社会全体としてこども施策に取り組むことができるよう、こども施策に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、及びこども施策の基本となる事項を定めるとともに、こども政策推進会議を設置すること等により、こども施策を総合的に推進することを目的とする。

 

いかにもいかにも,こどもに関する理念法という感じです。

 

子ども・子育て支援法の目的と比べてみると,一目瞭然です

 

子ども・子育て支援法の目的

この法律は、我が国における急速な少子化の進行並びに家庭及び地域を取り巻く環境の変化に鑑み、児童福祉法その他の子どもに関する法律による施策と相まって、子ども・子育て支援給付その他の子ども及び子どもを養育している者に必要な支援を行い、もって一人一人の子どもが健やかに成長することができる社会の実現に寄与することを目的とする。

 

こども基本法の目的のポイント

こども施策を総合的に推進することを目的とすること。

 

子ども・子育て支援法の目的のポイント

子ども・子育て支援給付その他の子ども及び子どもを養育している者に必要な支援を行うこと。

 

こども基本法に規定される「こども政策推進会議」は,こども家庭庁設置されます。

内閣府ではないところに注意が必要です。 


しかし,同会議の会長は,こども家庭庁長官ではなく,内閣総理大臣です。

こども施策を総合的に推進することを目的とするこども基本法は,強力なリーダーシップが必要です。そのために,会長は,内閣総理大臣となります。

 

ついでに基本理論も確認します。

 

 

こども基本法の基本理念

こども施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

一 全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすること。

二 全てのこどもについて、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、教育基本法の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること。

三 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。

四 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。

五 こどもの養育については、家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的責任を有するとの認識の下、これらの者に対してこどもの養育に関し十分な支援を行うとともに、家庭での養育が困難なこどもにはできる限り家庭と同様の養育環境を確保することにより、こどもが心身ともに健やかに育成されるようにすること。

六 家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できる社会環境を整備すること。

 

目的は法の特徴が出ていますが,基本理念には,それほどの特徴が出ていないので,出題するのは難しいかもしれません。

 

児童福祉法の総則

第一条 全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。

第二条 全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。

② 児童の保護者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負う。

③ 国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。

第三条 前二条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたつて、常に尊重されなければならない。

 

こども基本法とそっくりです。

 

〈こども基本法〉

全てのこどもについて、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、教育基本法の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること。

 

〈児童福祉法〉

全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。

 

〈こども基本法〉

全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。

 

〈児童福祉法〉

国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。

 

明確な相違ポイント

 

児童福祉法の基本理念が,こども基本法に似ている理由は,児童福祉法が目指すところは,児童の福祉に関して,高い次元を目指したものであるからです。

 

明確な相違ポイントは,児童福祉法には「児童の権利に関する条約」が明記されていることです。

それを反映したのは「最善の利益」です。

児童の最善の利益は,1924年「ジュネーブ宣言」,1959年「児童の権利宣言」で明記されていたもので,それを法的拘束力のあるものとして,児童に関する権利条約で改めて規定したものです。

最善の利益は,同条約では,8か所にわたって規定されています。

 

子ども・子育て支援法の基本理念

第二条 子ども・子育て支援は、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、家庭、学校、地域、職域その他の社会のあらゆる分野における全ての構成員が、各々の役割を果たすとともに、相互に協力して行われなければならない。

2 子ども・子育て支援給付その他の子ども・子育て支援の内容及び水準は、全ての子どもが健やかに成長するように支援するものであって、良質かつ適切なものであり、かつ、子どもの保護者の経済的負担の軽減について適切に配慮されたものでなければならない。

3 子ども・子育て支援給付その他の子ども・子育て支援は、地域の実情に応じて、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われなければならない。

 

ほかの法律よりも具体的になっています。

 

前回紹介した「子どもの貧困対策の推進に関する法律」もみてみましょう。

前回の記事

https://fukufuku21.blogspot.com/2023/08/blog-post_26.html


子どもの貧困対策の推進に関する法律 

第二条 子どもの貧困対策は、社会のあらゆる分野において、子どもの年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、子どもが心身ともに健やかに育成されることを旨として、推進されなければならない。

