心理学が苦手なのに,この科目でも出題されるのか,と思う人もいると思います。
社会心理学だけではなく,心理社会学も「福祉サービスの組織と経営」の出題範囲です。
出題基準では,以下の部分が相当します。
福祉サービスの組織と経営に係る基礎理論 ・組織運営に関する基礎理論 ・チームに関する基礎理論 ・リーダーシップに関する基礎理論 |
この科目がまだなかった頃には,心理学,社会学,社会福祉援助技術の科目で出題されていました。
それを独立させて,構築した科目が「福祉サービスの組織と経営」です。
平成19年度カリキュラムと令和元年度カリキュラムでは,「社会保障」と「福祉サービス組織と経営」の2科目だけが科目名に変更がありませんでした。
この科目は完成度が高かったのかもしれません。
ただし,平成19年度カリキュラムでは,「相談援助の理論と方法」の範囲だった個人情報保護,「就労支援サービス」の範囲だった労働法に関連するものが,この科目に含まれました。
科目が再編されただけで,覚えるべき内容は大きくは変化していません。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題122
集団のパフォーマンスに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 リーダーを中心にまとまりの良い集団では,集団浅慮は起きない。
2 社会的手抜きは,集団の作業では発生しない。
3 社会的促進は,複雑で不慣れな課題遂行時に起きる。
4 グループ間のコンフリクトは,あるグループが他のグループに対して優位に立とうとするときに生じる。
5 チームでメンタルモデルが共有されていると,チームのパフォーマンスが減退する。
この科目で,社会心理学,あるいは,心理社会学が出題される理由がよくわかる問題だと思います。
生きた学問です。
それでは解説です。
1 リーダーを中心にまとまりの良い集団では,集団浅慮は起きない。
集団浅慮は,集団で考えて結論を出すと,一人で結論を出す時よりも良いものにならないことです。
集団だと一人にかかる責任の重さが軽くなるためです。
リーダーを中心としたまとまりの良い集団は,集団浅慮が起きやすくなります。
2 社会的手抜きは,集団の作業では発生しない。
社会的手抜きは,1人で働く時よりも集団の中で働く時の方が,仕事量が低下することです。
意識的に手抜きをしてわけではないのに,集団の中では社会的手抜きが起きます。
3 社会的促進は,複雑で不慣れな課題遂行時に起きる。
社会的促進は,1人で働く時よりも集団の中で行う作業の方が,周りに引っ張られて,仕事のパフォーマンスが上がることです。
社会的促進は,複雑で不慣れな作業よりも,比較的単純で慣れた作業の方がより促進されます。
4 グループ間のコンフリクトは,あるグループが他のグループに対して優位に立とうとするときに生じる。
これが正解です。
コンフリクトは,葛藤・紛争と訳されます。
グループ間の紛争は,あるグループが他のグループに対して優位に立とうとするときに生じます。
つまり,自分のグループの主張を通そうとする場合に生じます。
5 チームでメンタルモデルが共有されていると,チームのパフォーマンスが減退する。
メンタルモデルは,簡単に言えば,今までの経験によって,相手の行動の予測,解釈することなどです。
チームでさまざまな経験することで,メンタルモデルが共有されていきます。
そうすると,この時はこのように動けば良い,といった判断が早くなるでしょう。
因みにメンタルモデルは,認知心理学に属します。認知心理学は,脳科学にも関連するもので,近年の発展は目覚ましいです。