2023年8月19日土曜日

「福祉サービスの組織と経営」に出題される社会心理学

心理学が苦手なのに,この科目でも出題されるのか,と思う人もいると思います。


社会心理学だけではなく,心理社会学も「福祉サービスの組織と経営」の出題範囲です。


出題基準では,以下の部分が相当します。


福祉サービスの組織と経営に係る基礎理論

・組織運営に関する基礎理論

・チームに関する基礎理論

・リーダーシップに関する基礎理論


この科目がまだなかった頃には,心理学,社会学,社会福祉援助技術の科目で出題されていました。


それを独立させて,構築した科目が「福祉サービスの組織と経営」です。


平成19年度カリキュラムと令和元年度カリキュラムでは,「社会保障」と「福祉サービス組織と経営」の2科目だけが科目名に変更がありませんでした。


この科目は完成度が高かったのかもしれません。


ただし,平成19年度カリキュラムでは,「相談援助の理論と方法」の範囲だった個人情報保護,「就労支援サービス」の範囲だった労働法に関連するものが,この科目に含まれました。


科目が再編されただけで,覚えるべき内容は大きくは変化していません。


それでは,今日の問題です。


第29回・問題122

集団のパフォーマンスに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 リーダーを中心にまとまりの良い集団では,集団浅慮は起きない。

2 社会的手抜きは,集団の作業では発生しない。

3 社会的促進は,複雑で不慣れな課題遂行時に起きる。

4 グループ間のコンフリクトは,あるグループが他のグループに対して優位に立とうとするときに生じる。

5 チームでメンタルモデルが共有されていると,チームのパフォーマンスが減退する。


この科目で,社会心理学,あるいは,心理社会学が出題される理由がよくわかる問題だと思います。


生きた学問です。


それでは解説です。


1 リーダーを中心にまとまりの良い集団では,集団浅慮は起きない。


集団浅慮は,集団で考えて結論を出すと,一人で結論を出す時よりも良いものにならないことです。


集団だと一人にかかる責任の重さが軽くなるためです。


リーダーを中心としたまとまりの良い集団は,集団浅慮が起きやすくなります。


2 社会的手抜きは,集団の作業では発生しない。


社会的手抜きは,1人で働く時よりも集団の中で働く時の方が,仕事量が低下することです。


意識的に手抜きをしてわけではないのに,集団の中では社会的手抜きが起きます。


3 社会的促進は,複雑で不慣れな課題遂行時に起きる。


社会的促進は,1人で働く時よりも集団の中で行う作業の方が,周りに引っ張られて,仕事のパフォーマンスが上がることです。


社会的促進は,複雑で不慣れな作業よりも,比較的単純で慣れた作業の方がより促進されます。


4 グループ間のコンフリクトは,あるグループが他のグループに対して優位に立とうとするときに生じる。


これが正解です。


コンフリクトは,葛藤・紛争と訳されます。


グループ間の紛争は,あるグループが他のグループに対して優位に立とうとするときに生じます。


つまり,自分のグループの主張を通そうとする場合に生じます。


5 チームでメンタルモデルが共有されていると,チームのパフォーマンスが減退する。


メンタルモデルは,簡単に言えば,今までの経験によって,相手の行動の予測,解釈することなどです。


チームでさまざまな経験することで,メンタルモデルが共有されていきます。


そうすると,この時はこのように動けば良い,といった判断が早くなるでしょう。

因みにメンタルモデルは,認知心理学に属します。認知心理学は,脳科学にも関連するもので,近年の発展は目覚ましいです。

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