2 子どもの貧困対策は、子ども等に対する教育の支援、生活の安定に資するための支援、職業生活の安定と向上に資するための就労の支援、経済的支援等の施策を、子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現することを旨として、子ども等の生活及び取り巻く環境の状況に応じて包括的かつ早期に講ずることにより、推進されなければならない。

3 子どもの貧困対策は、子どもの貧困の背景に様々な社会的な要因があることを踏まえ、推進されなければならない。

4 子どもの貧困対策は、国及び地方公共団体の関係機関相互の密接な連携の下に、関連分野における総合的な取組として行われなければならない。

 

「子ども貧困対策は~」と書かれています。

より具体的になっています。

 

※今日の問題は,お休みします。

2023年8月26日土曜日

子どもの貧困対策の推進に関する法律

今回は,子どもの貧困対策の推進に関する法律です。

 

近年は,法の理念や目的が出題されるようによってきているので,まずは押さえましょう。

しかし,覚えなくても,国家試験では解けるはずです。

国家試験とはそういうものです。

 

(基本理念)

第二条 子どもの貧困対策は、社会のあらゆる分野において、子どもの年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、子どもが心身ともに健やかに育成されることを旨として、推進されなければならない。

2 子どもの貧困対策は、子ども等に対する教育の支援、生活の安定に資するための支援、職業生活の安定と向上に資するための就労の支援、経済的支援等の施策を、子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現することを旨として、子ども等の生活及び取り巻く環境の状況に応じて包括的かつ早期に講ずることにより、推進されなければならない。

3 子どもの貧困対策は、子どもの貧困の背景に様々な社会的な要因があることを踏まえ、推進されなければならない。

4 子どもの貧困対策は、国及び地方公共団体の関係機関相互の密接な連携の下に、関連分野における総合的な取組として行われなければならない。

 

法自体は,14条で構成されています。

 

これで勘の良い人は想像できるかもしれませんが,子どもの貧困対策の推進に関する法律は,子どもの貧困対策のための理念法です。

 

具体的な内容は,個別法で定めます。

 

不思議な感じがしますが,この法律では,政府に対して「子どもの貧困対策に関する大綱」を定めることを義務づけていますが,政府が実際に策定したのは「子供の貧困対策に関する大綱」です。

 

法では「子ども」,実際に策定したのは「子供」。統一してほしいものです。

子供の貧困対策に関する大綱

https://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/pdf/r01-taikou.pdf

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題141

子どもの貧困対策の推進に関する法律に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 基本理念として,子どもの貧困対策が児童虐待の予防に資するものとなるよう,明記している。

2 子どもの貧困対策では,子どもの年齢及び発達の程度に応じて,その意見が尊重され,その最善の利益が優先して考慮されなければならない。

3 政府は2年ごとに,子どもの貧困の状況と貧困対策の実施状況を公表しなければならない。

4 社会福祉協議会は,貧困の状況にある子どもの保護者に対する就労支援に関して必要な対策を講じなければならない。

5 文部科学省に,特別の機関として,子どもの貧困対策会議を置く。

 

答えはすぐわかると思いますが,解説します。

 

1 基本理念として,子どもの貧困対策が児童虐待の予防に資するものとなるよう,明記している。

 

貧困は,児童虐待のリスクになりますが,児童虐待の予防については述べられていません。

ほかの法律も見てみるとわかりますが,基本理念は,もっと大きな視点で述べられる傾向にあります。

 

2 子どもの貧困対策では,子どもの年齢及び発達の程度に応じて,その意見が尊重され,その最善の利益が優先して考慮されなければならない。

 

これが正解です。

 

基本理念を知らなくても,選べそうだと思いませんか?

