今日の高齢者の介護サービスの中心は,介護保険制度で提供されています。
そのため,老人福祉法は陰に隠れているような存在ですが,福祉を学ぶ我々にとっても老人福祉法は重要です。
余談ですが,介護保険制度で提供される介護保険サービスの中には,老人福祉法の規定によって認可され,介護保険法の規定によって介護保険サービスを提供する事業者として指定されるものもあります。
老人福祉法は介護保険制度ができる前までは,重要な制度であったことを示すような仕組みであると思います。
今回は,老人福祉法の成り立ちの問題を取り上げます。
それでは,今日の問題です。
第26回・問題128
老人福祉法が制定された1963年(昭和38年)当時の状況に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 老人福祉法の制定に先立つ1960年(昭和35年)の国勢調査において,我が国の人口の高齢化率は7%を超え,高齢化社会に突入した。
2 老人福祉法では,市町村による老人家庭奉仕員に関する規定が置かれた。
3 老人福祉法において,特別養護老人ホームの制度が創設されたが,常時介護を要する者であれば,市町村の措置でなくても,施設との契約により入所することができた。
4 老人福祉法には,有料老人ホームに関する規定は設けられていなかった。
5 老人福祉法において,70歳以上の老人の医療費の一部負担分を国と地方自治体が支給することにより,1963年(昭和38年)から老人医療費は無料とされた。
こんなことを学んで,何になるの?
と思う人も多いのではないかと思います。
しかし社会福祉士が専門職であるためには,歴史を知ることが必要です。
歴史は,その専門職のサブカルチャーを構築するからです。
歴史を知らなくても,実務はできます。しかし,実務に直接かかわらないサブカルチャーがなければ,専門職にはなり得ません。
それでは解説です。
1 老人福祉法の制定に先立つ1960年(昭和35年)の国勢調査において,我が国の人口の高齢化率は7%を超え,高齢化社会に突入した。
日本が高齢化社会に突入したのは,1970年(昭和45年)です。
2 老人福祉法では,市町村による老人家庭奉仕員に関する規定が置かれた。
これが正解です。
老人家庭奉仕員とは,現在の訪問介護員のことです。
在宅福祉サービスが充実していくのは,1990年(平成2年)の福祉関係八法改正以降なので,老人家庭奉仕員制度の創設もこの辺りだと勘違いしないように気をつけることが必要です。
3 老人福祉法において,特別養護老人ホームの制度が創設されたが,常時介護を要する者であれば,市町村の措置でなくても,施設との契約により入所することができた。
老人福祉法の規定では,現在でも特別養護老人ホームの入所は,市町村の措置が必要です。
これは,当初から変わることはありません。
4 老人福祉法には,有料老人ホームに関する規定は設けられていなかった。
老人福祉法では,有料老人ホームが規定されていますが,老人福祉法の制定時に制度化されています。
老人福祉法では,老人ホームは,特別養護老人ホーム,養護老人ホーム,軽費老人ホーム,有料老人ホームの4つが規定されています。
そのうち,特別養護老人ホーム,養護老人ホーム,軽費老人ホームは,老人福祉施設です。
また,措置によって利用するのは,特別養護老人ホーム,養護老人ホームです。
このように分類することができます。
この問題には,養護老人ホームが出題されていませんが,老人福祉法では,養護老人ホームがとても重要です。
5 老人福祉法において,70歳以上の老人の医療費の一部負担分を国と地方自治体が支給することにより,1963年(昭和38年)から老人医療費は無料とされた。
いわゆる老人医療費無料化は,1973年(昭和48年)に実施されました。
老人医療費無料化は,対象が70歳以上であることも合わせて覚えておきたいです。