選択肢1と比べてみると,基本理念としてはこちらの方が妥当な感じがするからです。

選択肢1だけに集中していると選択肢1も正解に見えてくると思いますが,必ずほかの選択肢と比べることが必要です。

 

3 政府は2年ごとに,子どもの貧困の状況と貧困対策の実施状況を公表しなければならない。

 

2年ごとというのは,何とも中途半端です。正しくは2年ではなく,毎年です。

 

4 社会福祉協議会は,貧困の状況にある子どもの保護者に対する就労支援に関して必要な対策を講じなければならない。

 

社会福祉協議会は,社会福祉法が定めていますが,民間組織です。

 

その民間組織である社会福祉協議会に対策を講じることを丸投げするのはあまりに無責任です。戦前の社会事業法の時代ならいざ知らず,こういった規定は考えられません。

 

正しくは,社会福祉協議会ではなく,国及び地方公共団体です。

 

これなら納得できます。

 

5 文部科学省に,特別の機関として,子どもの貧困対策会議を置く。

 

子どもの貧困対策会議は,内閣府に置かれています。

 

子どもの貧困対策は、子ども等に対する教育の支援生活の安定に資するための支援職業生活の安定と向上に資するための就労の支援経済的支援等の施策を、子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現することを旨として、子ども等の生活及び取り巻く環境の状況に応じて包括的かつ早期に講ずることにより、推進されなければならない。


基本理念の中にも4つの支援が明記されています。文部科学省,厚生労働省,経済産業省などが関連するでしょう。

子どもの貧困対策会議は内閣府に置かれることで,省庁をまたいだ施策が実現できます。内閣総理大臣が司令塔となり,関係閣僚に指示を出すことができるからです。


〈今日の一言〉

子どもの貧困対策の推進に関する法律を知らなくても,文部科学省に子どもの貧困対策会議が置かれるのは,あまりに不自然だと感じるはずです。

国家試験当日は,このような違和感を大切にすることがとても重要です。

2023年8月25日金曜日

老人福祉法が規定する養護老人ホーム

養護老人ホームは,老人福祉法ができる前は,生活保護法が規定する養老施設でした。


さらにさかのぼると,救護法の養老院が発祥です。


高齢者施策は,貧困者を対象としていたことがよくわかるのではないでしょうか。


老人福祉法によって,低所得者を対象とするようになり,介護保険法によって,一般所得階層を対象とするようになりました。


それでは今日の問題です。


第27回・問題135 

老人福祉法に規定される養護老人ホームについての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 入所の要件は,要介護状態もしくは要支援状態であることとされている。

2 都道府県,市町村,社会福祉法人のほか,医療法人や民間営利法人も設置できる。

3 入所者の心身の状況等に応じて,社会復帰の促進及び自立のために必要な指導や訓練,その他の援助を行うこととされている。

4 入所者の居室1室当たりの定員は2人と定められている。

5 入所に当たっては,居住地の市町村と利用契約を締結する必要がある。


この問題の難易度は極めて高いと思います。


老人福祉法は,介護保険法に隠れた存在であることに加えて,養護老人ホームがいつ問丸ごと出題されることが極めて稀だからです。


それでは,解説です。


1 入所の要件は,要介護状態もしくは要支援状態であることとされている。


養護老人ホームの入所対象者は,65歳以上の者で,環境上の理由及び経済的理由により居宅において養護を受けることが困難なものです。


2 都道府県,市町村,社会福祉法人のほか,医療法人や民間営利法人も設置できる。


養護老人ホームは,社会福祉法の第一種社会福祉事業です。

第二種社会福祉事業ではないので,医療法人や民間営利法人などは設置することができません。


3 入所者の心身の状況等に応じて,社会復帰の促進及び自立のために必要な指導や訓練,その他の援助を行うこととされている。


これが正解です。


社会復帰の促進及び自立が規定されているところが特徴です。

この機会にしっかり覚えてしまいましょう。


4 入所者の居室1室当たりの定員は2人と定められている。


居室1室当たりの定員は1名,つまり個室が原則となっています。

今の時代です。措置施設であっても,さすがに1室2名ということはないようです。


5 入所に当たっては,居住地の市町村と利用契約を締結する必要がある。


養護老人ホームは,市町村長の措置によって利用します。

契約はしません。

2023年8月24日木曜日

介護保険制度における国保連の役割

国民健康保険団体連合会(国保連)は,市町村から委託を受けて

・国民健康保険と後期高齢者医療制度の診療報酬の審査・支払い

・介護保険の介護報酬の審査・支払い


などを行っています。


介護保険関係では,これらのほかに,

・指定事業者の資質の向上に関する調査,必要な指導及び助言

・介護保険施設等の運営

・介護保険事業の円滑な運営に資する事業  など


を行います。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題132 

次の記述のうち,国民健康保険団体連合会の介護保険制度における役割として,正しいものを1つ選びなさい。

1 介護保険の財政の安定化に資する事業に必要な費用を充てるため,財政安定化基金を設ける。

2 介護サービス事業者が利用者に提供したサービスに伴う介護給付費の請求に関し,市町村から委託を受けて,審査及び保険給付の支払を行う。

3 介護サービスの苦情処理等の業務や事業者・施設への指導・助言のための機関として,運営適正化委員会を設置する。

4 市町村が介護認定審査会を共同設置する場合に,市町村間の調整や助言等の必要な援助を行う。

5 保険給付に関する処分や保険料などの徴収金に関する処分について,不服申立ての審理・裁決を行うための機関として,介護保険審査会を設置する。


国保連に関する出題は

近年では,第29回,第30回,第33回に1問丸ごと出題されています。


それでは解説です。


1 介護保険の財政の安定化に資する事業に必要な費用を充てるため,財政安定化基金を設ける。


財政安定化基金を設けるのは,都道府県の役割です。


2 介護サービス事業者が利用者に提供したサービスに伴う介護給付費の請求に関し,市町村から委託を受けて,審査及び保険給付の支払を行う。


これが正解です。


業務内容とともに,どこから委託を受けていて業務を行っているのかも押さえておきたいです。


3 介護サービスの苦情処理等の業務や事業者・施設への指導・助言のための機関として,運営適正化委員会を設置する。


社会福祉法に規定される運営適正化委員会は,福祉サービスに関する苦情について解決の申出があったときは,助言,苦情の解決のあっせんを行います。設置するのは都道府県社会福祉協議会です。


国保連は,介護サービスの苦情処理等の業務や事業者・施設への指導・助言を行います。


法律では名称を規定していませんが,国保連はこの業務を行うために介護サービス苦情処理委員会を設置しています。


苦情申立て機関

福祉サービス ➡ 運営適正化委員会

介護サービス ➡ 国民健康保険団体連合会


4 市町村が介護認定審査会を共同設置する場合に,市町村間の調整や助言等の必要な援助を行う。


市町村間の調整や助言等の必要な援助は,都道府県が行います。


5 保険給付に関する処分や保険料などの徴収金に関する処分について,不服申立ての審理・裁決を行うための機関として,介護保険審査会を設置する。


介護保険審査会は,都道府県が設置します。

2023年8月23日水曜日

介護保険法と障害者総合支援法

日本の介護保険法は,利用できる年齢に制限を設けられています。


特定疾病によって要介護状態になった場合は,40歳以上,それ以外の場合は65歳から介護保険サービスを利用することができます。


それ未満の人が介護を必要とした場合は,障害者総合支援法が規定する障害福祉サービスを利用します。


介護保険法と障害者総合支援法では,介護保険法が優先されます。


そのために障害福祉サービスを利用している場合,65歳になると同等のサービスが介護保険サービスにある場合は,介護保険サービスを利用することになります。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題127 

事例を読んで,在宅サービスを利用して一人暮らしをしているAさんのケアプランに関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 弱視であるAさん(64歳,男性)は20年前に事故で頸権損傷を受傷し,四肢麻痺の状態になった。現在,障害支援区分6で居宅介護と同行援護を利用し,障害基礎年金を受けて生活している。間もなく65歳となり介護保険を利用することになると訪問介護の時間数が減少してしまうため,地域包括支援センターに行った。そこで,B介護支援専門員(社会福祉士)に今後も同等のサービスを利用できるかを相談した。

1 介護保険法の訪問介護の時間数の不足分は,「障害者総合支援法」で補完することを考える。

2 「障害者総合支援法」のサービスのまま,ケアプランを作成する。

3 介護保険法のサービス内でケアプランを作成する。

4 同行援護は,「障害者総合支援法」で引き続き対応する。

5 介護保険の上限でサービスを組み,他は全額自己負担で対応する。

(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。


障害支援区分6なので,Aさんは最重度の障害者です。


それでは,解説です。


1 介護保険法の訪問介護の時間数の不足分は,「障害者総合支援法」で補完することを考える。


これが1つめの正解です。


障害福祉サービスの居宅介護と介護保険サービスの訪問介護は同等のサービスです。


そのため,Aさんがこれまで利用していた居宅介護は,65歳になると訪問介護を利用することになります。


サービス不足になる場合は,居宅介護を併用して,補完します。


2 「障害者総合支援法」のサービスのまま,ケアプランを作成する。


現在は,共生型サービスがあるので,障害者総合支援法の事業者も介護保険事業者として指定を受けていることが多いと思います。


同じ事業者がケアプランを作成するとしても,お金の出所が異なります。


65歳になると介護保険サービスのケアプランを作成します。


3 介護保険法のサービス内でケアプランを作成する。


Aさんは,介護保険サービスにはない同行援護を利用しています。

介護保険サービスにないものは,引き続き障害福祉サービスを利用します。


4 同行援護は,「障害者総合支援法」で引き続き対応する。


選択肢3の解説によってわかると思いますが,これがもう1つの正解です。


5 介護保険の上限でサービスを組み,他は全額自己負担で対応する。


介護保険サービス以外の部分は,原則1割負担です。

2023年8月22日火曜日

老人家庭奉仕員派遣制度とは?

老人家庭奉仕員派遣制度とは,1963(昭和38)年の老人福祉法の制定によって規定されたもので,現在の訪問介護にあたります。


ホームヘルパーは,以前は,家庭奉仕員と呼ばれていました。


1990(平成2)年の福祉関係八法改正に伴い,名称が老人居宅介護等事業に変更され,同時に社会福祉事業法(現在の社会福祉法)の第二種社会福祉事業となりました。


それでは今日の問題です。


第29回・問題127 

老人福祉法の展開に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 老人福祉法制定時(1963年(昭和38年))には,特別養護老人ホームは経済的理由により居宅において養護を受けることが困難な老人を収容するものとされていた。

2 65歳以上の者に対する健康診査事業は,老人医療費支給制度の導入時(1972年(昭和47年))に法定化された。

3 高齢者保健福祉推進十か年戦略(1989年(平成元年))を円滑に実施するため,老人福祉計画の法定化を含む老人福祉法の改正(1990年(平成2年))が行われた。

4 老人家庭奉仕員派遺制度は,老人福祉法改正時(1990年(平成2年))に,デイサービスやショートステイと共に法定化された。

5 介護保険法の全面施行(2000年(平成12年))に合わせて,老人福祉施設等の入所事務が都道府県から町村に権限移譲された。


今日のテーマは,選択肢4にあります。


それでは,解説です。


1 老人福祉法制定時(1963年(昭和38年))には,特別養護老人ホームは経済的理由により居宅において養護を受けることが困難な老人を収容するものとされていた。


特別養護老人ホームと養護老人ホームの違い,特に養護老人ホームについては,確実に押さえておきたいです。


老人福祉法が出題される時には,高い確率で養護老人ホームが絡んできます。


特別養護老人ホームの入所対象者

身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし,かつ,居宅においてこれを受けることが困難なもの


養護老人ホーム

環境上の理由及び経済的理由により居宅において養護を受けることが困難なもの


2 65歳以上の者に対する健康診査事業は,老人医療費支給制度の導入時(1972年(昭和47年))に法定化された。


65歳以上の者に対する健康診査事業が法定化されたのは,老人福祉法の制定時です。


3 高齢者保健福祉推進十か年戦略(1989年(平成元年))を円滑に実施するため,老人福祉計画の法定化を含む老人福祉法の改正(1990年(平成2年))が行われた。


これが正解です。


高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドブラン)は,目前に迫った老齢社会の到来を控えて,高齢者保健福祉を充実させるための計画でした。


一般的に「福祉関係八法改正」と呼ばれていますが,「老人福祉法等の一部を改正する法律」が正式名称です。


老人福祉法を含む関連八法を同時に改正したもので,老人福祉法では,問題のあるように,老人福祉計画の法定化などが行われています。


4 老人家庭奉仕員派遺制度は,老人福祉法改正時(1990年(平成2年))に,デイサービスやショートステイと共に法定化された。


老人家庭奉仕員派遺制度は,老人福祉法制定時に法制化されていました。

福祉関係八法改正によって,社会福祉事業法の第二種社会福祉事業に規定されました。


5 介護保険法の全面施行(2000年(平成12年))に合わせて,老人福祉施設等の入所事務が都道府県から町村に権限移譲された。


かつて,老人福祉施設等の入所事務は都道府県及び市が実施していました。

福祉関係八法改正の時に,町村に権限移譲されました。


この改正によって,老人福祉及び身体障害者福祉の提供は,施設サービスと在宅福祉サービスともに市町村が担うことになりました。


知的障害者福祉はこれにちょっと遅れますが,1998(平成10)年に町村に権限移譲されています。

なお,児童福祉法の入所事務は,現在も都道府県が担っています。


2023年8月21日月曜日

養護老人ホームは重要です

養護老人ホームは,老人福祉法に定められる老人福祉施設です。


養護老人ホームの入所要件

65歳以上の者で,環境上の理由及び経済的理由により居宅において養護を受けることが困難なもの。


確実に覚えておきたいのは,養護老人ホームは,経済的理由を入所要件としていることです。


それでは,今日の問題です。


第24回・問題119

介護保険法が公布(平成9年12月17日)された時点での老人福祉法による高齢者福祉制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 65歳以上の者についての養護老人ホームや特別養護老人ホームへの入所又は入所の委託の措置は,都道府県が採っていた。

2 特別養護老人ホームに入所又は入所の委託の措置が採られるのは,低所得の者に限られていた。

3 特別養護老人ホームは,無料又は低額な料金で65歳以上の者を入所させ,常時の介護等を供与することを目的とする施設だった。

4 養護老人ホームは,65歳以上の者であって,身体上若しくは精神上又は環境上の理由及び経済的理由により居宅での養護が困難な者を入所させた。

5 65歳以上の者についての養護老人ホームや特別養護老人ホームへの入所又は入所の委託の措置に要する費用の8割は,国が負担していた。


古い問題で申し訳ないですが,とてもよい問題です。


しっかり覚えていきたいです。


それでは解説です。


1 65歳以上の者についての養護老人ホームや特別養護老人ホームへの入所又は入所の委託の措置は,都道府県が採っていた。


センスの良い問題です。

養護老人ホームや特別養護老人ホームの入所措置は,かつては都道府県の役割でした。


1990年(平成2年)の福祉関係八法改正では,養護老人ホームや特別養護老人ホームの入所措置は,都道府県知事が行っていたものを町村に権限移譲しました。


2 特別養護老人ホームに入所又は入所の委託の措置が採られるのは,低所得の者に限られていた。


低所得の者に限られていたのは,養護老人ホームです。


3 特別養護老人ホームは,無料又は低額な料金で65歳以上の者を入所させ,常時の介護等を供与することを目的とする施設だった。


無料又は低額な料金で65歳以上の者を入所させ,常時の介護等を供与することを目的とする施設は,軽費老人ホームです。


4 養護老人ホームは,65歳以上の者であって,身体上若しくは精神上又は環境上の理由及び経済的理由により居宅での養護が困難な者を入所させた。


これが正解です。

なお,現在は,身体上若しくは精神上が削除されて「環境上の理由及び経済的理由」となっています。


5 65歳以上の者についての養護老人ホームや特別養護老人ホームへの入所又は入所の委託の措置に要する費用の8割は,国が負担していた。


国の負担割合は,2分の1です。

ただし,現在は養護老人ホームへの国の負担はありません。

2023年8月20日日曜日

老人福祉法を極める~老人福祉法の成立

今日の高齢者の介護サービスの中心は,介護保険制度で提供されています。


そのため,老人福祉法は陰に隠れているような存在ですが,福祉を学ぶ我々にとっても老人福祉法は重要です。


余談ですが,介護保険制度で提供される介護保険サービスの中には,老人福祉法の規定によって認可され,介護保険法の規定によって介護保険サービスを提供する事業者として指定されるものもあります。


老人福祉法は介護保険制度ができる前までは,重要な制度であったことを示すような仕組みであると思います。


今回は,老人福祉法の成り立ちの問題を取り上げます。


それでは,今日の問題です。


第26回・問題128 

老人福祉法が制定された1963年(昭和38年)当時の状況に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 老人福祉法の制定に先立つ1960年(昭和35年)の国勢調査において,我が国の人口の高齢化率は7%を超え,高齢化社会に突入した。

2 老人福祉法では,市町村による老人家庭奉仕員に関する規定が置かれた。

3 老人福祉法において,特別養護老人ホームの制度が創設されたが,常時介護を要する者であれば,市町村の措置でなくても,施設との契約により入所することができた。

4 老人福祉法には,有料老人ホームに関する規定は設けられていなかった。

5 老人福祉法において,70歳以上の老人の医療費の一部負担分を国と地方自治体が支給することにより,1963年(昭和38年)から老人医療費は無料とされた。


こんなことを学んで,何になるの?


と思う人も多いのではないかと思います。


しかし社会福祉士が専門職であるためには,歴史を知ることが必要です。


歴史は,その専門職のサブカルチャーを構築するからです。


歴史を知らなくても,実務はできます。しかし,実務に直接かかわらないサブカルチャーがなければ,専門職にはなり得ません。


それでは解説です。


1 老人福祉法の制定に先立つ1960年(昭和35年)の国勢調査において,我が国の人口の高齢化率は7%を超え,高齢化社会に突入した。


日本が高齢化社会に突入したのは,1970年(昭和45年)です。


2 老人福祉法では,市町村による老人家庭奉仕員に関する規定が置かれた。


これが正解です。

老人家庭奉仕員とは,現在の訪問介護員のことです。

在宅福祉サービスが充実していくのは,1990年(平成2年)の福祉関係八法改正以降なので,老人家庭奉仕員制度の創設もこの辺りだと勘違いしないように気をつけることが必要です。


3 老人福祉法において,特別養護老人ホームの制度が創設されたが,常時介護を要する者であれば,市町村の措置でなくても,施設との契約により入所することができた。


老人福祉法の規定では,現在でも特別養護老人ホームの入所は,市町村の措置が必要です。


これは,当初から変わることはありません。


4 老人福祉法には,有料老人ホームに関する規定は設けられていなかった。


老人福祉法では,有料老人ホームが規定されていますが,老人福祉法の制定時に制度化されています。


老人福祉法では,老人ホームは,特別養護老人ホーム,養護老人ホーム,軽費老人ホーム,有料老人ホームの4つが規定されています。


そのうち,特別養護老人ホーム,養護老人ホーム,軽費老人ホームは,老人福祉施設です。


また,措置によって利用するのは,特別養護老人ホーム,養護老人ホームです。


このように分類することができます。


この問題には,養護老人ホームが出題されていませんが,老人福祉法では,養護老人ホームがとても重要です。


5 老人福祉法において,70歳以上の老人の医療費の一部負担分を国と地方自治体が支給することにより,1963年(昭和38年)から老人医療費は無料とされた。


いわゆる老人医療費無料化は,1973年(昭和48年)に実施されました。


老人医療費無料化は,対象が70歳以上であることも合わせて覚えておきたいです。

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